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溶け合う文化

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

世界中のカカオ農園から良質な豆を直接買い付け、自社工場で選別から、焙煎、テンパリング、成型、ラッピングまでを手作業で行う。

カカオ豆とオーガニックのケインシュガーのみを素材とした本物のチョコレートをつくりだし、お店ではブラウニーやホットチョコレートを提供する。

豆からチョコレートバーへ。

「Bean to Bar」と呼ばれるクラフトムーブメントが、世界中で静かに進行しています。

dandelionchocolate01 サンフランシスコにあるDandelion Chocolate(ダンデライオン・チョコレート)は、そんなクラフトムーブメントを牽引するお店のひとつ。

大量生産される工業的なチョコレートではなく、100年前につくられていたような美味しいチョコレートをつくりたい。そんな想いで試行錯誤を重ね、カカオ豆の個性に向き合うBean to Barという新しい食文化を育ててきました。

今年2月には日本へ進出し、ものづくりの文化や伝統が根付く東京・蔵前でお店がオープン。

そして今度は新たに、三重・伊勢外宮前にお店ができます。

単なる横展開の2号店ではありません。クラフトムーブメントと伊勢のカルチャーを発信する、その地ならではの新しいお店を1から積み上げ、一緒につくりあげてくれる人を募集します。

 
東京から名古屋で特急電車に乗り継ぎ、約1時間半で伊勢市駅に到着。

ここから伊勢神宮の外宮までは徒歩10分ほど。外宮の目の前に、大正12年に郵便局の施設として建てられたレンガ造の古い建物があります。

dandelionchocolate02 この建物の左棟には地元のフランス料理店「ボンヴィヴァン」さんが入っています。貴重な近代建築を残そうと、オーナーの方が20年ほど前からここでお店の経営をはじめたそうです。

そして右棟に新たに入るのは、神楽サロンがプロデュースするサロン&ギャラリー。その一角がダンデラインオン・チョコレートのカフェになります。

ところで「なぜ伊勢なのだろう?」と思う人もいるはず。

ダンデライオン・チョコレート・ジャパンの代表、堀淵さんにうかがいます。

dandelionchocolate03 「場所っていうのはすごく縁がつきものでね。個人的な話だけど、僕は割と場所に対して運がいいというか、どんなに貧乏でもすごくいい住まいが見つかったりするんです。蔵前の場所も、クラフトのコンセプトに合う街っていうことで東京の東側を探したら、たまたまラッキーであの場所が見つかった」

「表参道や原宿より気持ちのいい場所だと思う。こんなこと言うのもなんだけど、僕はお客さんよりは一緒に働く人のことが第一なんです。いい環境で充実して働いてほしい。ただ、働く人の充実感や幸福度は必ずお客さんに伝わると思うんです。結果的にたくさんのお客さんに来ていただいて、蔵前で本当によかったと思います」

dandelionchocolate04 「それで伊勢の話も、2店舗目の場所を探しているときに運よくいただいた。僕は心の中で万歳しました。なぜならば、それはもう伊勢神宮が本当に好きだったから」

堀淵さんはサンフランシスコに在住し、日本とアメリカを行き来しています。

はじめて渡米したのはいまから40年前。約10年間ほとんどヒッピー生活を送り、その後サンフランシスコで日本漫画の出版社を起業。日本漫画をアメリカへ広めた立役者でもあります。

現在は、日本カルチャーを発信する複合商業施設の企画・運営やJ-POPサミットの開催、アメリカへ進出する日本企業のサポートなど、日本文化の輸出に携わっています。

「僕はアメリカに住んで、日本の価値は何かっていうのを常に考えています。それは今も昔も。十数年前に伊勢神宮の外宮を見たときに、もう完全に腑に落ちたの。これが日本人のデザインの原点なんだって。そしてその腑に落ちたことがすごく嬉しかった」

「それ以来、外宮は僕にとってスペシャルなところでした。それは単にスピリチュアルな話ではなくて。博多、京都、鎌倉… いろんな場所を考えていたけど、伊勢の話が来たときにもうこれは最高だと」

dandelionchocolate05 もちろんブランディングやビジネスの面を考えても、伊勢はとてもよいロケーションだった。

もともと東京都内ではなく、地方都市での展開を考えていたそうです。

「アメリカからやって来たオシャレなカフェ」で終始するのではなく、素材と手づくりにこだわり抜いたクラフト精神と、地方都市の地に足のついた独自文化を融合させた新しいお店。

サロン&ギャラリーに併設する伊勢外宮のカフェは、これまでにない形のコミュニティスペースになるといいます。ギャラリーでは伊勢神宮の式年遷宮がテーマのドキュメンタリー映画などが放映される予定。ダンデライオン・チョコレートも一部管理を担い、伊勢を伝えていきます。

「チョコレートだけじゃなくて、イベントやワークショップも積極的にやっていこうと。天気がいい日はここの庭にスクリーンを立てられますから、ちょっとした夜の映画会なんかもできる」

「伊勢には国内外からものすごくたくさんのお客さんが来ます。その人たちに伊勢や伊勢神宮の魅力を伝えることもしていきたいと思っています」

dandelionchocolate06 そんな伊勢外宮店だから、経験やスキル以上に話を聞いてワクワクする人に来てほしい。とくにイベントも企画するカフェマネージャーは伊勢出身の人が理想だといいます。そうでなくてもこの地のネットワークを持っている人だとうれしい。

今回募集するのは、伊勢外宮店の全体を統括するカフェマネージャーとカフェスタッフ、お店で提供するお菓子やホットチョコレートをつくるパティシエです。

蔵前店でも、カフェスタッフとパティシエに加え、チョコレート製造者とオフィススタッフを募集します。

実際どんな仕事をするのか。前回の日本仕事百貨の募集で入社した蔵前店カフェマネージャーの物江さん(写真右)とパティシエの辻さん(写真左)に話をうかがいます。

ふたりはこれから伊勢外宮店のオープンに向けてサポートに入ります。

dandelionchocolate07 辻さんはこれまでずっとお菓子づくりをしてきた方。フランス菓子店やチョコレート専門店などでパティシエや製造責任者を務めていました。

「カカオ豆からチョコレートバーをつくることに興味を持って応募しました。ですが、ここのチョコレートは食べたことなくて。それで面接のときに食べさせてもらったんですけど、マネージャーの方が冷蔵庫からチョコレートをそのまま取り出してきたことに衝撃を受けて・・・」

というのも、チョコレートは湿気を嫌うから冷蔵庫に入れないのが基本なんだとか。入れるとしても新聞紙に巻いたりして工夫するそう。

「えっ、大丈夫かなって内心思いながら食べたら、すごくおいしくて。正直、これまでカカオ豆から仕入れてつくっているという他のBean to Barのチョコレートを食べても、フランスの大手メーカーのものには敵わないと思っていたんです。でも、ここならやっていけると食べてから思いました(笑)」

dandelionchocolate08 そんなダンデライオン・チョコレートのお店で働いてみると、個性が活きる職場だということに気づいたそう。

オープン当初はサンフランシスコ店のメニューをそのまま移植することはせず、蔵前店の風土やパティシエ一人ひとりの技術に合わせてメニューや生産量を決めていった。

「スタッフの意見に耳を傾けてもらえたり、意見が通る部分がわりとあって。たとえばサンフランシスコではチョコレートに加える砂糖はケインシュガーですが、そのチョコレートでお菓子をつくるときには普通にグラニュー糖を使っていたりするんです」

「そこに矛盾を感じていることを伝えると、『ケインシュガーでつくれるなら、日本のオリジナルとしてやってみていいよ』と。やはり砂糖が違うと焼き具合が変わってきたりとか、難しいことはありますが、そうやってレシピから見直すこともできて」

dandelionchocolate09 定番メニューは日々レシピを改良しながら、おいしいお菓子づくりを目指している。

また、新メニュー開発も行います。

お店近くにあるお茶屋さん「NAKAMURA TEA LIFE STORE」とコラボレーションし、ほうじ茶とチョコレートを合わせた蔵前店オリジナルのホットチョコレート「KURAMAE」をつくりました。

dandelionchocolate10 伊勢外宮店でも地元のお店や地域のコミュニティとコラボレーションしたり、いろんなことができると思う。

「うちのお菓子はシンプルなものが多く、それゆえ難しいところもありますが、思ったより難しくないところもある。だから毎日触れることが大事。すごく経験のある人じゃないとだめというわけではないです。本当につくることが好き、食べることが好き、チョコレートが大好きな人が向いていると思います」

 
「カフェマネージャーはどんな人がいいかな。自分のために頑張れる人。私利私欲という意味じゃなく、いい意味で会社を利用して自分を高めていきたい人がいいな」

そう話す物江さんは、将来自分のお店を持つことが夢なんだそう。

これまでも様々な飲食店で店長を務め、調理師としてフードをつくる側に立ったこともありました。

ダンデライオン・チョコレートでも、お店をマネジメントしたりチームビルディングをしたり。ほかにもバリスタ業務やイベント企画・運営も行っています。

dandelionchocolate11 「この会社で大事なのはストーリー性です。たとえばお店のディスプレイを並べたとき、一見おしゃれなだけでそこに意味がなかったらダメなんですよね」

「奇抜じゃなくて斬新でないと。だから新しいお店でも伊勢にルーツのあるものを置いたり、メニューに取り入れたりしようとしていて。これから加わる人にも一緒に考えてもらえたらいいですね」

きっと伊勢だからこそできることはたくさんあると思う。

蔵前店でも様々なチャレンジが行われています。今年9月には世界中のBean to Barメーカーや関係者が100人集まるイベントを開いたのだそう。

dandelionchocolate12 「この会社でお店やイベントをマネジメントする力を伸ばして、もっと上のポジションも狙っていきたいし、堀淵さんを目掛けてがんばりたい。この会社に入ろうと思ったのは、堀淵さんの存在がすごく大きいです。人間的にすごく好きだし、憧れています」

この物江さんの言葉はすごく分かる気がする。堀淵さんは会って話してみると、しびれるほどかっこいい人です。これまでいろんな会社を取材してきたけど、こんな人はなかなかいないと思う。

「Bean to Bar」「クラフト」「伊勢」「文化」「コミュニティ」。様々なキーワードが溶け合うこのお店で一体どんなことができるだろう。

何か一つでもワクワクすることが思い浮かんだら、ぜひ応募してほしいです。

最後に、堀淵さんからメッセージを。

「いま世界は大きく変わりつつあります。僕はベターワールドになっていく感じがしない。むしろ危機感を感じている。そのなかでBean to Barやクラフトムーブメントの動きっていうのは、大げさだけど重要なことなんじゃないかって。これを面白いと思う感性のある人は、これからの危機的な世界に向けて何をやってもやれると思うんです」

「まずは日本人として一度は伊勢神宮に遊びに来てください。きっと何かを感じるはず。それだけの場所だからさ」

(2016/10/26 森田曜光)