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シブヤで出会い、つながる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

学校を卒業して、就職する。社会に出て、日々どんなことを感じていますか?

私自身は、正社員として一つの会社で働き続けるべきだ、と考えていた時期がありました。

毎日顔をあわせる同僚たちと、任された仕事に一生懸命取り組む。土日には仲の良い友人と、仕事を忘れてリフレッシュ。

そんなふうに働き続けることは、決して悪いことではないと思う。身近な人たちに囲まれて、仕事に打ち込んだ時間は今の私の糧にもなっています。

一方で、このままでいいのかな?と考えるようになってから、いろいろな場所に出かけたり、人と話をして自分のやりたいことが少しずつ鮮明になっていったように思います。

普段のコミュニティから外に目を向けてみると、新しい価値観や自分に出会うことができるかもしれません。



シブヤ大学は、そんな出会いやきっかけに溢れた場所。渋谷の街全体をキャンパスに、地域資源を活かしながらさまざまな授業を開催しています。

shibudai01 授業は誰でも受講できるし、基本的には全て無料です。

たとえばレーザーカッターでものづくりに挑戦する授業や、子育てしやすいまちづくりについて一緒に考える授業、渋谷の街なかで音楽フェスをつくる!なんてものもある。

授業の企画から運営まで、さまざまな場面で活躍しているのが200人以上いるボランティアスタッフ。さらにより良い活動ができるよう、事務局が縁の下でサポートしている。

NPO法人であるシブヤ大学は、そうして成り立っています。今回は事務局の仕事も含め、シブヤ大学の運営に携わる人の募集です。



千駄ヶ谷と表参道の間にある事務局を訪ねました。

もともとは商社で経理を担当し、NPOとは無縁の世界にいたのが学長の左京さんです。

shibudai02 どうしてシブヤ大学のような場所をつくろうと思ったんだろう。

「きっかけは、僕が会社勤めをしていたころに友人たちとはじめた朝の勉強会です」

週に1回、朝7時に会社の近くのカフェに集まって、今自分が気になることや知りたいことを調べて教えあう。

「社会に出るまでは、社会と関わるってあんまりピンとこないと思うんです。たとえば新聞の記事一つとっても、それまでは自分とは地続きじゃない感じがあったけれど、就職後は興味を持ちはじめました」

一方で、生き方やキャリアについてもぼんやりと考えはじめたといいます。

「でも何に興味があって、どういう方向に行きたいのかはよくわからなかった。それを探すために、いきなり世界一周の旅に出たりというふうに自分の環境を変えることも難しい。できることを考えた末の勉強会でした」

勉強会の中で見つけたのが、NPOやソーシャルビジネスというテーマ。

海外ではNGO「グリーンベルト運動」を組織したワンガリ・マータイさんがノーベル平和賞を受賞。

単純な寄付や税金を使った支援ではなく、ビジネスの手法を活用して社会的な問題を解決する。そんな新しい事業モデルが評価され、さまざまな問題の担い手として注目されていた。

「そのモデルを見たときに、日本ではまだ未成熟なこの分野で自分も何かやってみたいと思ったんです」

知るほどに思いは強くなり、ついには会社を辞めることに。縁あって今の渋谷区長である長谷部さんが設立したNPO法人、green birdに参加する。

そこで立ち上がったのが、シブヤ大学の前身となるプロジェクト。渋谷区に新しい生涯学習のモデルとして提案するものだった。

けれども実現せず、NPOをつくって運営しようという話が出る。

「当時僕は26歳。事業のプロデュースどころか、外部の人に営業すらやったことがない(笑) でも自分と同じように生き方や働き方に悩みを持つ人が、さまざまな仕事や生き方をしている人たちと、直接出会って話を聞ける。自分の思いを話すことができる」

shibudai03 「そんな場があったら、その人は新しい自分自身やいきたい方向性を見つけていけるんじゃないかなと思って。最も責任のある代表という立場に手を挙げたんです」

左京さん自身が勉強会を通じて新しい世界に出会ったように、いろいろな生き方や働き方に接してもらえる機会をつくりたい。

2006年9月に、シブヤ大学の活動をスタートした。

とはいえ、最初から順調に進んだわけではない。なにより悩んだのは、やはりお金のこと。

「授業を開催すればお金は出ていく一方で、寄付をしてくださる企業はほとんどありませんでした。お金を稼ぐ仕組みばかり考えていた記憶があります」

どうやって状況を変えていったんですか。

「いろんな企業さんを訪問する中で、単に寄付はできないけれど自分たちの会社にも事業としてのメリットがある形で、何か一緒にできないかと言ってくれる担当者が現れはじめたんです」

東急ハンズでは地域貢献や販促につながる活動として委託を受け、渋谷店でものづくりの楽しさが伝わる授業を開催。ビールメーカーのマーケティング部門と提携して、渋谷の地ビールをつくるゼミを発足したりもした。

shibudai04 「NPOとして参加者の利益を最優先にしながら、連携する企業側にも一定の利益がある。そういう仕組みが少しずつ形になりはじめた。活動に賛同してくれる担当者が一緒に考えてくれたからこそ、乗り越えられたことです」

そんなふうに目の前の問題を一つひとつ解決しながら、場づくりを続けて今年で10年。

特に印象に残っていることも聞いてみると、「いっぱいあるからなー」と悩みつつこんな話をしてくれた。

「シブヤ大学立ち上げのときから、ボランティアスタッフとして関わっていた子がいたんです。彼女が企画したプロジェクトが『キャンパスMAPつくり隊!』っていうおもしろい名前で」 

活動内容は自分たちが魅力的だと思うお店を訪ねて「どうしてこのお店をはじめたのか」など、実際に店主に話を聞きながら地図上にマッピングし、人と街をつないでいくもの。

自分がいいなと思う人の働き方や生き方にふれるうちに、自分のありたい姿が明確になっていき、最終的には自らが小さな食堂をはじめた。

shibudai05 「彼女が、シブヤ大学は『失敗させてくれるところ』って言ってて」

失敗させてくれるところ。

「自分が本当にやりたいことを見つけたら、いきなりお店をはじめるのではなくイベントを開くなど、シブヤ大学の仕組みのなかで実際に試してみることができるんです」

失敗しても、仕事のように誰かに迷惑をかけて終わってしまうことはないし、途中からでも再スタートができる。そんな場所であることも、シブヤ大学の意義のひとつだ。



これから、シブヤ大学はどうなっていくのでしょう。

「10年、一つの地域に関わっていると、街の中での役割もいろいろと広がっていくんです」

街の中での役割。

「行政が困っていたのは、若い人たちにどのように情報を伝えるか、若い人たちが参加したくなる公共サービスをどのように企画立案するかということでした」

シブヤ大学が培ってきた考え方やコミュニティは、たとえば防災などさまざまな分野で役に立つ。最近では渋谷区の防災部署と、代々木公園で泊まり込みの防災訓練をやったそう。

「行政や企業、地域の人々。いろんな人やコトと出会い、相談を持ちかけられる。一緒に考えることで、どんどん活動の幅が広がっているような感じがあります」

shibudai06 「渋谷の街がキャンパスというシブヤ大学のコンセプトは、ゆったりとしていて懐が深いものだと思います。ですから、授業をはじめこの10年積み重ねてきた活動をより良くしていくと同時に、新しい出会いからはじまる未来を楽しむフットワークの軽さも大事にしたいです」

どんな人と一緒に働きたいですか。

「今のシブヤ大学で仕事がしたいと思うだけじゃなく、もっとこんな活動をしてみたい、こんなシブヤ大学にしたいと考える人がうれしいですね」

シブヤ大学で得られるものはきっと多い。でもただそこにいることが目的になると、自分も組織も成長していくことは難しいと思います。

自分なりに考えて、行動できる人ならきっと楽しく働けるんじゃないかな。



「彼女はやりたいことがあるって伝わってきたので、一緒に働いてみたいと思ったんです」と、左京さんが紹介してくれたのが吉川さんです。

shibudai07 以前は映画の制作会社で働いていた。そのときから、モヤモヤと気になっていたことがあったといいます。

「姉に障害がありまして。外に出ると障害を持っている人、持っていない人の生活が分離されているように感じていたんです。それをごちゃまぜにできる社会になるにはどうしたらいいかな、なにか自分で新しいことをやったほうがいいのかなと漠然と思っていました」

年齢や職業も違う人たちと出会うことで、将来の活動に向けてなにかヒントをもらえるかもとシブヤ大学で働くことを決めた。

実際に入ってみてどうですか。

「意外と自由。なにかやりたいって言った人に対して『それシブ大っぽくないからダメ』ってことは全然なかったし。これまでのやり方に入らなきゃって思ってたんですけど、今関わっている人が心地よかったらいいんじゃないっていう感じです」

ギャップは感じませんでしたか。

「私は特に感じませんでしたが、これまで定時の仕事で働いていた人はギャップを感じるかも。たとえば打ち合わせなどは平日の夜が多く、授業も土日開催が中心なので、それが無理っていう人は厳しいかもしれない」

shibudai08 日々の仕事は、会員の方に授業の案内をメールで送ったり、当日参加してくれるボランティアスタッフの調整をしたり。区に授業の報告書を出したりもする。

新しく入る人には、左京さんと一緒にアイディアを練って、企業に提案するような仕事も担当してほしいとのこと。

事務的なことから企画、経営に関わることまで幅広く関わることになりそうです。

「あと、ボランティアスタッフの人と話すことがめっちゃ多いです」

シブヤ大学の授業をつくるルールとして「自分自身が一人目の生徒になる」というのがある。

shibudai09 これは「人が集まる」とか「流行っている」という理由で授業を考えるのではなく、企画者自身が知りたいこと、やってみたいことに正直になればより良い企画が生まれるという考え。

だからなぜそれをやろうと思うのか、根っこの部分がぼんやりしている場合には聞いてあげることも役割のひとつ。

「でも事務局がゴールを設定したり、話し合いを引っ張っていくわけではないです。動けてなさそうだなと思ったら『最近どうですか』って声をかけたり。見守るような感じですね」

ときにはその人の仕事や暮らしにまで想像を巡らすこともあるそう。人と本当に向き合いながら働くのは大変だろうけど、そうして生まれたつながりがシブヤ大学をつくっていく。

shibudai10 ここで働くことは、きっと新しい世界に出会うきっかけになると思います。

興味を持ったら、ぜひ応募してみてください。

(2016/9/15 並木仁美)