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「離島ならではの食材を使った料理やその島の食文化をお客さまに楽しんでいただきたいですね。そのため、毎月ひとりのスタッフが自分の好きな島へ実際に足を運んで、食材を探してくるんです」「島をめぐって食材を探しながら、そこに根付いた文化や歴史、物語を発掘してくることも、ひとつの大きな仕事ですね」
その言葉通り、スタッフの皆さんに「好きな島は?」と聞いてみると、自分の体で感じてきた離島の話が語られる。
島で出会った人のことや、島で培われてきた暮らしや風習、そして昔ながらの海や山の風景。話を聞いているうちに、その体験談が自分ごとのように思えてくる。
話を聞いてから食べる料理は、なんだか物語も一緒に味わっているような気がします。
島の食事を通して、お客さまと離島をつないでいく。そんな働き方をしているのが離島キッチンです。
2015年9月には、東京の神楽坂にお店をオープン。
全国の離島から集めた食材を使った料理を通して、離島の魅力を提供しています。
今回は、今年の秋にオープンする福岡店のオープニングスタッフと、神楽坂店の調理スタッフを募集します。
東京メトロ東西線の神楽坂駅から歩くこと2分、住宅街のなかに離島キッチンのお店はあります。
お店の中へと案内され、取材をはじめようとしていたところで、お茶をだしてくれました。
香りと色味が独特なお茶は、「ふくぎ茶」というもの。ハーブティーのような、さわやかな風味が印象的。
これは島根の隠岐・海士町でとれたお茶で、和菓子の楊枝などに使用されるクロモジという木の枝を煮出してつくるんです」と話してくれたのは代表の佐藤さん。
話を聞いてみると、佐藤さんは秋田の内陸で生まれ育ち、島や海には馴染みがなかったそう。
では、どうして離島に興味を持ちはじめたんだろう。
「以前は東京で広告の仕事をしていました。ただ、地元が秋田ということもあって、東京と地域を結ぶような仕事がしたいと考えていたんです」
ある時、世の中に変わった仕事がないかと思って、求人サイトの職種や勤務地、給与といった項目すべてを「その他」で検索してみることに。
一件だけ出てきた求人が、島根県の海士町観光協会が出していた『行商人募集』というもの。
「『島のものを売る』という条件以外なにも決まっていなかったのですが、海士町のものだけを売るのは、ちょっとちがうなと思ったんです」
どうしてちがうと思ったんですか?
「その地域に特化するだけでは広がりが生まれないのではないか、と。とはいえ、離島キッチンというアイデアを思いつくまでには何か月も悩みました」
「ある日、上野公園で西郷さんの銅像を見てひらめいたんです。幕末に藩と藩が手を結んだ『列藩同盟』のような動きが、島同士でもできるんじゃないかって」
こうして今の離島キッチンのコンセプトが生まれた。
はじめは移動販売や期間限定の催事で営業をはじめ、ちょうど一年前に神楽坂に直営店をオープン。
「山のぼりに例えると、ようやく二合目をのぼりはじめているところだと思います。これからやっていきたいこともたくさんあり、そのひとつが福岡店ですね」
新しく仲間になってくれる方々と、今いるスタッフ全員とで新しいことに挑戦したい。
「ですから、今回募集する福岡店と神楽坂店のスタッフを定期的に入れ替えたりして、全体で交流する機会をつくろうと思っています。一箇所に固定するのではなく、自分たちの拠点をたくさんつくっていきたいですね」
店舗ごとに切り分けて考えるのではなく、離島キッチン全体で盛り上げていく。そんな環境だからこそ、ここでしか見ることのできない風景が生まれているのかもしれません。
そこで、新しい拠点となる福岡店のマネージャーを務める松本さんにも話を伺います。
以前は兵庫で働いていた松本さん。休みができると、離島へ遊びに行っていたそうです。
「一泊二日で気軽に行ける場所を探すと、淡路島や瀬戸内の島だったんです。そうして訪れるうちに、どんどん興味をもつようになってきたんです」
地域に根ざした活動に興味をもっていたある日、海士町に住む従兄弟から紹介されたのが、離島キッチンでした。
「素直に面白そうと思いましたね。実際に働きはじめると、地元の人やお客さま、島の人と繋がっていく距離の近さに驚きました。福岡店もそうなっていければ良いですね」
離島の数が多く、食文化も豊富な九州の博多という立地では、お客さまとの関わり方も変わってくるのかもしれませんね。
「そうですね。福岡に住む方々は自分たちの食文化をとても大事にしているので、そこでは離島キッチンならではの接客が必要だと考えています」
「まずは福岡の食文化をきちんと理解した上で、実際に島を訪れて感じたことやちょっとした情報を、食事を提供する際に自分の言葉でお客さまに伝えることがとても大事になってくるでしょうね」
たとえば、といって話してくれたのは、瀬戸内海の離島。
「広島県尾道市から愛媛県今治市までを結ぶ全長約80kmの『瀬戸内しまなみ海道』という道があるんですが、途中で向島と生口島を通るんです」
地図で指をさしながら島の位置を確認してみる。
「この辺は岬なんですが、その先にパン屋があるんです。そこの風景を眺めながら食べるパンは贅沢でしたね」
毎月、ひとりのスタッフが自分の好きな離島へ行き、食材や魅力を探ってくる。
そこで感じたことを話すだけでも、お客さまの食事の見え方や味わい方に変化があるのかもしれません。
「あたらしい環境なので最初は不安や苦労も多いと思いますが、離島キッチンのスタッフとして『島が好きなこと』と『礼儀正しいこと』さえ兼ね備えていれば大丈夫ですよ」
今いるスタッフも、みんな経験やスキルはバラバラだけど、それぞれの背景を生かした仕事を自らつくり出しているそうです。
実際に今回募集するサービス全般を担当している方々にも話を伺います。
ホールスタッフとして働いている辻原さんと菊池さん。ふたりは日本仕事百貨を通して入社しました。
以前は金融業に勤めていたという辻原さんは、前職の経験を生かして、現在は経理も担当しています。
「以前の職場でこのまま働き続けていいのかな、と葛藤していた頃に、日本仕事百貨で離島キッチンの記事を読んだんです」
どんな印象でしたか?
「気づいたら応募していましたね。旅も島も好きでしたし、食の世界にも興味があったので。実際に働いてみると、素直に楽しいと思える環境でした」
「やっぱり飲食業なので労働時間は長いと思うときはあります。でも、ここで働いているときは精神的に苦しいと感じたことはないんです」
その根底には、美味しい食や島の人やお客さまとの関わり、自分自身も和めるような環境づくりができていることが大きいのかもしれません。
同じくホールスタッフとして働く菊池さんは、商品管理としてキッチンスタッフとメニュー考案や原価の計算などを担当しています。
これまでずっと飲食業で働いていたという菊池さん。どうして離島キッチンを選んだんでしょうか。
「今までの飲食業の環境は、勤労体制やマニュアル通りの接客にものすごくストレスを感じていたんです。だから、次に働く場所は飲食業以外にしようと思っていたんですが、日本仕事百貨の記事を見て応募してみようと思ったんですよ。離島キッチンなら自分らしい仕事ができるかもって自然と思えたんです」
自分らしさを活かせると思った。
「そうですね。神楽坂店のオープニングスタッフとして関わりましたが、マニュアル通りミスのないように働くというよりは、これまでの経験を活かして、自分なりに考えて働くといった感じでした。福岡店も、そんなイメージに近いと思います」
やることは決まっているけど、やり方は決まっていない。自分の経験をどのように活かせるかを常に考えていたそうです。
「実際にオープンすると、基本はホールで接客することが主な仕事になります。日々の仕事をこなしつつも、気を抜くときはしっかり抜いて、一緒に笑える方だと向いているのかな」
「飲食業なので、時間帯によってはとても大変なときもあります。だけども、生産者の方がお店来てくれることもあり、うれしいことも多いですよ」
「先日も、離島で焼酎をつくっている生産者さんが来てくれたり、離島の町長さんが来てくれたりして」
海士町のものだけではなく、他の島の方々も訪ねたくなるような場所に育まれている。日本中の離島をつないでいる姿がありました。
「離島キッチンに訪れるお客さまと接していて、嫌なことや困ったことが起きたことがないんです。前の仕事で接客してきたお客さまと明らかに何かが違うと感じるんですよね」
離島キッチンに訪れるお客さまとスタッフとが「島」を通じてつながっている分、距離が近くなるのかもしれません。
最後に話を聞いたのは、調理スタッフの有田さん。
「神楽坂店ができる前から離島キッチンの調理スタッフとして働いてきましたが、ここまで自分のやりたいことが実現できる環境って少ないと思います」
「食材を探すところから、アイデアをレシピに起こして値段設定まで考える。とても貴重な経験だと思います」
島の食文化や食材の味を、実際に離島で体感して、お客さまに提供する。
生産者さんとお客さまとの距離の近さが、離島キッチンの大きな魅力のひとつ。
「生産者さんのことも知っているし、お客さんのことも知っている。どちらの声もすぐに届きますので、次に生かす機会がとても多いですね」
生産者さんの食材へのこだわりや島が育んできた食文化が伝わりやすい環境なんだろうな。
「調理の仕事は立ち仕事が長いので体力的に疲れますが、みんなで意見を言い合いながら働ける職場なので、ぜひその空間を体験して欲しいです。あとは食べることが好きなことも大事ですね」
大変なことも含めて充実しているような働き方がここにはある。そんな気がしました。
島の人々と話した会話や、一生の記憶にのこる風景。
わくわくするような口調で話す姿は、実際に離島を訪れたからこそ話すことができるんだと感じます。
少しでも気になった方は、ぜひ離島キッチンへ訪れてみてください。
あなた自身も離島とつながることのできる、あたらしい飲食店のかたちがここにはあります。
(2016/7/1 浦川彰太)