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郊外に住んでいると、ただ寝るだけ、ただ消費するためだけに暮らしているんじゃないかと感じることがある。お金を支払えば、誰ともコミュニケーションせずに暮らすことができるし、気に入らなければ引越してしまえばいい。代わりの場所はいくらでもある。どこに行ってもおなじみのお店がそろっているからモノにも困らない。
でもこの環境はお金があってこそはじめて維持できるもの。しがらみがなく楽ではあるのだけれど、何か物足りない気がする。
その足りない何かは「つながり」なんじゃないかと思う。縁があるから、お金を介さず交換するモノやコトもあるだろうし、離れられない場所には、離れられないヒトがいるように思う。
そのためには「つながり」が生まれることが大切な気がする。そしてそれを自然に育てていく場所や人が必要なんじゃないか。お金だけですべて解決するのではなく。
不動産屋さんであるエストサービスでは、田園都市線の宮崎台駅に、地域のサロンのような場所「HOOME」をつくります。不動産の仕事をしつつ、イベントなどを企画することで、コミュニティを育てる人を募集します。
田園都市線の宮崎台駅。実はぼくの実家がある駅でもある。均一で清潔な郊外の街は、駅に降り立ってもあまり感慨深くなるわけじゃない。
長年住んでいた場所でもないので、駅前を歩いていても知り合いに出会うこともほとんどない。見たことのある風景に、少し懐かしく思うところもあるけれど、旅の途中で訪れた場所に再び訪れたような感覚に近い。
これは同じような風景が続く、都市の郊外特有の感覚なのかもしれない。
エストサービスでは、この街にサロンのような場所をつくろうとしている。美味しいコーヒーが飲めて、ユトレヒトの江口さんが選書する本が読める。電源やwi-fiも確保されているから、ゆっくり本を読んだり、勉強することに最適かもしれない。
実はまだ工事中で、今まさに完成を迎えようとしている。
なぜこのような場所をつくろうとしているのか。
「新しい街に来ても知っている人が誰もいない。つながりがないということが問題だと思うんです。」と話すのは代表の榎本さん。
不動産屋はそこで暮らそうと思った人が、はじめに訪れる場所。街の入口とも言える。
だから、住まいを紹介するだけではなく、コミュニティが生まれる場所になることもできるかもしれない。
「はじめに街を訪れるきっかけになるのが不動産屋です。私たちが場所を解放することで、コミュニティスペースをつくることができれば、と思っているんです。」

たとえばずっとおじいちゃんたちが囲碁や将棋をうっているような場所ではなくて、30代や40代の若い人たちがくつろげるようなところ。そして、自然と交流が生まれることをイメージしている。
「たとえば、イベントなどもやりたいと思っていて。オリンピックなどのスポーツ観戦をするのもいい。スポーツバーって、都心に行かないとあまりないじゃないですか。仕事帰りに寄って、ちょっと見て一緒に盛り上がれたらいいですよね。」
そのほかにもいろいろな教室などを企画立案してもらいたい。
コーヒーにこだわった場所なので、コーヒーの淹れ方講座もいいかもしれない。カメラの撮り方とか、カラーコーディネートを教えるのもいい。共同で畑を借りて、野菜の育て方を学ぶのも楽しそうだ。面白い特技をもっている会員の方がいたら、先生になっていただいてもいい。

それでも、なぜこの場所をつくることに行き着いたのだろうか。榎本さんの過去の話を聞いていると、その理由が少しずつ見えてくる。
「大学で就職活動をしようとしたときに、ただモノを売るだけだと会社がなくなったときに自分は生きていけなくなると思ったんです。自分一人でもやっていけるものを考えました。」
中学高校とゴルフをしていた榎本さん。ゴルフをしていると、中小企業の経営者と出会う機会も多かった。不動産屋の方も多く、彼らの背中を見て、何があっても生きていけるように感じたそうだ。
そして自分も不動産の世界に入ることにした。就職したのは不動産会社だった。
「働きはじめて感じたのが、お客さんに向き合わないこと、社内向きのことが多いことです。お客さん第一でなく、社内の利益ありきのことばかり。中小企業の社長さんたちから感じたこととは、ちょっと違うなというのもあって。」

「やっぱり当たり前のことを当たり前にできていない部分があるように感じたんです。それで自分で不動産屋をはじめることにしました。」
はじめは溝の口駅や武蔵小杉駅で開業しようと思ったけれど、同業の不動産屋さんに入って相談しても、ライバルが増えることになるからどこも相手にしてくれない。
そこで流れ着いたのが、今の事務所がある平間駅だった。この場所で一人ひとりに寄り添った仕事をはじめる。そしてそれから8年経った今、また新しいことをはじめることになった。
「自分の思い、理想と現実のギャップもあり、なかなか形にできなかったんですけども、ようやくです。今これをつくっている段階でとてもワクワクしています。」

「普通は家を見て選ぶものなのですが、この人がいるから、この不動産屋にお願いしよう、というものになりたいんです。」
物件情報をインターネットで探してから不動産屋に行くのではなく、まず誰と住まいを探すのか、というところから考えてもらいたい。
実はどこの不動産屋に行っても、物件情報はほとんど同じだったりする。これは不動産屋が同じ情報ネットワークを利用しているからなのだけれど、意外と知られていないことかもしれない。
どこに行っても同じなら、好きな不動産屋さんに行ったほうがいい。それぞれに「好き」になる理由は違うかもしれないけれど、HOOMEのような不動産屋さんを選ぶ人はきっと多い気がする。
「私は、相手が満足していることがなんとなく分かればうれしいです。ありがとうございました、という言葉もそうですし。あとは何度もお話いただいたり、紹介いただけるのもうれしいですね。」

不動産屋さんによっては、10人のお客さんが来て2人と成約すればいい、という考え方もある。訪れたお客さんをただ対応していき、ときにはうまくいけばいい。お金を支払ってくれさえすれば、誰でもよいという考え方もあるかもしれない。
「でもぼくたちは10人来なくてもいいかもしれませんね。それよりも3人に来て頂いて、2人と成約するような。」
ゆっくり、じっくり対応するような。
「そうですね。ぼくたちは物件情報の書いた紙をお店の前には貼りません。外からだったら不動産屋だと分からないかもしれない。あと予約制にしたいと思っているんですよ。」
「自然とお客さんに気を配って、気持ちよく仕事をしていれば、数字はついてくると思うので。数字を考えるのは私の仕事だと思っています。」
ちゃんとお客さんのために働けば、自ずと数字もついてくる。たしかにどんな商売でもそうだと思うし、不動産屋さんだって同じだと思う。
「この場所を通して、人と人が地域でつながってもらえたら嬉しい。そういう思いもあるので、従業員さんも、誰でもいいというわけではなくて。お客さんのために考えてもらえるような。決まりきったサービスではなくて、ちょっとした心づかいが出来る人に来て欲しいです。」
不動産の経験があるほうがいいのですか?

不動産の仕事としては、建物の写真を撮影したり、間取りをつくったり。入居が決まったものは募集終了とするなどの管理も必要。ただ、それもシステムが入っているから、普通にPCをさわれる人だったらいい。デスクワークは全体の半分くらいになるとのこと。
「契約は私がすることもできます。それよりも素直で、明るく、気を配れる人。あとはデザイナーっぽい人。」
デザイナーっぽい?デザインをする仕事ではないですよね。
「そうですね。ただ、リノベーションだったり、デザインの仕事を提案してもらってもいいです。もちろんイラストレーターなどが使えるとありがたいですよ。」
「あとはやっぱり企画をどんどん押し出せる人がいい。年に何回かBBQをしてもいいかもしれないし。つなげるような場をつくって、近くに住んでいる人の顔がなんとなく分かるようになればいいですね。本が好きな人だったり。あとは元劇団員も面白いかもしれない。」
いろいろなアイデアを出せて、形にすることができる人なんだろうな。
部屋の案内をするときも、不動産屋としての目線ではなく、お客さん目線で考えられる人がいいそうだ。
もう今までの不動産屋さんのイメージではない。
「スーツもやめようと思っているんですよ。契約のときに私が着ることはあるかもしれませんが。堅苦しくなってしまうような気がして。羽織ってもジャケットくらい。夏はポロシャツでもいいですし、清潔感があれば大丈夫です。」
ちょっと大変なところと言えば、土日に休めないところ。基本的には水曜と祝日がお休み。あとは平日でもう1日休んでもらう予定だから、たとえば火曜や木曜だと連休になっていいかもしれない。
ただ、榎本さんに言わせれば、「平日に休むと、どこも空いていていいですよ。」とのこと。お子さんがいらっしゃると、休みを合わせるのが大変なことはあるかもしれない。

こんな場所でコミュニティを生むきっかけをつくる仕事です。聞いたことがない取り組みだけれどとても面白い。この場所のはじまりを担当したい人は、ぜひ応募してみてください。(2012/7/13up ケンタ)