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長くて厳しい知床の冬。岬にはオホーツク海を旅した流氷がせまり、雪で覆われた神々しい山は、ときに自然への畏れさえ感じさせる。待ちに待った春が訪れると、ハマナスの開花とともにどっと観光客がやってくる。知床がにぎわう季節のはじまりだ。
訪れたのは知床半島・ウトロ。
知床グランドホテル北こぶしは、北海道は知床半島の先「ウトロの町」とともに生きてきました。
知床が世界自然遺産になって10年。いまでは国内外問わず観光客が集まるようになったこの町で、ホテルマンとして成長したいスタッフを探しています。
フロント、食事のサービス係、ホテルの評価を左右するという調理師、全体をマネジメントする幹部スタッフまで。ホテル経験は問わず募集職種はさまざまです。
はじめにお伝えしておくと、このホテルの仕事は決して華やかなものではありません。あらゆる点で知床の一番を目指すために、毎日地道に、お客さんの1日に寄り添って最高のサービスを提供しつづけています。
そんな北こぶしの取材をしながら感じたのは、静かに流れるあたたかい空気。
ふらっとは行けない土地で、毎日おなじ苦労や喜びを分かち合うスタッフのあいだには、生活を共にする家族のような雰囲気があるように思いました。
まだまだ雪の残る3月末。
女満別空港からホテルの送迎車に乗り込み、街中からひたすら知床岬へ進む。流氷のかけらが浮かぶオホーツク海沿いの2時間はあっという間で、いつのまにか静かなウトロ町に到着した。
自然遺産の地とはいえ、道も整備されてコンビニや飲食店もある。ウトロから先は11月から5月の頭までは雪のため通行禁止になっていて、いわゆる遺産のなかに入ることはできなかった。雪をかぶるネイチャーガイドの看板が静かに夏を待っているよう。
ふと道沿いに現れたのが北こぶし。今回は知床にいくつかある北こぶしグループの中の、”グランドホテル”にお邪魔した。
高級感のあるロビーではスタッフの方たちが笑顔でお客さんを迎えていた。おしぼりを配ったり、子どもたちに優しく声をかけているスタッフもいる。
オホーツク海を望むラウンジでお話してくれたのは、専務取締役の桑島大介さん。
創業者である故会長のお孫さん。次期社長にあたる方です。
四国から知床に入植した桑島家が「桑島旅館」を開業したのは、今から56年前のこと。知床初の旅館だった。
たった5室からはじまった桑島旅館は、増改築を繰りかえし、今やグランドホテルは180室以上。売り上げはウトロ一のリゾートホテルになっている。すぐ近くには系列の”プリンスホテル風なみ季”もあるとのこと。
「知床は普通のリゾート地とは考え方がまったく違いますよ」
「夏場は稼げるけど、冬場はずっと赤字です。夏はあまりにもお客様が多くて職員に迷惑をかけたりすることもある。でもここで稼げないと一年間生きていけないんです」
世界遺産の森に入ることができない冬場は観光客が減ってしまう。ハイシーズンの夏場は冬の6倍の宿泊客数の年もあるくらい、集客数のバランスが悪い。
ここは、売り上げやスタッフ数の調整などの面でも、とにかく経営が難しい土地。
大介さんが知床に帰ってきて13年。その間に知床は世界遺産に登録され、観光地としてより整備されてきた。今ではホテルに長く滞在するというより、ホテルを拠点に外に出て行く観光客ばかりだ。
「お客さんは観光を目的に知床へ来ていて、ホテルが目的ではありません。選んでもらうのに何が必要かといったら建物、ホスピタリティ、料理。それを強めていかないと」
リゾート地に必要なのはサービスや料理などホスピタリティの基本の部分。この基本を担ってくれるスタッフを探している。
ホテルの基本を大事にしながら、脈々と受け継いできた大事なこともきっとあると思う。
桑島家が長年ホテルをやってきて変わらないところはありますか?
「企業でありながら家業。職員を大切にしようというのは会長から父である社長に引き継がれていて。そういう空気を僕も大切にしたいと思っています」
企業でありながら家業。
「できるだけ声をかけて、一人ひとりの顔色や感情を見るようにしています。体調が悪いスタッフがいたら部長が車を出して病院に連れて行ったりね。普通の企業じゃ上司が病院に付き添うってありえないと思うんですけど」
「スタッフには遠くから来てもらっていて、お預かりしている身ですから」
北こぶしのスタッフほとんどがホテルから徒歩圏の寮で生活をしている。この土地にやって来て、リゾートホテルを成り立たせてくれる人材をちゃんと大切にしたいと大介さんは話していた。
北こぶしの夕食は創作ビュッフェと和食懐石の2つから選ぶことができる。取材した日はビュッフェをいただくことに。
レストランに入ると、目に飛び込んでくるいろどり鮮やかな料理たち。地場の魚介や、和洋中にとらわれない創作料理はどれも美味しそう。
オープンキッチンでは調理スタッフがお客さんに声をかけながら、揚げ物をしたりピザを焼いたり。無駄なく配置されているサービススタッフが、きびきびと配膳をしていた。
ここでご紹介したいのが木村あさひさん。
接客担当はフロント業務と食事会場業務に分かれていて、木村さんは食事会場の担当をしている。
木村さんに1日の仕事内容を教えてもらう。
「早いときは朝の6時前に出勤して朝食ブッフェの用意。お客さまを会場に案内して、配膳をします。朝食が終わったらフロント前でチェックアウトするお客さまのお見送り。落ち着いたところで長い休憩に入ります。みんなそこで寮に戻って昼寝していますね」
「夕方前には夕食会場のためにホテルに戻って、次の日の朝の用意をしたら終わりです。だいたい22時半くらいには帰ります」
丸1日中なんですね。
「そうですね。でも、昼と夜を合わせたら結構寝れますし、リゾートホテルってこういうものですから」
ほかにも、チェックインしたお客さんを部屋まで案内することもあるそう。スタッフ数が限られるなかで効率よく運営していくには完全分業はありえない。
休日になると、木村さんはシフトの合った人と車に乗り合わせて、買い物や遊びに出かけることもある。
「スタッフみんなウトロに友達なんてほとんどいませんから。同僚とは部署とか年齢関係なく、ご飯や遊びに行ったりします」
北こぶしのお休みは、夏場は月7日ほど、冬場は長期で取れる。昨年はイギリスに短期留学する人もいたそう。生活と仕事が近いから、メリハリをつけたほうがいいとのこと。
世界遺産で生活を共にしながら働くスタッフは、サバイバルする戦友のような感じなのかもしれない。そう伝えると、木村さん。
「ウトロには今は若い人もいますし、どうしようもない最果ての地のようなイメージは持たないでいいですよ(笑)」
半島のつけ根のほうに行けば買い物は事足りるし、スタッフ同士で車を出し合ったりするから、生活には困らない。スタッフさんたちは不便さも楽しみながら、自然溢れるウトロでの生活を送っているようです。
続いてお話してくれたのは、主にフロント業務を担当している佐々木晴花さん。
専門学校でホテル業を学んだ佐々木さんは、女満別空港の近く、網走出身。ウトロに来たことはほとんどなかったといいます。
ホテルなら札幌にもあると思うけれど。どうして北こぶしに?
「札幌だとホテルはたくさんあると思うんですけど、接客部分を見ると業務的というか、淡々としている気がして。こういう土地はスタッフもお客さまもあたたかい人が多いような気がしました」
「あとは、世界遺産を目当てに世界中からお客さまがいらっしゃる。国籍を問わず、いろんな方と関われるのが魅力的でした」
私が滞在している間にも、国籍や個人団体を問わずさまざまな人が出入りしているのが見えた。
北海道の端にいながら、世界とつながれる。それってとても面白いことだと思います。
フロントはホテルの顔にあたる部署だから、自分に関係のないことでもお言葉をいただくこともある。いろんな人がいるからこそのストレスも多いけれど、どうしても対処できないときは部長がフォローしてくれるとのこと。
ほかにも佐々木さんの部署の仕事は幅が広く、ラウンジにあるバーやギフトショップの運営もしている。
いきもの好きが高じてネイチャーデスクとして知床の情報を発信しているスタッフもいるのだとか。自分も出来ると思うことがあったら立候補してもいいかもしれない。
接客を希望して新しく入る人は、最初はお客さんへの挨拶からはじめることになるそう。お見送りやお出迎えで挨拶をするのは、部署や経験を問わず、できる人がやるというスタンスだ。先代からのこだわりで続いている。
そういえば一人や二人のお客さんをたくさんのスタッフでお見送りする様子は、昔の旅館の良さが垣間見えてあたたかい気持ちになる光景だった。
主な部署は決まっているとはいえ、手が必要なときは助け合う。限られた人数で効率よくまわしていくために、ここではみんなフォローし合いながらたくましく働いていた。
聞いていると、ホテルの仕事にはとても大変そうなことが多いように感じる。この仕事のやりがいって何なのだろうと思っていたら、総務部部長の石岡さんがこんな話をしてくれた。
「サービス業の最たるものがホテル業といいます。お叱りやお褒めをいただきながらやれる仕事というのは、お客さんの言葉が直接やりがいになりますよね。みんなもそうじゃないかなと思います」
ホテルの仕事はサービス業の最たるもの。
毎日知床にいて、ともに働く人たちと支え合いながら高みを目指すスタッフは、その誇りを胸に働いているのだと思う。
大変なことは多くても、「ありがとう」のひと言で復活する。その繰り返しがホテルの質を上げていくことにつながるのかもしれません。
世界遺産・知床旅行というお客さんの非日常は、スタッフたちの日常がつくっているということ。
舞台は『北の自然遺産×リゾートホテル』。ここでホテルマンとして成長をしたいと思えた人は、是非応募してみてください。
(2016/5/2 遠藤沙紀)