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もてなす倉庫

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人の流れ、お金の流れ…。

日々絶えずいろんな流れが起きています。

そのなかでも、モノがつくられ、食べたり使ったりする人のもとに届くまでの流れは「物流」と呼ばれます。

今回紹介するのは、そんな物流に携わる仕事です。ただ、あまりなじみがないかもしれません。

なぜなら、長距離のトラックドライバーや店舗での販売などと違い、一般の目にはまず触れない仕事だから。

埼玉県戸田市で50年にわたって倉庫業を営んできた、野口倉庫株式会社の物流管理、物流管理事務スタッフを募集します。

見えないところで、実は生活に密接に関わっている倉庫業。

まずはどんな仕事なのか、知ってもらえたらと思います。


野口倉庫の場所を地図で調べると、最寄である都営三田線の終着駅、西高島平駅から歩いて20分ほどと出てくる。

首都高沿いに幅の広い道をまっすぐ歩き、荒川を渡ると、向こうに倉庫らしい建物が見えてきた。

それもひとつだけではない。たくさんの倉庫の集積地帯になっている。

このあたりはかつて交通の便が悪く、治水もあまりよくなかったため、開発が進められてこなかった背景がある。ただ、1964年の東京オリンピックに合わせて橋が完成し、東京のすぐお隣という立地のよさもあって、次々に倉庫が建っていったんだそう。

野口倉庫も、そんな流れのなかで50年前に創業した会社。

川のすぐそばに本社と倉庫があり、県内に複数の営業所も構えている。

入り口をはいると、代表の野口英徳さんが迎えてくれた。

先代の父から引き継ぎ、2代目として会社を引っ張ってきた野口さん。

さかのぼれば、13歳のときから倉庫の仕事を手伝っていたという。

「当社はもともと、輸入品の原料などを扱っていたんです。たとえばプラスチックの原料の樹脂が袋に入っていて、30キロほどあるそれを手でおろすとか。夏場は40度になるようなコンテナのなか、2時間こもって作業。それを1日3回やったりしていましたね」

当時はバブル経済の影響もあり、業績は好調。けれど今ほど機械化は進んでいなかったから、体力仕事も多かった。

夏は着替えのTシャツが4、5枚は必要だったそう。

「いわゆる3Kの最たる仕事でしたよね。最近入ってきてくれるスタッフには想像できない世界だと思う」

やがてバブルが崩壊し、メーカーの工場は次々に国外へと移転。荷物でいっぱいだった倉庫にも空きが目立つように。

そこで野口さんは、まったくの未経験から営業の仕事をはじめることになる。

「あまり社員には大きな声で言えないですけど、会社を変えてやろうとか、そんな気持ちはまったくなかったんです。人手も足りないし、倉庫が空いてしまったから、なんとかして埋めないと倒産してしまう。先代と一緒に駆けずり回って」

目の前の要望にひたすら応えていく。

すると、思いもよらない広がりが生まれていった。

「倉庫業の基本は、商品の保管と入出庫です。そこから少しずつ派生して、入荷した商品の検品やピッキング、配送などの依頼も受けるようになって」

バブル期までのように、大型の商品を大量に保管することは難しくなってしまった。

けれども、一つひとつの細やかなニーズに、丁寧に応えていくことはできる。

「たとえば、入荷した商品を開梱し、中身を検品してから再び梱包。ペンやノートなどの文具もあれば、化粧品売り場のテスターを一式まとめてお送りしたり、今の時期は雛人形の検品・梱包なども行います」

「出産のお祝い品にはのしをつけたり、梱包もいくつかの方法があるので、個別の対応が必要です。あとはダンボールなどの梱包資材の販売をしたり。コールセンター業務を請け負い、メーカーさんのお名前で電話を取るようなこともしています」

また、在庫管理やデータ分析、通販モールとの連携など、顧客のさまざまなニーズに応えるソフト「一気通販」を開発。これを導入することでよりスムーズな物流を実現したり、廃棄処分されてしまう商品在庫を海外に持っていき、販売するリユース事業も展開している。

もはや「倉庫業」というよりも、「物流+α」の新しい仕事になっている気がする。

「これは先代からの夢なんですけど」と野口さん。

「我々は“モノのホテル”を目指しているんですよ」

モノのホテル?

「うちの場合、お客さま=商品です。商品を丁寧に迎え入れて、使う人のもとへ気持ちよく届ける。倉庫に滞在中も、さまざまな要望に応えていく。物流のコンシェルジュでありたいというのが当社のモットーになっています」

実際に倉庫内を案内してもらう。

フォークリフトがスムーズに出入りできるよう、中央に幅の広い通路がある。商品の種類ごとにエリア分けされていて、天井近くまで積み上げられた大きな荷物や、手の届く範囲にずらっと並んだ中ぐらいの荷物、小さな引き出しに振り分けられる細々した荷物など、いろんなものが置いてある。

なかには医薬品や法定保存義務のある文書など、特に慎重な扱いが求められるものも。

倉庫内の温度や湿度の管理はもちろん、荷物の運び方や積み方、作業の手順についても細かく決められているそうだ。

今回募集する物流管理スタッフは、倉庫全体の人とモノの動きを把握し、指示を出したり現場の声を拾ったりする役割。

マネジメントの経験がある人、少しでも物流関係の仕事に携わったことのある人でないと難しいように感じる。


ここからは、バブル崩壊後の第二創業期を野口さんとともに乗り越えてきたという物流管理スタッフの山崎さんにも話を聞く。

「これから入ってくる方は、たとえば飲食店で店長をやっていた方や工場で生産管理をしていた方、工場長だった方など、経験はあったほうがいいと思います」

「ただ、わたし自身は本当に何も知らない0の状態からのスタートでした」

学生時代に野球をやっていた山崎さん。

自宅から通える範囲で、体を動かせる仕事を探していたときに野口倉庫を見つけたんだそう。

「港から大きな荷物を運び込んで保管するっていう、単純なイメージで。それなら自分にもできるかなと思って入ったんです。昔は本当にイメージ通りの仕事だったんですよ」

入社後5年ほどは現場作業に携わっていたものの、業態の変化に応じて、次第に管理の仕事も任されるようになっていった。

「はじめのころは『仕事が終わればいいや』っていう感じで、後先考えずに働いていたのが正直なところです。目標時間もなく、自分ひとりで黙々と作業すればいいっていう感覚でした」

「ただ、加工や梱包のように新しい仕事内容が加わってくると、分業する必要が出てきます。どんな作業に対して、どれぐらいの人とスペースが必要で、どれだけの価値を生めるか。そういった意識が芽生えてきたんですよね」

20年ほどかけて試行錯誤しながら、物流管理という仕事を築き上げてきた。

現在、野口倉庫では86名の正社員と230名のパート・アルバイトスタッフ、常時30名ほどの派遣社員が働いている。

とはいえ、一人ひとりの経験値も、注文状況も日によって異なるから、すべてをマニュアル化することはできないと思う。

日々変化する現場を、どのように管理しているのでしょうか。

「対面でのコミュニケーションは大事にしていますね。各現場を回ってフランクに話しかけつつ進捗を確認することで、何か困ったことがあったときに話しやすい雰囲気をつくったり」

「あとは注文状況と照らし合わせてパートさんのシフトを組んだり、派遣会社に依頼をしたり。同業の協力会社に応援を要請することもあります」

ときには、まったく予想できない注文が突然入ることもある。

「印刷会社さんのミスプリントが大量に届いて、『訂正シールを貼って明日の朝までに発送をお願いできますか』という注文が入ったりもします。これまでも普通では受けない仕事をやってきた野口倉庫だから、きっと頼みやすいんだと思いますよ」

セールや休暇明けの大量受注、短納期・小ロットの注文も多い。

マネジメントする立場としては、苦労も多そうですね。

「そうですね。楽な仕事ではないですが、スケジュール通りに進められたときの達成感はあると思います」

「それから、自分たちの手で運んだり梱包したり、触れたものがお客さまのもとに届くんです。まちなかでその商品を見かけたりすると、ああ、世の中の役に立っているんだなってことを感じられるので。そういった面白さもあります」

大手飲食チェーンのポスターや海外のデザイン文具など、身近なところで見かけるものも多い。

多様な業界のトレンドを知る面白さもあるだろうから、世の中のいろんなことに興味関心が湧くという人は向いているかもしれない。


そんな物流管理をバックオフィスから支えるのが物流管理事務スタッフ。

入社してもうすぐ1年になるという森瀬さんに、物流管理事務の仕事について聞いた。

「出社したら、まずは注文状況を把握して入荷リストを作成し、現場へ渡します。出荷は、一度に荷物をためすぎてもよくないので、1日4回に分けて行います。そういった入出庫状況の確認、あとは納品書や請求書などの書類作成を、現場とコミュニケーションをとりながら進めていくのがわたしたちの仕事です」

電話対応や受付対応を担うのも、事務スタッフ。

お客さんとの接点となり、そこで得た情報を現場に伝えるような役割になる。

森瀬さんは、そんな橋渡し役としての責任を感じているという。

「たとえば、少しでも入荷リストを渡すのが遅くなると、現場の作業の手を止めることになってしまいます。自分の一挙手一投足が現場に影響を与えるんだという緊張感はありますね」

「反面、その日のうちにやらなければいけないことが明確なので、毎日達成感を得られるというか。ほかの会社だと次の日に持ち越したりしてしまいがちですけど、そこは倉庫業の気持ちよさ、面白さでもあります」

注文の量は、年間を通じて変動する。

特に忙しくなるのが年末で、普段の2倍以上の荷物を扱うことも。年が明けると落ち着き、あとは季節の変わり目などに応じて緩やかに変動するそうだ。

「メリハリはつけやすいと思います。働くときは集中して働きますけど、休憩中は気軽にコミュニケーションもとれますし、ガチガチな雰囲気ではないですね」

森瀬さんは、どんな人と一緒に働きたいですか。

「気軽に冗談も言えるような人ですかね。明るく素直な人。あと、マメさも大事だと思います。自分はズボラなところがあって、けっこう注意されるので(笑)」

ここ3〜4年は、今の業態で安定してきているという野口倉庫。

一つひとつの商品と丁寧に向き合う姿勢は貫きながら、これから新しいサービスを提案していくこともできるし、思わぬ形で自分の経験やスキルが活きる環境かもしれません。

大切なモノをもてなす倉庫で、物流のコンシェルジュになりませんか。

(2018/2/20 取材 中川晃輔)