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高層ビルやマンションが並ぶまち、アーケード街があるまち、田園風景が広がるまち。
建物が違えば、そこに集う人の雰囲気や過ごす時間も変わっていく。ある意味、建築がまちの印象をつくっている部分もあると思います。
今回の舞台は、新潟県上越市。
高田地区と呼ばれるエリアには、16キロメートル続く雁木(がんぎ)通りがあります。
高田城の城下町にある町家に、雪除けとして設置された雁木。かつて近くには百貨店や商店があったものの、大型のショッピングモールが建てられ、雁木通りの活気は失われつつありました。
合同会社ニトデザイン&リビルドは、町家のリノベーションをおこなっている工務店。地元のカフェやギャラリー、オフィスなど、町家を活かした改修を手がけています。

今回は、設計・施工管理と建築アシスタントを募集します。
まずは施工管理の仕事から始め、ゆくゆくは設計も担当していってほしいとのこと。設計・施工管理は、建築系の学校を卒業していれば実務経験はなくてもかまいません。アシスタントは未経験でも大丈夫。
自分の手がけた建物がまちの風景をつくっていく。そんな仕事にピンと来る人は、読み進めてみてください。
東京から新幹線で群馬、長野を通り過ぎ、2時間ほどで上越妙高駅へ。ここからさらに電車で2駅先の高田駅で降りる。
雁木通りってどんな感じなんだろう。
目的地へ向かう前に、少し散策してみる。駅前のアーケード街を抜けるとすぐ、雁木通りが続いている。
地元の学生とたまにすれ違うくらいで、人通りはほとんどなく、静かな雰囲気。雁木の上には立てかけられたハシゴが。

ニトデザインの事務所は、雁木通りから細い路地に入ったところ、駅からは200mほどの場所にある。
元足袋屋さんを自社でリノベーションした建物。1階にはテナント貸ししているコーヒーショップと、シェアキッチンが入っている。
チャイムを鳴らし、2階の事務所に案内してもらう。

「1階のカフェは、大塚いちおさんというイラストレーターがオーナーなんです。ここが地元の方で、以前近くでカフェを開いていたときに、お客さんとして来てくれて。町家の取り組みに興味を持っていただいて、テナントとして入ってくれました」
そう話すのは、ニトデザイン代表の打田さん。うんうんと落ち着いて話を聞いてくれるので、ついこちらが話したくなる雰囲気を持つ方。

北海道出身の打田さん。地元の高専を卒業後、上京して建築設計事務所に就職。結婚を機に奥さんの地元である新潟県へ新たな住まいを探すことに。さまざまな市町村があるなか、上越を選び移住してきた。
「北海道って古民家とか古い建物が少ないんです。はじめて高田に来たとき、町家の風景が自分にとって非日常で。もったいないなって。町家をもっとうまく活用できるはずだ、と感じました」
「ただ、いきなり見知らぬ自分が工務店を始めても依頼は来ないよなと思って。まずは地域の人たちと関係を築こうとカフェを始めました」
初めの2年間は、カフェ営業の傍ら、個人事業主として大工や設計の仕事を受けていた。だんだんとカフェ営業中の立ち話で町家の改修を相談されるようになったそう。
大きな案件の相談も増えてきたことから、2020年にニトデザイン&リビルドを設立。今の場所に事務所を構え、町家を利用した複合施設としても活用している。

まちに立ち寄る場所ができると、自然と人が集まって、新たな関係性やアイデアが生まれていく。
たとえば、カフェの奥にあるシェアキッチン。
「起業をしたい人がお試しで出店する機会になればいいなと思っていて。ここを卒業した人が実際にお店をつくるときも、町家の良さを活かしつつ、プレイヤーごとに色が出るように、内装のデザインを工夫しています」
「そういう空間ができれば、口コミで紹介してもらえて、どんどん連鎖していくんです」
実際にシェアキッチンを利用した2名が、高田地区と近くの地域でそれぞれ開業。雁木通りにもニトデザインが設計・施工したカフェや地元企業の事務所などが点在している。

消えていたあかりが、まちに灯っていく。観光客がたくさん来ることはないけれど、地元の人たちが落ち着ける居場所は増えている。
「最近は高田地区だけではなく、ほかの地域からも依頼が来ていて。ありがたいことに、町家といえばニトデザインと思いついてくれる人が増えています」
「そのつながりで、ピンポンってチャイムを押して来てくれたご近所のお店の方もいて。『海の見える場所でお店を開きたい』と相談してくれたんです。昨年、そのプロジェクトも竣工できました」
ニトデザインが受ける仕事は、小規模リフォームなども含めると年に30件ほど。大半は町家の再生に関わる大きな仕事なんだそう。
「1つとして同じ現場がないんです。なので、型にはまったことをやりたい人には合わないかもしれません。今あるものをどう活かすか、そこに興味を持っている人がいいと思います」
「今は僕が設計をしていますが、これから入ってくれる方にもゆくゆくは設計をしてほしくて。それもサポートしていきたいと思っていますよ」
現在4名で運営しているニトデザイン。打田さんと共に現場管理や建築関連の企画をしているのが、入社2年目の杉ノ上さん。
建築業界で働いて30年ほど。設計や管理職などさまざまな役割を経験してきた。にこやかな表情に安心感がある。

ニトデザインを知ったのは、ライフスタイルを見直したいと考えていたときだった。
「前職では設計事務所に11年、建設会社に18年勤めていました。最後の3年間は管理職に就いて、子育てもあるなか、心も体も休まらない状態でものすごく大変で」
「子どもと過ごす時間をつくれる働き方を模索していたときに、SNSでニトデザインの求人を見つけたんです。地元の上越でしたし、安心して働けそうだったので応募しました」
打田さん自身、東京の設計事務所に勤めていたころ、休日出勤や毎日終電まで働いていた経験あった。そのことから、プライベートの時間も大切にできるよう、施主さんには余裕をもったスケジュールで提案しているそう。
これから加わる人は、経験があれば打田さんや杉ノ上さんのサポートを受けながら、現場管理を任されることになる。
未経験の場合、建築アシスタントとして、まずは現場を見ることから。一つずつ覚えていけるといい。
経験もあったため、入社して3ヶ月ほどで大きなプロジェクトの現場管理を任された杉ノ上さん。先ほど、打田さんが話していた「海の見える場所でお店を開きたい」というご近所さんの依頼を担当した。

「工事の現場が地元の最寄駅の駅舎だったんです。そこは無人駅でほとんど人もいなくて。思い出のある場所だったので、何かできたらいいなとぼんやり考えていました」
「面接のとき、地元のことを話したら打田さんが『その駅うちで改修するよ』って(笑)。関われたのはうれしかったですね」
現場には大工さんや電気屋さんなど、さまざまな職人が20人ほど出入りした。設計やスケジュールは打田さんが先につくってくれていたという。
「計画、設計、工程管理の見積もりをして、いざ現場っていう流れは新築でもリノベーションでも同じ。ただニトデザインで取り扱うのは築年数が100年くらいの建物。これまでと扱うものとは全然違う感覚がしました」
「壁を壊したら柱や土台が腐っているとか、大雪で工事が1週間できないとか。いろんなイレギュラーが続いて。職人さんの手が空かないようにスケジューリングして進めるのは大変でしたね」

トラブルが起きると、当初頼んでいた大工さんがスケジュール通りに入れないこともある。そんなときは、打田さんに相談しながら、代わりの業者に依頼して進めていった。
「無事にスケジュール通りに進めることができて。わからないことはきちんと相談する、報連相が大事だなって改めて感じました。竣工したときに大工さんから『杉ノ上さんが監督だったからスムーズに仕事できたわ』って言ってもらえたのはうれしかったですね」
「小さな空間にいろんな職人さんがいて。だんだん見捨てられていた建物が、きれいになっていく。その過程を見られるのはすごく楽しかったですね。ほら、テラスから海が一望できて、とてもきれいなんです」

うれしそうに話す杉ノ上さん。ニトデザインに関わる人たちにも、これまでとは違う雰囲気を感じている。
「現場に入ってくれる職人さんたちは、みんないい人で優しいんです。たぶん、打田さんのことも手がける建物のことも好きな人たちが集まっているような気がします」
「お客さんもUターンやIターンの人が多くて。生まれも育ちも上越の私からすると、町家を再生してお店にする発想はなかったので、すごく新鮮です。職人さんやお客さんとの会話を楽しめる人が来てくれるといいですね」
ときには、施主さんも一緒にDIYをして完成させていく。好きなまちで、好きな空間を自分でつくる。その時間は、お客さんにとってもきっと心地いいはず。
次に向かったお店には、まさにそんな時間が流れている。
ニトデザインの事務所から徒歩5分ほど。空き家に挟まれてポツンと佇むのが「スイミー」という古本と日本酒のお店。
中に入ると、壁一面の本棚が。

「好きなものを散りばめた空間にしたくて。モデルのひとつが長野県にある『栞日』というお店なんです。それを伝えると打田さんが実際に見学に行ってくれて、古い小箱やたんすを使って雰囲気を再現してくれました」
そう話すのは、店主の川上さん。

スイミーができたのは2021年。元中華料理店で、閉業後は車庫として使われていた建物を、ニトデザインが設計・施工した。
「商店街に小さなお店がたくさんあるまちに、大きなショッピングモールができて、商店街から人もお店もなくなる。その高田の風景が絵本のスイミーの話に似ているような気がして、“スイミー”と名付けたんです」
「そういう自分のイメージを、打田さんと話したり写真を見せたりしながら設計してもらいました」
友だちや近所の方など、たくさんの人と一緒にDIYをして、3ヶ月ほどで竣工。完成を見た元中華料理店のご家族も喜んでいたそう。
「この電気は、打田さんがオリジナルでつくってくれたんです。改修中にお店に来たら、取り付けられていて。これはお店に合う! って、うれしかったです」

どんな場所をつくっていきたいか。信頼関係ができていると、アイデアも提案しやすい。これから加わる人も、自分なりにアレンジして設計ができる機会があるかもしれない。
「転勤や出張のときに立ち寄っていただくお客さんもいて。このお店で仲良くなって、連絡先を交換したり、お互い住んでいる土地に遊びに行ったり。そんな関係性も生まれる場所になっています」
最後に、打田さんが話していたことが印象に残っています。
「閑散としていると見せかけて、ドアを開けると面白い人たちが賑わっている、みたいな。たくさん空き家があるぶん、深掘りしがいのあるまちだと思います」
地域の人たち自身が、地域の魅力を再発見している場所。
暮らす人たちと深掘りし続けながら、まちのムードをつくっていく仕事だと思います。
(2024/06/13 取材 大津恵理子)


