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うるおいの笑顔

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さざんか会は、半世紀近くにわたって船橋に密着して歩んできた社会福祉法人です。主に知的障害者(児)が利用者となる、複数の施設の運営を中心の事業にしています。

7月には大型の新施設をオープン予定。今回、法人全体で支援員(一般スタッフ)のほか、保育士と看護師を募集します。
 
 
船橋市は、62万人が暮らす千葉県第2の都市だ。市の花は、さざんか。東京のベッドタウンとして、戦後、宅地開発が進んできた。

東京に比べ、家賃もそれほど高くはない。にんじんや小松菜の産地としても知られ、野菜などの物価も安いという生活しやすい土地だ。

DSC_0854 1954年、この市に住んでいる知的に障害のある子どもたち数名の親たちによって「船橋市手をつなぐ育成会」が生まれた。

効率やスピードを重視する現代社会、ともすればわが子がその片隅に追いやられてしまうかもしれない。親たちは手をつなぎあい、教育や福祉の整備を、行政や社会にうったえかけてきた。

1972年、この会を母体として、自分たちの手で社会福祉事業をしようと設立されたのが、さざんか会。育成会から出てきたニーズを、事業として次々に具体化してきた。

障害者福祉を取りまく現状にも応じて、事業は移り変わってきた。

現在は約500人が、船橋市と県内の香取郡にある合計7個所の施設や事業を利用したり、各種の福祉サービスを利用している。

スタッフの数は、総勢300名強。入所型施設、通所型施設、グループホーム、ケアホーム、児童発達支援センターなど、利用者の年齢層や障害の状況、目的などに応じてさまざまにある。

さざんか会の理事長は、宮代隆治さん。1973年に新卒で就職した。

「育成会設立当初の親御さんにとって切実だったのは、子どもが学校教育の現場から外されていたこと。それで、自分たちで施設をつくったんですね」

DSC_0844 親たちは、自分が先に他界したあとを考え、早いうちからさまざまなリクエストを用意したという。

「育成会の親御さんたちが情報交換したり、逆境にあったら励ましあったりする姿を見てきました。『ピア』と言いますけど、自分の境遇がわかっている間柄という強いつながりですよね」

「子どもが成長していく過程で違ってくるニーズに応じていきたい、安心してこの街で暮らしていくためのお手伝いをしたいという思いでした。私自身は親ではなく、学校を出たばかりだったんですが、いろいろな施設に従事して多くのことを学んできました」

宮代さんは、うまくユーモアを会話に挟んでくる人だ。

「私がこの世界に入ると言ったときにね、亡くなったお袋は『そりゃおまえ、立派な仕事だよ。でも、よりによっておまえが任されなくたってね……無事につとまるのかい?』と心配されましたよ。いまでも、自分でそう思うことがあります(笑)」

もちまえの明るさを失わずに40年、仕事してきた。

「知的な障害は3歳〜5歳の検査で診断されます。わが子に障害があるとわかった親御さんの多くは、初めはショックでどん底にたたき落とされるものです。子どもの手をしっかり握ったお母さんが、思いつめた顔をして私たちの施設を訪れたとき、どんな表情をして迎えいれるか。こちらの態度をとても敏感に感じとられます」

仕事の原体験は、こんなところにあるのだろう。具体的なシーンを思い浮かべるように、宮代さんは続ける。

「嘘はいけないけれど、なるべく明るい笑顔をみせようと私は思ったんです。すると、お母さんの表情が少しずつほどけてくる。親の世界がどんどん開かれていくと、子どもだって明るくなってきます」

若い日の宮代さんは、利用者の親からこんな言葉をもらったという。

「この子のおかげで深い人生を歩まさせてもらっている、人と人のつながりがこんな深いものだと思わなかった、この子には見えないところをたくさん見せてもらった。そうおっしゃったんです」

「私のほうも気づかないうちに、考えかたや価値観など、いろんなものを日々もらっているんでしょうね。自分にとって、これはいい仕事なんだと思いました」
 
 
実際の施設を案内してもらった。船橋市の北部にある「ゆたか福祉苑」まで、施設長の中川公二さんの運転で向かう。

ここは通所型の施設で、生活介護事業と、身体障害と重複している利用者を対象とした多機能事業を展開している。定員は合わせて80名だ。

DSC_0784 最寄り駅から路線バスもあるが、スタッフの大半は自家用車かバイクで通勤する。利用者の送迎バスが出発するのは朝8時40分。

9時半から10時に利用者が到着した後、午前中に散歩や室内での活動を行う。昼食後に午後の活動をしたあと、夕方前には送迎バスが出る。土日はお休みだ。

近年は在宅医療が発達し、こうした通所型の施設での医療ケアが重くなっている傾向がある。ゆたか福祉苑に看護師が置かれているのもそのためだ。進行性の身体障害をもっている利用者もいる。

副施設長の尾村 勉さんは18年前に専門学校を卒業してから、最初はパート職員でゆたか福祉苑へ。1年ほど経ったところで常勤職に誘われて、以来ここで働いている。

DSC_0786 「僕の場合、自分はデスクワークが得意でないと思ったから、利用者との触れあいでコミュニケーションをとる仕事があるんだと知って、ここでの就職を希望したんです」

最寄り駅から離れていてアクセスが不便な半面、自然が豊かでホッとする環境だ。

「夏はそれなりに暑いですが(笑)、雰囲気は避暑地のようですよ」

毎日通う利用者と、週に何回か来る利用者がいる。平均75〜80名の人が利用している。

DSC_0833 「ここで提供する事業は『生活介護』です。就労を支援する施設ではありませんから、利用者の心が充実して、うるおってもらうことが目的です。そのため、職員たちは利用者ごとの個別のペースを大切にするよう、つとめています」

個別のペースとは、利用者の個性と言いかえられるものだ。

「目の前の人を大事にする、尊重するというのが、ここの職員の基本ですね。利用者の方に押しつけがないよう、注意します」

職員は33人。4つの班にわかれたリーダーの下に活動チーフがいて、支援者と呼ばれる職員が5〜7人つく。

「職員にはいろんな年齢層の方がいて、子育てを終えたくらいの女性もいます。ここでの仕事を希望される理由はさまざまですが、意地悪な人はまず来ないですよ」
 
 
花島悠希さんは、3月からボランティアで働いたあと、4月に支援員として就職したばかり。26名の利用者を支援する「あじさい班」の担当になった。

DSC_0801 クッキーづくりや清掃、マッサージなどの共同作業の多い班だ。

高校を卒業してから1年間、福祉の勉強をした。そのあいだに障害児施設、成人の通園施設でのボランティアを経験している。

「学校の先生からこちらの法人を紹介してもらったのでうかがったところ、とても素敵なところだったので『私も入りたいな』と思って、採用面接を受けたんです」

どんなところを素敵だと感じましたか?

「職員の方がみなさん明るくて、本当にやさしいところです。わからないことがあったらいつでも聞いてね、と。いまも仕事もていねいに教えていただけますし、新人にはありがたいですね」

仕事で大変なのはどんな場面でしょうか。

「利用者さんは、着替えの順番だったり、お手洗いの順番だったり、朝に登苑されてから班へ行くまでの流れがあります。一人ひとりのペースがあるので、自分の班だけでも全員のことを把握するのは大変です。利用者さんの気もちにあわせて動くというのは、まだまだです。」

DSC_0803 その人の立場に立って考える。決まった時間割のようなものはないから、支援員が自分でやることを毎日考えて、決めなくてはいけない。

でも、笑いのたえない職場だ。自然体でみんな表情がやわらかい。

「支援員が明るくすごしていれば、利用者さんも喜んでくれますから、私も毎日、笑顔でいたいと思います」
 
 
もう一人紹介したいのが、同じく4月に採用された支援員で「もも班」担当の稲葉陽祐さん。

DSC_0815 「学校を卒業してから、いったんは違う道へ進んだのですが、そのうち自分の父親もしていた福祉関係の仕事に就こうと考えました」

午前中は散歩、買い出しのほか、クルマで外出するようなイベントも。午後はカレンダーづくり、ダンスといった活動を行っている。

職員のほとんどがウェストポーチを身につけている。この中味はなんだろう。

DSC_0836 「メモ帳と筆記用具が入っています。てんかん発作がある利用者さんなどは、時間の記録をとる必要があるんです。それから、消毒液なども入っていますね」

利用者に応じて、1つひとつの介助をていねいにする。今後、班の体制が整ってきたら、個別外出の計画を立てるというのが班の目標だ。

DSC_0809 船橋市の人口は徐々に増えている。この日の移動もしばしば渋滞に見まわれた。

障害者福祉に充てられる市の予算は十分に組まれているが、施設の質も量も十分とは言えないと、施設長の中川さんは語った。

帰りに、この7月のオープンを目指して建設が進んでいる施設に立ち寄った。児童発達支援センターの「さざんかキッズ」だ。

DSC_0860 ここでは、知的な障害をもった児童(60名)と、肢体に障害をもった児童(20名)を対象に、主に3〜5歳の80名を利用者として受け入れる予定だという。

「さざんか会の出発点は、障害児童の療育体制を整えることでした。最近になって親御さんの要望に応じるかたちで、ふたたび児童に向けた施設の運営を始めたところです」

と理事長の宮代さん。今回採用された人は、さざんか会が運営するいずれかの施設で勤務することになるが、こうした新しい施設へ配属されることもあるだろう。

募集する職種は3種類。これまでのキャリアや資格、経験の有無、本人の希望などから、最適な施設がマッチングされる予定です。

ゆたか福祉苑の施設長、中川さんの言葉が印象的でした。

「障害というのは、その人がもっている個性の1つだと思います。だから、その個性を悲しいとか、不憫(ふびん)だと思うことは、私はないんですよ」

(2015/6/10 神吉弘邦)