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第9回「その後、どうですか?」

「日本仕事百貨で出合った仕事をスタートさせたひとたちは、どんなふうに働いているのでしょう」

そんな声をいただいてスタートしたのが、コラム『その後、どうですか』。

今回は、創業54年の福永紙工株式会社を訪ね、入社3年目を迎えた広報・Web担当の竹田夢子さん(写真右)と構造設計士 DTP担当の平野まどかさん(写真左)にお話を聞きました。


最先端の技術で紙を印刷し加工する福永紙工。

建築家の寺田尚樹さんとの協働プロジェクト「テラダモケイ」や、デザイナーのアイデアを加工し印刷する「かみの工作所」を手掛けるなど、紙の美しさや楽しさを生かしたオリジナル製品の企画製造・販売などを行っています。


会社があるのは、のどかさが残る東京・立川。カラッと晴れた日、お二人に会いに行ってきました。

(聞き手:インターン生 竹本道子)

 

-はじめに、竹田さんの志望理由を教えてください。

竹田 以前、文房具の卸売りの会社にいまして。展示会で福永紙工の紙製品を見ながら、おもしろいものをつくる会社だなと思っていました。それから転職して、インターネット関連の会社でweb広告の営業を担当しますが、やっぱり有形商材が好きなんだと気づきます。モノをあつかえるほうが、楽しいはずという想いがふくらんでいたときに、大学の先輩に教えられた日本仕事百貨で福永紙工の募集を知り、これだと。応募したらうまくいきました(笑)。


-有形商材の現場、期待どおりでしたか。

竹田 クリエイティブな企画も多いので、優雅に働く姿を想像していたのですが、まさに町工場。プロダクトデザインって、思っていた以上に泥臭かったですね(笑)。しかも展示会やイベントなど、マンパワーに依存していて驚きました。全部、自分たちでやってるじゃんって。


そのぶん達成感はあります。たとえばDMをつくるとき、間にいろんなひとが入ってしまうとイメージから離れていくことが多いのですが、ここではデザイナーさんや現場のひとたちと直接話せるので、イメージ通りにできあがって、「よしっ」って思うことが多いですね。

-社内のシームレスな雰囲気が伝わってきます。広報にむずかしさを感じることはありますか?

竹田 「かみの工作所」や「テラダモケイ」は知っているけど、福永紙工の名前は知らないというひとが多いんですよ。

市場にモノがあふれ、均一的な工業製品が多いなか、福永紙工の製品って、嗜好性が強くて、絶対に必要なものじゃない。少し高くて、「あったらいいな」という商品。だから“ストーリー性や付加価値のある商品をつくっている福永紙工“を打ちだそうと意識しています。


たとえば、空気の器は、誰かに広げて見せて「町工場でつくってるんだぜ」と話したくなるモノ。そこを表現したいのですが、作品はデザイナーさんのもの。福永紙工の色が出すぎでもいけない。バランスが難しいですね。

-福永紙工の技術があってこそ、完成される紙の作品。たしかにもっと知ってほしいですね。

福永紙工はメディアに掲載されることが多いので、その記事をSNSで紹介することが多いのですが、そればかりでは面白くないので、Twitterでは身近なことやお客さまとのやりとりと、工場ネタを発信する、そんな工夫もしています。

-認知度に変化はありましたか。

竹田 ジワジワ来てます!SNSで「テラダモケイ」や「かみの工作所」ではなく「福永紙工」と、つぶやいていただくことが増えました。

-それはうれしいですね。では、平野さんにもうかがいます。なぜ、福永紙工で働こうと決めたのですか?

平野 大学でデザインの勉強をしていたのですが、就活で苦戦しまして…。そうこうしているうちに卒業制作に夢中になって、のんびりしちゃったんです。年が明けて2月になり、友人から日本仕事百貨を教えられ、福永紙工の求人に「ここしかない!」と(笑)。


もともと表情豊かな紙が好きでした。紙の現場に対する憧れもあって、「ここだ!」って思いました。

-憧れの紙の現場、どうでしたか。

平野 自分の技術を生かせる仕事がしたいと思っていたのですが、それをバリバリ生かせている実感はあります。製品をどうつくっていくか、デザインをどう印刷のデータにするか、はじめて経験することがたくさんあって。やってきた技術を生かしながら、その技術を進歩させているところですね。

でも、入社したばかりのときは、忙しすぎて、わからないと言う余裕もなく、電話応対が苦手ですと言っている場合でもなく…。おかげで、いろんなことがこなせるようになりました。


製造がメインと聞いていたのですが、実際は企画して製造ラインにのせる。展示会を設営する。キャプションもつくる。モノをつくってお客さまに届けるところまでが仕事です。コストを抑えることや製造ラインにのせるためには、どうすればいいのかを考えなければならないところが、学生時代と大きく違いますね。

-複数の仕事を同時進行。どうやって忙しさを乗り切るのでしょう。

平野 昨年の展示会「かみの重力展」もてんてこまいでした。新作をつくるのに、間に合わない!っていうことも多くて。でも、そんな忙しさのなか、みんながいつも「ありがとう」を伝え合う、その「ありがとう」で頑張れています。

-「ありがとう」を伝え合う?

竹田 あらゆるところで「ありがとう」が飛び交っています。持ちつ持たれつの意識が強い会社なんですね。みんな万能じゃないので、苦手なところは得意なひとにお願いして補ってもらう。できあがったら「ありがとう」です。

平野 「ありがとう」を言い合うのは、社長の存在が大きいと思います。

-社長の存在が大きいとのことですが、山田さん、どうでしょう。

山田 ありがとうは、組織がフラットだから自然に生まれることば。中小企業って、お山の大将が経営しているようなところがあるでしょ。印刷業とか製造業って、今は少なくなりましたが、旧態依然で、現場のモチベーションがどうも上がらない。


自分の仕事に責任をもって、主体的に動いてもらわないと今の現場は成り立ちません。そうじゃないと仕事が流れ作業的になったり、責任の押しつけになったりしてね。ルーチンでは、まわらない組織なので、フラットは意識していますね。

-フラットだから福永紙工らしい遊び心がある製品が生まれるのですね。

竹田 デザイナーさんと仕事をする上で、福永紙工はクライアントではありません。モノをつくるプラットフォームをデザイナーに提供しているわけで、協働なんです。言葉のニュアンスや意味をどうとらえるかといった、デザイナーさんの想いやギミックは大切にします。

そこに注文をつけないので、遊び心につながっていくのでしょうね。もちろん生産ラインにのせるための注文はします。工場を動かすことがプロジェクトの至上命題なので。難しいところですが。

平野 最近だと「1/16サイズで作る椅子の紙模型」。印刷したあとにレーザーカットを行うのですが、とても細かくて、ほんの少しでもずれたら商品になりません。


デザイナーさんは、カットでどのくらいの精度が出せるかまでは、理解していないので「もう少し加工しやすいデザインに変えられませんか」と提案しました。細かすぎるとコストもかかりますし。

イメージをこわしたくないデザイナーさんと、じゃあどうすればいいかを模索するためにも、まずはコミュニケーションです。

山田 社内はもちろん、デザイナーとの関係もフラット、クライアントともフラット、自由度が高いからのびのびしたものができるのでしょう。

-いい作品はいい関係性から生まれる。竹田さん、フラットな組織の社内広報にも、力が入りますね。

竹田 広報の担当になったのは最近でして、メディアに掲載されても社内に向けて「ここに載っています!」と発信していないことに気づきました。

それで、“成果物を現場のひとに見てもらおうキャンペーン”を始めたんです。現場のひとって叱られることはあっても、ほめられることがないという話になって。

平野 (現場は)ほめられないですね(笑)。工程で色が違うとか、ずれてるとか、そういうことは言われるのに…。しかも、過程に関わっていても、完成形を知らないことが多い。

竹田 それってよくないよねと。そこで、福永紙工の記事が出たら、食堂を中心にあちこちに貼りだして、メールで一斉送信します。成果物を展示する棚もつくりました。


今では、みんながチェックしてくれています。社内の人間から「きれいに仕上げていただいてありがとうございます」なんてコメントが届いたりして、うれしいですね。

-共有することで、チームが強化されているんですね。最後に、お二人にとって福永紙工はどういう場所でしょう。

竹田 同じことが、なにひとつない、常に試行錯誤の職場。言っちゃったあと、さてどうしようと考える毎日です(笑)。

仕事の筋肉が一度につく、修行の場なんです。ひとつ案件を終えても、すぐに新しい案件がきて、そこで過去の経験を引っ張ってきて応用する。動いているうちに、筋肉がもりもりつきます。パレット型の什器や、紙を運ぶことも多く、本物の筋肉もつきますけどね(笑)。


平野 わたしにとっては、自分が成長できる場所です。大きい会社に新入社員として入っていたら、こんなに頭を使うこともなく、思ったこともできなかったかもしれない。

今着ている青い制服、はじめは抵抗がありましたが(笑)、チームで働くには、いいかなって思っています。発見がたくさんあって、日々成長できる、そんな現場にありがとうです。

-すてきなお話ありがとうございました。ありがとうの現場で働きながら、ありがとうの現場をつくっているお二人。相乗効果で会社とひとが成長していく強さと素晴らしさを感じます。

3年後、お二人がどんなふうに働かれているのか、福永紙工はどんな会社になっているのか、「その後のその後」に、会いに行きたいと思います。

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