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ものづくりの先にいく

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

「日本のものづくりをもう一度再構築していくことが必要だと思っていて。いいものづくりを追い求めていくのはもちろんですが、コミュニケーションとして、その価値を伝えていくことも共存させないといけないんです。」

株式会社JMCは3Dプリンター出力事業、鋳造(ちゅうぞう)事業、医療モデル受託開発・製作事業を行っている製造メーカー。

jmc151118 - 1 (1) JMCは今、会社の規模を大きくしていくために、社外に対しても社内に対しても、コミュニケーションの方法を大きく変えている真っ最中。この変化をともに起こしていくために「ブランドグループ」で働く人を募集します。担う役割はHR、PRアシスタントそしてIRです。

ものづくりと、コミュニケーションやデザインの融合。未来の製造業の在り方が、ここに見えるかもしれません。

新横浜駅から徒歩5分ほどの場所にJMCの本社がある。鋳造など広いスペースを要するものづくりは、長野の飯田にある製造現場で行っているそうだ。

到着したのは13:00。ちょうど「昼礼」の最中だった。毎日こうして、朝昼夕の情報共有をかならず行っている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 緊張感のある空気の中、午前の注文内容などの報告に対して受け答えしているのが代表の渡邊さん。5分ほど遅れて入ってきたスタッフに、厳しい口調で指導をしていた。

昼礼のあと、ちょっとドキドキしながらご挨拶をした。

「怒るときは怒ります。まだ50人弱の会社なので、僕がしっかり言わないといけない状況です。外部の人がいようが、ありのままをお見せしますよ。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ハキハキと話をする渡邊さん。「ファイターだけど、優しくて気を遣っている人」と事前に聞いていたのが、しっくりきた。

まずは、今の会社の体制ができるまでの話を聞いてみる。

「個人競技のほうが向いていると思ってプロボクサーになりましたが、芽がでなくて25歳のときに、父が1人でやっていた会社に入りました。保険屋さんです。ボクシングで殴り合っていたし、『人生、勝負だろう』って思っていたので、やっぱり向いていませんでしたね(笑)」

当時中小企業対策として、新規性のある事業に一定の金額を融資するという制度があった。

保険の営業を通して訪れた製造業の工場で、3Dプリンターでつくった製品をみがいている現場を見て「これだ!」と思った渡邊さん。もらったお金で3Dプリンターを買い、事業がはじまった。

jmc02 データさえあれば立体物をつくることができる装置。製品をつくる行程での試作づくりをしたり、医療の現場では手術のシミュレーションをするために、患者さんのデータから医療モデルをつくるのに使ったり。

3Dプリンターという言葉は最近よく聞くようになったけれど、一般的に使いやすくなったのが最近というだけで、装置としては20年以上前からあるものなのだそう。

「先見の明があったって言われますけど。別にやりたいとかやりたくないとかじゃなくて。ネタとしてそこにあったから、っていうのがはじまりですね。」

DMを発送したり、ウェブサイトを構築したり、飛び込み営業をしたり。とにかくすべて自分で、ゼロからのものづくりがはじまった。

「苦労話はありません。なにをやるにもスキルがついて、楽しかったんですよ。」

実際には大変だったことも多かったのではと思うけれど、とてもポジティブ。

「4年目くらいから保険屋さんの事業より、3Dプリンターのほうが売上を持つようになりました。」

その後、大きな事業の1つとなる鋳造をしている会社と合併。3Dプリンターでつくるプラスチック製品から金属まで。できることの幅が大きく広がった。

jmc01 事業が大きくなるにつれ、従業員も増えていった。

職人気質な人、大学院を出て入ってきた知識のある人、そして高校を出てすぐ現場ではたらく人。さまざまな価値観を持っている人が集っている。

経験者の職人を雇えば「俺のやり方」があり、なかなか文化形成ができないこともあった。新卒を採用すると、挨拶ひとつからすべてを教える大変さを感じた。

「人材動物園って呼んでます。大きくなってきたので、そろそろ統制をとっていかないとまずいよねっていう時期にいます。」

そんなときに出会ったのが、現在取締役でもある山崎晴太郎さん。グラフィックからウェブ、プロダクトのデザインや建築まで、さまざまなチャネルをもつアートディレクターだ。

今回入る人は、晴太郎さん率いるブランドグループで働くことになる。話を伺いに、北参道にあるデザイン事務所「セイタロウデザイン」にむかった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「はじめて会ったときには別にオーダーがあったわけじゃなくて。話をしているうちに、飯田の製造現場でコミュニケーションがあんまりうまくいってないことを聞いたんです。」

アイディアを出していく中で盛り上がったのが、JMCの技術を駆使して1台のカートをつくるプロジェクトだった。

「つくれますか?って聞いたら、つくれるって。適した素材の選出や軽量化対策まで、ぜんぶ自分たちで。」

普段のクライアントがいる仕事は製品の一部になるものが多いので、自分たちのものとして発表できないけれど、自社発信のカートプロジェクトでは積極的に広報も行った。車好きのスタッフも多いから、全体の志気を高めるプロジェクトになった。

その後、晴太郎さんは社外取締役に就任。さらに今年からは取締役として関わることになった。

外部パートナーとしてデザイン、ブランディングに関わっていたところから、取締役という話がきてびっくりしませんでしたか。

「ブランディングをしていると、そういう話をいただくことはありますが、基本的にはお断りしていて。でも、これは受けたんですよね。純粋におもしろそうだって感じたんです。」

おもしろそう、ですか。

「僕はもともと、デザインで世の中を変えていきたいっていうのが軸にあって。考えてみると、製造業で社会とうまくコミュニケーションがうまくできている会社がないと思ったんです。その中でJMCには可能性を感じました。」

jmc13 「妻の父が金型屋さんで。少し口下手職人気質の人なんですよね。最初はコミュニケーションがぜんぜんとれなくて(笑)」

昔は、実直にいいものづくりをしていれば仕事きた。だから社会と密につながる必要もなかったのかもしれない。

たとえば晴太郎さんがJMCと関わるようになって、型に金属を流し込んで部品などをつくる鋳造について勉強しようと入門編の書籍を読んでみても、なんのことを書いてあるのかさっぱりわからない、なんてことはよくあるらしい。

「よく言えば奥深い。悪く言うと、コミュニケーションを放棄していると思ってます。”伝える”と”伝わる”は当然違います。そして伝わる先には“おもしろく伝わる”という領域がある。おもしろく伝わるから、興味を持ってもらえたり、ファンができたりする。これだけ通信環境が発達して、消費者にダイレクトにつながれる時代に、ただ伝わるだけではもうだめだと思うんです。」

JMCは今「この国のものづくりを置き去りにする。」という、ハっとするコピーを掲げている。

「メイド・イン・ジャパンって言葉じゃなくて、次の新しい言葉を使うことによって、もうちょっと強い日本のものづくりが生まれるんじゃないかと思っているんです。」

メイド・イン・ジャパンは、日本の技術の高さを賞賛する言葉でもあると思う。けれどその概念では勝負ができなくなってくる。スーパーマーケットの野菜売り場で生産者の顔がわかるように、誰が、どんなことを考えて、どういう作り方をしているのかわかるものが勝ち残っていく。

「牽引する気はないです。先にいくから、ついて来れるやつだけついて来いっていうスタンスです。もちろん、これまでの日本のものづくりも尊敬しています。それと同じレベルで、コミュニケーションを立たせていくことが次のステージです。」

jmc151118 - 1 晴太郎さんと話をしていると、新しい製造業のあり方が見えてくる気がして、わくわくする。

けれど、現実はまだまだ追いついていない。

「製造業の中小企業から脱却しようとしている会社なんです。体質を変えるにはまだまだ時間がかかる。新しく会社をつくるっていう感覚に近い部分もありますね。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA ブランドグループの仕事は、対外的な部分だけではない。社内に対してのブランドの浸透も大きな役割の1つになっている。

ルールやフロー、会社の価値基準などをすべて設計しなおし、軸を通していく。働いている人の価値観も幅があるから、教育制度も一通りではうまくいかない。

晴太郎さんがJMC本社にいるのは週1日。現在社内で実務を担っているのは、晴太郎さんが「懐刀」だという魏(ウェイ)さんとデザイナーが1名。そして他部署を兼務している2名を加えた計4名だ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA もともとは建築の勉強をして、設計事務所に就職したそうだ。小さな事務所で広報的を中心に総務や人事の役割を担うこともあった。製造業のコミュニケーション下手な部分は、建築の業界にも言えることだと感じていた。

「晴太郎さんのようなポップさを受け入れる製造業の中小企業ってないと思うんです。私のような違う業界からきた人間がやってみたいと言うことも、ちゃんと受け止めてもらっています。」

昨日はどんな仕事をしていたのか、聞いてみる。

新入社員教育のスケジュールづくり、持ち物の連絡。展示会のブースに関する打ち合わせ。PRのための原稿づくり。あたらしくできる工場の、設計に関する確認…

普段会社にいるときは、自分の机に30分以上いることがないらしい。

「打ち合わせとか、あの人に話をしておかなきゃ、とか。社内のほぼ全員と話をします。人事という役割も担っているので、みんながなにに関心があるのか、どんな仕事をしているのかっていうことを把握しておきたいと思っています。」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 「仕事がうまくいかなくなるときって、コミュニケーションに起因している。いろいろな人がいるのでコミュニケーションの手段もその人に合わせて変えていく必要がありますね。」

実は入社したのは今年の1月で、まだ数ヶ月しかたっていない。社内から「5年くらいいる人みたいだね」と言われたりすることもあるらしい。

それだけ頼れる存在なんだと思う。

どんな人と働きたいですか。

「JMCは今会社として変化の最中にいるので、柔軟な姿勢で仕事ができる人がいいですね。それと根気強さ。」

4月1日には12名の新入社員を受け入れた。来年は20名ほど採用を予定している。現在の社員数が50名弱なので、会社の雰囲気も急激に変わっていくことになる。

「現場では茶髪、ピアス禁止って言ってるんですけど、東京にくると取締役が茶髪なんですよね。茶髪にされると困るので、新入社員の入社時研修に晴太郎さんのことを説明するコーナーをつくりました(笑)」

これも社内で価値観の違いをうめるコミュニケーションの1つ。晴太郎さんが隣で「僕はいいと思うんだけどな。大変だね、そういうのもね。」と笑っていた。

あたらしい製造業の在り方をつくる、開拓者の一員になれる仕事だと思います。

(2015/4/13 中嶋希実)