※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。
*この仕事は募集終了いたしました。ご応募どうもありがとうございました。モノは喋れない。だから、どんなに手間をかけて大切につくられていたとしても、お客さんはそれを想像できなかったりする。
そう考えると、売る人には重要な役割があるんだな。売り場には、モノの魅力を伝えて作り手とお客さんをつなげられるような人が必要だと思う。
日本百貨店は、特に「つなげる」ことを大切にしています。
今回の募集は、日本各地からこだわりの手法でつくられた食品と雑貨を集めて販売している日本百貨店の販売スタッフの募集です。

玄米でつくった甘酒、撥水の手ぬぐい、和紙のポストカードなど、思わず手にとりたくなるような、他のお店では出会えないものがたくさんあるからだ。
秋葉原と御徒町の間にある高架下の商業施設、2k540内にお店をオープンしてから一年半。大阪と浅草に2号店、3号店を出すことになった。そこで、立ち上げから一緒に働いてくれる人を募集したい。

不安なので、代表の鈴木さんに確認してみる。
「そこは気にしなくて大丈夫。百貨店経験者という方向から探すと、けっこう簡単に人は見つかるんですよ。でも、そういうのではないんですよね。」
「ぼくらはお店のことを『出会いの場』って言っているんですけど、モノを買ってくれるお客さんと、そのものの背景にある職人さんたちを、つなげたいんですよ。職人さんがどんな想いでつくっているか、どんな手法でつくられているか。お客さんに、モノがお店に並ぶ前のことを想像させるような話をする。そうすると、買う人にもつくる人のことが見えるんです。」

「あともう1つ。ここは、買いに来るお客さんだけではなく、例えば商品をつくる職人さんと話すことも多いんです。『よぉどうだ』ってふらっと遊びに来たりする。そういう人に対して『こんにちは!!』と言えるのは、人が好きだからだと思うの。人が好きじゃなかったら『なんだよクソこの忙しいときに!』って思ってしまうんじゃないかな。」
モノをつくるのも買うのも人。作り手と買い手をつなぐためには、お互いとの間にそれぞれ信頼関係を築かなければいけない。たしかに、人が好きじゃなかったらやっていけないかも。

ゆくゆくは、買い付けなどもやったりできるのだろうか。
「それは自分次第。何も約束されたものはないから。でもまずはちゃんと売るもの売ってほしいかな。例えば100を求めて70しかできない段階で買い付けがしたいって言われると、正直イラっとくる。100だったら100できて、しかもあと30は力が余ってます、ということだったら、その30で好きなことやればいいじゃんって思うんです。」
「だから、自分が買い付けに行くときに、一緒に行きたい人~って誘って意見を聞いたりもします。だっていつもお店にいる子の方が、僕よりお客さんのことを知っているから。僕より当たる可能性がある。」
販売スタッフという入り口がどんな世界に繋がっているかは、本人に委ねられている。
ただし、と鈴木さんは続ける。
「間違えてはいけないのは、日本百貨店は何なのか、というのは僕のところにしかないんです。僕が作った場所だから。それを共有してからじゃないと次のところに動いてほしくないんです。」
「日本製ならなんでもいいわけではなくて、僕は、小さいモノでも『これは日本百貨店なの?』って確認しながら買うんです。商品のことをよく知らなかったら、作り手に会いにいって話して、『これは日本百貨店だね』って思えるようになったら買う。」

鈴木さんはまず、『ちょっと待てよ、塩麹って何だか知ってるか?』というところから入った。よく知らなかったので改めて勉強すると、味噌や日本酒など、発酵食品を製造するときに使われる“麹”がポイントだと分かった。そこで、『ひょっとしたらあそこでつくっているんじゃないか?』と、知り合いの味噌屋さんが思い浮かんだ。さっそく聞いてみると、『うちもつくってますよ』とのこと。鈴木さんは、翌日から塩麹を仕入れることに決めた。
「それだったら日本百貨店ですよね。横のつながりがある。しっかり理由がある。なんにもつながりがなくて、売れそうだからというだけで売ると、売れなかったときに誰も幸せにならないんです。売れても幸せじゃないと思う。ちゃんとつながりで考えて買い付けた結果だったら、売れなくても納得がいくし、関係ができたんだから『今度はこうしよう』ってなるじゃないですか。次があるんですよ。」

物とお金の行き来だけだったら、他の大きな会社がやればいい。その1つひとつに人の繋がりを求めるのが、日本百貨店のやり方。
大阪と浅草のお店も、人や土地の縁で出すことになったし、固定の店舗だけではなく、イベントも全国で開催している。
「名古屋の東急ハンズさんなんかは、お店のなかに日本百貨店のコーナーをつくってくださって。珍しいですよ。小売り同士って普通ライバルなのに。イベントは、社員の有志みんなで交代しながらぐるぐると回ってもらっています。やっている理由は、普段会えないお客さんに会いたいから。それも全部『つながり』という意味ですよね。」

そうはいっても、イベントをはじめ、日々の業務は体力仕事も多いようです。「体力・気力・明るさ」これが日本百貨店の三原則らしい。
もしかして、かなり体育会系?
半年前から日本百貨店で働きはじめた田中さんに聞いてみた。

もともと靴の専門学校に通い、卒業後は婦人靴の企画の仕事をしていた田中さん。どんなふうにしてこの職場に辿り着いたのだろうか。
「前の仕事のときは、中国製の、トレンドに合わせて3ヶ月で履き潰すような靴の企画をやっていて、自分の思い描いていたものづくりとはかけ離れていたんです。それがすごくストレスで。」
ちゃんと心がこもっているものを売りたい!と思って会社を辞めた。そうして自分が何をしたいのか考えたときに、「職人さんを守りたい」という想いに至った。
「靴の専門学校に通っていたときから、職人さんのつくるものがすごく好きで。でも、こんなにいいものなのに、この人が死んでしまったらもうつくれない!というような例を知っていくうちに、こういう職人さんを守りたいと思って、そんな仕事を探していました。」
日本百貨店の求人を見つけたとき、これだ!と思った。採用はとんとん拍子で決まり、働くことになった。
実際働いてみてどうですか?

前の職場では、企画するばかりでお客さんと顔を会わせることがなかった。ここはお客さんとの距離感が近いから、難しいと感じることもあるけど、そのぶん喜びも大きいようだ。
「前、ハワイに行くから知人にプレゼントしたいというお客様がお店に来たんです。何にしようか一緒に悩んで、柄によってひとつひとつ違う願いが込められている、縁起柄のお守り袋を選んだんです。しばらくたったある日、『いたいた、よかった!』ってそのお客様がお店に駆け込んできて、『すごい喜んでもらえたの。一緒に選んでくれてありがとう』と言ってくれて。ほんとうに良かったなと思いました。」
ほかにも、イベントで知り合ったお客さんがお店の方にも来てくれたり、1日2回来てくれるおじいちゃんもいるそうだ。
「お客様が、次は友達を連れてきてくれたり、商品を紹介してくれたり。そういうふうに、自分がつなげることで、使ってくれる人が増えていく。需要が増えたら後継者が増えて、職人が増えることにまでつながっていくんじゃないかな、と思っています。」
翌日、鈴木さんに同行して、葛飾区にある「三幸製作所」というブリキ玩具の工場に伺った。

触っても怪我しないように、端が丸く加工していること。子供がなめても大丈夫なように塗料を工夫しているということを、鈴木さんが教えてくれた。後ろで工場長の柳沢さんが頷いている。
おもちゃ自体もかわいらしいけれど、なによりもそのこだわりに敬服して、お金を払いたくなってしまった。
田中さんが話していたように、三幸製作所も後継者の問題を抱えている。問題の根っこは、“儲からないから”。売れて儲かるようになれば、この技術やモノが受け継がれていくのかもしれない。鈴木さんが日本百貨店を続けている理由は、そこにある。
