求人 NEW

ものづくり、変化のとき

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「日本のものづくり」と聞くと、どんなことを想像するだろう。

小さな工場で職人さんがこつこつとものをつくりあげる姿。その地域にしかない技術を伝承する心持ち。大きな工場で、最新の技術を駆使してつくられる製品。

一言で表せるものではないけれど、そこには妥協のない熱い気持ちと丁寧な仕事があるように思う。

CC9 株式会社JMCは3Dプリンター出力事業、鋳造(ちゅうぞう)事業、医療モデル受託開発・製作事業を行っている製造メーカーです。

あたらしい製造業のあり方を模索して、コミュニケーションに力を入れているJMC。ここで新卒の方を中心にスタッフを募集します。

どんな仕事をするにせよ、JMCのものづくりを知るためにまずは製造現場で働くことになるそうです。


今回は入社してまず働くことになる場所、長野県飯田市にある鋳造工場「コンセプトセンター」に向かった。高速を降りると大きな商店などが目に入る。想像していたよりも暮らしやすそうな街だと思いながら、1つ山を越えてコンセプトセンターに着いた。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 1棟からはじまったこの場所も、今は4棟もの建物を使っている。数年のうちに近くに工場を増設することも決まっているそうだ。


まず最初にコンセプトセンターの中をぐるりと見せてもらった。

たとえば車の部品を大量生産する前のモデルづくりなど、ここでは大量生産する前の試作品となる部品や少量しか生産しない部品をつくることが多いそう。

jmc - 1 (1) まずは図面からケミカルウッドと砂を使って型をつくる。1つ1つ、つくるものがまったく違うから、型もそれぞれの製品のためにつくっていく。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 型ができたら金属を流し込んでいく。

固まったら型を外し、余分な部分を削ったり表面を滑らかにする作業に入る。最新の機械を導入しているそうだけれど、想像よりも手作業で行われる仕事が多い。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 最後にできた製品の強度を確かめたり、図面通りにできているか測定をして納品をする。


まずお話を伺ったのは、この測定を担当している田中さん。大学院まで数学の勉強をして、新卒でここにやってきたそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「原宿の小さな広告代理店でインターンをしたんです。そこの社長がとてもおもしろい人で。やりたいことは定まっていなかったけれど、おもしろくて、社長から直接刺激を受けるような環境で仕事がしたいと思いました」

就職活動ではベンチャー企業を中心に会社を探し、出会ったのがJMC。前回の取材でお会いした代表の渡邊さんは元プロボクサーだ。

「この社長、変わってるなっておもって(笑)。すごく血がたぎっているような感じがしたんです」

入社1日目に飯田勤務になることを告げられた。

「用意してもらった家から会社までは、自転車を使っています。お昼は家に帰って食べたりして。突然の田舎生活でしたけど、すんなり馴染めましたよ」

東京のようになんでもあるわけではないけれど、ここでのシンプルな生活は気に入っているそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 測定とは、どんなことをするんだろう。

「納品する前の製品が図面通りにできているか測って確かめる仕事です。3ミクロン違って納品できないこともあるんです。ものを正確に測るっていうのは、それなりに頭を使うんですよ」

つくっているものが毎回違うから、測定の方法もパターンがあるわけではないそうだ。マニュアルがないから、どう測るかを自分で勉強して考えながら仕事をしている。

もっと簡単なものかと思っていたけれど、かなり奥が深いよう。

車のパーツをつくることも多いので、車やプラモデル好きには向いている仕事かもしれない。けれど田中さんが興味を持っているのはなにに使われるか、よりも図面通りにものができているかどうか。

仕事の話をとてもたのしそうにしてくれる中に、測定することを突き詰めている“オタク”感がある気がする。

「触りだすとおもしろいんです。いじればいじるほど味が出てくるというか。数学に通じるものがあるかもしれませんね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 大変なのはどんなことですか。

「常にうまくいくわけではありません。測って正確にできていなかったときには加工に戻します。何度やってもいいものができないこともあるので、根気も必要ですね」

測定器のある場所は冷房が入っているけれど、金属を流し込む場所は室温がとても暑くなっている。加工で大きな音も出るし、重いものも運ぶ。

「鋳造は6000年前からある伝統的な手法。それを今も使っているんです。金属を流し込むときは高温での作業になるので、決して楽とは言えない環境かもしれないですね。メンタルの強さは必要だと思います」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「ここでいかに正確に測るかが会社の利益に直結します。数字が見えるようになっているので、それがモチベーションにもつながるんです」

ものづくりをする人は、数字ではないところに関心が強いのかと勝手に想像をしていた。けれど田中さんは利益をかなり意識して仕事をしているそうだ。

「会社が大きく変わっているタイミングなので、運用方法やコミュニケーションの方法も模索している途中です。そこがうまく回るようになれば、もっと利益を生んでいけると思うんです」


JMCは「小さな製造業の会社」から、「これからのものづくりをする会社」になるため、大きな変化をしている真っ最中。そのため前回紹介したように対外的なブランディングに力を入れたり、社内のコミュニケーションの強化を図っている。

規模もどんどん大きくなり前回は13名、今回の募集では20名の新卒採用を予定している。高校を卒業してからここで働き始めた新卒のスタッフもいるそうだ。

外からは順調な会社に見えるけれど、中ではどんな変化が起きているんだろう。


次にお話を伺ったのは遠山さんと櫻井さん。

遠山さんはマネージャーとして、検査業務を担当している。実務に加え、納品までの日程調整なども行うそう。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 大学では工業を学び、長野にある大きなメーカーに就職した。

「多くのことを学んだのですが、家族もいるし地元に戻ろうと思って。同じ製造の仕事なのと、ウェブサイトなどのデザインが製造業っぽくないところや、社長からパワーを感じたこともあって。3年前にここにきました」

入ってみてどうですか。

「若い人もたくさんいることもあって、パワーと勢いがあるのは感じましたね。それに経営陣が現場にもよく来るので距離が近いんです」

距離が近い。

「作業効率を改善するにも、実際に現場を見て指摘をしてくれる。声をかけてくれるので、ひとりひとりの能力を見てくれていることもわかります。信頼関係って、こうやってできていくんだなって」


櫻井さんはゼネラルマネージャー、いわゆる「工場長」としてこの場所を任せられている。謙遜したような話をするけれど、とても熱い想いを持っていることがわかる方。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「工場長の仕事がちゃんとできているとは思ってないです。若い子からベテランまでいろんな層がいる中で、マネジメントは手探り状態です」

今コンセプトセンターでは40代と30代が数名ほど。他の20名ほどは10代・20代。

時間やお金、仕事に対する考え方もそれぞれに違うけれど、押し付けるつもりもない。お互いが心地よく働くためにはどうしたらいいのかを日々考えているそうだ。

櫻井さんは前職、スーパーの惣菜売り場で販売の仕事をしていた。

「バックヤードにはかなり怖い寿司職人がいたんです。その職人さんや、ほかにもいろいろな考えを持っている人の間に入って組織をつくっていくこところは今の仕事とまったく同じだなと思いますね」

転勤の辞令が出たのをきっかけに退職し、遠山さん同様、地元で仕事を続けたいと考え入社したのがJMCだった。

当時は飯田にコンセプトセンターを立ち上げるタイミングで、小さな小屋の中、6人ほどで働くところから仕事がスタートしたらしい。とにかく勢いがあったから、休みもなく働いたこともあったそう。

「年間で休みが決まったのも最近の話です。会社が大きくなってきて、ようやく労働環境の整備やルールをつくりはじめました。これまでのやり方を変えるのも簡単じゃないんですよね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「建物やウェブサイトなど外に対するブランドのイメージがついて、すごく変わってきました。工場見学に来る人も増えたし、うちの奥さんにも『やっと会社らしくなったね』って言われて(笑)なにより自分たちが誇りに思えるようになったかもしれません」

ブランディングや社内コミュニケーションへの取り組みは、少しずつ芽を出しはじめているよう。

教育に関しても社内が整備されてきていて、今までは「背中を見て覚えろ」という雰囲気があったけれど、今年からメンター制度の導入が行われている。

「入って半年くらい経つと、覚えるよりも仕事を見つめていく時期に入ります。地味な仕事だから、その辺りが一番難しい時期かもしれませんね」

「やっていることは地味ですが、最先端の技術を使っています。ほかの会社ではベテラン層しか触れないような機械も若い人に任せてくれる。そこは魅力だと思います」

最新鋭のCTスキャナの導入やあたらしいサービスの展開。これからは航空・宇宙産業への参入も予定している。ブランディングなど会社の姿勢だけではなく、製造業としてもJMCの進化はすごい勢いで進んでいる。


どんな人と働きたいですか。

「元気で健康。それに好奇心がある人。それと汚い場所を見たらちゃんと『汚い』と言える人。まあ、僕が一番できないんですけどね(笑)」

「この工場もそうだけれど、選択肢がある内にほかの会社もよく見たほうがいいと思います。誰かに与えられてやるのではなくて、自分で選んで来て欲しい。そうじゃないと辛いとき、続かないですから」

櫻井さんがこうして包み隠さず話しをしてくれる感じが、スタッフとの信頼関係をつくっていくように感じた。

jmc - 2 今回はじめてものづくりの現場を間近でみることができました。印象的だったのは、働いている人がとても自信を持って仕事の話をしてくれるところ。

変化の真っ最中にあるこの会社で、あたらしいものづくりに挑戦してみませんか。地味に見えるかもしれないけれど、深く進めば進むほど、たのしくなる仕事だと思います。

(2015/10/7 中嶋希実)