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移り住む人たち − 福井編 − 第1回「面白がれる人」

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いつか理想の地に移り住みたい。

東京で暮らしながら、ときどきそんなことを思います。

でも、どこに住むのかはっきり決めるのって難しいです。生きていくための仕事が必要だし、どの地域にも自分にとっての一長一短があります。

実際に移住した人たちは、何をきっかけに移り住み、その地で生きていくことにしたのだろう。

今回は、福井県を訪ねました。

はじめは数年で出て行くつもりだったけれど、7年を経て会社を立ち上げることになった人。大企業を退職して離れていた地元に戻り、ゲストハウスをはじめた人。そして、陶芸家を目指してその土地にたどり着いた人。

3人のお話を、全3回でお伝えします。

>>第2回「舞台に上がった人」
>>第3回「等身大な人」

第1回は、福井県鯖江市で地域や地場産業のブランディングを行なっているクリエイティブカンパニー「TSUGI」の代表、新山直広さんです。

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もともと都会が大好きなんです。田舎万歳だとか思っていないし、はじめ福井に来たときも1〜2年くらいのつもりでした。

僕の出身は大阪の吹田市っていう、ニュータウンの街なんです。京都の大学に入って、建築デザインを学んで。そのときアルバイトをしていた設計事務所が、鯖江市でアートプロジェクトをやっていたんです。とくに福井が好きという思いもなく、「行ってこい」と半分業務感覚で来たのが最初のきっかけでした。

それで参加してみたプロジェクトが衝撃的に面白くて。林業、農業、伝統産業、教育とかを掛け合わせて、地域の未来を考えようというプログラムでした。ちょうどそのころ、建築は建てることが目的じゃなくて、ソフト面のプランニングが重要じゃないかと考えはじめていて。

大学を卒業するころ、その設計事務所の代表が新たに地域づくり系の会社を立ち上げて、誘ってくれたんです。最初の勤務地が、また鯖江市でした。新しい会社は代表と僕の2人だけ。代表は京都にいて、僕は築100年以上の古民家にひとりで住みはじめました。

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1ヶ月で挫折しました(笑)。代表との意思疎通がなかなかできないし、自分の能力不足で仕事はうまくいかない。車の免許を持たずに来たので、移動もままならない。同世代の知り合いなんてひとりもいなかった。

鯖江市に来て1ヶ月は仕事が忙しくて、ご近所の方にもご挨拶できる状況じゃなかったんです。そうしたら「不法侵入者が古民家に勝手に住んでいるぞ」と近所で噂になって、ツイッターの比じゃない早さで町中にも広まっていって。伝言ゲームのように、最後は「毛むくじゃらの大男が住んでいるらしい」と(笑)。

これはミスった。これからは地方の時代だと思って来たけど、実際問題、僕は全然向いていないと思ったんですね。

挨拶をすませてからは、地元のおっちゃんらにお酒の飲み方から地域のルールのことまで教えてもらって。地域行事も率先して参加しました。地域に馴染むための下積みですよね。TSUGIというチームをつくるまでの4年間、僕は自分の意見を一切言ったことがなかったです。けっこうつらい。けど、ひたすら耐える感じではなくて、地域に馴染むためなんだと、ポジティブに考えていました。

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会社の仕事に、越前漆器の産地の市場調査がありました。職人さんや問屋さんを回って、未来への思いや後継者についての話を聞いたりして。知り合いがめちゃくちゃ増えて、この漆器は誰が塗ったものなのか、ある程度分かるようになっていました。

売り場調査に東京へ出かけたとき、たまたま入ったお店でワゴンセールのように雑に扱われている漆器を見たんですよね。きっと知り合いの職人さんがつくったもの。その人はすごく真面目で、ちゃんとしたものづくりをされている方なのに。他人事に思えなかった。

それから、自分に何ができるかを考えるようになったんですね。産業と生活が一体化しているこの町では、ものづくりが元気にならないと、きっと町も元気にならない。頭の中が、コミュニティデザインからものづくりへシフトしていって。

いろいろ考えた末、ブランディングという考え方のもと、ちゃんと売る着地点まで案内できるデザイナーになろうって。そう思ったら、本気でこの町と心中できると思えたんです。自分事になっちゃったんですよね。

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会社を辞めて、グラフィックデザインの修行に東京へ出ようと思っていたら、鯖江市役所から声がかかって。メガネのPRサイトとかのデザインをやることになりました。

その年はいろいろ動きがあったんですよ。結婚を機に、僕の嫁さんに大阪から来てもらって。前の会社に僕の後釜として若い人が2人来たし、木工職人をやりたいという若い子も移住してきて。これまでひとりぼっちだったのがやっと仲間ができて、土日にパーティーができるくらい楽しくなったんですね。

けど、みんなと飲んでいると「今は仕事が充実しているけれど、将来はどうなっているかな」って話すんです。嫁さんはイヤイヤ来たので、福井の悪口をすぐ言うし。僕はエセ福井人としてのプライドがあるので、憂いているだけじゃ一生何も変わらないから、自分らでやれることをやろうと話して。とりあえずチームをつくって面白いことをはじめようと、TSUGIを結成したんです。

自分らのような“次”の世代が、その土地のものづくりや文化を“継”いで、新たなアイデアを“注”ぐことで、新たな関係性を“接”いでいく。いろんなTSUGIが含まれているんです。10年後には産地の担い手になれるように、今のうちから助走期間をつくっていこうと。

まずは拠点を構えようと、河和田町で越前漆器をつくってきた錦古里漆器店さんの1階を借りられることになって。若い世代との横のつながりをつくりたかったので、金継ぎのワークショップとか、トークイベントを開いたりしました。この作戦が大当たりで、福井県中の寂しがりやたちが来てくれたんです。

仲間づくりができたから、こんどは福井のものづくりを外に伝えようと東京や大阪に売りにいったり、ものづくりをはじめようとメガネの廃材を使ってアクセサリーブランド「Sur」をつくったりして。

Surは嫁さんがデザインして、制作もかなりやっているんですよ。結婚しはじめのころは、朝起きたら「大阪に帰ってます」という置き手紙があることが何度もあって。いまはアクセサリーを通じて地域とコミュニケーションがとれるようになったみたいで、人が変わったように嫁さんは頑張ってくれていますね。

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いまでも不安はあります。新しいことをするのって本当に恐い。けど、何もやらなかったら何にもならないし、やればうまくいくかもしれない。失敗しても、バカにされようが糧になる。とくに地方には自活する力が必要だと思うんです。

移住して10年住めば家をあげます、みたいな話ありますよね。僕はあまり好きじゃなくて。結局、条件のいいほうに転がる転職活動みたいなんですよね。ほかにもっといい条件が出てきたら、そっちへ行ってしまう。理想を追い続けても、地方ドリームなんてないです。アメリカンドリームも、行ってそこでアクションするから叶うものだと思うんです。

だから受身でいるよりは、ちゃんと自活できるような人が地方には合うんじゃないかと。行政や地域の人がお膳立てしても、結局は自分が頑張らないと。頑張れば何とかなるのが、地方のよさです。

僕がそうだったように、都会の感覚で地方に来たら、絶対戸惑うことがあると思うんですよね。ただ、その戸惑いを嫌だなと思うか、それとも面白がれるかで、分かれ道になる。憧れの古民家で暮らしたけど、実際はめちゃくちゃ寒い。じゃあ寒いなら工夫しようとか、どうやったら断熱できるんだろうと動ける人のほうが、地方に向いている。

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福井県って幸福度No.1なんです。幸せだし心地よいからこそ、危機感がないと思うんです。福井も間違いなく刻一刻と廃れていっている。

ただ、希望があるんですよね。面白がれる人材が増えて、やっと役者が揃ってきた。福井はまだ完成されていないから、やれる余地がたくさんあって、ちょっと活動するだけで注目してもらえる。

いま福井はチャンスの時期だと思うんですよ。巨人に入るより弱小球団に入って俺が強くするっていう人なら、福井は向いていると思うので(笑)。面白がって自分でやりたい人には、もってこいだと思います。

(聞き手:森田曜光)

 

福井に興味があったり住んでみたいという方。福井で開催されるツアーがあります。コラムに登場する方々にも会って話すことができるので、ぜひ参加してみてください。

前後
【日時】
①平成28年 2月27日(土)・28日(日)
②   〃     3月19日(土)・20日(日)

【集合場所】
①金沢駅・小松空港発(※福井駅から参加したい方は事前にご相談ください)
②京都駅発
※集合場所までの交通費は各自負担

【参加費】
①②それぞれ大人お一人様5000円、お子様(小学生まで)お一人様3000円

【定員】
①②それぞれ10名

【内容】
2月27日(土)
10:10 金沢駅発
11:00 小松空港発
11:50 一乗谷朝倉氏遺跡で朝倉膳体験
14:00 鯖江市河和田地区でものづくり現場見学
17:00 福井駅前ゲストハウスSAMMIE’Sにて交流会・宿泊
2月28日(日)
9:00 下町ロケットに登場!!フクイタテアミ工場見学
10:00 福井県児童科学館エンゼルランドふくい見学
11:15 三国まち歩き&交流会・昼食
13:30 福井県特産ミディトマト「越のルビー」農家 麻王伝兵衛 見学
16:20 金沢駅到着

3月19日(土)
9: 00 京都駅発
11:00 若狭おばま魚センター
12:00 小浜西組まち歩き&交流会・昼食
14:30 福井県海浜自然センター
16:00 かみなか農楽舎にて交流会・夕食
19:00 農家民宿にて宿泊
3月20日(日)
9:30 空き家リノベーションモデルハウス朱種(しゅしゅ)
12:00 越前陶芸村にておろしそばの昼食
13:00 越前陶芸村にて陶芸体験
16:50 京都駅到着

【お申し込み・お問い合わせ】
参加ご希望の方はFAXまたはメールで、参加日時・希望の集合場所・参加者のお名前・住所・連絡先 をお知らせください。
TEL:0776-25-7201(平日のみ)
FAX:0776-25-7202
E-mail:kuwabara@right-stuff.biz
株式会社ライトスタッフ 担当:桑原

【応募締切】
①平成28年2月19日(金)まで
②平成28年3月4日(金)まで

*福井への移住に興味のある方は、下記もご覧ください。
「ふくい移住ナビ」
「ふくいUターンセンター」

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