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Questioning+Action=「 」

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

人と違うということは、ときに摩擦を生む。

でも、お互いにないものを持ち寄るからこそ、新しい価値が生まれることもあります。

東京・目黒にある「Impact HUB Tokyo(インパクトハブトーキョー)」は、起業家やアーティスト、エンジニアやNPOなど、多様な人たちが集うベースキャンプです。

2005年にイギリス・ロンドンで発足したImpact HUB。その後全世界にネットワークが広がるなか、2013年に日本第一号として誕生したのがImpact HUB Tokyoでした。
実際に訪ねて感じたのは、「違い」にあふれた環境であるということ。ここには専門分野やバックグラウンド、ビジネスのフェーズも異なる人たちがやってきて、同じ時間と空間を共有しています。

しかも、その「違い」が場にいい影響を与えている。ほかの人から何か学びとれることはないだろうか、新たな仕事や関係性が生まれないだろうか。そんなふうに、お互いが刺激し合う空気感が生まれているし、ときに生じる摩擦でさえもプラスのエネルギーに変えていくような、渦巻く熱気のようなものを感じました。

そんなImpact HUB Tokyoのコミュニティを育むコミュニティマネージャーを募集します。

JR目黒駅西口を出て、目黒通り沿いに歩く。

おだやかな目黒川を渡り、細い道を右手に曲がってしばらく進むとImpact HUB Tokyo(以下、IHT)が見えてきた。
もともと印刷工場だった真っ白い建物は、無骨な存在感を放っている。

およそ440平米の大きなフロアをリノベーション。コワーキングスペースとして運営をはじめて5年が経ち、利用者のコミュニティは400名を超えた。

扉を開けると、コーヒーのいい香り。

IHTをエリアで分けると、入ってすぐのカフェスペース、左手のイベントスペース、奥のコワーキングスペースの大きく3つに分かれる。コワーキングは月額のメンバー登録が必要なものの、カフェ・イベントスペースはメンバーでない人も利用可能。地域の人たちがカフェにふらっと訪れたり、外部の人がイベントを主催することもある。

中央のキッチンでは、日替わりでランチを提供。それ以外の時間は、メンバーなら誰でもキッチンを使えるため、メニュー開発や発信の場になっている。

お昼時の賑やかな空間で、まずはIHTの共同創立者であるポチエ真悟さんに話を聞いた。

以前はイギリス・ロンドンで起業家のコンサルやテック系のスタートアップへの投資などの仕事をしていたポチエさん。

たまたま日本でも起業家支援の機会があったそう。

「3.11の影響については、当時からよく考えていました」

震災後、東北を舞台に起業するケースが一気に増加。その多くは助成金を受けてのものだった。

「それ自体は悪いことじゃないんです。『何かしたい』と思って動き出した人がほとんどなはず。でも、果たして継続性はあるの?という疑問もあって」

「世界的に“社会起業家は身をすり減らしてなんぼ”みたいな、変な風潮があるんですよ。どんなことにもコストはかかります。お金じゃないコストもある。一時的に生まれた雇用や集めた共感を喜ぶんじゃなくて、本当に社会のためになることをしようよって」

起業家の支援や投資より先に、まずは起業家が育つプラットホームが必要だった。

そうしてもうひとりの共同創立者である槌屋さんとともに立ち上げたのがIHT。

海外や日本国内のスタートアップのトレンドや起業プロセスを研究し、2013年の立ち上げから起業家育成プログラム「Team360」を開始。“先生”に教わるのではなく、起業家同士が膝を突き合わせ、切磋琢磨するチーム・ラーニングの考えをもとに改良を重ねながら、これまでに約90名の卒業生を輩出してきた。

真っ白な外壁には、ある言葉が書かれている。

現状に問いを立て、行動することで、社会にポジティブなインパクトを生む。

IHTに集う人たちの共通点を表した方程式なのだそう。

「ただ、これを書いた3年前から環境も変化しつつあります」

起業家のプラットホームとしての役割は、ある意味一区切りがついた。

「これまで持続可能なインパクトを重視してきましたが、今は多様性のほうがより重要になってきていると思います。いろんな考えの人が集まり、フラットに意見交換することによってイノベーションが起きやすくなるんです」

たとえば、カフェをつくることでコワーキングメンバーでない人の間口を広げたり、一時は7名のフルタイムスタッフで回していたところを、現在は2名のフルタイムスタッフと10名のパート・アルバイトスタッフで運営していたり。

より多様な関わり方を受け入れられるよう、空間やチームのあり方も柔軟に変化させてきた。

さらに、9週間で集中的にプログラミングを学ぶフランス発のプログラミングブートキャンプ「Le Wagon」とも連携。卒業後に起業やIHTに入居している企業への就職を目指し、これまでに80名ほどが国内外から参加している。

こうした取り組みによって、IT業界をはじめ、IoTの起業家チームや建築家、ゲノムビジネスやEコマースなど、多様な専門分野やバックグラウンドを持ったメンバーも増えてきているという。


「物理的な広さもひとつのポイントですね」

そう話すのは、コミュニティマネージャーの岩井さん。

「場所の広さは、そこで持ちうるコミュニティやクラスターの数と比例します。それぞれが多様な活動をするなかで、お互いにノイズになってはいけないけれど、活気はあったほうがいい。印刷工場跡地のだだっ広さがここで活きていると思います」

また、インテリアの一部には人感センサーや温度・湿度計、マイクやカメラが搭載されており、実験的にデータを計測しているそうだ。

「今まで属人的にやってきた人をつなげることだったり、コミュニケーションを促すことを定量的に証明できないかと考えていて。データとして人がどう動くべきかという指標がとれれば、わたしたちも励みになりますし、今後の運営にも活かせますよね」

細部にいたるまで、空間の工夫が凝らされていることがわかる。

普段は、どんな仕事をしているんでしょうか。

「1日たりとも同じ日がないので、一言では表しづらいんですが…」と岩井さん。

「Facebookを見てメンバーさんの近況を把握したり、グループページで発信したり。お昼はカフェスペースで、メンバーさんとざっくばらんに話したりもします。午後はミーティングを入れることが多くて、3時ぐらいから集中できる作業。イベントのある日だと準備を夕方にはじめて、撤収するのが10時とかになります」

作業の合間にも、メンバーから設備の使い方やイベント利用の予約などで声をかけられることも多々ある。

一定のリズムで働きたい人にとってはなかなか大変そうですね。

「基本的にマルチタスクです。常に4、5個のことが同時進行していて、パンクしそうになることもありました。突然違うプロジェクト同士がスパークして面白いアイデアが生まれることもあるので、よさでもあるんですけどね」

たとえば、起業家の失敗談をカジュアルにシェアするFuckUp Nightsというイベントを開催。成功ではなく失敗を共有することで、その人自身も前に進めるだろうし、ほかのメンバーさんとの距離も縮まりやすい。
ほかにもSEO対策のような勉強会もあれば、映画の上映会、チームづくりをテーマにワークショップをする日もある。

さらに、2013年の創業当時から実施している「Team360」や、世界的な環境保全団体であるWWFジャパンと共催で持続可能な水産業を目指す「OCEANチャレンジ」などの起業家支援プログラムでは、企画やファシリテーションを行うことも。

細々した仕事から人前に立つ仕事まで、本当に幅広い。

多国籍のメンバーが入り混じるため、英語のスキルは必須だという。

「人をつなげたり、コミュニティを混ぜ合わせるのもひとつの仕事ですけど、わたしたちで全部やりすぎないっていうことを意識していて」

やりすぎない。

「料理好きなメンバーさんが勝手にそこで料理をはじめて、飲んでく?みたいな感じで自然と飲み会がはじまることもあったりするんですね。そういうことが起こりやすい雰囲気を醸成させておくっていうこともすごく重要かな」

自然発生的にコミュニティが形成されていくことで適度な気軽さが生まれたり、プログラムの終了後もビジネスパートナーとして継続的な関係性につながったりするのだそう。

入社して5年になるという岩井さん。

今や「呼吸する」ようにいろいろな対応ができるようになったというけれど、最初はきっと苦労したんじゃないだろうか。

「わたし、新卒からここに入ったんです。何の経験もない自分が、本気で事業と向き合っている人たちに対して何ができるかっていうことは、すごく考えてきました」

大学では異文化コミュニケーションを専攻。

留学を経験したり、学生だけでカフェを運営したり。学外へどんどん出ていくのが好きだったそう。

場所をつくりたいという想いは常にあったものの、カフェを続けるうちに飲食店じゃないかも、と思うようになった。

「出会った人たちがコラボレーションできたり、何かが生み出されていくのはどんな場だろう?って考えていたのが2013年。ちょうどコワーキングスペースが世の中にポツポツ出てきたぐらいの時期だったんですね」

Google検索をかけると、2ページ目に創業したばかりのIHTのページがあった。

すぐに求人に応募してインターンからスタートし、今にいたるという。

「この仕事って、庭師みたいなところがあるんです」

庭師。

「たとえば雪が降ったとか、雑草が生えてきたっていうときは、わたしたちが手入れをするんです。でも前提としてあるのは、自分たちで生きていける強さを持った人たちというリスペクトの気持ちなんですよ」

「現状に問いを立てて、小さくても大きくても、何かアクションを起こしている人たち。その人たちがもっと加速して、よりよいリソースを得られるような環境設定をするのがわたしたちコミュニティマネージャーの役割です。手を汚さずにできることはまずないですね」

敬意を払うことと、相手との距離感を離すことは別。

むしろ一歩、二歩と踏み込んで本音を引き出したり、ときには意見や想いをぶつけることが、真剣に事業と向き合うメンバーさんとのコミュニケーションでは求められるように思う。

実は、岩井さんは今後、長野県塩尻市に新たに開設されるシビック・イノベーションセンター「スナバ」の運営に関わることになっているため、IHTで一緒に働けるのは週に1、2日になる予定だ。

「根本的に人が好きだということは重要ですね。あまりそれ以外は。わたしと似通った人ではなく、その人の個性が生きて、かつコミュニティも多様になるっていう状況が一番望ましいかなと思っていますね」

コミュニティマネージャーの仕事に、決められた正解はありません。

メンバーのみなさんと同じように、日々問いを立てては実行してみる。それを繰り返すなかで、自分にしかないスタイルが見えてくる。

自分も他人も、いろんな可能性を見出す奥深さがここにはあると思います。

塩尻市の「スナバ」でも求人募集中なので、興味のある方はそちらの記事も読んでみてください。

(2018/2/6 取材 中川晃輔)