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小さな光をつないでく
暮らしやすいまちの観光

取材先の山奥や、ローカルなまちで過ごす夜にふと顔を上げると、星の多さに驚く。周囲が暗いからこそ、ほのかな星の光に気づくことができる。

観光について考えても、同じようなことが言えるかもしれません。

名物や名所もいいけれど、それがあるか・ないかで競った先にあるのは、“持てるものが富む”世界。そうではなく、すでにそこにある光に目を向けて、つないでいくような観光のあり方がつくれないだろうか?

福岡・大牟田(おおむた)で、そんなチャレンジをしてみませんか。

舞台となる大牟田市は、人口およそ10万人のまち。車で通りかかっただけでは、よくある地方都市のような印象を受けるかもしれません。

炭鉱で栄えた歴史や地元のお祭り、個人店が元気でチェーン店はなかなか生き残れないという飲食事情、市街地の活性化に若者世代のアイデアを活かす取り組みなど。掘り下げるほどに、いろんなおもしろさが見えてきます。

大牟田市の公式観光サイト「おおむたOne plate」などを通じて、一つひとつのおもしろさを紹介したり、小さな光をつないで大きな星座を描くように、周遊できるイベントやツアーを企画運営したり。

オンラインとリアルの両方で、まちの魅力を伝えていく地域おこし協力隊を募集します。

個人事業主型の地域おこし協力隊のため、働く場所や時間の自由度が高く、副業も可能です。取材・撮影・編集や広報の経験があると理想的ですが、未経験でも大丈夫。

何事にも好奇心をもっておもしろがれる人に向いている仕事だと思います。

 

大牟田市は、福岡県の南端に位置している。

佐賀空港から車で40〜50分、お隣の熊本や大分方面にもアクセスのいい立地。運転さえできれば、九州のどこへ行くにも便利そうなまちだ。

JRと西鉄の2路線が通る大牟田駅の西口広場へ向かうと、レトロな路面電車が目に留まる。

かつて炭鉱業で栄えた大牟田のまちなかには4〜5つの市街地があり、それらを結ぶために路面電車が活躍していたそう。

現在は、市内の老舗喫茶店から引き継いだコーヒーやフルーツサンドなどを楽しめるカフェ「ハラハーモニーコーヒー」として営業している。

アイスカフェラテを注文して、風が気持ちよく抜けるテラス席へ。

大牟田市役所観光おもてなし課の松尾さんに話を聞く。

大牟田出身で、市役所に勤めてもうすぐ20年になる松尾さん。

観光の側面から見て、大牟田市ってどんなまちなんでしょうか。

「大牟田には、明治時代の産業革命を支えた炭鉱などの世界遺産、“動物福祉を伝える”をコンセプトに掲げる大牟田市動物園、300年以上の歴史をもつ大蛇山祭りという3つの観光の目玉があります。ただ、ほかの観光地と比べて派手さはあまりなくて」

世界遺産があったり、大蛇山祭りの来客数は例年30万人を超えていたり。じゅうぶんな名物があると言ってもよさそうだけど、通年で、幅広いお客さんを呼べる“派手な”ものはない。

熊本の阿蘇や大分の温泉のようにわかりやすい名物がないなかで、いかに観光に取り組んでいくのか?

指針を示すため、2022年に観光基本計画を策定。その一環で生まれたのが、市の公式観光サイト「おおむたOne plate」だった。

Webサイトを覗いてみると、観光スポットやグルメ、体験プログラムなどが写真と文章でわかりやすく紹介されている。

とくに豊富なのが、飲食店の情報。個別の店舗紹介に加えて、大牟田育ちの作家・西村健さんと行くラーメン巡礼ツアーや、大牟田市民のソウルフード「イカタル弁当」特集など、読んでいるだけでお腹が空いてくる。

「大牟田はチェーン店が生き残れないんです。それだけ個人店が元気なんですよね」

大牟田の魅力は「人」と松尾さん。

これからの観光を考えても、人にフォーカスすることが大切だと考えている。

「個人的に“はしご酒”のシリーズが好きで。お店を紹介するときに、料理や内装のことだけじゃなく、切り盛りしている人の様子やそこで楽しんでいるお客さんの雰囲気まで伝わったほうが、実際に足を運ぶきっかけになりやすいと思うんです」

観光ポータルサイトとして情報を網羅しつつ、そこにいる人の顔がちゃんと見える。そんなサイトを目指している。

おおむたOne plateを日々メインで更新しているのは、地域おこし協力隊。来年1月で現役の協力隊が任期満了を迎えるにあたって、今回は後任を募集したい。

 

ここからは、協力隊の活動をメインでサポートする観光おもてなし課の岡田さんに話を聞く。

活動の軸となるのは、おおむたOne plateやSNSを通じた情報発信。

「今は飲食の色が強いんですけど、もっといろんな角度から掘り下げたいんです。動物園に新しい動物が増えたとか、昔炭鉱で働いていたガイドさんの話とか。動画も使いながら、臨場感のある発信をしていけたらと考えています」

動画といっても、Instagram用のショート動画がメイン。高度な撮影・編集のスキルを求めているわけではない。

取材先も、着任当初は観光おもてなし課のみなさんがまちの人をつないでくれる。

暮らしに慣れてきたら、取材先を開拓したり、観光誘客につながるイベントやツアーを企画したり。少しずつ自発的にできることを増やしていってほしい。

一般的には自治体との雇用契約をむすぶことが多いなかで、今回は個人事業主型の協力隊の募集。

週1~2回のミーティングで進捗や勤務状況を共有しつつ、自分の裁量で働くペースを決めることができる。副業も可能で、現役の隊員もWebサイト制作の仕事と並行して活動しているそう。

どんな人に来てもらいたいですか。

「巻き込まれ上手な人がいいですね」

巻き込まれ上手な人。

「ハラハーモニーコーヒーを運営している方も、月に一回全国からゲストを招いてまちづくりトークイベントを開いています。ほかにもいろんな活動をしている人がいるので、そこに巻き込まれていくと顔も広がるし、一緒にできることも増えていくんじゃないかなと」

裏方に徹して、黒子のように情報発信をしていきたい人には向かないかもしれない。

3年後の独立を見据えて、顔と名前を売ってもらいたいと松尾さんも言っていた。人と関わりながら、オープンに発信していくことを楽しめる人が合うと思う。

 

いろんな企画に巻き込んでくれそうなうちのひとりが、続いてお話を聞いた有馬さん。

本業の人材マネジメント事業のかたわらで、大牟田わかもの会議の代表も務めている。

大牟田わかもの会議とは、中心市街地の活性化に若者のアイデアを取り入れることを目指す団体。高校生や大学生と、有馬さんのような30代までの大人たちが一緒に活動している。

駅前広場を使ったイベントやまちあるき、DIYのワークショップなど、アイデアだけで終わらせずに形にすることを大事にしてきた。

最近力を入れて取り組んでいるのが、駅前整頓プロジェクト。

まずできることとして、古びたバス停の塗装を予定しているそう。ゆくゆくはJR九州の駅を起点としたにぎわいづくりの仕組みを活用して、待合室を整備してはどうか?という話にもなっている。

「誰かがつくったものを使って生活するのが当たり前になっているなかで、自分もつくる側にまわることで、世界の見え方がちょっと変わると思うんです。若い人たちにもそういう経験をしてもらえるといいなと思っています」

駅前整頓プロジェクトは、生活者の視点から生まれたもの。それと同時に、駅は旅の玄関口として、観光客のまちに対する第一印象をつくるタッチポイントにもなる。

観光情報の発信というと、グルメや写真映えするスポットを紹介するイメージが先行しがちだけど、こうした取り組みを観光と関連づけて紹介していくのもおもしろいかもしれない。

有馬さんは、まち全体を遊園地に見立てる構想も練っている。

「地元の人に『大牟田の好きなところってどこですか?』って聞くと、それぞれの答えがあるんです。ありすぎて、1つに絞れない。だったらそれを丸ごと束ねてプロモーションできないかって考えたのが“マルミュータワールド”です。OMUTAを読み換えただけなんですけど(笑)」

「駅の改札がエントランスで、アトラクションとして動物園で特別な体験ができたり、飲食店の限定メニューが楽しめたり。中心市街地だけじゃなく、まち全体を楽しんでもらうようなことをもっとやりたいんですよね」

メディアやSNSを通じた発信に加えて、市内を周遊するツアーやイベントの企画も、協力隊のミッションのひとつ。有馬さんたちわかもの会議のメンバーと関わるなかで、いろんなアイデアが育っていくように思う。

 

マルミュータワールドの構想を聞きながら、「めっちゃおもしろいですね! チケットもつくりたいな」と一緒に妄想を膨らませていたのが、広報課の地域おこし協力隊の山本さん。

「ラフな会話のなかでしか広がらないアイデアってあるじゃないですか。これから入る方も、一緒に連携しながら動ける人が来てくれたらうれしいですよね」

山本さんは昨年大牟田に移住し、シティプロモーションサイト「OMUTA City Life」を運営している。

シティプロモーションと観光は領域も近いし、取り組み内容も今回入る協力隊との共通項が多い。移住者の先輩としても、身近に頼れる存在だと思う。

「移住は、人生で一番悩みました。わたしにとっては人がすごく大事で。前職の東京の会社は尊敬できる人たちばかりでめちゃくちゃ人に恵まれていたし、九州には知り合いがいない。大丈夫かな…?って」

「でもそれ以上に、縁を感じたというか。大牟田にはじめて来たときに、自分が大事にしたいキーワードがたくさん聞こえてきたんですよね。当時関わっていた地域系のコミュニティにも大牟田在住の方がいたりして。覚悟を決めたら、早かったです」

移住してから後悔したことは一度もない、と山本さん。

大牟田の気に入っているところを教えてくれた。

「夕日がめちゃめちゃきれいです。虹も、端から端まできれいに見えます。高い建物がないから、空が広いんですよ」

「アクセスのよさも魅力ですね。ちょっと息抜きしたいときに、車さえあれば九州各地に行きやすい立地なので。旅好きな人はすごく楽しめると思います」

とくに周辺5市町とのつながりは深く、暮らしや教育、商業などさまざまな分野で相互に連携する「定住自立圏」の協定をむすんでいる。

もちろん、観光分野での連携も。たとえば柳川市で川下りをしたあとに大牟田の世界遺産をめぐるツアーや、小さな子ども連れのファミリーなら、大牟田の動物園を楽しんでもらい、翌日にお隣の荒尾市にある遊園地「グリーンランド」で遊ぶプランなど。

市外にも目を向けると、可能性はさらに広がりそう。

 

地域の光を捉えて、つないでいく。そのためにはまず、自分自身がこの地域での暮らしを味わうことが欠かせないと思います。

人に会って、自分の目で見て、いろんな声を聴いて。その実感をもとに、このまちらしい観光のあり方を発信してください。

 
11月21日(金)に東京・日本橋でオフラインイベントも開催されます。観光おもてなし課の松尾さんや岡田さん、先輩協力隊の山本さんも登壇するので、まずはこちらに参加してみるのもいいかもしれません。

(2025/10/01 取材 中川晃輔)

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