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想像すること

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「『新築』と『リフォーム』は全然違うんですよ。例えるなら『回転寿司』か『江戸前寿司』か、というくらい違います。」

「回転寿司は裏方でつくりますが、江戸前寿司はカウンターの前にお客様がいて、目の前で握りますよね。白身が好きなお客様には白身を出して、胃がもたれていそうだったら胃に優しいものを出す。お客様が既にそこに住まわれている状態で家のリフォームをさせていただくのは、江戸前寿司に似ていると思うんです。」

そんな例え話をしてくれたのは、住まいのリフォームを手がけるレオイ株式会社の代表、中谷さん。

この会社で、提案する設計のイメージをお客さんに伝えるプランニングアシスタントを募集します。

少し専門的な仕事だけれど、技術だけでは図れないことをしている会社なので、最後まで読んでみてほしいです。

名古屋駅から飛騨高山までは、高速バスか特急列車を使えば2時間半ほどで到着する。

市街地を走っていたはずが、やがてのどかな田園風景になる。最初は遠くに見えていたはずの山が、どんどん大きくなってくる。天気がいいから、飛騨山脈の連なりもくっきりと見える。

「ここは盆地なので、山に囲まれているから空が狭いんです。そういう意味では、ビルに囲まれている東京と同じかもしれませんね。」

そう教えてくれた中谷さんは、生まれも育ちも飛騨高山。レオイには、22年前に入社した。

もともと内装職人だった創業者が、下請けとして注文に応えるだけではなく、自分の技術や経験から一生住める家を提案したい、という想いからはじまったのがレオイなのだそうだ。

技術はあって当たり前。それに加えて、目の前のお客様にしっかり向き合う江戸前寿司の職人のような「人間力」が大切だと思う。そんな中谷さんの考え方は、職人気質の創業者から受け継がれたものなのかもしれない。

中谷さんが社長になったのは6年前のこと。

「僕は創業者とは血縁関係ではないのですが、創業者が引退するタイミングで、社長を任されることになりました。従業員が3人で、プレハブのようなところで作業していた頃から一緒に歩んできましたから、信頼して託していただいたのかもしれません。」

社長になったはいいけれど、最初は何をすればいいか全然分からなかった。反対に、自分はずっと社員だったから、社員の気持ちなら手に取るように分かった。だったらまず、社員が楽しく働ける環境をつくろう!そう考えた。

「それで始めたのが『サプライズ』だったんです。」

サプライズ?

「そうです。最初は『ミステリーツアー』をやりました。社員全員に、何も目的は告げずに、場所と時間だけ指定して集まってもらって、車を4時間走らせて三重の伊勢神宮まで連れていきました。」

実はこれは、誕生日の社員さんへの中谷さんからのサプライズ。レストランの店員が、バースデーケーキと事前に家族に書いてもらっていた手紙を届けにきたときには、みんなとても驚いたそうだ。

「すごく喜んでもらいました。そのときに思ったのは、大切なのは体感することだなって。頭で考えるよりも、楽しいとか、悲しいとか、びっくりしたとか、感じることの方が身に付くと思うんです。」

それからは、社員同士でもお客さんに対しても、何かめでたいことがあるとサプライズでお祝いするのが、レオイの恒例になった。誕生日、結婚、昇進、リフォームが完成したとき、賞を受賞したときなど、めでたい日には、必ず内緒で何かサプライズを用意することになっている。

「サービスをする上で一番危険なのは、『自己満足』だと思うんです。ここまでやったら喜ぶだろう、と思っても、本当に喜ぶかどうかは分からない。自己満足することなく、相手がどんなことに喜ぶのか、もっと想像してほしいんです。だからレオイでは、サプライズを仕事にしています。」

目の前のことに追われていると、つい相手が見えなくなってしまうことがある。そして、それがいつしか当たり前になってしまうこともある。それは一番危険なことだと、中谷さんは思う。

「よく、自分たちで手がけた住宅を『作品』と呼ぶ人がいるけれど、それは我々のなかではタブーです。お金をいただいてお客様の代わりにやっているだけなので、それをひとりよがりなものにしては駄目です。あくまでもお客様ありき。僕たちはアーティストではないんです。」

レオイのサイトを見れば、今までに手がけた住宅を見ることができる。

「この家になってから、お父さんが長風呂になった」とか、「吹き抜けの小窓から暖気が入るので、快適に寝られます」とか、そんな住んでいる人の感想が写真付きで掲載されているところが、素敵だと思った。

ただかっこよくてお洒落なだけではなくて、悩みや問題を解決していること。それだけではなく、美しさ、楽しさ、便利さ、安全性、素材感、機能美を追求した一歩先の暮らしを提案していること。これが本当のデザインなのではないかな、と感じる。

レオイが今まで、数々のリフォームコンテストで受賞しているのも、そんな姿勢が評価されてのことなのかもしれない。

少し足を伸ばせば、世界遺産に指定されている合掌造りの白川郷や、季節の催しで賑わう桜山八幡宮をはじめとする寺社がある。それから、古い町並みのなかにみる町屋造りや、農家造りの古民家などがある。そういうところへ行き、デザインの勉強会をすることもある。

また海外研修を取り入れており、一昨年はイギリスのコッツウォルズに行き、建物を見て回った。

レオイは、古民家の再生や、地中熱を利用した天然空調換気システムといった、この地ならではともいえるデザインや技術もとりいれながら、飛騨高山に根ざした生活の在り方を考え続けている。

そんなレオイのものづくりに惹かれ、5年前に入社した和田さんを紹介します。

「大学院まで建築学部で都市計画を学んでいくなかで、古民家を残していきたいという想いが強くなりました。全国で古民家を扱う会社は少なかったのですが、そのなかでレオイのことを知り、事業に惹かれて入社しました。」

和田さんは、結婚を機に退職することになった。だから、入る人は、和田さんに仕事を教えてもらい、和田さんの仕事を受け継ぐことになる。

プランニングアシスタントの仕事について伺ってみた。

「お客様のご相談に対して、こんなのはどうですか?とご提案するときに、お客様が完成のイメージを想像できるように資料をお見せするのですが、それをつくるのがわたしの仕事です。」

CADソフトを使ってCGでイメージを見せたり、手書きで表現したり、そのやり方はさまざま。まだこの世にはないアイデアを形にして見せるのが、プランニングアシスタントの役割なのだと思う。

過去につくった資料を見せてもらうと、照明や食器、置物など、細かいところまで書き込まれている。これは、お客さんの好きなものや、実際の生活を想像しながら、自分でデザインしていく部分だそうだ。そういう意味では、サプライズに似ているのかもしれない。

「そこに住まわれる方が求めているものを提案できるかどうかが全てです。だから、わたしがつくった資料をみてお客様が気に入ってくれたときが、一番嬉しい瞬間です。」

どんな人がこの仕事に向いていると思いますか?

「生活を楽しんでいる人、でしょうか。自分の美意識や、心地よいことを知っている人。そういう生活のセンスは、提案する資料のなかに必ず生きてくるので。」

例えば、家具や小物が好きだったり、オーガニック食材に興味があったり、アロマやお香を焚いていたり。こだわりを持って、自分らしく暮らしている人がいい。

確かに、生活に無頓着な人よりも、自分のライフスタイルがある人の方が、人の暮らしに対しても想像力が届くのではないかと思う。

それに、そういう人なら、仕事だけではなく、このまちでの暮らしも楽しめそうだ。

朝市では新鮮な野菜が買えるし、隣の富山や石川からは、日本海で獲れた新鮮な魚が届く。美しい自然と古い町並みがあるけれど、コンビニやスーパーもあるから不便はあまりない。

最近では、関東から来てこのまちで起業されている人や、自然に惹かれて家族で越してくる人など、Iターンで飛騨高山に来る人も多いそうだ。調べてみれば、移住の支援をしている自治体もいくつかあると思う。

取材のあと、レオイが設計を手がけた「作右ェ門(さくえもん)」という料理とお酒のお店を紹介していただいたので、日が暮れてから伺った。

提灯の灯りをイメージした、ぽっと明るくやさしい光の店構え。のれんをくぐり、中谷さんおすすめのカウンター席に座ってみた。

「レオイさんの紹介で来ました」と伝えると、お店のオーナーがこのお店をつくったときのことを話してくれた。

「このカウンターは杉の木でできているんですよ。カウンター席は、長くいられてほっとできる空間にしたいから、無機質な素材は嫌だ、という僕のこだわりをレオイさんが理解してくれて、この木を探しだしてくれたんです。年輪が綺麗に透けるまで、塗装を重ねて仕上げました。味わい深くて素敵でしょう。」

にこにこと、本当に嬉しそうな笑顔が印象的だった。

建物の中でこうして人が笑っているのは、その建物が、ちゃんと人に向き合ってつくられたからなのだろうな。一生続ける仕事を考えたとき、わたしもこんな風に、人の顔が見える仕事がしたいと思う。

飛騨高山では、毎日、日の出とともに朝市がはじまる。

山に囲まれたこのまちには、人の暮らしのリズムがある。慣れるまで少し時間はかかるかもしれないけれど、ここでなら、自分の暮らしを見つけていける気がする。

観光地だから人の距離もほどよいし、なにより仕事があるというのは心強い。

少しでも気になった人は、実際に足を運んでまちを見てみると、イメージが広がってくるかもしれません。

事前に連絡をすれば、会社を見学することもできるそうだから、まずは問い合わせてみてください。(2012/10/11 ナナコup)