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伝える仕事、つながる縁

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

どんな仕事でも、最初は未経験からはじめる。

もしかしたら自分がやりたいことではないかもしれない。それでも目の前の人に応えていくと、いい関係がうまれて、気がつくと自分がやりたかったことができているようなこともある。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 今回お会いした飯島さんも、目の前にある仕事に応えていたら、いつの間にか憧れていた肩書きを手にいれたような方でした。

飯島さんの率いる株式会社アイデアパンチは、ウェブ製作を中心に行う広告製作会社。今回はここでデザイナーと企画編集に関わる人、そしてアシスタントからはじめる製作ディレクターとして働く人を募集しています。

ウェブサイトを見ると、レシピサイトなどの実績が並んでいてなんだかたのしそう。けれど「大変さが外に出ないので、勘違いしてくる人が多く採用につながらないんです」というところから、取材に向かうことになった。


東京・表参道の駅を出て、青山学院大学の裏にある住宅街を歩く。ふと見上げると、窓にアイデアパンチのタペストリーが掲げられた窓を見つけた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA まずは代表の飯島さんに話を伺う。とてもはっきりとした口調で、話しているだけで元気になるような方。

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「夢とか、やりたいこととかが特になくって。勧められるがまま、地元の札幌にあるデザインの専門学校に入ったんですよね」

目標を立ててバリバリとやってきた方かと勝手に想像していたので、少し意外だった。

「つくることに、あんまりこだわりもなくて。けれどカナダの学校との交換留学制度があることを知ったときに、自分から『行きたい!』って手を挙げたんですよ」

半年間を過ごしたカナダでも、デザインの才能は開花しなかったそう。けれど今振り返ると、その時期に人とコミュニケーションをとることのおもしろさに気がついたそうだ。


帰国したのは専門学校を卒業する直前。あわてて就職活動をして、入ったのは製作プロダクションだった。

「企画の仕事がやりたくて。当時はそんな職種があるのかもわからなかったけれど『将来は考える仕事をしたいです!』って言ったんです。そしたらデザイナーではなくて製作ディレクターのアシスタントとして雇ってもらうことになって」

製作物の配送明細をつくって運送会社と交渉をしたり、見本を運んだり。アシスタントとして小間使いのような役割が多かった。その中で、少しずつできることも増えていった。

「デザインを中心にやっていた先輩のもとで働きました。そうしたら先輩の業務外の仕事があれば駆り出されるようになったんです。たとえばノベルティーをつくったり、イベント会場でお客様を誘導したり、キャンペーンの抽選をやったり。『お〜い飯島!』って呼ばれて、とにかく『はい!わかりました!』って言う、という感じで(笑)」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 4年ほど必死に働いて、気がつくと売上もちゃんとついてくるようになっていた。

「その割に給料は上がらないし、あとから入ってきた男性の後輩のほうがいい仕事に抜擢されたりして。お前は女だから仕方ないよ、って言われるのが普通にある時代だったんですよ」

仕事に疲れ果てたこともあり、会社をやめることになった。次にやることも決まっていなかったけれど、ある野望が生まれてきていたそうだ。

「いいプランを思いついても、東京にある本社で通らないからとボツになることが多かったんです。おもしろい仕事をするのには東京だなって。働く方法を考えて、東京に本社がある縁のあった交通広告をあつかう会社に入りました」


前職のつながりのある人から仕事をもらったりして交通広告以外の仕事をつくり、あっと言う前に予算を達成した。優秀な新人として表彰をされるに至たり、2年ほどたったころに、本社への異動希望を提出。1年後には念願の東京進出を果たした。

「こっちでもプロモーションのお手伝いをしていました。けれど数字に追われて。会社の業績も悪かったし、電話帳をみながらのテレアポをやらされて。30のときに辞めました」

その後はクリエイティブ人材専門の紹介会社やウェブの製作会社で働いた。

出来レースのコンペ、個人の成績へのねたみ、人がどんどんやめていく組織、グループ会社だから発注をしなくてはいけないという仕組み、せっかく受注した仕事なのにデザイナーに煙たがられる…などなど、広告製作の業界で起きそうなトラブルを一通り経験してきた。

まるでネタのように笑いながらを話してくれたけれど、きっとその都度、とても苦労と努力があったんだと思う。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「そのころに父を亡くしました。定年退職してすぐ病気になって。そんな父を見ていて、会社の都合に合わせて自分が我慢をすることが、とてつもなく無駄なことに思えてきたんです」

仕事を辞めて次はどうしたものかと考えていたころ、昔ながらの知り合いに「会社をつくれ」と言われた。

「どうせやるなら」と思い、起業したのがアイデアパンチ。

「縁のあったお客さんとは連絡が続くことが多くて。久しぶりに連絡をもらったときに、会社つくりましたって言うと、お祝いに仕事を依頼してくれて。そんなふうにしてチャンスをもらいながらやってきました」

もちろん、仕事で成果が出ているからということもあるだろうけれど、本当に人との関係をつないでいくのが得意な人なんだと思う。

仕事をお願いするデザイナーやプログラマーとも、関係が続くことが多い。

「空けてくれた時間にがっちり合うように進行管理するから、ここは3回直しがきてもすぐ対応してね、とか。お互いがやりやすい、あうんの呼吸で仕事が進んで行くことも多いです」


飯島流の進め方が確立されていく中で課題もうまれた。

それはスタッフ全員がまったく同じようにできるわけではないということ。

「わたしと同じように交渉できるかというとそういうわけじゃないですよね。10年、20年先を考えると、仕事のトレンドも変わっていく。そのなかで、ひとつのやり方に頼って仕事をしていくのは危ういとは思っています」

そこで今回募集するうちの1つが、はじめて自社内に抱えるデザイナー。

「デザインはつくり手によってまったく変わってくるので、いろいろな人たちと協力してやっていくのがいいと思ってきたんです。もちろんこれからも外注さんと仕事は続いていきます。けれどいつでも均一のクオリティを保つことも、お客さんに信頼してもらうために大切だと思うようになりました」

依頼されるウェブデザインの仕事の傾向が変わってきたことも、きっかけになったそうだ。

「見た目のきれいさだけではなくて、そこでお客さんとユーザーがどうやってコミュニケーションをとるかを考えることが増えてきて。ぜんぜん違う依頼でも、考えることは同じだったりするんです。それぞれの案件を別々のデザイナーに依頼するのではなくて、社内で蓄積していくことの必要性を感じることも増えてきたんですよね」

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デザイナーは最低限、フォトショップやイラストレーターなどのソフトは使える必要がある。企画編集やアシスタントに関しては、社会人としての経験があれば特にスキルを求めるわけではないそう。

「お客さんから依頼されたことがきっかけでその都度仕事が生まれる商売です。コミュニケーションのとりかたも相手によって変わることなので、経験がなくてもやる気と興味があって、なにかこう、一山当ててやろう!っていうくらいの人にジョインしてもらうのがいいだろうな」

未経験で入る人は、どんなことに苦労することになるだろう。

まずは何からはじめていいものかわからないだろうし、デザイナーやプログラマーにクライアントの意図を説明して、オーダー通りのものをつくってもらうことも簡単ではない。

やっていることを見るとたのしそうだけれど、自分がしっかり考えて取り組まないと、周りに迷惑をかけてしまう仕事だと思う。

「もう一歩踏み込んで言いなさい、ってアドバイスすることも多いですね。言うだけじゃなくて、相手にちゃんと伝えるってことをしないと、仕事になりません。経験者からしたら、耳が痛くなるほど、最初はやり方を伝えていくことになると思います」

会社の規模はずっと2、3人。すぐに辞めてしまう人もいたけれど、少しずつやり方を共有できる仲間もできてきた。


今一緒に働いているのが、渡部さんと神山さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 神山さんは入社してから3年がすぎた。デザインの専門学校に通い、就職先がなかなか決められなかったときに飯島さんに出会った。

「求人情報を見たときも、飯島にあったときも。『ここだ!』ってピンと来たんですよね。なぜかと言われると、今でもよくわからないのですが」

経験もなく、なにもわからずに入社をしたが、飯島さんの元でさまざまな仕事をしてきた。その中で得意なことを見つけていき、今はウェブマスターとして勉強しながら仕事をしているところ。

できることが増えていくのが、活力になっているそうだ。

働きはじめて変わったことはありますか。

「買い物をするときに、なぜそれを選ぶのかを意識するようになりました。その思考は人によって違うけれど、そこを分析することで、提案するコミュニケーションの方法も変わるんですよね」


渡部さんはもともと、外部スタッフとしてアイデアパンチに関わっていたけれど、3ヶ月前からスタッフになった。

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「紙媒体を中心に、ライターとしての仕事を一番長くやってきました。事務職になって少し離れた時期もあったんですが、やっぱり文字や言葉に関わる仕事がしたいなって、ふつふつと思っていたんです」

言葉が好きだったんですね。

「辛いとき、偶然見た広告のキャッチフレーズや、ふとした一言に救われることがありますよね。やっぱり言葉は大事にしたいなって思うんです」

働いてみてどうですか。

「ウェブは紙とは感覚が違うので、瞬発力が求められます。けれど書いていることはおもしろいし、この仕事ができてありがたいなって思っています。」

仕事によって波はあるけれど、残業は極力しないように協力をしているそう。

「飯島のつながりで大きな企業さんと取引をして、実績をつくってきた会社です。一緒に打ち合わせに行っても、臨機応変さや進め方など、飯島のやり方にまだまだ感心することばかりです。それを盗みたいってくらいの人がくると、いいかもしれないですね」


アイデアパンチのメインの事業が、大手メーカーのレシピサイトの運営。メーカーの商品をつかったレシピの考案、撮影、掲載までをもう10年も担っている。

ideapunch - 1 (3) 最初に話があったときには、アイデアパンチ自体にそのノウハウがあったわけではなかったけれど、カメラマンやフードコーディネーターを見つけてどうにか形にするところからスタートしたそうだ。

「長くやっていると、担当者よりもわたしたちのほうが知っていることが増えてきます。パートナーとしていい関係をつくりながら運営できていますが、いつなにが起きるかはわからない。わたしたちだから出来ることを提案するよう心がけています」


取材のあと、一緒に京都土産のラスクをいただいた。

それぞれの味の感想を楽しそうに話していたけれど、ところどころで交わされる言葉に、レシピサイトを運営するプロの姿が垣間見れた気がした。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA はじめは「飯島流」に戸惑うこともあるかもしれません。けれど根気よく、ちゃんと教えてくれると思う。それに縁をつなげていく飯島さんの働き方から学べることはたくさんあるはず。

いつの間にか「考える仕事」のプロになっていた飯島さんのもと、アットホームなチームで一緒に働いてみませんか。

(2015/8/25 中嶋希実)