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重ねることで見えてくる

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介護は今の日本で生活する上で多くの人が関わってくるライフイベントだろう。けれど、介護サービスという仕事についてはあまり知られていないように思う。介護サービスの目的は「自立を支援すること」にあるという。

今回は、介護サービスの仕事です。

会社の名前は、HCM。全国で1,400人のヘルパーさんがいる、訪問介護を中心とする会社です。

これまで仕事百貨で掲載させていただいた会社から見ると、とても規模は大きく感じられるけれど、実際に働く方に話をうかがうと、大事にしていることは変わらないように思いました。

募集する仕事は、2つ。まずは、訪問介護を行う事業所をまとめる「アシスタントエリアマネージャー」。そして、「経営企画室」の仕事です。

「この仕事は、どこまで行っても人との関わりなんです。」と経営企画室の津﨑さんは話す。

介護サービスの先には、当然人がいる。訪問介護においてヘルパーさんが要介護者に関わることができるのは、一日の中の数時間ほど。その限られた時間の中で、要介護者の自立を支援するためには、ヘルパーさん一人一人の介護サービスの質が大切になってくる。

実際にアシスタントエリアマネージャーはどんな仕事をしているのだろう。金井さんに話を聞いた。

「千葉県内の6事業所のマネジメントを担当しています。一つ一つの事業所をよりよいものにしていくために、ヘルパーさんの採用、サービスの向上(ヘルパーの育成)といった仕事をしています。」

もともと、金井さんは福祉系の大学の出身。進学時、商学部や政治経済にはどうもピンと来なかった。おじいちゃんおばあちゃん好きがきっかけで福祉の道に進む。

そして大学3年のときに知的障害者の更正施設での実習を経験する。実習の場で、介護を一生の仕事にしていくのかを決めようと思った。一ヶ月間、朝6時から日付が変わるまで、毎日職員の方について回った。夜中には職員の方と介護について話し込んだ。

「実習の場で魅かれたのは、職員さんが、入居者の出産・育児、もっと言えば生活において、この方にとって『これで良いのか』と妥協なく課題に立ち向かわれている姿でした。」

「根本的な解決はできないかもしれないけれど、そうした問題や人に寄り添いながら仕事をしていきたいと思ったんです。」

介護サービスの仕事をはじめて今年で10年になるとのことですが、今の仕事で大変なことは?

「よりよい事業所づくりをすすめるにあたって、人に伝えることの難しさです。この仕事は人と人の信頼が基本です。僕が主に話す人は事業所の所長やヘルパーさん。事業所にいるのは女性が9割です。10代から70代までさまざまいますが、特に中心になるのは40、50代。僕はあえておばちゃん、という言葉を使いますが(笑)、人生の大先輩でもあるおばちゃんに、僕の思いを、きちんと伝えて信じてもらうこと。そのことがなかなかうまくはいきません。」

金井さんが目指しているのは、人を育てる文化を事業所に築くこと。例えば新人さんが入ってきたら、早く一人前になれるように先輩が自分の経験を伝えていく。その積み重ねにより、事業所はよりよいケアを提供できるようになる。けれど、実状は思うようにいかない。

「ヘルパーさんは基本的に職人気質なんです。自分の仕事に強い自負を持っている。確かにヘルパーとしてはいい仕事をしてくれます。けれど、人を育てるということができない人が多い。人に伝える前に自分でやってしまいます。」

さらに事業所をまとめる所長さん自身も現役のヘルパー。日々の仕事で手一杯になり、教育までは手が回らないことが少なくない。そこで金井さんがさまざまな事業所を回り、所長やヘルパーと関係を築いた上で文化づくりを進めることが求められる。

今回募集する人も同様の仕事をすることとなる。どうやって信頼関係を築くのだろう。

津﨑さんが話をしてくれた。

「人それぞれのやり方があると思います。地域やさらには事業所によっても異なるでしょう。金井くんの場合には聞くこと。彼が休みの日でも所長さんからは電話がかかってきます。『パートの○○さんがお子さんの病気で急に来れなくて私が行きました』『○○さんのところは来週は休みでいいそうです』そうしたことを彼が知るのは、実は休み明けでも大丈夫なんです。」

「確かに緊急性はないこともあるんです。でも、ヘルパーさんからの相談や、ときには愚痴を受け、自分はなかなか相談できる相手がいない所長さんにとっては、『金井さんが聞いてくれる』ということが本当に安心なんです。所長さんの最後のよりどころというんでしょうか。」

所長さんは休日であっても、緊急時にはヘルパーさんから電話がかかってくる。

「仕事には休みがあります。でも介護を受ける人の生活には休みがありませんから。」と金井さん。

我慢や根性だけで所長の仕事は続けることができない。だからこそ、なぜ頑張っていくのかを金井さんと共有していくことが必要になる。また、忙しい中でも所長さんがきちんと休みをとれるように、仕事の効率化といった面を指導することも金井さんに求められるところ。

金井さん自身も楽な仕事ではないと思うが、どうして続けられるのだろう。
「千葉の所長連中が大好きなんです。彼らが変わっていく手伝いをしたいんです。例えば、事業所でずっと内勤をしてきた50歳のおっちゃんに営業を任せてみる。経験が全くないから、名刺交換の練習からはじめます。その人が一生懸命営業をして、『金井さん、見て!1件とれました!』と言ってくれたときは本当に嬉しかった。そういう姿をもっと見たいんです。」

「それから、夏場にはヘルパーさんが滝のような汗をかきながら入浴介助をしていたりするんです。その姿を思うと投げ出せないということもあります。」

本当に、どこまで行っても人と人の関わりの仕事なのだと思う。

「特に事業所は人と人の関係が濃いと思います。私も最初はびっくりしましたよ(笑)。」と津﨑さん。

「例えばね。事業所に行くと、みんなが妙にそわそわしているんです。理由を聞くと、『今日は所長の娘さんが大学受験の発表日なんです』って。あるいは、『事業所に子どもの頃遊びに来ていたあの子がうちでアルバイトをするようになったんですよ』という話を耳にしたり。」

仕事を通して出会った人と、ときにはマネージャーとヘルパーという役割を越えて関わることになるのだと思う。そうした関わりが信頼関係につながるのだろう。一見仕事とは関係がなく、無駄と思われることが実は大事だったりする。

そして今回は経営企画室で働く人も募集する。同じ担当として働くことになる津﨑さんに話をうかがう。

もともと津﨑さんは通信、web業界の出身。HCMへ転職して今年で6年目となる。

「35歳のときに、これからどのように仕事をしていくか考える機会を設けたんです。そして自分の仕事を振り返ると、原点は大学生時代にキャンペーン会社で働いた経験にありました。何度もスタッフで打ち合わせをしてキャンペーンを開き、当日にはお客さんの喜ぶ顔に直接触れることができました。私はチームで働くこと、そして相手の反応が直接見えることに魅力を感じていたんです。」

当時働いていたweb関係の仕事は好きであったし、このまま続けることも十分考えられた。ページビューやクリック数といったかたちでお客さんの反応も見えた。けれど、相手の人が何を感じるのか、もっと直接的に反応の見える仕事をしたいと思った。

そしてHCMと出会い、現在の仕事に就いている。

経営企画室の仕事内容は多岐に渡るということですが、どういった仕事があるんですか?

「経営に近いところから手紙の宛名書きなどの雑務まで何でもやります。採用、新規事業立上げ、予算作成、組織運営の仕組みづくり… 私自身いつも10から15の仕事を抱えていて、仕事内容も常に変わっていきます。」

「例えば新規事業立上げに関して。もともとHCMは、高齢者の方に楽しい生活を送ってほしいという思いからはじまった会社です。介護を基盤にしつつも、もっと色々なことができると思うんです。」

どんな人に来てほしいですか?

「気持ちの面ではやる気があって、簡単にはめげない人。事業経営について学びたいけれど今の職場ではなかなかやれそうにないという人。いずれ独立したい、それぐらいの野心があってもいい。どうして自分はここに来たのか。そのことを忘れずに頑張ってほしい。付け加えると、結果を出さないと厳しい仕事でもあります。私は一昨年立ち上げたある事業で結果を出せず、自分から申し出て1年間の減給をしています。そういったピリピリ感も楽しんでやろう、というぐらいの人を待っています。」

「また、能力面で求めることは色々あります。基本的なビジネススキルはほしいです。あいさつができる、電話のやり取りができる… 自分で考えて結果に結びつけられるということも大事です。それからもちろん、介護サービスに関する知識も必要になります。現場を覚えるために、入社後に半年ほどアシスタントエリアマネージャーの仕事をしてもらおうと考えています。私自身、転職当初は介護サービスのことを全く知りませんでしたが、猛勉強しました。」

なかなか大変な仕事ではあると思うけれど、やり遂げた時には本当にたくさんのことを吸収しているのだろう。津﨑さんは「学ぼうと思えばいくらでも学べます。」と話してくれた。

最後に、取材中に話をうかがったヘルパーさんの言葉を紹介します。介護サービスの仕事は人と人が関わり合うとても大変な仕事だと思った一方、ヘルパーさんの中には、とても深い思いを持ってサービスに取り組まれている方もいました。

「ある方に頼まれて、爪を切ったんです。丁寧に丁度よいと思われるくらいに。そうしたら切り過ぎだ、と怒鳴られてしまって。話を聞くと、半身不随のその人にとって爪は色々なものを引っ掛けたり、本をめくるためにとても大切だったんです。時間を重ねていくなかで、一つ一つのことを任せてもらえるようになっていきました。」

「またある方に『おはようございます』と声をかけたら、声が疲れていると言われました。確かに前日は8時過ぎまで仕事をしていて、疲れが抜けないまま次の日を迎えたんです。でも、その一言があってからは、毎日気持ちのいいおはようを言いたくて、仕事は7時で終わりにするように決めたんです。」

取材の帰り際に金井さんはこう補足してくれた。
「ヘルパーさんが言いたかったのは、こういうことだと思います。ヘルパーには複数のお客さんがいるけれど、お客さんから見ると、ヘルパーとの関係は常に一対一なんです。」

ヘルパーさんは最初からそのようにお客さんと関われていたわけではない。ときには理不尽だと思うこともあったと言う。また、金井さんもはじめからヘルパーさんの思いを汲み取れていたのではないだろう。介護サービスの現場はそこで働く人を変えうる場なのかもしれない、そう思いました。(2012/10/2 はじめup)