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洋服好きの、古着の話

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「みんなは古着だけが好きっていうより、洋服が好き。洋服のカテゴリーのひとつとして、古着が好きなんです」

これは、株式会社Focus Rag代表の河又さんの言葉です。

洋服って本当に幅が広いと思います。新品もあるし、古着もある。さらにそのなかにもいろんなジャンルがあります。世代によって好みや似合うものも変わってくるし、流行もどんどん変わる。

今回紹介するのは、そんな幅の広い洋服の魅力を知っている人におすすめしたい仕事です。

focusrag1 古着の卸売をしている株式会社Focus Ragで、バイヤーになる人を募集します。

月に3週間近くは主にアメリカに滞在して古着を仕入れ、次の1ヶ月は東京・新木場の倉庫で、小売店のオーナーの方々に買い付けてきた古着を紹介します。今回は、メンズ・レディースのバイヤーそれぞれ一人ずつの募集です。


まずはネット事業部の事務所で、代表の河又さんにお話を聞きました。

卸売に加えて、今年3月からはじめたというネット事業。ネットの販路があった方が幅広いグレードの商品を仕入れられるメリットがあるそうです。

そのほかにも国内での仕入れなど、新しいことにどんどん挑戦しているFocus Rag。最近では、アメリカ仕入れに加え、ヨーロッパにも足を伸ばしはじめている。

インタビューが苦手だと笑う河又さん。ときに笑いながらも、真面目にお話ししてくれました。

focusrag2 「当たり前だけど、自分たちの武器をしっかり発信していかないといけないと思っていて」

「たとえば同じ緑でも、ヨーロッパの緑とアメリカの緑では全然違うんです。そういう違いとかも、うちのフィルターを通せばちょっと違う紹介の仕方ができるのかなあと」

Focus Ragでは、ヴィンテージにこだわらず、流行とニーズにあった鮮度のある古着の品揃えを強みとしています。

今、古着に求められているものが、古さや希少性に加えて “今リアルに着れるもの”に変わってきているそう。

「海外に駐在をおくことも予定しています。それも、お客さんにより良い商品を用意するための一手。仕入れに関しては本当に死角がないように完璧にしていきたい。そのための仲間になってほしいです」

focusrag3 そういう新しいトライをしたい人がいれば大歓迎、と河又さん。

「独立希望の子も全然よくて、そういう子こそ入ってきてほしい。卸先には自分の好きな店もあるだろうからたくさんのことが学べるし、独立された経験もある経営者クラスの方がお客さんなので、すごく身になる話が聞けますよ」

お客様への対応も、バイヤーの大切な仕事。お客様がどんな古着を探しているのか、次はどんなものが欲しいのか、こまめな情報共有も欠かせません。

「ヴィンテージならある程度は寝かせておいても大丈夫なんですが、今僕らが扱っている商品には鮮度があるので、そういうものは情報共有していかないと、すぐに流行が変わってしまうんです」

focusrag4 「たとえば最近は、特にメンズの流れが速くて。新しい情報には常にアンテナを張って、先輩後輩関係なく共有していくこともうちの武器ですね」

日本と海外にいるバイヤーがそれぞれ連絡を取り合って、お客様が翌月どんな服を欲しているのかなど、情報共有を徹底しているそうです。それはバイヤーだけでなく、縫製、経理、そして新たにはじまったネット事業部にも言えること。

たとえば、お客様との会話から情報を得ることはもちろん「今度あのブランドはこんなの出すんだ。じゃあ今度こんなのが流行りそう」といった共有も、普段からしているそう。

お客様との会話や、社内のコミュニケーションが自然にできる人なら、スムーズに業務に入っていけると思います。

それから、普段どんな服を着ているかが、お客様へ商品をおすすめするときのプレゼン力にもつながってくる。

「大事なのは、似合っているかどうか」

「いい服だけを選んでいても全然自分のキャラと合ってないと浮いてしまう。それが古着だろうが高い服だろうが安い服だろうが、自分のキャラに合っている服を選んでいることが大事。そこで、いかに洋服を見てきて、いかに自分と向き合ってきたかがわかります」

そう話す河又さんは、いろんな古着を見てきて、シンプルなものを好むようになってきたんだとか。


Focus Ragで働いている人たちは、どんな服を着ているのだろう。

そんなことを考えながら、倉庫のある新木場に向かいます。

お話を聞いたのは、レディースバイヤーの竹村さんと、メンズバイヤーの藤原さん。おふたりとも自然体で、カジュアルな装いがとても似合っている。

まずは向かって左に座っている竹村さん。

focusrag5 以前は、古着屋さんや新品を扱うセレクトショップなどで、販売員として働いていました。バイヤーの経験はなく、どんな仕事かイメージのない状態で古着の卸の世界に入ったそう。

未経験からはじめたバイヤーの仕事について、お話を聞いてみました。

「はじめはバイヤーになって1、2ヶ月ぐらいしか経っていない私が仕入れた服を、プロが買ってくださるんです。もちろん不安ばかりでした。2年半たった今でも、買い付け先では毎回毎回不安です」

focusrag6 卸売では、買いに来るお客様ひとりひとりが自分でお店をやっているプロ。きっとプレッシャーも大きいはず。

「でもそういうときこそポジティブに、プラスに考えないといけないと思って。自分がいいと思っていないものはお客様にも紹介できないじゃないですか」

それまで自分が販売をしてきた経験があったから思うことなのかもしれない。

「卸の仕事を勧めてくださった方に言われた言葉があるんですけど、『自分の好きなものだけ買うんじゃだめだからね』って。それをいつも心において仕入れをしています。自分が着ない服とか、自分では理解できない服も買わないといけないことに、はじめはすごく苦労しました」

focusrag7 「自分がいいと思っている服だけじゃお客様には満足してもらえない。正解かどうかはお客様が決めることなので」

さまざまなジャンルの洋服を選んで買ってこなければいけないのが、卸の仕事の難しいところだと思います。

でもやっぱり仕事だから、仕入れ先でいいものが見つからなくて買えなかった、というわけにはいかない。責任も伴うので、買い付けに行った先で悩むこともあるかもしれません。

focusrag8 悩みながらも選んできた洋服は、小売店を経て誰かの手に渡り、最終的には誰かの1日に寄り添うものに。

竹村さんがとても印象的だったというエピソードをひとつ、教えてくれました。

「結婚式に、私が買い付けてきたヴィンテージのウェディングドレスを選んでくれた人がいたっていう話を聞いたんです」

「結婚式って女の子にとってすごく特別じゃないですか。新品のドレスならサイズ感も選べるし、素敵なデザインもいっぱいある。だけどその特別な日にヴィンテージのドレスを選んでくれたっていうのが、すごくうれしくって」

自分が買い付けてきた洋服が、誰かの大切な思い出をつくっている。

そのときにしか出会えない1点ものの古着だからこそ、とても奇跡的なめぐりあわせに感じます。


「人の記憶に残る服を仕入れられたらと思ってやっています」

メンズバイヤーの藤原さんも、そう語ってくれました。

focusrag9 「どうしても欲しかったヴィンテージの服は、あそこの店でようやく買えたなあとか。ノリで買ったあの服は今思うとめっちゃダサいけど、あのころはイケてると思って毎日着てたなあとか」

「そういう記憶に残る服を仕入れたいっていう想いが、漠然と自分の中にあるんです。エンドユーザーのお客さんからしてみたらお店の記憶になるんですけどね」

思い返してみると、自分にもそんな服がありました。そういう思い入れのある服は、誰にでもひとつはあるのでは。

「その人の人生にちょっと残る服を、お店が売る手伝いを出来たらなあって」

人生に残る服。

そんな洋服を仕入れて、誰かのもとへ届けることができたなら、素晴らしいことだと思います。


誰かのために洋服を仕入れているFocus Ragの人たち。彼らはいったいどんな洋服が好きなのか聞いてみると、意外と好みはバラバラ。

新しく入る人も、どんな服が好きかということについては特にこだわらないそうです。

「自分は着ない服でも、それを仕入れることが楽しいと思えるかどうかが、大事だと思います」

たとえば今はオーバーサイズが流行っているから、5XLくらいのオレンジ色のロングTシャツなどが売れるそう。

「もし僕がアメリカで仕入れしているときにそれを見つけたら、『お、かっこいいじゃん!』って思って買う。でもそれを実際に自分が着るかと言ったら、着ないんですよね。そういう尖った服は、若い子が着るからこそ意味があるものになるんです」

「逆に、ブラウンとか濃いめのオリーブ色の、ちょっと古いデザインのテーラードジャケットを若い子が着たら、おじさん臭くなって似合わないと思うんですよ」

focusrag10 自分は着ないけれど『こういう服を、こういう人が着たら素敵だろうな』と、イメージして服を選ぶことを楽しめる人は、きっと仕入れの仕事に向いていると思う。


華やかなイメージのあるバイヤーの仕事。けれど男女問わず力仕事も多いし、急に海外へ行くこともあるそうです。

最後に、どんな人に来てほしいのか聞いてみました。

「男臭い言い方かもしれないんですけど、洋服の仕事でこれから一生食べてこうっていう人にきてほしいですね」と藤原さん。

そして、代表の河又さん。

「洋服を好きという気持ちがベースにあったうえで、人のことを考えられ、人を思いやることのできる人と一緒に働きたいですね」

お話を聞いていくなかで、Focus Rag の“洋服が好きな人”ってどんな人だろうと、ずっと考えていました。

focusrag11 ここで働く人たちは、自分がどんな服を着るかだけでなく、古着にまつわるいろんなストーリーや、年代によっても違う洋服のカルチャーさえも楽しんでいる。

それを仕事だからと思わずに、自然にやっている人たちなんだと感じました。

自分もそんな洋服好きかもしれない。そう思う人は、いちばん自分らしい服を着て、河又さんたちに会いにいってください。

(2016/10/11 黒澤奏恵)