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産直シェフ

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仕入れる食材は駅舎内にある直売所から。ほとんどが地域で採れた新鮮なもの。

だけど、それだけしか使えないレストランで働くとしたらどうでしょう。食材が限られるから、ちょっと大変かもしれません。

でも自分が知らない土地を訪れたら、そんなレストランに行ってみたいです。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 広島県庄原市にある道の駅たかの

多いときは1日に1万人以上ものお客さんがやってくる人気の道の駅です。特徴は地域の食材しか置いていないこと。

今回募集するのは、この道の駅内にあるカフェレストランで料理をする人。ちなみに、このレストランでも扱う食材のほとんどが地域のものです。

直売所で販売を担当する人も募集しているので、ぜひ読んでください。


広島市内から直通の高速バスに乗って1時間50分ほど。

尾道市と松江市を結んで中国地方を縦断する「中国やまなみ街道」を進んでいくと、高野ICのすぐそばに道の駅たかのが見えてくる。

庄原市高野町は広島県最北端、中国山地のど真ん中に位置しているため、年間を通した平均気温は10.6℃と、冬は雪深い地域だ。これは青森県とほぼ同じ気候なのだとか。

「このあたりは標高が高いので寒暖差もけっこうあるんです。朝と昼で20℃も違う季節があるので、高野町で採れる野菜はおいしいんですよ」

そう話すのは、道の駅たかのを運営する株式会社緑の村・本部長の須安さん。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 高野町の風土は果物の栽培にも最適で、30品種以上ものりんごが栽培されている。

野菜も様々な種類が栽培され、とくに大根とトマトが人気。水が美味しい地域のため、よいお米もたくさん採れるそうだ。

そういった高野町産の農作物を中心に、道の駅たかのでは庄原市内産のものにこだわって販売している。

例外はひとつだけで、合併前の昔に高野町が姉妹都市提携していた広島県大崎上島町の特産品がいくつかあるくらいだ。

「ここは、お金をすべて地域に落とそうっていうのがコンセプトなんです。広島にも世界的に有名な観光地があるけど、そこで売られている商品は地域外の業者がつくったもので、地元にはお金が全然落ちていなかったりします」

「道の駅でも地域外の業者が商品を入れたりするところが多いんですけど、ここは地域の生産者さんがつくるものに限っています。だから、よくあるお土産品は売っていないし、テナントも入れてないんです」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 高野町には安定した経営をしている農家さんが多いため、県内の他の地域と比べて後継者が育っている。

それでも農家さんのほとんどが高齢化していて、町の人口は1800人を切ってしまった。

中国地方にはあと10年もすれば消滅するような地域がたくさんあり、高野町もそのうちのひとつだ。

このままではいけないと、高野町で暮らす人々が有志で『高野地域づくり未来塾』という市民グループを発足。ここに高野町出身の須安さんも参加していた。

そんなある日、中国やまなみ街道の開通に伴い高野IC付近で道の駅ができる構想が生まれた。未来塾は地域のための施設になるよう市に掛け合い、中国やまなみ街道を管轄する国土交通省との交渉も市と協働で進めてきた。

「ここは町のみんなで一緒につくってきたんですね。たとえば最初にあがってきた建物の設計は茅葺き屋根だったんですけど、このあたりには茅葺き屋根の家があるわけでもないし、ましてや維持費が大変なのでみんなで設計をやり直しました」

コンビニを併設する案もあったけど、みんなで話し合ってやめることにした。

簡単に売上が上がるのは間違いないのだけど、それでは地域にお金が落ちない。

「よそからいろんなものが入ったら、普通のサービスエリアと変わらない。こんな山の奥深い地域で勝負していくためには、ほかとは違うこの地域オリジナルのものを売っていこうとなったんです」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA いくら豊富な農作物がとれるとはいえ、庄原市内のものだけでやっていけるのか、不安の声もあった。

けれど、安心・安全で美味しい地域のものを正直に売っていけば、お客さんはちゃんとついてくれるはず。そう信じて、生産者たちの協力も得ながら一つずつつくり上げてきた。

今では遠くからもお客さんがやってくる人気の道の駅へと成長した。休みの日にはひっきりなしに観光バスがやってきて、多いときには1日に1万人以上もの来客数になるという。

初年度から目標の倍近くの売上を達成し、出荷してくれる生産者が年々増えている。


そんな道の駅の中にあるのが『カフェレストランそらら』。

今回、募集するのはこちらの料理長補佐になる人。

現在は総料理長の亀谷さんと5名ほどのパートの方だけなので、人手が足りていないのだそうだ。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 亀谷さんは16歳のころから13年以上和食をつくり続けてきた生粋の料理人。

個人店やホテルなどを経て、4年前にここへやってきた。

「当初からお客さんでいっぱいだったので毎日が忙しくて、あっという間の4年ですね。今は本職の人間が自分だけなので、人が増えたら新メニューを考えたりとか、また新しいことができるかなっていう期待をしています」

カフェレストランそららでも、できる限り地元産のものを扱うようにしている。

道の駅内にある直売コーナーから直接仕入れるため、美味しくて新鮮な食材を扱える一方で、なかなか大変なことも多い。

業者から仕入れる食材のように安く安定的に手に入れられることはなく、地物は形がまちまちだったりするため下準備に時間を要する。

扱える食材の種類に限りがあるので、メニューを考えるだけでも一苦労だ。

「魚介類があればこんな料理つくれるのになって思うんですけど、どうしても野菜がメインになるので、魚の代わりに野菜を使ったりするんです」

「たとえば、おせち料理に入れる砧巻き(きぬたまき)といって鮭を巻いたりした酢の物。鮭の代わりに甘い玉子焼きを入れて桂むきした大根で巻いてみました」

旬の野菜を使った人気No.1メニュー『たかの御前』にも、亀谷さんのアイディアがちりばめられている。

ゴギという珍しい川魚を使ったゴギ豆腐、庄原市内で生産されている瀬戸もみじ豚入りのあんがかかった高野そば、古代米ちらし寿司など。

食材を活かすだけでなく、客層の多くを占める女性に受けるようにと小鉢を増やし、目でも楽しめるようにしている。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 実際に食べてみると素材の味がいいのはもちろん、道の駅で食べられるとは思えないくらい上品な味付けで美味しい。

また、亀谷さんは道の駅内にある菓子工房や加工場での商品開発も一部担当。

地元の味噌を使って『おにぎり味噌』をつくったり、最近は雪室で糖度が上がったじゃがいもを使い、モンブランをつくったのだという。

「お菓子のことに関してはあまり経験がないですけど、こんなのどうかなって閃いたらすぐやってみるんです。対面販売でお客さんの反応がすぐに見れるので、どんどん試せる環境ですね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 自分で考えてつくるのは大変だけど、そのぶんやりがいは大きい。いろんなことにチャレンジできるのは、ほかの飲食店にはないここならではの面白さだという。

「前職とかは常に自分の上に人がいて、その人が考えたメニューをその通りにつくる仕事でした。それが今はぜんぶ自分でやるようになったので、一つずつ考えて形にしていくっていうのが楽しいですね」


そんな亀谷さんの料理を「とてもおいしい」と話すのが、販売飲食部マネージャーの前田さん。

農家さんと一緒に二人三脚で直売所をつくりあげてきた。

「大根をつくる農家さんがこんなのもつくってみたよって、赤い大根とか黄色い大根とかいろいろ出してくれるんです。見せ方も、籠に入れてみたりパッケージを考えてみたり。生産者のみなさんは地道に頑張ってくださるんですよね」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 道の駅たかののスタッフたちも日々試行錯誤を重ねている。

イベントの企画や軒先での対面販売を強化し、旬のものがたくさん取れる時期に加工したりしてお客さんに提供している。

一番人気はスライスしたジャガイモをその場で揚げたポテトチップス。比婆牛ステーキやフルーツカットなど、旬のものを様々な形で提供し、お客さんも飽きずにリピートしてくれるそうだ。

また最近では、高野町の逸品を100個つくろうというプロジェクトを進めている。これによって商品数の増加が見込めるし、これまで廃棄するしかなかった売れ残りの野菜などを有効活用することで生産者を少しでも助けることができる。

「専門家を呼んで毎日のように研究しとるんですけど、あそこの家の漬物は美味しいよねっていう話を聞きつけて商品化したり、りんご農家さんに手づくりで無添加のジャムをつくってもらったりして」

「それでできあがったら、みんなで試食会をしてね。あーでもない、こーでもないって言いながら頑張っていますよ。みんなでつくるっていうのが、ここの原点です」

takanoyama09 「ここがこれだけ大きくなったのは、彼女の功績と言っていいくらいですよ」と須安さんは話していた。それほど道の駅たかのにとって前田さんは大きな存在だ。

もともと地元の農協で32年間働いていた方で、そのときのネットワークを活かして道の駅たかのは生産者とつながることができた。

ここで再び、前田さん。

「岡山の津山からここへ嫁に来て、すぐ農協に入ったんですよ。それで一番に思ったのは、食材がとにかく美味しいって。野菜や果物はもちろん、ワラビとかゼンマイとか山菜もいっぱい食べられるの」

「自分が美味しいと心から思えたから、それを町中の人にも味わってもらいたいと思って、農協を辞めたあと農家レストランを7年やっていたんですよ。最初は10年やるつもりだったんだけど、須安くんが何度も何度も道の駅を一緒にやろうって誘ってくれてね(笑)」

OLYMPUS DIGITAL CAMERA そんな前田さんは生産者のことや採れる農作物のことをよく知っている。

「生産者さんは自分で値段をつけて出荷されるんですけど、『この値段どう?』ってよく相談されます。それに対して、出来がイマイチだからもうちょっと安くしたほうがいいんじゃない?とか、指導というよりは一緒になって考えるんです」

一緒に考えていくのは、これから入る人も同じです。

地域にある食材を発掘し、ここにしかないものを提供していく。そうすることで多くの人が訪れる場所になっていくのだろうし、地域も元気になっていくと思う。

ローカルで働いていくことを考えているなら、たくさんのことが得られると思います。

ぜひこの場所にしかないものをつくってください。

(2017/10/17 森田曜光)

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