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離島のつなぎ方

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

旅の楽しみといえば、その地ならではの食事をすること。

おいしいのはもちろん、そこにはいろんな物語がつまっています。

たとえば、島根県・隠岐諸島の海士町で飲まれている『ふくぎ茶』。

ritokitchen01 薄いピンク色をしていて、ちょっとスパイシーな香り。独特の清涼感があって、飲むとなんだかすっきりする。

隠岐島ではお茶の葉が手に入りにくいから、クロモジという木の枝を煮出してお茶をつくってしまったんだとか。

島にあるものを工夫してつくり出された成り立ちを聞くと、よりいっそう味わい深いものに感じます。

この話を私が知ったのは、実は東京・神楽坂でのこと。教えてくれたのは、離島キッチンの人たちでした。

全国の島の食事を、食の背景にある文化や歴史、物語も一緒に楽しめるお店です。

神楽坂のほかに福岡にもお店があって、これからもう2つ拠点を増やす予定。

今回はそれぞれのお店で離島の魅力を伝えるディレクターや料理人を募集します。

 


離島キッチンのはじまりは2009年。

島根県海士町が、島のものを販売するために行商人を募集したことがきっかけ。代表の佐藤さんはこの募集に応募して、まずは行商人として働くことになる。

決まっていたのは『島のものを売る』ということだけ。どんなかたちで売るべきか、考えた末に出した答えが、離島キッチンだった。

海士町の島だけではなく、全国の島と島が手をむすんだらもっと大きな力を出せるんじゃないか。

そう考えて、全国の島々の食事が楽しめる飲食店をはじめることに。

ritokitchen02 キッチンカーや、デパートの催事からスタートした離島キッチンは、2015年9月には神楽坂に直営店をオープン。昨年には、福岡にもお店を出しました。

そして今度は札幌と、東京にもう1店舗。

どうしてまた新しいお店を出そうと思ったのか。代表の佐藤さんに聞いてみます。

ritokitchen03 「福岡店をつくったのは、九州にたくさんある島々のハブになるように。北海道にも有人島が5つあるので、今度は北海道のハブをつくれたらと思って」

「福岡店には九州の島の出張所が多いから、福岡店に結構島の方が来てくれるようになりました。新しい島とのつながりも増えてきましたよ」

札幌も福岡と同じように、島と島、島と人をつなぐ拠点にしたい。

北の島はリゾートとして訪れることも少ないから、南の島に比べると知らないことが多い気がする。今まで知られていなかった、おもしろい食や文化を見つけていくことができるかもしれません。

これからは店舗数を拡大していくよりも、各拠点を活用して事業の幅を広げていきたいとのこと。

「たとえば、スタッフたちが一箇所にいるんじゃなくて、いろんな島で仕事をしながら島のことを知れたらいいなと。春は隠岐島、夏は石垣島、秋は利尻に行って、冬場はお店で働くというようなサイクルを、無理のないかたちでやっていけたらと思っています」

ritokitchen04 東京の新店は、どんなお店になりそうですか?

「神楽坂を出してみて、エリアで限定された職種の方が多く来てくれることがわかりました。実生活で神楽坂に関わらない方もたくさんいると思うんですね。だから、神楽坂とは違うエリア・ターゲットでもやってみたいと思って」

「場所は物件次第なんですけど、お客さんと深く関わっていけるようなお店にしたいですね。親戚の家に遊びに来たくらいゆっくりできるような長時間滞在型のお店にして、なんだったら泊まってもいいよ、くらいの」

2つの店舗がかたちになったら、お客さんに伝えられることも、その方法もどんどん広がっていきそうです。

 


まだ動き出したばかりの新店舗。基本となるのは食を通じて、離島の魅力を伝えることです。

今の離島キッチンでは、海士町を中心とした日本の島の食事に加え、『今月の島』と題して毎月ひとつの島のメニューを企画し、島の食文化を紹介しています。

そのために、スタッフのみなさんは交代で島に食材探しへ行くのだとか。

ちょうど週末に島に行ってきた方がいるそうなので、話を聞いてみました。

札幌店の立ち上げにも関わっている、辻原さんです。

ritokitchen05 辻原さんが行ってきたのは、鹿児島県三島村にある竹島。人口が80人ほどしかいない島だという。

「全国には有名な観光名所がある島もいっぱいあるんですが、島の人たちが普段どんな暮らしをしているのかもっと知りたかったんです。それに、生でも食べられる筍があると聞いて、ぜひ食べてみたいと思って」

宿も数少なく、飲食店もない島だから、民家に泊まらせてもらうことに。夕食は個人のお宅でご馳走になり、島食材のおいしい食べ方を教えてもらった。

ritokitchen06 生でもたべられるくらいアクのない大名筍は、シンプルに茹でるだけでもいいし、煮物や天ぷらもおいしい。

長命草という自生している葉物は苦みがあるけれど、揚げると不思議とくせがなく美味しく食べられるから、島の人たちは天ぷらにすることが多いのだとか。

「この時期は島の人総出で朝8時に集合して、みんなで筍を採るんです。70、80歳のおじいちゃんおばあちゃんが一瞬で山のなかにスッスッて入って行って。全然ついていけなくて、びっくりしましたね」

ritokitchen07 「離島キッチンは、料理を出しておいしいのはもちろん、その裏にある背景もまるごとお伝えするお店。島の文化も吸収して、伝えていきたいと思っています」

そう話す辻原さん、以前は銀行で働いていたそう。飲食経験はなかったので、入ったばかりのころは、お盆の持ち方すらわからなかったといいます。

「私が入ったのはちょうど神楽坂店ができるときで、マニュアルも何もありませんでした。お客さまを迎えるところから、お見送りまで、どうしたらお客さまに快適に過ごしていただけるのか。そういったところからみんなで決めて、つくってきました」

「今は基本的には接客をやっています。あとは前職が金融系だったので、代表の佐藤が『経理やろうか』って。ただ、経理の知識があったわけではなかったので、一から自分で簿記の勉強もしましたよ」

島に行ったり、お店に立ったり、経理の仕事もしたり。大変そうにも思うけれど、その分やりがいも大きいのだと思う。

神楽坂店では、店舗を使って島の人たちとイベントを企画する人もいれば、デザインや写真の経験を活かして、広報を担当する人もいるんだとか。

札幌や新東京店でも同じように、自分の強みを活かして働いてほしい。

「ときには大変なことにもありますが、自分でやりたいことを見つけて、楽しみながら仕事をやっていける人だと、会社としてもおもしろくなるかなと思っています」



とはいえ、いきなりいろんなことをするのは難しいかもしれない。

今度は、入ったばかりだという大石さんに聞いてみます。

ritokitchen08 4月に入社して、今は神楽坂のお店で研修中。以前は農業系の出版社で働いていたのだそう。

仕事はどうですか?

「飲食の仕事は大変だなあって。経験がないので、いろいろ気がまわらないんですよね」

「簡単なことでいうとコップに水が入っていなかったり、オーダーを待っているのに全然違うところを見ていたりとか。階段を上り下りするときも、バタバタ音を立てないように気をつけなくてはいけない。気遣いが非常に大事になんだと感じています」

たとえば、メニューを説明するときにひと工夫するだけでも、お客さんが受ける印象は変わるはず。

お客さんの来店が重なると、急に忙しくなることもあるのだとか。効率よくやりながら、気遣いできる余裕も必要。

ritokitchen09 飲食や接客の経験がないと、はじめは大変に思うかもしれない。けれど大石さんのようにその先に目指すものがあれば、目標を持って働き続けれられると思います。

「前職で各地の農村をまわって、地域の魅力は食につまっていると感じていました。けれど生産者さんたちがどんなにいいものをつくっても、出荷先がなければ流通しないし捨てられてしまう。消費者目線を持つことが必要だなと思ったんです」

「だから、消費者とも地域の人とも関わりながら、地域のカンフル剤になれるような仕事をしたいと思って。いつかは地域のプレイヤーになりたいのですが、今は離島キッチンの仕事を通じて、地域で何ができるのか探していきたいと思っています」
 



自分の仕事を探している大石さんに対して、次に話を聞いた料理人の有田さんは、やりたいことが具体的になっているようです。

どんな仕事をしているんでしょう。

「2月の企画で担当した島で、新潟の粟島っていう小さな島があるんですが、島特産の『ずんだ餡』を商品化するお手伝いをしたことがありました。お店のデザート使わせていただくために、一緒に企画したんです」

ritokitchen10 「実際に島へ行って、ずんだ餡の粒の大きさや甘さをみんなで食べながらあれこれ話したり、東京に戻ってからも3パターンの試作品を送っていただいて、スタッフみんなで試食しながら意見を言い合ったりして。『これだ!』っていうのを決めて、無事に商品化していただくことができました」

商品化されたずんだ餡を使ったデザートは、企画が終わった後もお店で出し続ける人気の商品に。島の人との仲も深まったといいます。

ritokitchen11 「島の人たちはそれがあたりまえだと思っていても、私たちから見るとすごく贅沢なものや、びっくりするようなものを食べていることが多くて。そこからお金を生み出して、島に還元できるかもしれない。そのための役に立てたらいいなと思っています」

島の人たちだけではできなかったことも、離島キッチンが一緒に動くことで、実現できることはたくさんあるように思います。

「この仕事は自分が見つけてきた食材でつくった料理を、お客さんが食べて喜んでるのを見ることができる。そして、その様子を島の人たちにも伝えることができる。お互いに『やったね!』っていう話をしているときは、本当にうれしいですね」

ritokitchen12 食を通じて、地域の生産者さんとお客さんをつないで。

両方のよろこぶ顔が見られる仕事は、とても幸せだと思いました。

 


今回募集するのは、自分の強みを活かしながらお店の運営をしていくディレクターや料理人です。

それぞれ職種は違っても共通しているのは、自分で島を体感して、その魅力を伝えていくということ。

取材中、食材や地域の話になると、ここでは紹介しきれないくらい、みなさん饒舌になるのが印象的でした。

島の空気やそこに暮らす人たちが好きなこと、おいしいものが大好きなんだということが伝わってくる。

そして、それぞれのかたちで自分のやりたいことを持っている。

少しでも気になったら、まずは離島キッチンに食べに行ってみてください。

離島と、人とをつないでできること、なにかひらめくかもしれません。

(2017/9/13 黒澤奏恵)

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