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雑貨の灯火をつなぐ人

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

地方都市に取材に行くと、どこも様子が似ているように感じます。

駅前にはファーストフードや居酒屋のチェーン店が並び、古くから地元にあったお店は路地の端でひっそりとしている。

大きな資本を持つお店が進出するにつれて、地場の小さなお店はどんどんなくなっていくのかもしれません。

それは、地方の雑貨店も同じこと。

日本国内の伝統工芸や地場産業など、つくり手たちの技術を生かしたものづくりを行なっているsalvia(サルビア)

salvia-01 そのサルビアで、日本のものづくりを伝え、地方の雑貨店を支える人を募集します。

まずは、セールスマネージャー(催事責任者)として、サルビアのアイテムを多くの雑貨店に広めると同時に、日本各地の催事に参加する人。

また、卸先への対応や商品管理を担当するバックヤードスタッフも求めています。

とはいえ「日本のものづくりを伝え、地方の雑貨店を支える人」なのに、催事で働く?と思うかもしれません。

でもそこには理由があるんです。ぜひ続きを読んでみてください。





東京・蔵前。

駅を降りて、隅田川沿いに5分ほど歩く。文房具に雑貨、コーヒーなどさまざまなお店でにぎわうまちの一角に、サルビアの事務所はある。

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「こんにちは、ここがサルビアです」

そういって中へと案内してくれたのは、サルビアのメンバーのみなさん。

マネージャーの団さんは、ニコニコとテンポよく話すまるで噺家のような方。話を聞くうちに、思わず引き込まれていく。

salvia03 「サルビアは、セキユリヲというデザイナーの個人的な活動からはじまりました。マッチ箱などの小物にデザインをほどこして友人に配るうちに評判となり、サルビアというブランドができて。当初はワンピースやシャツといった洋服づくりをしていました」

団さんがサルビアに加わったのは、ブランドが少しずつ認知されはじめたころ。ビジネスパートナーとして、サルビアをより広める役割を担っていた。

ところが根強いファンはいるものの売れ行きは今ひとつ。なかなか結果に結びつかない日々が続いた。

「なかなか芽が出なくて、苦しい時期だった。ただ、当時からずっとこだわっていたことが一つあって」

こだわっていたこと?

「日本のものづくりです。どれだけ試行錯誤を繰り返しても、国内の工場や職人さんと服をつくるということだけは絶対に欠かさなかった」

もともと、日本のものづくりへの興味はあった。ところが実際に一緒に仕事をするなかで、つくり手の姿勢に強く感銘を受けるようになる。

「多くの職人や工場は雄弁ではありません。けれども、彼らの技術と精神を目の当たりにしたとき、胸を打たれるものがあった。サルビアは、それを世の中の人に知ってもらうきっかけになりたいと思ったんです」

salvia04 そのなかで出会ったのが、新潟のとある工場。この出会いが、サルビアの方向性を決めた。

「そこは靴下を製造する工場でした。小さな工場ながら、真摯に向き合っている姿勢に感動して。一緒に靴下をつくってほしいと、お願いしに行ったんです」

対話を重ね、何度も試作品をつくった末に、サルビアのデザインをもとにした靴下が完成。かわいらしいデザインと心地よさが評判を呼び、サルビアメンバーの予想を大きく上回る売れ行きを見せた。

salvia05 この靴下をきっかけに、サルビアは洋服から雑貨へとフィールドを移すことになる。

「サルビアの力は、日常をそっと彩る雑貨でこそ発揮されるんだと気づいたんです。伝統と技術に立脚したものづくりに、新しいデザインをほどこして販売し、買っていただく。そしてまた次の発注へつながる。そうした循環が、地方のものづくりを支えることにつながりました」

現在では、靴下やブローチ、ハンカチといった服飾小物を中心にものづくりを続け、世の中に届けているサルビア。

そのなかで、もうひとつ大切にしたいものが見えてきた。

商品の卸先である、地方雑貨店だ。

「今、地方の雑貨店は本当に苦しくて。どんどんなくなっているんです。大手雑貨店が地方へ進出すると、まちの小さな雑貨店は一気に煽りを受けてしまう」

それだけではない。大手雑貨店が収益を得られないと判断し撤退した場合には、まちから雑貨店そのものがなくなってしまうという。

「雑貨は、人々が豊かに暮らすために欠かせない生活の彩りです。雑貨店は、まちの資源といっていい。サルビアは、まちにいろんな雑貨店がある風景を残したい」

そのため、サルビアは大手雑貨店へ商品を卸すことは一切しない。オンラインショップも数年前に閉めた。

もともと人気の高いサルビアの商品。まちの雑貨店に行かないと手に入らない、という状況をつくることで、地方の雑貨店の価値を底上げする。

そして、サルビアが日本各地の催事に参加する最大の理由。

それは、雑貨店があることを地元の方に知ってもらうことだ。

salvia06 商品を売ることももちろん大切。

けれどそれ以上に重要なのが、地方の雑貨店とお客さんをつなぐことだと団さんはいう。

「商品をお買い上げくださった方に、近くの卸先の雑貨店さんのことも一緒に伝えるんです。催事で気に入った商品が実は近くの雑貨店でも日常的に買えると知ったら、『こんな素敵なものを売るお店があるんだな、行ってみよう』となるでしょう」

その会話をきっかけに、お客さんが雑貨店まで足を運ぶようになる。やがてお客さんが雑貨店を支える幹となり、雑貨店はまちの資産として残り続ける。

商品をつくり、届けるだけではない。その先の循環を生み出すことこそ、サルビアの真骨頂なのだと思う。

「地方のものづくりと雑貨店を支える。サルビアは、そのために力を使いたいんです」





そんなサルビアの大黒柱が、チーフMDの篠田さん。柔らかい笑顔と語り口が印象的な方だ。

salvia07 もともとは幼稚園教諭として働き、その後夜間デザイン学校に通った。卒業後の進路を考えるなかで、偶然サルビアを知ったそう。

「たまたま手に取った雑誌に、サルビアが紹介されていて。ものづくりに対してのスタンスが素敵だなと思って、メールを送ったことがきっかけでした」

現在は企画や生産管理など、サルビアに関わるさまざまな仕事を担当している篠田さん。

なかでも催事は、店舗を持たないサルビアにとって、お客さんとの大切な接点だという。

「だからこそ人任せにはせず、細かい作業まですべて自分たちで決めています。主催者との調整から商品ラインナップの選定、梱包や売り上げの管理まで。コツコツ積み重ねる作業が本当に多いです」

salvia08 仕事は、華やかな催事のための地道な作業がほとんど。

そのぶん、ギャップを感じる人もいるかもしれない。

「仕事の8割は、地道なものです。什器もダンボールも運ぶので、体力も必要。華やかな本番のために日々舞台をつくるようなイメージです」

「そのぶん、自分の考えで場をつくれるのは面白い。たとえば、夏だからハンカチを多めに持っていこう、とか、冬はウールの入ったストールがほしいかな、とか。お客さんを想像しながら商品を決めていきます」

そんな篠田さんが何よりも大切にしているのが、接客だ。

決して押し付けず、興味を持ってくれた人にそっと商品の物語を紹介するように。帰っても商品を思い出せるような接客を心がけているという。

「私たちが伝えたいのは、デザインや価格よりもつくり手の思いです。この商品はどこの工場で、どんな人がつくっているのか。心に残る説明ができて、それを買ってくれるお客さんがいる。それがつくり手の次の発注に繋がるのが、一番うれしい」

salvia09 「さらにブースには、事前にいただいたり、自分たちでつくったりした周囲の雑貨店のカードやマップを必ず並べます。実際に商品を気に入ってくださった方に、日常的にサルビアの商品を手に入れられる場所として紹介するためです」

実際に、催事をきっかけに地元の雑貨店を訪れる人も少しずつ増えているそう。

さらに、催事の合間に雑貨店を訪れて挨拶することも欠かさないという篠田さん。

ものを売るというよりも、きっかけをつくる仕事なのだと思う。

「世の中にはこんな風にものづくりをしているつくり手がいることを知ってもらうこと。そして、それをきっかけに雑貨屋さんに足を運んでもらうこと。これが私たちが催事に出る意味なのだと思います」

穏やかに笑う篠田さん。最後に、こんな印象的な話をしてくれた。

「催事の様子は、できるかぎり工場の方にも伝えるようにしていて。『このあいだの新作、すごく反響がありましたよ』と伝えると、みなさん本当に喜んでくれるんです」

「お客さんとつくり手のどちらも喜んでくれるとわかると、ああ、続けていてよかったなと心から思うんです」





最後に話を聞いたのは、卸先への対応や商品管理を担当している大坪さん。

すべての商品は、大坪さんたちの手を経て世の中に出て行く。まさに、サルビアの縁の下の力持ちだ。

「以前からサルビアは知っていました。たまたまホームページを見たときに募集があって。気づけば7年目です」

salvia10 現在、300社以上の卸先を抱えているというサルビア。発注や管理など、店舗にかんする対応のほとんどを大坪さんたち数人でまかなっているというから、驚きだ。

「基本的には、午前中に確認した注文は午後までにすべて出荷します。そのほかにも商品の確保や、請求書の作成や電話対応も。小さな会社なので、仕事の明確な線引きはないですね」

発送は、普段は一日数件。けれども、需要の多い春と秋にはぐっと件数が増えるという。

実際に作業の様子を見せてもらうと、かなりの素早さで商品をまとめている。

「繁忙期は、一日で30箱を出荷するときもあります。さらに納品されたものを検品して箱に入れる作業もある。スピード感を持って、丁寧に。この両立がコツです」

salvia11 さらに、メーカーであるサルビアにとって商品発送は卸先との玄関口。

対応次第でイメージを左右する仕事でもある。

「注文していただいた方が、不安なく、気持ちよく商品を受け取れるような仕事を心がけていて。なるべく早いレスポンスに、ミスのない綺麗な梱包。サルビアはきちんと届けてくれる、と信頼してもらえればもっと活動も広がると思う」

大坪さんの楽しみは、年に数回開催される展示会。

新しく入る人も、希望があれば一緒に行くこともできるという。

「商品に対する感想や意見を聞くことで、ふだん自分がどういう方たちに商品を送っているのかがわかる。自分の役割を感じられる瞬間がいいなと思うんです」

大坪さんは、どういう人と一緒に働きたいですか。

「地道な作業なので、それをコツコツとできる人ですね。我慢強さも必要かな」

「私たちの仕事には、企画のような華やかさはありません。けれど、ものづくりの現場とお客さんや地方のお店さんをつなぐという役割がある。それを知っているから、ずっと働き続けられているのかもしれないですね」

日本のものづくりと、雑貨店を支える。

ここには、そんな目標に向かって一歩一歩着実に歩む人たちがいました。

(2017/11/1 遠藤真利奈)

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