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「知りたい」を仕事にする

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奈良に302年続く老舗、中川政七商店

『奈良晒』と呼ばれる、奈良特産の高級麻織物の卸問屋からはじまり、時代の波を乗り越えながら、ものづくりを続けてきた会社です。

13代社長の中川淳さんは、就任当初から「14代は中川家以外に継いでもらう」と話していました。

そして今年。日本仕事百貨を通じて7年前に入社した千石あやさんが 14代社長に就任し、新体制を支える仲間を一挙に迎えることになりました。



日本の工芸を元気にするため、変化をいとわず進み続ける中川政七商店。

この記事では、ECサイトや自社メディア『さんち』の編集など、Webコミュニケーションに関わる人を募集します。

ECサイトのスタッフは、ビジュアルのデザインやWebコンテンツの企画、マーケティングなどを通じて快適なオンラインでの買いものを提案する仕事。『さんち』の編集スタッフは、魅力ある日本の工芸を探し出し、Webで紹介する仕事です。

話を聞いたのは、コミュニケーション本部長の緒方さん。表参道にある、東京事務所を訪ねました。

以前は東急ハンズで働いていた緒方さん。

前職ではECサイトの構築やスマホアプリ、店舗のレジと連動したシステムなどを、ほとんど一からつくってきた。

中川政七商店に入社したのは2年前。今はWebを中心に、販売やマーケティングなど、お客さまとのコミュニケーションを担う部署全般をまとめている。

今回募集する、ECサイトの担当と、『さんち』の編集、ふたつのチームで上長になる人だ。

「うちはもともとものづくりのメーカーなので、ものの価値を直接伝えられる店舗でのコミュニケーションをとても大切にしています。その一方で、顔の見えないWebへの展開については、あまり積極的ではなかったんです」

緒方さんは着任以来、中川政七商店らしいWebコミュニケーションのあり方を考え、小さな工夫を積み重ねてきた。

セールなどの情報はどこに出すべきか、カテゴリの分類はわかりやすいか。PDCAをなんども繰り返すうちに、今のECサイトの形ができあがってきた。

中川政七商店のサイトにアクセスしてみると、イラストや写真、季節感のある言葉を添えたバナーが目に入る。

アイキャッチになる赤や黄色も、ブランドの雰囲気にあった落ち着いた色調にまとめられていて、お店の雰囲気そのまま。

ECサイトのスタッフは、バナーの作成やレイアウトデザインだけでなく、一つひとつのコンテンツの企画や編集にも携わっている。

「今は、毎週1本新しい特集を掲載しています。店舗と連動した特集のほか、Webだけのコンテンツもあります。たとえば、この“デザイナーが話したくなる”という特集は、スタッフの提案ではじまった企画です」

商品の誕生秘話を、企画担当者にインタビューしてまとめた記事。Webスタッフの「聞いてみたい」という思いが形になったコンテンツだ。

たとえば“もんぺパンツ”という製品なら、裏地に使われる和晒しの風合いや、“直線裁ち”と呼ばれる和裁の知恵など、商品誕生秘話がデザイナーのラフスケッチなどを交えて綴られている。

Webスタッフは、普段からデザイナーのすぐ近くで仕事をしているから、気になったことをすぐに尋ねに行ける。

店舗のコミュニケーションの中では、すべてを伝えるのが難しい、つくり手の思い。Webコンテンツとして用意されていることで、お客さんもそれを知ることができる。

「僕は普段東京で働いているんですが、たまに奈良の事務所に行くとデザイナーの机の上にお箸の試作が大量に置いてあったりして驚きます。そういう奮闘ぶりを知っている身近な人間だから、伝えられることってあると思います」

スペックだけではなく、ものづくりのストーリーを知って商品を選んでほしい。

緒方さんは、ECサイトでもひとつの店舗のようにコミュニケーションが成立するようにしたいと考えている。

「店舗など販売に関わる部署は、いわば“売り手”です。ただその意識で接客すると、売ることが強く出すぎて、いいコミュニケーションが取れないんじゃないかと思ったんです」

「商品を売ることもWebを更新することも、手段が違うだけで、目的は工芸の良さを伝えることなんです。だから、お客さんと接する担当者はみんな“届ける部隊”という意識で仕事ができたほうがいい」

ECサイトでは、コンテンツをつくることが“届ける”ための接客になる。

お客さんが商品を手に取りやすいよう、店舗のディスプレイを工夫するように、ECサイトでも、ユーザーが買い物を楽しめるようにレイアウトを工夫する。

「デザイナーはデザインやコンテンツ制作だけでなく、アクセス解析もしています。バナーはクリックされているか、記事は読まれているか、自分で分析して改善していくので、MDのような役割もあるかもしれないですね」

バナーのグラフィックデザイン、記事をつくるためのインタビュー、写真撮影に、ロケの手配。加えて、アクセス解析とその改善。

なんだかすごく忙しそうですね。

「役割としてはとても幅広いです。その分、Webデザインのその先を見られるんじゃないかと思います」

「バナーなどのデザインは、どんなふうにコンテンツを見ていくと買いものを楽しめるか。お客さんの行動をデザインするためのツールなんです。だから、サイトの中のお客さんの動きを知ることは、次のデザインにつながる大切な情報でもあるんです」

ただかっこいいデザインを目指すだけでなく、お客さんのリアクションに対してきちんと反応できること。

相手のことをもっと知りたいという気持ちが、中川政七商店のWebデザインをブラッシュアップしてきた。

店舗としては、ECも含めて着実に成長してきた中川政七商店。一方では危機感も感じているそう。

「うちのビジョンは『日本の工芸を元気にする!』ということなんです。だから、自社の製品だけでなく、日本の工芸全体に関心が広まらないと意味がないんです」

日本にある220ほどの工芸産地のうち、中川政七商店がこれまでにコンサルティングで関わってきた産地のメーカーは30社ほど。

「ものづくりを通して、一度に関われるメーカーには限りがある。一方で、産地では人手不足や高齢化、資金不足などで商品がつくれなくなる状況が刻々と迫っています」

日本の工芸品やそのつくり手の魅力を伝えて、その土地に足を運ぶきっかけを提案する。そんな思いではじまったのが『さんち』というメディアだ。

日本の工芸やそのつくり手のことを伝えて、その土地に足を運ぶきっかけを提案する。『さんち』のキャッチコピーは、「旅のおともメディア」。

毎日アップされる記事には、産地の職人のこと、歴史のこと、地域の食のこと、いろいろな角度から、工芸のことが紹介されている。

記事の話題は日本全国にわたるので、スマホアプリを持って出かければ旅のガイドブックとしても使えるし、GPSを利用して、“旅印”というスタンプ集めを楽しむこともできる。

実際に『さんち』の編集を担当している西木戸さんに話を聞いてみた。

「職人さんに取材をするのは、大変なこともあります。いざ取材に行っても、『なんでそんなこと聞くの?』って、最初は何も話してくれないことも多くて」

経営が難しかったり、仕事に対して家族の理解が得られなかったり。身の上話にも耳を傾けながら、記事としてまとめていくのだそう。

「職人さんの生き方を紹介する記事は、いつも読了率が高いんです。後継者不足という現状の中で、彼らの生き方に関心を持ってくれる人が多いのはうれしいですね」

ある漆工房の職人募集ニュースを出したときには、実際に記事を読んだ人から応募連絡が多数あり、メーカーさんから感謝のお便りをもらったこともある。

「紹介された商品の注文が増えました!」「周りから仕事を褒めてもらえました」

記事公開後に、取材先さんからそんな連絡が来ることが、何よりやりがいになっている。

少しずつ、一人でも多くの人に工芸への関心が広がるように毎日の記事づくりに向き合う編集チーム。2016年11月の立ち上げ当初から、1日1本の記事配信は欠かさない。

今は3人で毎日の記事を更新している状態なので、今回は即戦力としてすぐに記事づくりを任せられる人を仲間に迎えたいという。

ただ、必要なのは編集・ライティングのスキルや経験だけではない。

「せっかく中川政七商店っていう、ものづくりも、コンサルも、流通のサポートも一貫してやっている会社が運営しているので、記事を書いて終わりだともったいない。もっと深いところで産地と向き合いたいんです」

たとえば、取材に行ったメーカーさんと協業してものづくりをしたり、店舗と連動して商品の販売もできるかもしれない。また、地域全体と協業してのイベントや、読者との産地ツアーの開催も、この会社ならできる土壌がある。

それは「日本の工芸を元気にする!」というビジョンがあらゆる事業の根っこにあるから。

記事を読んだ人が工芸を好きになり、産地を訪ねて行く。そんな“産業観光”のプロデュースができる媒体を目指して。

記事を書くだけでなく、編集スタッフがもっといろんな企画を立てられるようにするのが、今の目標なのだそう。

工芸に対して、どんなアプローチができるか。その切り口の多様さが、会社にとっても、工芸という業界にとっても、今後の広がりを左右していくことになる。

「だから、入社時点で工芸に詳しいかどうかは重要ではないんです。大事なのは、どれだけ工芸を”面白がれるか”なんです」

そう教えてくれたのは、緒方さん。

「例えば月に1度、企画会議の他に『種会』というミーティングをしています。そこでは工芸に関係あることも、ないことも、みんなが今興味を持っていることを共有し合うんです」

漫画や映画、スポーツ、最近ハマっている食べものなど、たわいない話がきっかけで、次の特集のテーマが決まっていくこともある。

「工芸に詳しい人だけでなく、これから工芸に出会う人も気軽に楽しめるように、いろんな切り口を見つける視点が大切なんです」

企画が精査される過程でボツになる案も少なくない。

工芸のことを調べたいと思ったときに頼りになる媒体を目指したい。

一方で専門的すぎると、読者が距離を感じてしまう。

ふたつのバランスが保たれているものだけが、『さんち』の記事として、私たちに届く。

だからこそ、フットワーク軽く、いろんな産地や工芸に出会いに行く。どの編集者も、毎月1/4は事務所のある東京の外にいるそうだ。

「うちは“日本の工芸を元気にする!”ことにつながるなら、なんでもやっていいんです。1日中パソコンとにらめっこしているだけではクリエイティブなことはできない」

「ECも『さんち』も、おもしろいものを見つけて笑い合って、アイデアを出し、結果を残していくチームでありたいです」

(2018/6/26 取材 高橋佑香子)

中川政七商店では、ほかの仕事でも募集中です。よければあわせてお読みください。

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