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もっと人と人の関わりのある場所に移住してみたい。けれど、平日は仕事もあるし縁もない。どこからはじめたらいいのかわからない。もしそんなことを考えているなら、おすすめのプログラムがあります。

北海道から沖縄まで点在する候補地をフィールドワークしたり、都内のワークショップに参加しながら自分の仕事や暮らしについて考える。
プログラムの期間は今年の9月から年末まで。
特徴は週末を利用するので、平日に働きながら参加できるということ。あとは旅行で訪れるようなものではなく、住んでいる方とじっくりお話したり、自分の仕事について考えるワークショップが用意されている。
いきなり移住するわけではないから、慎重に考えたい人には安心だと思う。
この短期プログラムに参加したあとは、さらに中長期のプログラムに参加することもできるし、自分で起業する方もいる。もちろん、企業に就職して移住される方もいるそうだ。
地域イノベーター養成アカデミーを通して訪れることになる場所は、東京仕事百貨でも縁のあるところが多い。
たとえば尾鷲。濃い緑と青い太平洋に囲まれた街。

受け入れ先である尾鷲商工会議所も、実にユニークな組織だと思う。商工会議所がイノベーションを起こして地域が変わっているところは他になかなかないんじゃないか。
あとは長崎県の離島である小値賀。こちらも先進的な地域。

そのほかにも、受け入れ先は全国16箇所。僕が知っている場所は、どこも移住してみたいと思える場所だった。それに人と人の関わりを感じられるところでもある。
何より印象的だったのが、みんなが笑顔でゆとりのあるところ。自然体な感じがして、こちらも心がゆるんでいく。そのあとに東京の街に戻ると、いつもギャップに目眩がしてくるようだった。
このプログラムを企画・運営しているのはNPO法人ETIC.。東京仕事百貨でもおなじみのNPOで、主にインターンシップのコーディネートや創業支援など、地域のコーディネート団体のネットワークづくりの仕事をしている。
それにしても、なぜこのような取り組みをしているのか。プロジェクトの担当者である長谷川さんに聞いてみた。
「仕事を通していろいろな地域を知ると、年月を重ねていく中で面白い企業がいっぱいあることが分かりました。一方で、地域で活躍している人たちに憧れて、移住したい人も増えていると思います。でもどうすれば働けるか分かりにくいのが現状です。それで地域で働く人たちとつながって、その仕事を知る機会になれば、と思ってこのプログラムをつくりました。」

「自分の好きな場所や、生まれ育った地域で暮らしたいという思いがあっても、仕事がないと行けません。そこに突破できないひとつの壁があります。もちろん仕事がまったくないわけではなくて、地場産業などで既に頑張っていらっしゃる方がいるんですが、働く人がいればうまくいくものでもありません。」
「働く人も必要だけど、どのようにしたら今の時代に合うのか、どうしたら新しい商品開発ができるのか、という考えられる人も必要なのです。仕事や事業をどうつくっていくかという視点ですね。」
なんとなくゆったりした暮らしがしたい、という人よりも、自分の役割を感じたり、自分の居場所がほしい、という人がいいかもしれない。そして、地域内からの視点だけじゃなく、客観的に考えることができて事業をドライブできるような人がいい。

そのときに、伝統を大切にするとともに、新しいやり方に共感して、一緒に仕事をつくりあげていけるような人が必要だ。けれども同じ地域内には、なかなかそういう方はいなかったりするそうだ。
地域の企業にも新しい発想の人を採用したいニーズがあるけれど、それがうまくマッチングできていない。そして、地域に移住したい人たちにとってみると、そういう企業があることが分かりにくい。
地域イノベーター養成アカデミーは、その間をつなげるもの。まだ歴史の浅い取り組みだけれど、すでに移住される方も生まれてきている。
参加者にはどういう変化が起きるのだろうか。長谷川さんに聞いてみる。
「そうですね。まず移住しようと行動する人がいます。自分のふるさとに戻る人も。」
これがきっかけになるんですね。
「そうですね。2010年度は全体で44人参加しました。うち2人は自分の地元に帰っていますよ。」

「そうですね。あとは、引き続きその地域に関わっている人がいますね。移住こそしないけど関わっている人がいる。定期的に訪れるようになったりして、お付き合いが続くような人も多いです。」
「ただ、イノベーター養成アカデミーに参加しても、すぐ翌年に移住したり、中長期のプログラムに参加する人が少ないことがわかりました。でも数年したら帰る人はもっと増えそうな気がしますが。」
それはどういうことですか。やはり移住することは難しいのでしょうか。
「イノベーター養成アカデミーに参加したことで、自分に足りないことが分かったりするんです。たとえば自分が地域で仕事をつくっていくには、コンサルティングのスキルが必要なことがわかって、スキルをもう少し磨かないといけないから、東京であと2年は修行しようとか、そういう感じです。」

いずれにしても地域でフィールドワークをして、ワークショップに参加したからこそわかることがある。移住してから気づいては遅いこともあるし、まずこのような機会を利用して自分に何が必要なのか考えるのはいい。
長谷川さんから見て、参加者にはどのような変化が感じられるのだろうか。
「私は学生のインターンも担当していますが、学生たちと比べると、このプログラムに参加する方々の変わり幅は少ないんですよ。劇的に、急に変わるということはないんです。すでにわかっているけれども、迷っている人たちなのかもしれません。」
だからこそ、思いを整理するために、ワークショップは大切な時間になってくる。担当するのはエンパブリックの広石さん。とても貴重な時間になると思う。
「地域に行きたい気持ちはあるけど、今の自分の仕事と離れすぎていて、何からはじめたらいいかわからない、という人は結構います。どんな仕事があるのか、どういうプロジェクトなら成立するのか、一緒に考えていく時間もつくっています。」

「うちの地域に来ても大変だよ」という人もいるし、「畑だけは来ればすぐあげるのに」という人もいる。あとは自分のことを受け入れる土壌がある地域かどうかも話をすればなんとなくわかると思う。
スケジュールとしては、まず9月1日にオリエンテーションに参加して、そのあと週末を利用してフィールドワークに参加する。帰ってきてから地域課題を分析して、どのような仕事ができるのか考えて、プロジェクトや事業の計画・立案をしていく。
そしてあらためて11月に各地域を訪れて、ワークショップで考えてきたことを検証する。はじめに訪れたときにはわからなかったことも見えてくるかもしれない。

参加費用は31,500円。これに一回分の交通費や経費なども加わる。もう一回分の現地までの交通費は事務局で負担してもらえるそうだ。
最後に長谷川さん。
「この取り組みを通して、日本が元気になっていくと思うんです。地域が活き活きとすれば、その集合体が日本なので。どうすればもっとそれぞれの地域がよくなっていくか、それを考えることが大切なんだと思っていて。そういうことは、この仕事をしていると当たり前のこととして実感します。」
「あと地域と東京という二項対立ではないと思うんです。東京にだって、人と人の関わりはあります。地域だから、東京だから、ということではなくて、人のつながりがあるかどうか、つくれるかどうかということなんだろうと思っていて。地域にはもともと人のつながりがあるから、そこに入っていきやすいことはあると思います。」

ただ、どこかに楽園があるわけではなく、結局は自分次第。
そんなときに、地域の人たちと話をしてみることで、はじめて自分の思いがわかることもあるように思う。
場所ありきではなく、人ありき。そんな思いに共感する方にぜひ参加してほしいプログラムです。(2012/7/26up ケンタ)