求人 NEW

地域で出店したい人を
サポートしながら
いつか自分でお店を持つ

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

自分のお店を持ちたい。

そう思ったときに、できることはなんだろう?

セミナーや講座に参加するのもいい。起業や小商いを支援する団体や制度もあるし、本屋に行けばさまざまなノウハウをまとめた書籍が並んでいるから、自分で学ぶこともできる。お気に入りのお店のオーナーに、話を聞きに行くのもありだと思う。

何よりもいい経験になるのは、とにかくやってみること。とはいえ、お店をつくるとなればそれなりにお金もかかるし、一歩を踏み出すのには勇気がいる。

それならば3年間、出店希望の人たちに伴走してみるのはどうでしょう。

お店を持ちたいという人たちに対して、空間活用のアドバイスや営業許可などの申請書類の作成補助、お店を立ち上げたあとの集客のアドバイスまで伴走する地域おこし協力隊を募集します。

この仕事に携わるなかで、お店を持つまでにはどんな困りごとや壁があるのか、実践的に理解できるし、地域での人脈も広がっていくはず。

舞台は宮崎県都城(みやこのじょう)市。宮崎市に次いで県内2番目に人口の多いまちです。

牛・豚・鶏の合計産出額が全国一位の肉のまちでもあり、ふるさと納税の寄附額も、過去8年間で4度、日本一に輝いています。その財源を出産・子育ての支援や移住支援制度づくりに活かすことで、移住希望者も右肩上がりに増えているそう。

便利なまちなかと、霧島連峰を望むのどかな中山間地域のバランスもいい。ライフスタイルに応じていろんな暮らし方ができるので、移住先としてもおすすめです。

 

都城市へは、車で宮崎空港から高速道路を利用して30分、鹿児島空港からだと45分。

周囲を山地にかこまれた平野が広がっていて、ひらけた印象がある。

中心市街地へ向かう道沿いには、大型の家電量販店やスーパー、全国チェーンの飲食店などが並ぶ。

この感じなら、都会から引っ越してきても生活には困らないだろうなあ。物足りない人でも、少し離れれば豊かな自然を身近に感じられる。バランスのよさそうなまちだ。

高速道路の都城ICをおりて20分ほどで、8階建ての都城市役所に到着。

まずは都城市地域プロジェクトマネージャーの池田さんに話を聞いた。

都城出身の池田さん。

都城高専卒業後は大手設計事務所に就職し、福岡や大阪、東北で仕事をしてきた。

東日本大震災以降のさまざまな復興プロジェクトに関わり、陸前高田市の新庁舎の設計も担当。ひと段落つき、次のキャリアを考えるなかで、たまたまプロジェクトマネージャーの募集を見つけたそう。

「本当は1年くらいゆっくりするつもりだったんですけどね。地元の都城で、自分の力を活かせたらいいなと思って応募しました」

まちのプロジェクトマネージャー。あまり聞きなれない肩書きだけど、どんな仕事なんだろう?

「いろいろなことをやっていて。今回の募集に関連するところだと、まちなかの空き店舗への出店支援は仕事のひとつですね」

空き店舗を貸したいオーナーさんに対しては、テナントが入りやすくなるように改装のアドバイスを。

出店したい人に対しては、内外装についてのアドバイスのほか、営業許可を得るための各種申請などの支援を。

オーナーと出店希望者のあいだに立って、進めていく。

この出店支援の取り組みはもともと、タウンマネージャーの二宮さんが8年前から進めてきたもの。

フレンチやイタリアン、居酒屋など、飲食店を中心に複数のお店がこの取り組みを通じてオープン。いずれも人気店となっている。

以前は30%弱だった中心市街地の空き店舗率も、8年経った今では18%弱まで減少。

また、まちの中心には、かつてのショッピングモールを改装した都城市立図書館や、元百貨店を再生した複合施設「TERRASTA」もあり、市内外から多くの人が訪れる。リノベーションまちづくりの好事例として、視察の機会も多いそうだ。

ただ、課題も。

「単に歯抜けの店舗を埋めるだけでは効果が薄い。もっと人の賑わいや回遊性を生むための仕掛けが必要なんです」

そこで、まちに多様な動きを生むプロジェクトマネージャーを公募し、昨年9月に着任したのが池田さん。この半年足らずのあいだにも、いろんなことに取り組んできた。

たとえば、お寺の近くの駐車場に人工芝を敷いて、だれでも使える広場にしたり、公共空間にストリートファニチャーを設置して、居場所づくりを進めていたり。

ほかにも、解体予定の建物に絵を描くワークショップや、アウトドアメーカーと共同で企画しているまちなかキャンプ、高専生とともに古びたアーケードにペイントしていく「お色直し」のプロジェクトなど。

「一つひとつはちっちゃいですけど、ちょっとずつ『まちなみが変わってきたぞ』と感じられるような。そういうアクションを継続的に打ち込んでいきたいですね」

今回募集する協力隊に携わってもらいたいのは、最初に池田さんが話してくれた出店支援の部分。

エリアは中山間地域が対象となる。

中心市街地で順調に進んでいる事業を踏まえて、中山間地域にもこの取り組みを広げていきたい、というのが市の狙い。

 

続けて、地域振興課の主幹を務める二見さんにも話を聞く。今回の中山間地域向け出店支援事業も二見さんが立ち上げたもので、協力隊にとっては直属の上司にあたる方。

まず気になったのは、「中山間地域」という言葉が示す範囲。どのあたりまでが対象になるのだろう。

眺めのいい市役所から外を指差しながら、二見さんが教えてくれる。

「わかりやすく言えば、今ここから見えている右の山から左の山裾まで、ですね。中心部から車でだいたい20〜30分。市の面積の約9割は中山間地域です」

市としても、通常の移住支援金に100万円を上乗せするなど、中山間地域への移住者支援には力を入れている。

それに加えてはじまる、今回の出店支援事業。対象となるのは飲食店のみでなく、宿や物販、医療関連のクリニックや学習塾など幅広い。

補助がない現時点でも、年間で10軒は中山間地域への出店実績があるそう。支援事業では年間14軒の出店を見込んで取り組んでいくとのこと。

今回の取り組みは、中心市街地から中山間地域へとエリアが変わるだけで、やることは一緒と考えていいんでしょうか?

「概ね同じですね。ただ、場所が離れているので、普通に営業していても人は来づらい。出店に向けた支援に加えて、出店後のアドバイスも必要になってくると思います」

具体的に言うと、まずは空間づくりのアドバイスから。

設備が過大でないかの確認や見積もりのとり方について助言したり、必要な届出の漏れがないようにアドバイスしたり。

内装の納まりや空間を有効に活用する方法なども、相談があれば一緒に考えていく。

さらには出店後のSNS活用など、場所がオープンしたあとの集客面でも伴走してほしい。二見さんいわく「車が必須のまちなので、お店に魅力があれば多少離れていても集客は十分できる」とのこと。

都城には7人の協力隊がすでにいて、SNSやWeb発信に長けた人もいる。そのつながりや、市街地で培われてきた出店支援のノウハウも活かせると思う。プロジェクトマネージャーの池田さんからも、いろんなことを学べるはずだ。

二見さんは、協力隊としてどんな人に来てもらいたいですか。

「必須ではないですが、リノベーションの知見をお持ちだったり、デザイン経験がある人のほうがいいのかなと思います。まったく専門性がない方は厳しいのかなと」

「ただ、経験があっても自分のノウハウやアイデアをそのままぶつけるのではなくて、設計施工業者さんとオーナーさんや出店者さんのあいだに立つ役割なので、うまく引き出して、導いてあげる。バランス感覚のある方がいいと思いますね」

任期後は、原則として自ら仕事をつくり独立してもらうことになる。

3年間の事業が順調に進めば、出店数は42軒。それだけ伴走すれば、出店にあたっての困難も必要なノウハウもかなり的確に把握できるだろうし、アドバイザーとして独立する道がまずひとつあると思う。

あるいは、いつか自身のお店や場を持ちたいという人にとっても、実りの多い時間になりそうだ。お店や地域とのつながりもできて、いい土台づくりになる。

3年後の保証はないけれど、自分次第できっといろんな可能性がひらけていくんじゃないか。

 

そんな想像を膨らませながら市役所をあとにして、車で15分ほど離れた乙房(おとぼう)という地区へ。

この中山間エリアでお店をはじめた方を訪ねる。

話を聞いたのは、燻製工房YOKOYAMAの横山さん。おいしいコーヒーを淹れて迎えてくれた。

横山さんが燻製工房をはじめたのは6年前。趣味からのスタートだった。

「お酒が好きなので、お酒のアテをつくっていて。そのひとつが燻製だったんです。そこからどハマりして」

燻製商品をつくりつつ、それを料理に活かすことでさらに楽しみが広がった。

「モツを燻製にした『燻製モツ鍋』がおいしいんですよ。噛めば噛むほどじわっと燻製の香りがして。冬は燻製日和で、夜中にスモークサーモンを一人仕込むのが楽しみです(笑)」

そんな燻製のおいしさをもっと伝えたいという想いから、二世帯住宅の一角をリノベーション。飲食の営業許可をとり、3年前に完全予約制のお店もオープンした。

晴れた日には霧島連峰を一望できる立地。テラス席やカウンターを改装する際には、補助金も活用したそう。

「飲食業自体がはじめてだったので。最初は手探り状態でした」

お店を立ち上げるにあたって、こういうサポートがほしかった、と思うことはありますか?

「いっぱいありますよ。たとえば、燻製をつくったはいいけど、どうやって保存させるんだろう? 賞味期限ってどう決めるの? とか。“商品をつくる”ことに関して、最初は何もわかっていなかったんです」

価格設定やパッケージ、ECサイトの構築など。

いいものができても、それを「商品」として売っていくためには、さまざまな準備が必要。横山さんの場合は、県が運営する食品開発センターを訪ね、そのつながりで商品化のプロセスを学べる講座を受けたことで、なんとか形にできた。

今回入る協力隊も、できれば空間だけでなく、商品化まで伴走できる人が望ましい。すべてのプロフェッショナルでなくてもいいから、適切な機関や支援制度を紹介して、つなげることができるといいと思う。

「まちをよく知っている方がサポートしてくれるといいですよね。お店をするうえでは、まちとのつながりもやっぱり大事だと思うので。イベントの情報とか地域性をよくわかっていて、うまくまちとつないでくれる方に来てもらいたいです」

 

横山さんのお話も聞いて、あらためてこの仕事は、自分でいつかお店をはじめたい人にとって“役得”だと感じました。

千本ノックとは言わないまでも、これほど実践的に、かつ3年で42軒も集中して出店に立ち会える機会はなかなかない。

実際に手足を動かすことで、体でわかることがたくさんあると思います。

(2024/2/14 取材 中川晃輔)

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