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それぞれの毎日

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「障がいのある方は、親御さんに何かあったら、施設に入らざるを得ない場合も多いのです。でも、自分の家って、その人にとって大切な空間だから。すこしでも自分の過ごしたい場所で過ごしてほしいなって。」

日本に740万人以上いると言われている、障がいのある方たち。その生活を支援しているのが、介助ヘルパー。

今回募集するのは、世田谷区で活動している社会福祉法人自立の家ではたらく職員と介助ヘルパーです。

jiritsunoie01 社会福祉法人自立の家があるのは、世田谷区代田。

世田谷区は、日本で最初に特別支援学校ができた地域ということもあって、地域で暮らしている障がいのある方も多く、もともと福祉活動もさかんなのだそう。

自立の家がはじまったのは、その特別支援学校の生徒が駅を利用しやすいようにと、改善を求める運動がきっかけ。その後、自立した生活を送るための宿泊体験プログラム、ヘルパー派遣等を行うNPOから、障害者自立支援法の居宅介護を行う社会福祉法人を分離し、現在は居宅介護・重度訪問介護・移動支援に取り組んでいる。

東急世田谷線の若林駅から、環七通りをまっすぐ歩いていくと、青いタイルのマンションが見えてきた。ここの2階が、自立の家のオフィス。

jiritsunoie02 オフィスに入ると、訪問介助を担うヘルプ事業部ではたらいている添田(そえだ)さんが、出迎えてくれた。

「利用者さんからの派遣希望とヘルパーさんの予定を照らしあわせて、シフトの調整をします。また、請求書類のチェックをしたり、ケース会議やヘルパーさんとのコミュニケーションなども私たち職員の仕事です。利用者さんのお宅で介助をすることも、もちろんあります。」

jiritsunoie03 「ここを使っていただいている利用者さんから、来る日数を増やしてほしいなど、依頼を多くいただいています。いまはヘルパーさんたちとやりくりしたり、私たち職員がカバーしていますが、新しい仲間が必要だなって。」

自立の家では、男性の利用者さん宅へは男性ヘルパー、女性の利用者さん宅には女性ヘルパーを派遣する同性介助を行っている。現在は、男性ヘルパーが30人はたらいているのに対して、女性ヘルパーはその半分。

オフィスを見渡してみると、訪問介助に出ていることもあるけれど、人が少ないことに気づく。特に、ヘルプ事業部の女性職員は2人しかおらず、女性が足りていない状況なのだそうだ。

jiritsunoie04 添田さんはいつからここで働いているんですか。

「2010年の7月に入社しました。中学生のときに、自閉症の子を対象にしたイルカのセラピーがあるのを知って。そのことがキッカケで福祉に興味をもつようになって、大学時代に資格を取りました。しばらくは医療事務として病院の受付ではたらきました。でも、やっぱり障がいのある方と直接関わる仕事をしたいと思い、偶然見つけた自立の家に転職しました。」

実際に直接かかわってみて、どうでしたか。

「大変なこともありますし、『自分がどう対応をしていたらよかったのだろうか』と、悩む事もあります。でも、楽しい思い出の方が多いです。これからも一緒に成長していきながら、関わっていけたらなと思っています。」

一緒に成長していきながら、かかわっていく。

「仕事をしていく中で、自分の存在が利用者さんの人生の一部分に入り込んでいると実感した瞬間がありました。自分が発する言葉や行動が、相手に影響を与えてしまうことがあると思いますので、嬉しく感じると同時に、責任のある仕事だと再認識しました。様々な利用者さんと接していて、とても素直な人が多いなあと感じています。だからこそ、自分の行うことに気をつけないと。」

「できることが1つでも増えてほしいという想いが、親御さんにはすごくあると思うのです。自分がいなくなったあと、どうしていくのか不安もあると思います。どういうふうに援助を工夫したら、自立していけるのかを真剣に考えて接しないといけない。」

 
自分の介助方法に悩んだり、相手の思いを上手く汲み取ることができなかったら、職員やヘルパー同士で共有することを大事にしているそうだ。

「体調の変化やご本人の状況を知っていたら、お伺いしたときのこちらの心構えや対応を変えることができます。人と人とのかかわり合いの仕事なのでお互いにストレスがたまっても、それが当たり前だと考えるようにしてます。相性やその日の気分というのはあって当然ですし、ちょっとしたことで落ち込んでいたらヘルパーはつとまらないかな。」

jiritsunoie08 どんな1日を過ごしているのか、もう1人の職員である柿沼(かきぬま)さんに教えてもらった。柿沼さんは「まわりのヘルパーの友達から介助の仕事が楽しいという話をたくさん聞いていました。人と接する仕事がもともと好きだったので、まずは自分もやってみたいな」と、この業界にとびこんだそう。

「利用者さんの予定によって、勤務時間は毎日バラバラです。夕方や夜に訪問する日もあれば、場合によっては泊まりがある日も。10時から18時までひたすら事務作業をする日もあります。」

職員は事務作業と介助が半々くらいだけど、ヘルパーには事務作業はなく、利用者さんのお宅への直行直帰が基本。子どもがいるヘルパーは、土日や夜の時間帯はなかなか動けないため、みんなでやりくりしているという。

 
柿沼さんは、この日は朝から夕方まで訪問介助が入っていた。利用者さんのお宅へは、自転車で向かう。

jiritsunoie05 いろいろな方のお宅を訪問する上で、大切にされていることはありますか。

「ご本人にもご家族にも、当たり前ですが配慮は必要です。この家事のやりかたは非効率じゃないかなと思っても、それは、それぞれのご家庭でこれまでつくりあげてきたものだと私は考えています。健康に影響がでそうなことについては『もっとこうしたほうがいいかもしれませんね』とお伝えすることはありますが、その人それぞれの生活スタイルや考え方を簡単に否定するべきではないと思いますし、相手のやりかたを尊重したいと思いますね。」

自立の家を利用している方は、年齢も18歳から74歳までと幅広い。障がいの程度もそれぞれ違う。家事を手伝うこともあれば、外出につきそうこともある。

「希望があれば、24時間365日サポートをする」ことをうたっているので、時間外に個人の携帯電話へ連絡が来ることも。家族が理解を示してくれていることも、大事だそうだ。

「大変なこともあるけど、利用者さんの望んでいることにできるだけこたえたいっていう気持ちのスタッフが多いので」とほほえむ。

 
この写真は、一緒に外出したときのもの。

jiritsunoie06 「ヘルパーさんと一緒だから成長していける部分もあるかなと、かかわっていて感じることもあります。親御さんだと、どうしてもいろいろやってあげたくなってしまうでしょうから。わたしたちヘルパーがやったほうがはやく終わるような家事や洋服のきがえも、ちゃんと待つ。くりかえしていけば、少しずつでもできることが増えていきますから。」

「あと、仕草や表情を見ながら相手の気持ちを察していくことが大事ですね。自分のもやもやした気持ちとか、何がしたいかをうまく表現できない方たちも多いので。サインを見逃さないようにする。」

相手のペースにあわせることや気持ちを察していくことは、簡単そうに聞こえるけれどなかなか難しいことだと思う。最初は慣れるのに、時間がかかるかもしれない。

「はじめて新規利用者さんのお宅に行くときは、慣れるまで職員が何度でも同行するようにしています。初日からひとりで行かせるような事業所もあるようなのですけど、やっぱりそれだとお互いに不安ですよね。ヘルパーさんも利用者さんも、双方が安心して、いいスタートがきれるようにしていきたいなと。」

 
介助が終わったら、オフィスに戻って事務作業だ。書類のチェックなどは実際にはたらいてみないとなかなか覚えられないけれど、現場ですぐ動けるように、介護職員初任者研修(旧:ヘルパー2級)の資格は持っているといいそう。

jiritsunoie07 「事務所の人間関係はすごくフラットで、部署や年齢に関係なく、仲がいいかな。自分の意見ははっきり伝えようという努力をそれぞれがしています。利用者さんの生活をよりよくしたいとか、事務所をもっとよくしていきたいって、みんなが共通して思っていることなので。はなしあっていかないと、変えていけないから。」

「あとは、職員とヘルパーさんに上下関係をつけないでフランクに接したりもしているし、ヘルパーさんのシフトを組むのも、都合をちゃんと考慮したり。まわりの人たちとの人間関係を、ちゃんと構築している職場だと思っています。

最後に、どういう人と一緒にはたらいていきたいかを、たずねてみた。

「やっぱり素直な人がいいかな」と、ふたりとも口をそろえる。

「親御さんも本人もいろいろな思いがあるので、それを素直に受け止められる方ですね。おかしくないかなっていう要望も、たまにあったりするんです。けれど、そこで反論するんじゃなくて、いったん飲み込んで受けいれる。自分の意見に絶対ということはないので、まずは素直に相手の意見を聞いてみることが大事ですね。」

「ここ2年くらい、ヘルプ事業部は私たち2人だけでやってきて、見落としている部分や気づけてない部分もあるかなと思うんですよ。これから来て下さる方に、『もうちょっとこうしたら』ってことがあればどんどん言って欲しいなって。」

jiritsunoie09 「人として試されている感じだよね。仕事なんだけど、あんまり仕事っていう感じがしないというか、かかわり方が深いなって。大変なこともあるけれど、それを楽しんでいくしかないかなあ。」

大変なことも多いと思うけれど、とても丁寧に関係性を築いていることがわかる、この職場。地域にこんな事業所があったら、安心して過ごせる方は多いだろうな。

自分の暮らしている地域で、福祉にかかわってみるのもいいかもしれません。

(2015/4/4 田村真菜)