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となりの結婚指輪屋さん

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

大切な人に贈りものをするように。いつもそんなふうに働けたら、と思います。

大阪うつぼ公園のすぐそばにそっと建つ、築60年のレトロなビル。

ここでは毎日、世界にたったひとつだけの結婚指輪がつくられています。

つくっているのは、株式会社encochiの皆さん。

お話を伺って思うのは、なんだかとても居心地がいい会社だなということ。きっとそれは、働く皆さんの仕事への姿勢が、心地よいものだからだと思います。

今回はencochiのオーダーメイドブランドmina.jewelryで指輪の設計図をつくるCADオペレーターと、新たに生まれるブランドをともに考えるwebデザイナーを募集します。

 


四ツ橋線の本町駅から地上に出る。静かな通りに入ると、小さな古いビルが見えた。

1階には革靴屋さんが入っていて、その上にあるのがmina.jewelry本店とencochiの事務所兼アトリエ。

encochiには2つのブランドがあって、mina.jewelryのほかに、結婚指輪をセルフメイクできるアトリエuchimariを1都1府2県に展開している。

小さな看板を目印に、狭くて急な階段を上ったところにお店の入り口がある。扉を開けると、代表の矢野さんが迎えてくれた。

「こんにちは。今日はすごく楽しみにしていました」

矢野さんは、少し話すだけでリラックスしてしまうような、飾らない雰囲気のある方。昔から仲良くしている親戚のお兄さんみたいな、そんな感じ。

纏う空気は、そのままお店にも表れている。光が差しこむ小さな部屋に、本棚とソファ。まるで、居心地のいいリビングにいるみたい。

窓際のテーブルには、さまざまなかたちの指輪が入った小皿がずらりと並んでいる。

「これは今までうちでつくったお客さんの仮リングたち。つくるたびにどんどん増えていってるから、ストックはもう何千、いや、それ以上になりますね」

mina.jewelryでは、本番の指輪をつくる前に、かならず銀の仮リングをつくる。サイズとデザインを実際に生活のなかで確かめながら、時間をかけて二人の満足のいく指輪のかたちをつくっていく。

矢野さんが初めて指輪づくりに触れたのは、職を転々としていた20代半ばのとき。最初は暇つぶしになる習い事のつもりだった。

その後、趣味が高じて、気づけば作家として指輪をお店に置いてもらうまでに。でも、数多くの指輪をつくるたびにモヤモヤが膨らんでいった。

「同じものをつくって、納品して。その分のお金はもらえるけれど、ビジネス感が出てきてしまったんです。自分の指輪がどう使われるのか見えないし、なんかやりたいことじゃないなって」

そんななか、時おり結婚指輪をつくってほしいという依頼をもらうことがあった。世界にたったひとつの指輪をつくるため、直接お客さんと会って打ち合わせをする時間が増えていった。

「直接お客さんに会うと、やっぱりすごく楽しかったんですよね。結婚指輪は単価がふつうの指輪より高いから、話をしながら時間をかけてつくれる。こういうつくり方っていいなと思って、結婚指輪をメインにしたいと考えたんです」

矢野さんは10年前に結婚指輪一本でやっていくことを決める。すでにこのときから、リングのサンプルづくりは毎回行っていたそうだ。

「僕ね、大事にしていることがあって」

大事にしていること?

「お二人にとって”たまたま指輪をつくれる友だち”っていう距離感でいたいんです」

友だちの距離感、ですか。

「そう。お客さんも、友だちになら緊張せずに『こういうことがしたいねん』って言いやすいでしょ」

「こっちも、友達が結婚するんやったら『なんとかしてあげるよ』『こういうこともできるよ』ってなるじゃないですか」

なるほど。ここにいるととてもリラックスできるのは、そのスタンスが伝わってくるからなのかも。

身近であってほしいから、価格は控えめ。2人とじっくり話ができるよう、お店は完全予約制にしている。

オーダーメイドの結婚指輪というと、ちょっとハードルが高いイメージがあるけれど、ここなら思っていることを素直に言ってみようかなという気がしてくる。

そして、そんな場所だから、既製品ではしっくりこなかったり、悩みを持った人が訪れる。

「左手の薬指のサイズがめちゃめちゃ細くて、0号以下っていうお客さんがいらっしゃったことがあって」

その人は、既製品はもちろん、オーダーメイドのお店にさえ難しいと断られてしまい困っていた。mina.jewelryでならつくれると知ると、とても喜んでくれたそう。

「今まで指輪自体ほとんどしたことがなかったみたいで。そんな人が仮リングを試していくうちに、もっとこうしたい、ああしたいって、わがままを言ってくれるんですよ。やっぱりそこは応えてあげたくなる」

何度も注文を聞いてつくり替えていくのは、大変なことのようにも感じます。

「『こんなんできるんですか?』って言われると『できるに決まってるやん。誰に言うてんねん』って、うまいこと気持ちをくすぐられるんです(笑)」

「自分がつくったもので、お客さんが本当に喜んでくれたらうれしいじゃないですか。それを面倒くさいって思う人は、うちで働くのはたぶん無理やと思いますね」

渡した後もメンテナンスをしに子どもを連れて定期的に会いにきてくれる人や、指輪をつけてまわった新婚旅行の写真が送られてきたりすることもある。

手をかけた分、長く続く関係ができるのだと思う。

指輪をつくる工程を伺うと、「基本的な指輪のつくり方は、仮リングも本番のリングも同じ」とのこと。

まずはワックスとよばれるロウで原型をつくって、それを石膏にセッティング。固まった石膏ごとあたためるとロウだけが溶け出し、原型そのままの空洞ができる。そこに金属を流し込めば、原型のかたちをした指輪のできあがりだ。

mina.jewelryでは、最初の原型の立体的な設計図と、最後の仕上げを社内で行なっていて、鋳造は協力工場の方にお願いしている。

今回募集するCADオペレーターは、どのような仕事なのだろう。スタッフの江草さんにもお話してもらった。

「お客さんの希望を、まず立体の設計図にするっていう仕事です。イラストレーターをいじってるような感じですね」

じつは接客スタッフとしてこの春入社して、CADを使い始めたのは6月から。先輩から2、3回CADソフトの使い方を習ったら、あとは実践しながら操作を覚えていったそう。もう立派に仕事を任されている。

ちなみに江草さんは美大出身。だから「イラレの操作だったら呼吸のようにできる」とのこと。新しく入る人も、少しでもソフトの知識があると楽かもしれない。

「僕、1日中PCに向かってデザイン考えたりするのが好きなんですよ。グッてなれる瞬間がたまに訪れるんですよね。ランナーズハイみたいな。時間を忘れて没頭するのが好き」

この仕事の面白さは何だと思います?

「CADの使い方がわかってくると、あ、こんなデザインもできるんじゃないかなとか、いろんなアイディアが生まれてくる。それを接客するときにも活かせたりして、勉強すればするほど引出しが増えていく感じがあります」

これは接客も担当している江草さんならではの意見のようにも思える。けれど、新しい人も、ゆくゆくは技術者としての知見を活かして「こういうデザインもできるよ」といったことをどんどん発信していってほしいそう。

たとえば、「造形としてつくることはできても、強度の面で不安がある」といった、制作側ならではの意見もあるのかも。

接客と制作どちらの感覚も持てるような、バランス感覚のある人が向いているのだと思う。

制作チームはお客さんの顔が直接見えない部署ではあるものの、希望している細かいイメージはオーダーシートで共有されている。

「オーダーシートを見たときに『これはしんどい…』って思ってしまうような細かいデザインもあるんですけど、できあがった実物を見たらすごく面白いって思う」

「『やっぱり僕つくれちゃいましたよ!』みたいな気持ちになる。それは毎回楽しいです」

江草さんの軽やかな語り口を聞いていると、指輪をつくる楽しさが、そのままお客さんに喜んでもらうことにつながっているように思える。

現在mina.jewelryのスタッフは10名ほど。一緒に働く社長の矢野さんについても聞いてみた。

「社長とは呼んでるんですけど、面接のときから大阪のおっちゃん感がありましたね(笑)」

「人柄がそのままお店の雰囲気ににじみ出てるなって、最初からなんとなく思いました」

接客スタッフとして入社したものの、今では矢野さんからCADやパンフレットづくりなどいろんなことを任されているそう。

現場の仕事はスタッフたちに任せて、最近の矢野さんはこれからの仕事をつくろうとしているところ。

再び矢野さんにお話してもらった。

「今新たに考えているのは、既製品の結婚指輪の販売です」

既製品。これまでのお話を聞いていると、意外な感じがします。

「うちは結婚指輪のオーダーメイドと手づくりをやっていますけど、選択肢として既製品がないのは変な感じがしていて。結婚指輪を選ぶときに、3つの選択肢をうちでまるっと提示してあげられるといいのかなって思っているんです」

まずはwebでの販売を始めたいと考えているそう。

そうなるとencochiの温度感は、伝わりにくくなるような気もします。

「うーん。web販売を中心のブランドにしたとしても、その中でやっぱり距離感を近く保てる“何か”をやりたいなって考えています」

「まだぼんやり構想段階なので、その“何か”を一緒にゼロから考えていけるwebデザイナーがいたらいいなって思ってるところなんです」

矢野さんもまだ構想がまとまっていないよう。ゼロから一緒に考えて、事業の立ち上げに関わってみたいデザイナーの方がいたらぜひ応募してみてほしい。

 


取材のあと、お店の上の階にある事務所とアトリエも見学させてもらいました。こじんまりとした事務所には、若いスタッフたちが淡々と、それでいて熱心に働いている。職人気質の人が多いのだろうと感じました。

encochiの雰囲気、私は好きです。ここで働きたいと思えたら、エントリーしてみてくださいね。

(2017/11/22 遠藤沙紀)

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