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面倒くさいことをしよう

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「服って、ただ着られればいいものじゃないですよね。今日の服は、今日の私の印象そのもの。喋らなくても、こんな人だろうなというのは服でわかってしまうんです。とても良い靴を大事に履いているな、とかね。そういう、見る人が見ればわかるようなものを、お客さんに提供したいなって」

そんな言葉に、自分の服はどうだろうと、どきりとした。

okada01 ヨーロッパを中心に、国内外の靴やバッグを集めたセレクトショップ「heelandtoe」。広島市内に2軒ほど店舗があるほか、WEB通販「heelandtoe my precious pages」も全国のお客さまに人気なのだそう。

今回は、このセレクトショップを運営している株式会社おかだで、WEB通販のデザインを行うスタッフと、受注管理やお客様対応を担当するスタッフを、募集します。

 
広島駅から路面電車に乗って、広島の中心エリアへ。県庁や原爆ドームにも歩いていける場所に、店舗とオフィスを構えている。

オフィスに入ると、スタッフのみなさんが仕事の手をとめて、「こんにちは」と立って挨拶をしてくれた。今は、12人ほどで働いているそう。

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まずは、代表である岡田(おかだ)さんの話を聞いてみる。

「この会社は、僕で3代目。もともと昔は下駄や草履の卸問屋をやっていたんですが、時代の流れとともにアイテムを変えて、靴を売るようになったんです。そのうち、レザー関連ということで鞄や雑貨も扱うようになり、WEB通販をはじめて今の形に近くなったのが16年前ですね」

okada03 「ファッションなのでもちろん流行はありますけど、いわゆる流行っている商品は、うちでは扱っていないんです。ヨーロッパの人たちが思い描くような、ナチュラルでかっこいいスタイルが僕たちの好きなもの。トレンドというよりも、革や天然素材の質感を大事にしていますね」

自分たちの好きな質感をお客さまに届けるために、商品の7割はオリジナル。商品の価値を下げるのは嫌だからと、セールはまったくしない。

「セールをしないのは、デザイナーさんや職人さんたちからもよく褒めてもらっています。価格で勝負するんじゃなくて、いい商品を届けたい。できるだけ他社と差別化していきたいですし、職人さんたちとコミュニケーションを取ってちゃんとおつきあいしながら、よりうちらしいものを提供してもらっています」

okada04 そういった姿勢に共感を示してくれるのは、30代のお客さまが多いのだそう。リピーターの方が多いのが特徴で、国内だけでなく海外からも注文が入ることもある。

「いまは、日本のものづくりがやっぱり衰退しているじゃないですか。うちは、きちんと良い物を伝えて残していきたい。職人さんたちが頑張ってつくっている日本製品を、日本の生活の息づかいを感じられるような物語と一緒に海外に紹介していくような事にもトライしたいんです」

話を聞いていると、扱っている商品や職人さんたちが、とても好きなことがわかる。

「仕事として割り切ってはたらくのじゃ、続かない。退社時間がきたからタイムカードを押して帰るとか、時間を売るような仕事とは少し違うと思うんです。うちの商品が好きだなとか、自分がこの服を着てみたいなとか、そういう感じでないと」

 
サイトの立ち上げ当初から、商品のバイイングや通販ページの作成、お客様対応までを一貫して担当してきたという、岡田扶美子(おかだふみこ)さんにも話を聞いてみた。

okada05 「私は、リアルの店舗での販売歴が長いんです。WEBが登場したときも、ネットでモノを売るなんて無理だと思った。けれど、やってみたら一緒だったんですよ。商品ページは接客で説明するのと同じようにつくればいいし、電話やメールでコミュニケーションをとることもできる。店舗と同じように、お客様の笑顔を想像しながらやればいいだけだったんですね」

heelandtoeでは、そうした丁寧なやりとりにずっとこだわりを持ってきたそう。
「注文があったら、お客様の過去の購入履歴を一件一件すべて見ているんです。前回と今回とで、靴のサイズが違ったら、大丈夫か連絡してみる。この靴だったらこのサイズじゃないほうがいいときは、アドバイスする」

「そういうのをやらなくなったら、仕事は早く終わるし働くスタッフはラクになるかもしれない。でも、ちゃんと相手に合うようにうちの靴を届けたい。そのほうが、割引するよりもずっとサービスだと思うんです」

okada06 そうして続けてきたWEB通販は、サイトのアクセス数は全く見ていないし、SEO対策などもやったことがないという。ただ、サイトを立ち上げてから16年の間、ブログを1日も休まずに毎日更新し続けている。

「検索で上に表示されるようにSEO対策するとかは、すごく古い時代のネットのあり方だと思っているんです。相手とコミュニケーションをちゃんととるっていうのが、これからの時代は当たり前になってくる。ブログは、誰もやってなかったときから、毎日淡々とずっと続けてきていますし、新商品も毎日1~3品番を定休日を含めて365日紹介し続けています」

「うちは、あえて売れ筋商品をやめたりする事が多いです。トレンドはやらない。売れ筋じゃない物を集めて、それを売れ筋にしていくのが楽しいんですよね。無名なブランドだったとしても、いいものをつくっていれば有名になる。商品のバイイングは、パリをはじめ世界中の展示会に行っているんですが、自分の目で見て選べるのはすごく面白いですよ」

okada07 バイヤーとして商品を選ぶときの基準は「本物かどうか」。

「うちの靴は、安くないと言われれば、安くないかもしれません。けれど私から見れば、その作りと素材の靴だったら3,000円は高いなあと思うこともあるし、私がいま履いている靴は10年後には良い革に育つので、結局コスパが良いと思ってます。本物のほうが、もとが取れると思うんですよ」

「今度、革の勉強会も始めるんです。革は必ず朽ちるので土にかえっていく。接着剤でペタペタ貼り付けた合成皮革よりも、本物の革の方が健康的だなって。本当のナチュラルっていうのは、ふんわりしたシルエットの服を指すのではなくて、素材が本物ってことじゃないのかな」

 
受注対応を担いながら、商品企画やバイイングも手掛けているという、谷口(たにぐち)さんにお話を聞いてみる。

okada08 「もともと、お客さんとしてheelandtoeの店舗で買い物をしていたんです。6年前に、店舗スタッフとして働くようになって、今は通販を担当するようになりました」
お客さまがどういった人たちか、肌感覚でつかんだり、商品に対する反応を直接見ることができたため、店舗での経験は役に立っているそう。今回新しく入るスタッフも、最初は店舗で研修をすることになる。

「私たちは、自分たちで商品をつくるわけではなくて、つくったひとのものを伝えるのが仕事。だから、この人がどういう気持ちでつくったのか、どこにどうこだわったのかを正確にちゃんと伝えたいんです。作家さんは口ベタな人が多いんで、何度もしつこく話を聞きますね。お客さまにも『こうやって着こなすと良いよ』と自信を持って伝えたいですから」

okada09 そんな谷口さんの1日は、まずは受注の確認から始まる。午前中は検品や配送作業を行い、午後は商品の企画や研究を行う。商品ページの撮影を行ったり、実際にサンプルや新商品を着てみて、着心地を確かめることもある。

「通販だからこそ、商品の質感や着たときにどんな感じになるか丁寧に伝えたいんです。通販で購入してくださったお客さまが、広島の店舗に遊びに来てくれたりすることもあって、そういう瞬間はうれしいですね」

「お客さまが職人さんたちと直接お話しできるような機会も増やしているんです。ファストファッションも流行っているし、職人さんの世界は本当に大変。そういう中でどういう想いでやっているかを直接伝えてほしくって。以前行った、バイヤーの仕事を体験してみるイベントをやったんですが、6名の定員に2000人のお客さまから応募があったんですよ」

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扶美子さんに、改めてどんな人と働きたいかを聞いてみる。

「今やっているようなことを『面倒くさいなあ』と思う人は、一緒に働けないかもしれませんね。私たちは、これよりもっともっと面倒くさい事をやっていきたいから。よりコミュニケーションがとれる受注のやり方はないかなとか。一緒になって考えてくれる人と、働きたいんです」

商品ページのデザインや受注対応が仕事だけれど、特別なテクニックが必要なわけじゃないと、扶美子さんは話す。

「私もWEBについて全く知らなかったし、ど素人ですよ。でも、好きっていう思いがあればできる仕事だと思います。好きという想いがないのにテクニックで上手に見せても、お客さまには全然伝わらないと思う。heelandtoeに愛情と根性を持ってくれて、ここを一緒につくっていってやろうって思える人が、いいですね」
「さっきもお客さまと長電話していたんですけど、この商品を着てみたらこうだったよとか、感想がいっぱい届くんです。なかには、お菓子やケーキを送ってくださる方もいる。WEB通販だけれど、やっぱりこの仕事はひと対ひとなんです。だから、仕事に愛情がないと」

okada11 マニュアル通りのお客様対応をしたい人、決められた時間だけ働きたい人には、ここはとても大変な職場だ。ひとりひとりとちゃんとやりとりしていく通販。面倒くさい部分も、きっと想像以上に多いだろう。

でも、『もっと生地について知るために勉強会やイベントを企画してみたい』『すぐには出来ないだろうけど、いずれはバイヤーの仕事にも挑戦してみたい』……そんなふうに自分からやりたいことを見つけていける人にとっては、またとない環境だと思う。

丁寧なコミュニケーションには手間がかかることを知っている。その上で、お客さまや職人さんと、息づかいが感じあえるような仕事をしてみたい人。そんな人は、ぜひ問い合わせてみてください。

(2015/9/8 田村真菜)