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「僕らは業界全体の調整役なんですよね。業界がうまくいくように、消費者とも、行政とも、事業者とも関わっていく。だから一つの分野の専門家よりも、ゼネラリストになってもらえるといいかな」日本通信販売協会(JADMA)という団体をご存知でしょうか。
日本通信販売協会は通信販売を行う会社が会員となり、その会費で運営されている公益法人です。
通販業界全体を見通して、消費者のために、そして業界全体が健全に発展していくために、「あったらいいな」と思うサービスを提供しています。
今回募集するのは、そんな協会の事務局で働く人。
非営利団体なので、利益を追求するためのノルマなどはありません。収益に業績が左右されないぶん、安定もしています。
だからといって、ここで働く人たちはその状況に胡座をかくことなく、自分たちにできることを模索し続けている姿が印象的でした。
知れば知るほどに奥深い仕事だと思います。まずはぜひ、読んでみてください。
協会のオフィスがあるのは日本橋。三越やCOREDO室町のある賑やかな通りから脇道に入り、5分ほどですぐにオフィスの入ったビルを見つけた。
扉を開けると、国内外の通販カタログがずらりと並んだ棚が目に入る。どなたに声をかけようかなと考えていたら、すぐに3人のスタッフさんが声をかけてくれた。
来客の対応って仕事に集中しているときほど人任せにしがちだけど、みなさんが迎え入れてくれる感じがしてなんだかうれしい。
奥の応接室で、まずは専務理事の万場さんに協会の成り立ちについて教えてもらう。
日本通信販売協会の設立は1983年。
通販の需要が増えるとともに、あちこちで問題も起き始めていた時期だった。
なかでも多かったのは、誇大広告や商品が届かないといった消費者をだますようなトラブル。行政は対応に手が回らず、通販会社も同業他社の誇大広告や消費者の苦情対応について悩んでいたという。
「やっぱり悪いものは駆逐して、業界も真っ当に育っていかないといけないよねと。それで業界団体をつくろうということになったんですね」
当時この考えに賛同し集まった企業は90社ほど。いまでは約5倍の460社以上が参加しており、賛助会員も合わせるとその数は660社にものぼる。
通販カタログの隅に、協会員の証であるJADMAマークを見つけたことがある人もいるかもしれません。
協会の目的は、消費者の保護と通販業界の健全な育成。
「そのために、設立の翌年には通販110番という消費者の相談窓口を設けました。業界の健全な育成のために、通信販売の倫理綱領もつくって。要は自分たちが自主的に守るべき規範ですよね。会員はもちろん会員以外にも広めていこうとしています」
そのほか、会員同士がいろんな切り口で情報交換をする「委員会」の運営や、通販にまつわる研修会やセミナーの企画、行政とのやりとりなど。その内容は実に幅広い。
業界全体を俯瞰して、いろんな立場の人に役立つようなサービスを提供しているんですね。
「業界団体というと、なんとなく業界の利益になることばかりやっているというイメージがあるかもしれません。でもうちは一業界とか一社の利益だけを追求する団体ではない。消費者も企業も、みんなハッピーになるような社会をつくっていこうという考えなんです」
利益にとらわれず業界全体のことを考える姿勢は、話を聞いていても伝わってきて気持ちがいいし、なくてはならない役割だと思う。
一方で、通販のスタイルは紙の雑誌やチラシからインターネットへと移行しつつある。協会に求められるサービスも変わってくるんじゃないだろうか。
「そうですね。配送方法や広告媒体の使い方も日々変わるし、それに伴って法律の規制や消費者のニーズも変化しているわけです。我々としても常に勉強は欠かせませんよね」
「ただ、通販の業界っていうのは、わりと世の中の半歩先くらいの仕組みをいち早く取り入れて、うまく活用してきた業界なんですよ」
通販業界には、そんなに柔軟な面があるんですか?
「たとえば、0120のフリーダイヤルって今では当たり前だけど、最初に取り入れたのは通販業界なんです。FAXや宅配便、コンビニで商品代金を支払う仕組みも、通販業界からわっと広まっていった」
言われてみれば、世の中の情勢やニーズに合わせる必要があるぶん、変化のスピードが早い業界かもしれない。
「だからね、やっぱりおもしろい業界ですよ。新しいことがどんどん出てくるし、その内容によっては仕組みが一変するかもしれないから。僕なんかはワクワクするよね」
ここまでとてもわかりやすく話してくれた万場さん。でも実は万場さんも含め、事務局スタッフの9割がまったくの異業種から転職されてきた方なのだそう。
「僕はね、クラシックギターをやっていたんです。でもギター一本で食べていくのはなかなか難しいから、仕事をしないといけないとふらっとここにやってきた。そこからサラリーマン人生が始まったんです」
協会に入ったとき、業界のことはほとんど何も知らなかった。それでも続けられたのは、「仲間が良かったから」と万場さんは話します。
「同世代の事業者さんが多かったから、どうせなら理想の通販会社をつくる勉強会をやろうと、5~6人でグループをつくってね。各社を持ち回りで見学したり、何度も意見を交わし合って業界のガイドラインをつくっていった」
「自社の利益だけを追求するんじゃなく、業界のため、消費者のためにできることを本気で考えていく。そういう公益的活動というところが、性にあったのかもしれないですね」
隣で、うんうんと頷きながら万場さんの話を聞いていたのは、事務局スタッフの渡辺さん。
前回の日本仕事百貨の記事をきっかけに入社された方。やわらかな笑顔が印象的で、ひとつひとつ丁寧に話をしてくれる。
前職は、ワインの通販を行う会社の販売企画職だった。
「通販は普通の販売職とは違って、人を目の前にしないで売るので。そこが自分なりに工夫できるおもしろさでもあり、意思疎通が上手くいかないなどの大変さでもありましたね」
「ただ、ノルマに追われたり、勤務時間が不規則だったり。ちょうど20代後半になって、この働き方を続けられるのかなと悩んでいたところでした」
協会に入り、渡辺さんは主に2つの仕事を担当している。今回入る人も、同じような仕事を担当することになると思う。
1つ目は、委員会の運営。
消費者委員会、物流委員会、単品通販部会など、協会には14の委員会・部会があり事務局スタッフがそれぞれ1つから2つを担当している。
それぞれの委員会には、会員である通販会社の中からその分野に長けた方が参加し、他社と情報交換を行う。渡辺さんは、健康食品系サプリメントを扱う会員が集まるサプリメント部会を担当している。
委員会では会員さんと話したり、イベントの企画をすることもあるそう。
そして2つ目が、協会で開催されるセミナーの企画運営だ。
「たとえばもうすぐ開催するのは、通販広告表示講習会。広告表示の専門家に、消費者に誤解を与えない広告の書き方などを教えていただきます。ほかにも、今後はクレジットカード決済の対応方法が変わるので、その対策セミナーも去年から定期的に行っています」
「もちろん法律に対応することも大切ですが、なかにはどうしたら売上を伸ばせるか悩まれている事業者さんもいるんです。だからSNS講座のようなものもあって。月に2、3本は何かしらのセミナーをやっていますね」
セミナーを開催することで、会員同士がつながって新たなビジネスが生まれることもあるし、悩みを共有することでより良い事業運営へのヒントを得られることもある。
スタッフは、企画から当日の運営までを1人または2人で分担して行う。
配布資料の印刷や原稿のチェック、講演者の選定や会場決めも。何ヶ月も前から、地道に準備を続けて当日を迎えるという。まさに、一人でなんでも行うゼネラリストだ。
「当日は司会や受付もします。だから臨機応変な対応が求められますね。開催後はアンケートをとって、その内容をもとに講師の方と相談して会をブラッシュアップしていきます」
やることは多岐にわたるものの、最初から一人で担当するわけではないから安心してほしいとのこと。まずは先輩スタッフのサポートからはじめて、徐々に一人でも担当できる力をつけていく。
「私は性格的に、段取りを考えるのが好きなんです。一つ終えると達成感もありますし、アンケートに『運営がスムーズだった』と書いてもらえるとすごくうれしいですね」
だけど予算やノルマなど、明確な目標がないなかでモチベーションを保つのは、難しくはないのでしょうか?
「淡々としているように見えるかもしれないですけど、日々いろいろなやりとりがあるんです。毎回参加してくださる方が名前を覚えてくださったり、会場の担当者の方とも相談をしたり。そういう積み重ねが楽しいなと思います」
ときには、参加されている方に話しかけて抱えている困りごとをリサーチすることもあるのだとか。こんな会があったら喜ぶかな?と会員の気持ちを想像するのも大切なこと。
そうやって自分なりに仕事をつくり、模索している。するとここで、万場さんも一言。
「コミュニケーションが好きな人に向いていると思います。業界には物流の専門家などその道の専門家がいるし、たくさんの人脈や情報を持っていることが自分の武器にもなっていくので」
さらに「協会で新しいことを始めてもらうのも構わないですよ。むしろどんどんやってほしいですね」と万場さん。
新たな試みの一例として見せてもらったのは、協会のホームページに載っている“県民通販大調査”。通販にまつわる様々なテーマで、全国47都道府県の県民性を大解剖しようという企画だ。
通販での商品購入の動向から「犬好き県」「猫好き県」を発表するなど、ポップで可愛らしいページはなんだか従来の協会のイメージとは違っていて、おもしろい。
一般の消費者にも、協会をもっと知ってもらいたいと始めたのだそう。
「協会というと固い感じがするかもしれないけど、基本的に発想はやわらかいので。僕らはつなぎ役ですが、その最適な方法を見つけるために自由な発想で意見を言ってほしいなと思います」
消費者とも、行政とも、事業者とも。つなぎ役の出番は、今後ますます増えていきそうです。
華やかではないけれど、なくてはならないこの仕事に興味を持ったら、ぜひ応募してみてください。
(2018/1/23 取材 並木仁美)