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評価・認証制度というのは、暮らしの中を探せばいろいろあることに気づく。でもあまり気にとめることはないし、なんとなく「このマーク見たことあるな」という程度でしかなかったりする。今回は森林管理をある基準に照らし合わせ、それを満たしているかどうかを評価・認証しているFSC® (Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)の日本オフィスの募集です。

FSCジャパンにて、企業などと連携しながら広報していく人を求めています。
赤羽橋の交差点近く。もうすぐ新しい事務所ができるそうなのだけれど、WWFジャパンの事務所で取材を行うことになった。
FSCは、世界中全ての森林を対象とし、環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理を推進することを目的にしている。FSCはそのルールを設計し、それを元に認証機関が評価し、適切な管理がなされている森林については認証するという仕組み。

認証されれば、たとえば紙などの製品にロゴマークを使用することができるようになる。使用が増えれば、森林を取り巻く環境はよくなっていく。
まずは事務局の岩瀬さんに話を聞く。なぜこの仕事をはじめることになったのか。
「6年前、平成18年にNPO法人としてFSCジャパンができたんですね。実は僕は行政書士で環境コンサルもやっている人間なんですけど、FSCジャパンの設立メンバーに僕の恩人がいたこともあって、行政書士としてFSCジャパンの法人設立をお手伝いさせていただいたんです。で、その恩人の差金でFSCジャパンの監査役に就任させられた(笑)。」
それなのに事務局になったのはなぜなんですか。
「その後FSCが普及していく中でいろいろな問題が国内で起こったんです。しかし、FSCジャパンの主要メンバーは、本当に真面目な『森林』の人たちばかり。そんな組織だったので、紙や印刷なども含む様々なFSCに関わる企業が期待する問題解決のスピードに、FSCジャパンが十分応えられなくなっていったんです。それで、一度クランチしかけた。」

岩瀬さんがFSCに可能性を感じたのは、そのユニークなあり方だった。
たとえば、どこかの団体が独占した制度ではなく、マルチステークホルダーによるアプローチで制度を運営してたり、行政機関などパブリックな団体がほとんど関わっていなかったりすること。
本当に自発的な動きから生まれたものなのだ。
「国ごとの利害が衝突するグローバルな問題解決に当たるときに、様々な世界の人々のゆるやかなつながりの中で解決しようとするアプローチが、とても現代的なんですよ。大変なことなんだけれども、チャレンジしがいがあるんです。」

「ぼくの森林の知識で言えば、農学部や環境コンサルとして学んだ程度のまま止まっているかもしれない。でもなぜこの仕事をしているのかと言えば、これがうまくいったら環境や森林の分野が面白いことになるかもしれない予感があるからだと思います。」
その面白さの象徴でもあるのが、3年に1度開催されるFSCの総会。多種多様なメンバーたちが世界各国から参加する。
たとえば、林業をしている人や先住民グループもいるし、グリーンピースやWWFもいる。さらにIKEAやテトラパックなどの企業も参加している。
FSCに関心があれば、誰でもメンバーになれる仕組みになっているので、その顔ぶれは多彩だ。
「ダイアログを繰り返しながら、民主的なやり方で問題を解決していきます。だから、自然保護団体であっても先鋭化ばかりしていられないんです。」

「つまり、森林をとにかく守れ!と言うだけだったら実現できないんです。FSCのシステムを通して、森林保全を実現していくためには、関わってる人たちを納得させなきゃいけない。自分たちの主義主張だけではなく、根気よく議論しなければいけないんです。とってもダイナミックなんですよ。」
たとえば、FSCの原則基準のなかに94年の11月以降に天然林から植林に転換された森林は、認証を認めませんというルールがある。
それに対して、94年に区切るのは安直すぎるという意見もある。当時は環境のことを考えていなかったけれど、今は真剣に考えている企業がFSCに参加できないのはアンフェアじゃないのか、というもの。
総会では、経済や環境、社会などの部会ごとに議論を重ねていった。

紆余曲折があり、結局は「94年ルール」という単語も使わず、人工林管理に関するFSCの在り方についての、「見直し検討委員会」での結論をまず出した上で、しっかり検討していこう、というものになった。
「ネガティブな結果にも見えるかもしれないけど、これがFSCだよなって思います。こういうダイアログがあって、みんなの合意をどう形成していくのか、その中にはいろんな立場がありドラマが生まれる。そう考えるとかなり面白い。」
たしかに、決まりきったルールの中で、それを淡々と運用していく、というようなものとは真逆だと思う。世の中の森林に関わる問題を踏まえながら、対話を通して最適な形を模索し続けるのは、とてもクリエイティヴなあり方だと思う。
「総会に参加して、FSCってほんとに『運動』なんだなぁって思いました。与えられた強制的な『システム』なんかじゃ全然ないんです。」

海外とのコミュニケーションを加速させているのが、FSCジャパンの”外務大臣”である安井さんだ。得意の英語を活かして、主にドイツのFSC国際本部や各国のFSCナショナル・オフィスとのコミュニケーションを担当している。
安井さんにもなぜこの仕事をしているのか聞いてみる。
「もともと環境問題に、子どものときから興味があったんです。中学時代に聞いていたミュージシャン達の影響で本気で環境のことを考えるようになりました。高校は国際コースっていう私立文系特進の英語漬けクラスに進学したんですけど、進路についてそのまま外語系の学部に行くことに自分の中で納得できてないのに、たぶん担任の先生も気づいていて。高3の夏の進路相談で、ほとんどみんな私立文系を志望する中農学部をすすめられたんです。」

井戸が掘れる人?
「実際的に世界で役に立つ技術や知識を持っている人、という意味です。で、すごく腑に落ちた。」
農学部に進学した安井さんに、ある日、高知県の森林でFSCの更新審査のために来日するアメリカ人の監査員の通訳を依頼された。
そこでFSCのことをよく知ることになる。
「審査するポイントは環境的なとこだけじゃないんですね。経済的な面だったり、森の周りに住んでいる住民の意見とか水源の管理も意識して審査する。それが面白かったんです。」
それがきっかけとなって審査業務を手伝っているうちに、卒業後は一人でFSCの認証機関の日本代理を任される。3年半ほど続け、認証機関が求める事と1人親方としてできることのギャップ、出張が多いため子育てとのバランスがネックになってきたので辞めることにした。そんなときに、岩瀬さんからFSCジャパンに入ることを誘われる。ちょうど海外とのコミュニケーションも増えているので、安井さんの力が必要だった。
「最初は商標管理と翻訳作業だけでいいから、無理せず自分優先でねって念押しされてたんですけど、いざ始めると本部とのやり取りが、想像以上に増えたんですよね(笑)」

安井さんが外とのコミュニケーションの担当であったら、今回募集する人は、内側、つまり国内のプロモーションを担当する人になる。
FSCの価値を日本の消費者や事業者につたえていく。そのためのPRの方法を考えて、実行することが求められる。
岩瀬さんがどういう仕事になるのか説明してくれた。
「PRのための予算はあるけど、ふんだんにあるわけではないんです。新聞広告を出したら、それで終わってしまうかもしれない。だから認証商品をつくっている企業さんなどとともに、ジョイントキャンペーンを企画、実行してほしい。企業さんのイメージアップにも繋がるし、なおかつFSCの価値を一般の方に伝えていく手段をつくるのが仕事です。」
結構、難しそうな仕事ですね。
「そのあたり正直な話をすると、正解がない仕事だと思っています。世界中見てもこういうことをやれているナショナル・オフィスってそうはない。そういう意味では模索しながらやる感じかなって。それを面白がってくれるとありがたい。」

そしてどんどんアイデアを出して実行してほしいそうだ。次のブレークスルーの力になるような人。さらにソーシャルメディアなども駆使したり、自由に発想できる人がいい。
最後に岩瀬さん。
「仕事のやり方とかは、僕も教えてもらうことがあるだろうけど、教えていくから。それよりも、明るく、少々のことではくじけないチャレンジングスピリッツを持って、元気にやってくれれば、それでいいと思います。」(2012/6/22 up ケンタ)