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動物病院の日々

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動物病院という仕事を聞いてどんなイメージを持つだろう。

僕はこんな風に思っていた。少し特殊な仕事で、毎日ひたすら、動物相手に黙々と治療を行っていく。働く人は、動物好きであればいい。でも、話を聞いてそうではないことに気づきました。

むしろ飼い主さんをはじめとする、人との関わりがとても大事な仕事。

「極端に言えば、今動物が嫌いでも人が好きなら続けられるよ。食わず嫌いなだけで、いざ動物に触れてみると好きになる人も案外いる。だからまずは一度見に来たらいいんじゃない?」と話すのは飯塚院長。

今回の募集は、光が丘動物病院グループの看護師さんの求人です。

光が丘駅から歩いて10分ほど。住宅街のなかに動物病院がある。

待合室に入ると、ちょうど治療を終えた犬が飼い主さんに受け渡されるところだった。看護師さんは状態を説明していて、飼い主さんは嬉しそうな表情。他の飼い主さんもやさしく見守っていた。

院長の飯塚さん、看護師の川上さんと後藤さん、そして総務の鈴木さんにお話を聞いた。

そもそもどういうきっかけでこの病院を立ち上げたのだろう。どうして獣医になったのだろう。

つい先ほど成功率が低いという手術を無事に終えた飯塚院長がゆっくりと話しはじめた。

「弱いものを見ると放っておけない性格で。小学校のときに動物の飼育係をしていたんだけれど、そこですごく疑問を持って。本来情操教育のためにやっていることなのに、実際には夏休みに入ると、子どもが面倒をみきれなくて、休み明けには動物はみんな死んでしまっている。おかしいでしょう?」

「そこで僕は卒業時にPTAや職員から15万円ほどの募金を集めて、近所の工務店の社長に相談をしてみた。もっといい小屋に動物を住まわせられないか、って。そうしたら社長は、その気持ちに打たれた!と100万円近くするようなとても立派な小屋をつくってくれたんだよね。」

飯塚さんは高校を出て、大学の獣医学部に進むこととなる。当時はバブル全盛期。同級生は獣医にならず、広告業界、IT業界などに進む人が少なくなかったそうだ。未来のある仕事の中で自分を試してみたい、誰もがそう思っていた時代。飯塚さんもそうだった。誰もが知っている企業から内定を得て就職を考えたけれど、色々な理由があって獣医の道を歩んだ。そこからの道はコンプレックスまみれだったという。

「就職や起業した友人がどんどん成功して、中にはマスコミに取り上げられる人も出てくるときに僕は全然違うんですよ。25歳の時に勤務していた大学病院の研究室が手取り13万円ですからね。それで休みがゼロ。本当にハードだった。朝5時から、その当時人気のあったシベリアンハスキー10頭の全身洗浄と治療を毎日毎日繰り返すんです。気が付けばいつも夜の9時(笑)。とにかくその繰り返しで、今思うと地獄のような毎日でした。」

「僕がここまでずっと、獣医として続けてこれた原動力はコンプレックス。学生のときにバブルさえはじけなかったら。内定先にそのまま行けていたら。そこですごい人と出会って、一緒に何かしていたら。そういう思いが昔はありましたよ。だって悔しくてしょうがなかったもん、20年間。そこで、もう引くに引けない、意地でもとことん獣医やるしかない、って思った。」

そのコンプレックスから、とにかく努力をした。中でも難易度の高い、整形外科手術に力を入れるようになった。自分の仕事に自信を持てるようになったのは15、6年が経ってから。今では、わざわざ遠方から手術を受けにくる方もいるそうだ。

飯塚さんは言う。

「こんな病院他にないから。僕らは日本一の動物病院だ、ってそれぐらいの気持ちでやっている。一度診察に来てみたら?僕の言っていることをわかってもらえると思う。」

飯塚さんと今、一緒に働いている人はどんな人なんだろう。看護師の川上さん、後藤さんに話を聞いた。

まずは川上さんに、なぜこの仕事をはじめたのか聞いてみた。

「実家で小学生ぐらいから犬を飼いはじめたけれど、交通事故が原因で死んでしまったんです。死と直面して、動物を飼うことはただかわいいというだけじゃないんだと思いました。そのことがあって、好きという気持ちだけでは動物と関わる仕事はできないんだろうと漠然と思いつつ、大学は動物とは全然関係のない方向に進んだんです。けれど大学をやめてフリーターになって、やっぱり動物と関わる仕事がしたいと思ったときに、動物看護師という仕事を知ったんです。」

「たいていの動物病院は入社時に資格を求められますが、光が丘は働きながら取得してもいいんです。むしろやる気、向上心があればいいですよと言われて。まったく知識も経験もない中で実習に来たんですけど、何となく、自分はここで働くことになるのかなと感じました。」

本当に入社時に資格や経験がなくても、大丈夫ですか?

「教育に力を入れていますから。全然知らずに入ってもやる気があるなら教えますよ。担当者をつけて一から教えていきます。私も入社時は猫なんか触ったこともない状態でしたよ。」

入社してからはどうですか?

「わりと自然と働くことができました。そもそも私は動物病院に対する先入観を持っていなかったのかもしれません。それで、これが動物病院なんだなと思った。入ったときは人が今よりも少なかったんです。朝から夜中まで仕事をしていて。でも、自分がやりたいことをやるというのはそういうものなんだなと思いました。」

もう一人の看護師である後藤さんは今年2年目。子どもの頃から家で動物を飼っていて、動物病院は第2の家と思うぐらいに身近な存在だった。大学の生命環境学部に入り、新卒で就職をした。

働きはじめて感じたことは?

「医療面で驚いたのは、はっきりと診断名を言ってくれること。患者さんが、この子元気がないんですと来て診察すると、先生は『この子は〇〇の病気です。』って。私が見てきた病院の中には『わからないからまずこの薬出しておきましょうか』と濁すところもありました。犬猫以外だと特にそうです。私自身が小動物を飼っていることもあって、他の病院とは違うなとまず感じました。

「あとはこんなに忙しいのか!と。患者さんたちから私たちスタッフは、のほほーんとして見えていると思います。その裏では実はバタバタと走り回っています(笑)。」

看護師の仕事は具体的にどういうものがあるのだろう。
受付、入院対応、診察対応や手術の助手から、待合室のポップ作成、お知らせDMの作成といった病院運営に関わることまで仕事は色々ある。

朝出社をすると、まず夜間の電話着信を確認する。もし、きのう診察した飼い主さんから電話があれば、具合が悪くなったのではないかとすぐに折り返す。緊急の外来があれば、スタッフ総出で対応をする。

自分の仕事はここまで、と区切るのではなく、状況に臨機応変に対応することが求められる。動物の命に関わる判断を、スピーディーに行う局面もある。

後藤さんは「動物は言葉が話せないから、呼吸が苦しい状態でも伝えられない。元気だったはずの犬が、ほんの少し眼を離した隙に状態が急変していることもありました。」と言う。

「うちの病院はすごいんだよ」という院長の言葉が頭に残っていたので、実際に飼い猫のトラの診察をお願いしてみた。

受付で問診票を記入して、順番を待つ。名前を呼ばれて診察室へ。まず体重と体温をはかってもらう。

「慣れない移動をしたから少し体温が高いですね。」

そして斉藤先生の診察がはじまる。

「僕いくつに見えます?もう40歳近い、おっさんですよ(笑)。」

はじめての診察で僕も緊張していたけれど、何気ない会話に本当に落ち着いた。うっかり、取材に来たことを忘れてしまいそうになる。ずっと前からこの病院に通っていたような気さえする。

川上さんは先生がしっかり診察できるように、トラをおさえている。無理矢理おさえつけるというよりも、慣れない環境に来たトラを安心させてあげる感じだ。これを保定(ほてい)といって、看護師の主な仕事になる。

「一見簡単そうですけど、一番能力が発揮されるところです。おとなしい子ばかりじゃないんですよ。かむ子も、ひっかく子もいる。保定が下手だと、暴れてしまって診察どころじゃないんです。」

診察する動物も犬、猫から鳥、うさぎまでさまざまいる。個々の性格も異なる。だから保定にも決まった一つのやり方があるわけではない。相手の動物を見て、接し方を決める。

これから一緒に働くのはどんな人がいいのだろう。川上さんと後藤さんに聞いた。

「一番大事なことは、人が好きかどうかだと思うんです。」

人?動物ではなくて?

「もちろん動物が好きということはきっかけにはなります。でもそれだけじゃ続けられない。診察中に、先生が治療の準備で席を外すことがあります。そんなときには飼い主さんと二人きりで色々な話をします。この間の休みはどこそこに出かけた、という話から治療の相談まで。先生はこれから注射をすると言ったけれど、どんな注射だろう。費用はどれぐらいかかるんだろう。日々の食事は今のままでよいだろうか… 飼い主さんは色んな不安を抱えています。でも先生には聞きにくいこともある。そうしたときに、動物の状態も見つつ、飼い主さんに安心してもらえるように話をすることも大切な仕事です。」

勤務時間や給与といった面から見ると、けっして楽な仕事ではない。けれど、働いている人たちの姿はいきいきとして見える。それは職場の仲間、そして飼い主に自分が必要とされるからだと思う。
飼い主にとっては家族同然の動物を預かり、治療して元気な姿でおかえしする。そのとき飼い主は心底嬉しいと思う。

飯塚さんは最後にこう言った。

「獣医も看護師も人好きであれ。そう思うよ。動物だけでなく、飼い主さん、同僚、そして自分を好きになってほしい。そうすることで、きっと自分の取り柄が見えてきて、やりがいをもって仕事を続けられるから。」

「取り柄はどんなことでもいいんだ。例えば『○○さんは、飼い主さんから家庭の悩み相談なんかもされるぐらい打ち解けられているよね。』『あの飼い主さんはあの看護師の前ではよく笑ってくれるよね。』とか。そうなると、獣医ではなく看護師に患者さんがついてくる。飼い主さんは、あなたに会いたくて病院にやってくるんだよ。」

何か感じるものがあれば、まずはやってみたらいいと思う。選考過程では、実際に病院での実習を行うとのこと。実習の場で見えてくることがたくさんあると思う。ぜひ、光が丘動物病院を自分の肌で感じてみてほしいです。

(2012/9/27 はじめup)