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“一間”の価値あり
クリエイターの聖地を
湯河原につくる

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

作品をつくるクリエイター、趣味に没頭したいお父さんお母さん、集中して仕事に取り組みたい会社員やフリーランスなど。

なにかに集中して取り組むために、自宅や職場以外の場所を使うのは、一つの効果的な方法です。

そんな人たちに利用してもらおうとつくられたのが、ひとりでも利用しやすい温泉旅館「THE RYOKAN TOKYO YUGAWARA」。予約制で日帰り利用も可能な場所です。

運営しているのは、埼玉を拠点に各地の温浴施設をリニューアルしている株式会社温泉道場。お風呂を通じた地域活性化を目指しています。

THE RYOKAN TOKYO YUGAWARAは、昨年の12月にリニューアルオープンしたばかり。熱海と箱根のあいだにある温泉地、湯河原にあります。

今回は、「店舗運営プロフェッショナル」として働く人を募集します。現場仕事もしつつ、ゆくゆくは施設の支配人を目指していくポジションです。

独自の企画を打ち出しながら、クリエイターや会社員など、ひとり利用のさまざまなお客さんをターゲットに温泉旅館を盛り立てていく。ひいては、小規模の温泉旅館が生き残るモデルケースになるために。

その一翼を担ってくれる人を探しています。

 

湯河原へは、東京から特急踊り子で1時間弱。新幹線を利用すると40分ほどで到着する。

駅から路線バスに乗って約15分。そこからさらに急な坂道を登っていくと、茶色い建物が見えてきた。

もともと温泉旅館だったこの施設を温泉道場が引き継いだのが2022年のこと。しばらく営業したのち、リニューアル工事を経て昨年12月に再オープンした。

中に入ると、目の前に大きな棚が。たくさんのインク瓶が並べられている。

「文豪ゆかりのまちなので、インクをディスプレイに使おうという話になって。これもスタッフが一つずつ用意して並べたんですよ」

迎えてくれたのが、温泉道場の専務取締役を務めている白石さん。今日はここで仕事をしていたそう。

「平日なんかはとくに静かでいいんですよ。仕事もすごく捗ります」

ラウンジには、本も並べられている。絵や小説などを創作する人が利用しやすい場所を目指していることから、置いてある本も創作関係のものが多い。

椅子とテーブルがあるスペースに座って、まずは白石さんに話を聞く。

「引き継いでくれないかって最初に相談が来たのが、2021年の12月でした。そこから検討して、年明けの3月にぼくたちで運営を開始したんです」

スピード感のある引き継ぎだったんですね。

「そうなんですよ。事業診断とか、実際やるとなったらどう運営するかも短期間で話し合って。ハードでしたけど、個人的には思い入れのある場所になりました」

温泉道場としても宿泊機能のある施設の運営は初めて。それでもやろうと決めたのはどうしてだったのだろう。

「経営的に、事業として成立するだろうと予想したのがひとつ。もうひとつは、ちょうどコロナ禍で温泉道場のほかの施設の業績がきびしくなっているなかで、なにか勢いをつけたくて」

「いまはきびしいけれど、コロナ禍のあとのためにがんばるぞっていう意思表示を見える形で出したかった。そういったメッセージを込めた決断でした」

加えてもうひとつ重要だったのが、温泉道場が長年運営してきた「おふろcafé」というブランドのなかに、この場所が加わったこと。

「実は、ここがおふろcafeの9店舗目になるんです。なおかつ今年は、おふろcaféができてから10周年になる記念の年。新しいかたちのおふろcaféが世の中に受け入れられるのか、ぼくらにとっても大きなチャレンジです」

コロナ禍で、小規模な旅館の倒産件数は多くなっている。

営業を続けていても、経営者の高齢化と、引き継ぎ手がいないという課題にぶつかっているケースも多く見てきた。

けれど「THE RYOKAN TOKYO YUGAWARA」が成功すれば、小規模な旅館でも必要最低限のリニューアルでお客さんを呼ぶことができるという証明になる。活気ある魅力的な場になれば、働き手を増やすことにもつながっていく。

温泉道場がいい事例になることで、なくなりかけていた旅館が残れるかもしれない。

会社の姿勢を示すためでもあった重要な事業。

とはいえ、これまで日帰りの温浴施設を手がけていたので、旅館業は初めての経験。スタッフも手探りでオペレーションをつくり上げていった。

「最初の3ヶ月くらいは、探り探りで運営していました。そのあと、やっと数字がついてくるようになってきましたね」

運営するなかで、訪れるお客さんの特徴もわかってきた。

それが、お客さんの5、6割が一人で来るということ。とくに漫画を描いている人や、小説を書く人など、クリエイター系の人が多かった。

湯河原がもともと文豪のまちという歴史があるのに加え、世の中にワーケーションやコワーキングという働き方が広まってきたのも理由にあるのかもしれない。

「規模が小さいぶん、高いグレードの旅館さんと戦ってもしょうがない」

「なので逆に振り切って、ソロ向けのプランやサービスをつくるようにしました。湯河原にある旅館のなかでは珍しいポジションだと思います」

キーワードのひとつが、「一間(ひとま)」。

一間とは、約1.8メートルの距離を指す言葉。予約制なので密にならず、一間の距離を保てるスペースでくつろぐことができるというのが特徴だ。

さらに、クリエイティブなお客さんに楽しんでもらうため、オリジナルインクづくり体験をセットにしたプランを準備。主に日帰りのお客さんに人気なんだそう。

「書くことって、それを職業とか趣味にしている人以外には遠い存在だと思っていて。書くことや創作活動をカジュアルに体験してほしい。それでインクづくりがいいんじゃないかと」

インクに触れたことがきっかけで、イラストや文字を書くことに興味を持ってもらえたら、またリピートしてもらえるかもしれない。

こうした工夫が実を結んできて、宿泊するお客さんの3割ほどがリピーターなのだそう。

リニューアルも完了し、コンセプトも固まってきた今。どのような場所にしていきたいんでしょう。

「ぼくが思っているのは、この旅館全体のコンセプトでもある『創作家の聖地』になってほしいということです」

創作家の聖地、ですか。

「創作活動をしている人たちが『あそこは一回行ってみたいんだよね』とか、『物書きするならあそこがいいよね』っていう場にしたい。もっと企画や環境を整えて、クリエイターさんが気持ちよく過ごせる場所にしていきたいですね」

 

白石さんの話を真剣な顔で聞いていたのが、チャレンジ支配人の山﨑さん。入社して4年目になる。

チャレンジ支配人というのは…?

「温泉道場の制度の一つで。若いうちにリーダー経験を積むことが大事だっていう考えのもと、経験が浅くても支配人ポジションを経験できるんです」

「誰でも立候補できて、役員面接で承認されたら、翌月から支配人になれます」

支配人は、実際やってみてどうでしょう。

「やってみて感じたのは、あんまり向いてないかもっていうことで(笑)。でも楽しいので、やってよかったなって。わたし、物事を決めるとき、楽しいか楽しくないかで決めているんですよ。楽しくおもしろがれることが大事なので」

新卒で入社した山﨑さん。決め手はなんだったんでしょう。

「地域づくりに関わりたいと思っていたときに温泉道場に出会って。説明会もおもしろかったんですけど、地域づくりのほうに目がいっていて。サービス業だっていうことをあまり考えずに入ったので、最初はお客さま対応が慣れなかったです」

「あと、サウナの薪入れも、はじめは好きじゃなくて。なんでわたしこんなことしてるんだろう、みたいな(笑)」

それでも、「地域を盛り上げる」というミッションにはすごく共感していた山﨑さん。それまで行くことがなかったお風呂屋さんにも、積極的に通うように。

2、3店舗ほど経験して、THE RYOKAN TOKYO YUGAWARAへ。

湯河原の店舗は、パートアルバイトが3人、社員が4人という少人数体制。ひとりが担当する業務も広い。

食事の提供などの現場業務もするし、予約管理や販促、本の整理など、仕事はさまざま。ときには清掃に入ることもある。

「だんだんできることが増えてくると、メニュー開発や食材の仕入れのなかで、地域の人と話をする機会が増えたんです。地域のためになにができるだろうって、考えながら働けるようになってきたのは、やりがいになっている気がします」

そのなかでも、山﨑さんが特に楽しいと話してくれたのが、企画づくり。

たとえば「読書ぎらい解消パック」。

「読書ぎらいな人に向けたサービスで。『わたしでも読書できるかも!』、みたいな環境を用意するプランです。お風呂のなかで本を読めたり、学校の朝読書の時間を思い出して『読んでみようかな』って思ってもらうために、学校の椅子と机をお部屋に置いたりして。外で読んだら気持ちいいかもしれないから、公園に行ってみましょうって提案するとか」

「企画を考えて、撮影をして、プレスリリースも出して。SNSでの販促も自分たちでやります」

また、このプランで宿泊した人には本を1冊プレゼントしている。スタッフとSNSでつながっていた読書好きな人に読みやすい本を選書してもらい、お客さんが目隠しでそれらの本から一冊を選ぶというもの。

かなり手がこんでいる企画ですね。

「いろいろ詰め込んだパックになりました。白石さんにも手伝ってもらったんですが、考えているときも楽しいし、お客さんに喜んでもらえたのがよかったです」

ほかにも、夏ぎらい解消パックや、花粉症の人のための療養パック。さらには、宿泊受付のときに「何時までにネームを仕上げます」と宣言することで、それが達成できたら夕食にデザートがプラスされる「宣言オプション」というのもあるそう。

山﨑さんは、どんな人に来てもらいたいですか。

「白石さんがよく言ってるんですけど、『根明(ねあか)』な人がいいですね。根が明るい人。私もそんなに元気でテンション高いわけじゃないけど、根はそこそこ明るいので(笑)」

「責任を持ってやらないといけないことがたくさんあるので、それを前向きに捉えてくれる人がいいと思います。あとは自分がクリエイターだっていう人と一緒に働いてみたいですね。そんな人が運営側にいたら、サービスをもっと向上できるんじゃないかな」

すると、となりで聞いていた白石さんも加わる。

「根明もそうですし、会社としては『素直・プラス発想・勉強好き』っていうのが根っこにあります。常に明日をより良くするマインドで仕事に取り組める。そんな人と一緒に働きたいですね」

 

「一間」の距離感を大切に。

湯河原に生まれた新しい温泉旅館は、クリエイターにとって心地よく制作物をつくることができる空間になっていました。この記事もそこで書きたかったくらい。

中小規模の旅館が苦しんでいるいま、この手法は多くの旅館を救う一つのアイデアになるかもしれません。

この施設を盛り上げ、さらに高めていきたいという人、お待ちしています。

(2024/2/9 取材 稲本琢仙)

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