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びっくり笑顔のつくり方

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北九州空港からリムジンバスに揺られて1時間ほど。

終点の学研都市ひびきのは、新興住宅地としてゆるやかな時間が流れているまちです。

ここに、バルーンアート専門店としてイベントの装飾・演出やネットショップの運営をする、株式会社バルーンポップジャパン(以下、バルーンポップ)があります。

掲げているのは「びっくり笑顔をつくる」こと。

balloon-pop01 社員は女性お二人という小さな会社ながら、バルーンを使った事業にとどまらず、今後は教育研修事業にも取り組もうとしているところ。

会社のこれからを一緒に考え、つくっていく人を探しています。

ただの笑顔ではない、びっくり笑顔。いったいどんなふうに生み出されていくんだろう。

そんなことを考えながら、取材に向かいました。



住宅街の中に、バルーンポップがオフィスとして借りている一軒家がある。家の前には、風船がついた小さな看板が。

balloon-pop02 よく見ると、書かれていたのは私へのメッセージ。

東京からくる私のことを考えてくれたのがうれしい。着いて早々ぎゅっと心を掴まれてしまった。

笑顔で迎えてくれたのは、代表の得居さん。

まず見せてくれたのは、“チョコっとプチバルーン”というオリジナル商品です。

balloon-pop03 「起業したばかりのころ、これを名刺と一緒に渡していたんです。そしたら『どうやってチョコを風船の中に入れたの?』って会話が広がったり『素敵ね』ってよろこんでくれたりして。私もそんな相手の反応をみる楽しみがあるし、つくる楽しみもある」

「たくさんの驚きと笑顔が生まれる。これがびっくり笑顔の原点です」

さっきの看板もプチバルーンも、ただ風船を飾ること以上の関わりを生んでいる気がする。綺麗とか可愛いというだけじゃなく、あたたかな人柄を感じられたり、自然と会話につながるようなもの。

それにしても、得居さんはなぜこの仕事をはじめたんだろう。

「振り返れば小さいころからサプライズ好きだったんです。母の誕生日には、驚かせようと料理をつくって待っていました。大きな本屋さんに行ったら必ず買うのはイラストの本とマジックのキット。練習してみんなに見せるのが好きでしたね」

大学卒業後は4年間大学職員として働き、結婚を機に退職。子育て中に転機が訪れる。

「退職後、広告デザインの勉強をするために通っていた職業訓練校から、講師をやらないかとお誘いを受けました」

教えることになったのは、店頭でよく見かけるPOP広告のつくり方。

「自分が描けるかということだけでなく、人に教えるとなるとまた視点が違うので猛勉強しましたね。美大出身でもないので、独学でした」

とても大変だったけれど、知るほどにPOPの面白さに気づいていった。

普通POPは紙でつくるもの。だけど単に四角い紙でつくるのではなく、手書きのモチーフや吹き出しをつけることで、よりお客さんの注目を集めることができた。

balloon-pop04 「パネルを使って、平面ではなく半立体にするとか。工夫次第でより大きな効果を生み出せると思ったんです」

そんなときに素材として見つけたのが風船だ。

「それまで風船は、子どもが喜ぶものっていう感覚しかなかったんです。スーパーで洗剤を買ったら、おまけでもらえて子どもが喜ぶみたいな (笑)」

印象が大きく変わったのは、友人に誘われて日本バルーン協会のイベントに参加してから。

風船でつくられた人形が持つトレーにウエルカムドリンクがのせられ、床には8000個もの風船が敷きつめられていた。

balloon-pop05 「風船でこんなにお洒落なこともできるんだ、と圧倒されました」

それ以来、風船とPOPを組み合わせた販促ツールをつくるようになり、珍しさもあってもとても喜ばれたそうだ。

2000年に起業したあとも、工夫を惜しまない姿勢に全国から声がかかり活動の幅を広げてきた。

たとえば24時間テレビの企画で巨大バルーン壁画をつくったり、子どもたちへのバルーン教室や企業への出張指導もあったという。

balloon-pop06 「もちろん要望には全力で応えますが、会の目的や参加される人のことを考えて、もっとこうしてみては?と提案もしながら一緒にイベントをつくっていきます。『おぉ!さすが!』ってなるとうれしいですね」



一緒に働く渡邉さんにもお話を伺う。

昼間はバルーンポップで働きながら、夕方からは子どもたちにピアノを教える先生でもある。

balloon-pop07 「自分の子どもが幼稚園に入ったら、昼間することがなくなっちゃって。最初は近所の人とランチに行ったり遊んでいたけど、飽きてきちゃったんです」

ピアノ教室までの時間を有効活用しようと仕事を探していたときに、求人サイトでバルーンポップを見つけた。

「見た瞬間『これだ!』って。バルーンには詳しくなかったし、好きというわけでもなかったけど、夢のある仕事で楽しそうだなっていうのが最初の印象でした」

実際に働いてみてどうですか。

「最初は風船の種類を覚えるためにも、ネットショップの商品をひたすら検品していました。針の穴を探すくらい細かい作業なので、没頭しているとあっという間に時間が経つんです」

balloon-pop08 「私はそういうのも好きなので、すごく楽しかったです」

なにかギャップを感じることはありませんでしたか?

「ホームページを見ると、イベント装飾ばかりやっていると思うかもしれないですね。でもイベントは月に一回あるかないか。だから華やかな仕事だと思って入ると、地味な仕事が多かったりするかな」

検品のほかにも、メールや電話での問い合わせ対応や商品の発送。ときにはオリジナル商品のデザインに関わることも。仕事は多岐にわたるそうだ。

「イベントも、当日までにはすごく入念な準備がいるんですよ」と、ある病院でのイベントの話をしてくれた。

亡くなった家族に宛てた手紙を風船につけて飛ばすというもので、渡邉さんがはじめて一人で担当したイベントだった。

「一人でできるのか不安はあったんですけど、とにかくわからないことは全部教えてもらって。注意事項をまとめたノートをつくったり、滞空時間を調べる実験をしたりして準備をしました」

ゴム風船は日光に当たると膨張して割れやすく、雨が降ると浮力がさがってしまう。もしも低空を漂って高速道路などに落ちたら、大事故につながる可能性もある。

そのため天気や気温などさまざまな状況を考慮して、入れるガスの量を微妙に調節するという。

風船がそんなにデリケートなものだとは知りませんでした。

「私もすごくびっくりました。しかもどれだけ準備をしても、当日にはなにが起きるかわからないんですよね」

「初回は雨が降りそうでしたが、なんとかリリースできました。翌年に呼んでもらったときはかんかん照りで。現地に着いてすぐ自分の車に風船を1つくくりつけて、この大きさで破裂しないか確認しながら、何百個もの風船を準備しました」

膨らませては結ぶという作業を繰り返すうちに指から血が出てしまうことや、握力がなくなるくらい力を使い果たすこともある。

「準備では心配事もいろいろありますけど、入院患者さんも病棟からみんな見てくれていて、遺族の方にも先生たちにも喜んでもらえた。それが一番うれしいですね。本当に行ってよかったなぁと思って」

balloon-pop09 これだけをやっていればいいというわけではないから、覚えることも多くて大変だと思う。

だからこそ自分なりに考えて、まずはやってみる。そうして目の前にいる人たちに喜んでもらうことが、また自分を動かす熱源になっていく。気持ちのいい循環が生まれていました。



得居さんに、これからはじまる教育研修事業についても聞いてみます。

「明後日が初日なんですが、MGを使った教育研修をはじめます」

MGとはマネジメントゲームの略で、もともとはソニーが社内研修用に開発した。専用のボードを使ってゲームをすることで、企業経営を疑似体験できる。

balloon-pop10 市場から材料を買い、それを製品にして販売し、最後に決算をする。そんな経験を通して、最終的にはどんな人でも決算書が書けるようになるそうだ。

面白そうだけど、バルーンポップがやってきたこととは結びつかないような気がする。どうしてMGをやろうと思ったのでしょうか。

「知ったのは6年前かな。ネットショップって参入が簡単だから、素人でもなんとなくはじめられちゃいますよね。私も売上や利益などの数字に無頓着なまま商品を販売していました」

けれども、見通しのない商売はいずれ破綻してしまう。このままではいけないと、MGをやってみることにした。

「最初は難しくてよくわかりませんでした。商品が売れたから大丈夫だと思って決算をしたら赤字で。売上じゃなく粗利でみないとダメなんだとか、MGを何度も体験して一から学んでいきましたね」

たくさんの笑顔を生むバルーン事業を続けていくためにも、しっかりとした経営基盤が必要。それを楽しみながらつくることができた。

するとスタッフからも「やってみたい!」と声があがったそう。

balloon-pop11 「みんなで受講すると、共通言語ができて意思の疎通がすごく早くなりました。たとえば私が出張に行っている間に会社のことを任せても対応してくれるし、残業をしなくてもお互いに協力しながら効率的に利益が出せています」

もちろん新しく入る人も、MGを体験することになる。

「北九州にはMGを定期開催しているところがないんです。いいものだと実感しているからもっと広めたいし、私たちも学び続けていきたいですね」



最後に、見せてもらった1枚のボード。書かれていたのは未来構想だ。

balloon-pop12 「1階でカフェ、2階ではバルーン事業。これを書いたときは3階でトレーニングジム…と思っていたけど、今は教育研修事業ができるフリースペースにしたいですね」

バルーン、教育の次にカフェ。また全然違う分野ですね。

「もしも研修会場に併設してカフェがあって、研修中においしいコーヒーが飲めたら素敵だな。さらにこのカフェがあることで、コミュニティが生まれたら楽しそう」

「そんな感じでうちにあるリソースを合わせて、なにか新しいことができないかなといつも考えています」

きっとこれからの道筋は、新しく入る人のアイディアも聞きながら柔軟に変化していくんだと思う。あれもいいよね、こんなこともできるかもと話す二人はなんだかとても楽しそうだ。

balloon-pop13 「自分たちが楽しくないと、お客さまに楽しいことを提案できないですから。だから楽しく働けるよう工夫するし、いろんなことに挑戦してみたいと思っています。そこに共感して、一緒にやってみたいという人と働けたらうれしいですね」

目の前にいる人に喜んでもらいたい、驚かせたい。その気持ちがなにをしているときも暖かく滲み出て、ちゃんと相手に届いている会社だと思います。

あなたなりのびっくり笑顔のつくり方。いいアイディアが浮かんだら、ぜひ得居さんたちに話してみてください。

(2016/11/11 並木仁美)