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大自然を味わいつくす
アドベンチャートラベルの
ガイドになる

「いい湯だな~」

あの曲の最初に登場する登別(のぼりべつ)は、全国でも有数の温泉地です。

この土地で、新たにアドベンチャートラベル事業が始まろうとしています。

アドベンチャートラベルとは、自然、アクティビティ、異文化体験のうち2つ以上の要素をふくむ旅のこと。体験を通じて地元の人々と交流し、その土地を深く知ることを目的にしていて、世界的に注目されています。

登別には、火山口や間欠泉といったダイナミックな自然に、アイヌ文化、湖や温泉の川など、豊かな自然・文化資源があります。これらを組み合わせて地域を紹介するガイドと、マネージャーを募集します。

 

札幌駅で特急すずらんに乗り、南へ向かう。

電車は、街から雪原に入り、海沿いの工業地帯を抜けていく。アイヌをテーマとしたナショナルセンター「ウポポイ」の近くでは、アイヌ語の車内アナウンスが流れている。

札幌を発っておよそ1時間半。駅と路線バスを乗り継いで、登別温泉街に到着した。地熱なのか、雪が少ないみたい。

街はゆるやかな坂になっていて、ずらりと並んだホテルや土産物店には、観光客らしい人たちが出入りしている。

店を見物しながら坂道を15分ほど登ると、ふと硫黄のにおいが強くなった。

活火山の火口跡・地獄谷(じごくだに)からの噴煙だ。

地獄谷には散策道があって、火口跡の間近に行ける。

裸の地面に、えぐれた斜面。蒸気で枯れた木々が荒々しい。

エネルギーあふれる、圧巻の景色だ。

「地獄谷は登別温泉最大の源泉で、その量は1日1万トンです。煮えたぎるような間欠泉がボコボコ湧いていて、地獄を連想するから地獄谷。アイヌ民族は、登別を『霊力の強い川』の意味で『ヌプルペッ』と呼んで、温泉の近くに信仰の場をもうけていたそうです」

「ダイナミックな自然や独自の文化が、登別にはあふれているんですよね」

さかのぼること2週間前。東京で聞いた言葉を思い出す。

 

登別に招待してくれたのは、栗林広行さん。

東京の海運会社・栗林商船と、子会社である登別グランドホテルの役員を務めている。

北海道で創業した栗林商船。

およそ100年前、創業者に、温泉街の旅館から経営相談があったのをきっかけに、登別との縁ができたそう。

「先代たちは、泥だらけの馬車道に鉄道をひいたり、欧米を視察して近代的なホテルをつくったりと、登別を発展させることに強い思い入れを持っていました。私も小さいころ遊びに行った思い出の場所です」

ビール会社の営業を経て、商船会社で働いていた栗林さんが、「登別グランドホテルを再興する」という目的で登別にやってきたのは、コロナ禍真っ只中のこと。

「緊急事態宣言で休館を余儀なくされて、営業を再開してもお客さまは1日20人いるかいないか。温泉街を歩いても、本当に誰一人いないんですよね。あの寂しい光景が、未だに目に焼き付いていて」

登別温泉街のおこりは、江戸時代に、皮膚病を患う妻の病気が治ったことを喜んだ大工職人が湯宿をひらいたことにさかのぼる。

その後は、多くの人が温泉街を楽しめるようにと、駅から温泉街までのアクセスや、クマ牧場にロープウェイなどの観光施設も整備され、人気温泉地になっていった。

その登別に、人がいない。

「ホテルを今後継続していくかどうかという議論まで出たんですが、登別を知るほどに、僕らの代で途絶えさせてはいけないと強く思って。日本中、世界中に登別を広めたいと思ったんです」

コロナ禍前の温泉街は、インバウンド観光客の割合が4割を占めていたそう。

今後も営業を続けていくためには、新しい層にアプローチすることが必要だと考えた。

「おととし、鬼サウナをオープンしました。地獄谷という名前から、鬼は街のシンボルで。あと、このサウナが110℃と非常に熱くて“鬼ととのう”という(笑)」

「何か新しいことを始めたいと思いつつ、私はホテル業界の経験がありません。でも趣味のサウナなら分かるし、なにより有名な温泉地にサウナに特化した施設をつくることはチャンスになると思ったんです」

鬼サウナはサウナシュラン2023で全国5位になり、今では各地から若い世代が訪れている。

 

もっと新しい挑戦をして、人を温泉街に呼びたい。稼働率の低い平日も、人が来る仕掛けをつくれないだろうか。

そう考えた栗林さんがタッグを組んだのが、観光系の企画コンサルティング会社を経営していて、北海道でも仕事経験のあった松下さん。

おふたりは大学の同級生で、松下さんは栗林さんを「北海道中連れ回している」そう。

相談を受けた松下さんは、栗林さんを北海道の然別湖(しかりべつこ)に連れて行った。

「然別湖は、札幌からも周辺の街からも遠い場所ですが、毎年3万人もの人がやってくるんですよ」

へえ、どうしてですか?

「修学旅行生です。湖をはじめとする豊かな自然と、魅力的なアクティビティを目的に全国から学生がやってくる。これはヒントになると思いました」

然別湖では、ハーネスを着用して林の中を空中移動する自然散策や、野生生物を観察するガイドツアーなど、多様なプログラムがある。

街で過ごす子どもたちにとって、ここで目にすること、耳にすることすべてが新しい。

自然、アクティビティ、異文化体験の要素をもち、地元の人々と交流する旅は、近年は「アドベンチャートラベル」という名前でも注目されている。

「登別に近い『ウポポイ』も、年間8万人の修学旅行生が訪れています。でも登別温泉街には立ち寄らず、都市部の札幌や小樽に行ってしまう。登別にこんなダイナミックな自然が広がっているのに、非常にもったいないと思うんです」

「修学旅行生の一部でも温泉街に来てくれれば、貴重なビジネスになる。なにより登別なら、子どもたちが『すごい!』『こんな場所があるんだ』とワクワクしてくれるという確信がありました」

北海道の自然や文化を学びに来た修学旅行生に、この地域にしかないアドベンチャートラベルを体験してもらいたい。

そんな新しい目標をかなえるために立ち上げたのが、アドベンチャートラベル・ジャパンだ。

「2025年のサービス開始が目標で、将来的には年間8万人の修学旅行生のうち、10%の8千人を受け入れたいと考えています。今は旅行代理店を中心に営業しているところで、2年後には大都市圏の中高生が登別にやってきます」

会社のメンバーには、北海道でアウトドアガイドを長年けん引してきた方も加わっている。

今後は中高生の受け入れのため、オリジナルプログラムの開発や、受け入れ体制の整備をしていくところ。

そこで今回は、アドベンチャートラベルのガイドと、登別を拠点に事業を束ねるマネージャーを募集したい。

「すでに地元事業者さんにはご挨拶をしていて、今あるプログラムを提供してもらうことができます。今後は地獄谷周辺の植物や動物をリサーチして、さらに新しいプログラムをつくっていく予定です」

“その温泉は地獄谷から湧き出ているんだけど、いつごろ生まれたと思う? 最後に噴火したとき、この場所で何が起こったかというと…”

“登別は「ヌプルペッ」と呼ばれていたんだよ。「霊力の強い川」って意味なんだけど、どうしてそう名付けたのかな?”

『ウポポイ』でアイヌ文化を学んだあとに、地獄谷でこの話を聞いたらどうだろう。点で巡った観光地が、ストーリーとして線になり、ぐっと面白くなりそう。

「スノーシューを履いたトレッキングも、都会の子どもたちにはすごく魅力的だと思います。誰も歩いていない新雪の上をギュッギュッと簡単に歩けるんです。新雪にダイブするのも楽しいんですよね」

「何よりガイドさんが一番楽しそうで。本当にこの仕事が好きなんだなと伝わってくるんです」

ガイドは中高生を相手にすることもあり、フレンドリーさを大切にしたい。そのうえで一流のガイドを目指していきたいという意欲があれば、経験は問わない。

プロのガイドによるOJTがあり、然別湖などで修学旅行生のガイドをして実践を積むことができるし、アウトドア資格の取得も支援してもらえるそう。

「ゆくゆくは地元に帰って独立したいという方も歓迎です。北海道でガイドをする経験は、キャリアのなかでもかけがえのないものになるはずですよ」

もう1職種のマネージャーは、現地でガイドを統括しながら、近隣の事業者のみなさんや旅行代理店など、多様な人々とコミュニケーションをとり、事業を前に進めていく役割。

ふだん東京にいる栗林さんや松下さんとはオンラインで連携しながら、定期的に作戦会議をしていく。短期・中長期それぞれの計画を立てて、受け入れに向けた課題をひとつずつクリアしていくキーパーソンだ。

「0から1をつくり上げる仕事なので、とてもチャレンジングだと思います。リーダーシップを発揮して現場を回していける方にぜひ来ていただきたいですね」

 

このビジョンが実現すれば、全国でも先進的な事例になる。

とはいえ、全国的にガイド業は「需要や収入が安定しない」というネックがある。シーズンや天候のほか、コロナ禍やインバウンドブームなどで大きく需要が変動し、ガイド一本で食べていくことはむずかしいそう。その課題は登別でもおなじ。

そこで今回の募集では、登別グランドホテルと連携することで、安定した仕事と収入につなげたいと考えている。

具体的には、2025年の修学旅行生の受け入れ開始までは、ホテルの仕事とガイド準備の仕事の二足のわらじで働く。受け入れが始まってからは、修学旅行のハイシーズンはガイドの仕事を、ローシーズンはホテルの仕事をするイメージだ。

「私たちのホテルは、お客さまをおもてなしすることが好きな人たちが集まっています」と話すのは、ホテルの料飲部長・熊谷さん。

コロナ禍が落ち着き、鬼サウナ目当てに全国から訪れる若者が増えていることもあり、館内はにぎやかだ。

今回募集する人は、ホテルの仕事でもお客さんとの接点が最も多い、夕食の接客を担当する予定。「お客さんがスタッフを呼ぶ前に気づく」ことを大切にしていて、お客さんに顔を覚えてもらうことも多い。

「お客さまアンケートをいただくんですが、誰のことを書いているかすぐ分かるんです。『何事にも元気に返事をしてくれました』ならあの子だな、『おしゃべりが楽しくて笑いっぱなしでした』ならあの子かな、とか。リピーターのお客さまからは、あの方を担当につけてくださいという指名もありますね」

「チームはにぎやか… ちょっとうるさいくらいですかね(笑)。みんなお客さまに顔を覚えてもらえるように頑張っています。明るい方や前向きな方は馴染みやすい環境なので、安心して来てほしいです」

登別グランドホテルと、アドベンチャーガイドの仕事。職種は違うけれど、お客さんとの交流で、記憶に残るおもてなしをしたいという根っこは変わらない。

登別には自然と文化、そして「ここに人を呼びたい、ここでしかできない体験をしてほしい」という思いを持った仲間がいます。

未経験からの挑戦も歓迎です。新たなチャレンジを、北海道で始めてみませんか。



(2024/03/07、03/21 取材 遠藤真利奈)

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