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つながりつなげて

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つながりたい、つなげたい、と思っている人は多い。

土佐山アカデミーは、まさに自然や地域の人たちをつなげながら、自らもつながっていく学びの場をつくっている。

今回はこの学びの場を、事務局としてより持続可能なものにしていく人を募集します。ここで働く人もきっと、あらゆるものが相互に関わり合い、つながっていることを実感できると思います。

高知空港からバスに揺られて数十分。同じ日本だけれど、独特の文化が育まれていることが街並みからもじんわり伝わってくる。バスを降りて高知駅前で待っていると、すぐに土佐山アカデミーの林さんが車で迎えに来てくれた。

土佐山というと文字通り山の中、というイメージがあったのだけれど、高知市内からは車で20分ほど。ぐんぐん急な坂を車が進んでいくと、木々の間から高知市の夜景がよく見えた。峠を越えると、そこはもう旧土佐山村内だ。

土佐山は自由民権運動発祥の地と言われている。夜になると若者が集まり、「夜学会」という場所で、社会をどうつくっていくか議論していた。地域として社会教育がおこなわれており、「社学一体」という概念が生まれた場所だ。

この地で土佐山アカデミーは「次の100年のために」という言葉とともに、学びの場づくりから始まる持続的な地域をつくろうとしている。

一晩ゆっくり休んでから、翌朝目が覚めると外は光にあふれていた。

葉っぱや川面がキラキラと輝いている。朝食を食べる前に少しばかり地域をまわってみた。印象的だったのが、どこにでも水の流れる音がすること。ほとんど山と谷しかない場所には、棚田とゆず畑、そして集落が寄り添い、その間を豊富な水が幾重にも流れている。この水を利用して、地域の人によって小水力発電所がつくられるそうだ。

もうひとつは、会う人みんなと言葉を交わすこと。この地域に住んでいる人は全員知り合いなんじゃないかと思うくらいだった。

それくらい自然や人との距離が近い。

山の頂上にある土佐山アカデミーのオフィスに到着して、まずは林さんになぜこの仕事をはじめたのか聞いてみる。実は林さんとは3年以上の付き合いなのだけれど、土佐山アカデミーについて聞くのははじめてだった。

もともとは東京で2年サラリーマンをして、そのあとに自由大学の立ち上げにかかわった。

「自由大学のあとに渋谷に住んでて、超楽しかったんですよ。自分がやりたいことをやれば周りも喜んでくれる。それは東京特有のことかもしれないけど。」

「それで食を通じて地方に関わるようになってきて、地方も面白いなって思ってきたんです。違う面白さを感じたんですよね。日本の地方には面白いものが残っているし、日本の財産だなって。ただ、すごくいいものはあるんだけど、次の世代に残していくっていう活動が少ないなと思いました。」

そんなときに土佐山に縁ができた。はじめて訪れたときに、雰囲気と風景と場所に感動する。そして地域の可能性を感じたそうだ。

「今振り返れば、東京で活動していたときは、僕たちがこれからどうやって生きていったらいいのか、ずっと探していたような気がします。今でもそれをスパっと言い切れないんだけど。」

「ただ、『今こそは田舎に暮らすべきだ』とか、自然の中で暮らすことを論じるつもりは全然なくて、ここの『本物』を見るってことはすごく重要かなって気がするんです。」


本物ってなんだろう。

もうひとり、土佐山アカデミーで働く内野さんの話を聞いていくと、そのヒントがあるような気がした。

内野さんはハワイに10年住んだあと、ここ土佐山に移り住んだ方だ。ハワイでは海図やコンパスを使うことなく、自然を読みながら航海する伝統航海カヌー「ホクレア」で、ハワイから日本まで航海した。そして、自然とともに学ぶ場をつくってきた方。

どうしてハワイから土佐山に移ったのか。まずはそんなところから話を聞いてみる。

「ちょうど一区切りついたこともあり、日本のフィールドでやりたいって思っていたときに、この土佐山アカデミーの活動に声をかけられたんです。」

それまで一度も訪れたことがない土佐山を次の拠点にしたのはなぜですか?

「私がすごく惹かれたのは、ぱんっ!て花火みたいに地域活性化をするのではなく、伝統だとか地域がそもそももっていた、地域全体を学びの場にして人を育てることでこの場所を続けていく、っていうコンセプトです。そして、ずっと続いていく仕組みをつくるというところにも思いが重なりました。」

「でも今までのことをリセットしたわけじゃないんですよ。ハワイから、ずっとつながっている。人や自然がもっている可能性を最大限に引き出していくっていうのが、わたしがやっていきたい仕事なんです。だから生活も変わったけれど、続きをやらせてもらっている感覚です。かなり地域にどっぷりだけど、外からの人を受け入れる風土もありました。」

そして自然豊かなハワイを経験した内野さんにとって、土佐山は「素材」がたくさんあるところだった。

「いい表現かわからないですけど、自分たちの命を支えているものがたくさんあるんです。たとえば、土から生まれてくる食べ物があって、飲む水がすぐ横で流れていて、そういうつながりがあるんです。自分の命が何に支えられているかが、手に取るところにあって、とてもリアリティがあるんです。」

すると林さんがこんな話をしてくれた。

「バーベキューを例にあげるとすると、僕たちがバーベキューをするのであれば、炭などをホームセンターから買ってきて、全部用意するって感じですよね。でも土佐山の人がもしバーベキューやるぞってなったら、今ここにあるものを使って用意するんです。」

丸太にチェーンソーで8分割の切れ目をいれる。するとオーブンのできあがり。そこに火をいれれば、お米なども炊けるそうだ。

「アカデミー生がバーベキューの準備をしているときに、『本当にそれでやるんですか?』って感じだったけど、地元の人が『今ここにあるものを使うんだよ』みたいに、さらっと言ったんですよ。そのときに『なるほどな』って思った。」


目の前にあるものを活かすということは、現状に向き合うこと。何かをはじめるにも、今ここが出発点になる。いきなり夢みたいなことは起きないし、それを待っていたらいつまでもスタートはできなかったりする。

都会と地方、ということでもないけれども、都会では多くの場合、何かをするときに「お金」が必要になる。バーベキューだって、炭もコンロも購入しないとできないし、最近では気軽に河原ですることだって難しい。場所代がかかることも多い。

つまり、何かをするためには、一度お金をつくって、それと目的のものを交換して用意しなくてはいけない。だからこそ、それがお金をかけるに値するものなのか、事前に損得勘定するようになるのかもしれない。するとなかなか思い切った行動につながらないように思う。

でも自分の身の回りにあるものを活かそうとすることだったら、失敗してもいい。ダメならまたほかの方法を考えればいいし。

土佐山にいると、自然や地域の人たちとともに生きていることを実感するだろうし、自然は手に届くところにあって、触れるとすぐに反応を返してくれる。

そういう相互に関わるような、「本物」の「素材」との「つながり」が感じられる場所なんだと思う。そして、それこそが土佐山で学ぶことなのだろうし、ここで働く人に共感してもらいたいところなんだと思う。


内野さんが続ける。

「こういうところにくると自給自足しなくていいと思うんです。それって自分で完結することだし、それがいかにつまらないことかすごく感じます。」

「自分ができることをする、そして自分にできないことをやってくれる人がいる。交換するという社会のシンプルでわかりやすいシステムが、ここにはあるんです。」

土佐山アカデミーは、立ち上げから一生懸命、目の前のことに向き合ってきた。今いるメンバーや地域の人たちの協力の積み重ねによって今がある。そしてこれからも、土佐山の学びの場としての魅力を形にしていくためには、土佐山アカデミーを持続的な事業として成立させていかなくてはならない。その軸となるしくみを一緒に考えていける人を探している。

どういう人がいいのか聞いてみると「骨格や器をつくっていくような人」とのこと。授業などのコンテンツは日々生み出してきたけれど、そのコンテンツをどうやって事業として成立させるかまで、一貫して考えられる人がいい。

とはいえ、1年以上活動してきた組織にあとから入って「器をつくってほしい」というのは、なかなか恐縮してしまうもの。

すると林さん。

「事業戦略とか全部つくってくださいっていうんじゃなくて、今までやってきた材料と経験値はあるんです。それをもとにNPO法人として新しい土佐山アカデミーをこれから再構成していくためのパートナーがほしいんです。」

今までの成功や失敗はある。働くことになったら、まずはこれまでの道のりを歩くように知るところからはじまると思う。そして今歩いているところまで来たら、一緒に器をつくりはじめればいい。

もっと具体的に言えば、土佐山というフィールドを存分に活かした企画を、事業性を踏まえて、どう実現するかまで考えていく。総務や経理などを担当しているスタッフと協力しつつ、より広い視野をもって動いてほしい。

今までに行ってきた3ヶ月の教育プログラムに加えて、ショートステイのものだったり、この地で起業する人をサポートしていくような長期的なものまで、どこにどれだけの時間やお金などを配分していくか計画する。そのためにどういう資源があるのかも勘案する。

もしかしたら、派生してドミトリーやシェアオフィスを運営することもあるかもしれない、もう少し観光的なアプローチもあってもいいかもしれない(本当に何をしていくかは、今はまだわからないけれども!)。

そういった計画を今度は実行に移していく。行政や企業、そして地域の人たちとのコミュニケーションも必要になってくると思う。

今回入る人によってより中長期的な目線も加われば、次の100年につながっていくのだと思う。そのためにも、明るくて人と話すことが好きな人がいいだろうし、いきなり最初から最後まで考えなければいけないので、ある程度マネージメントの経験がある人がいいかもしれない。NPOやベンチャー、どのような形・分野にせよ、仲間とともに一つのプロジェクトを立ち上げて運営した経験があれば、その強みを存分に活かしてもらえると思う、とのこと。

目の前に広がる森と川、地域の方々、そして個性的なチーム。こういった人たちと向き合いながら、つながり、つなげていく仕事だと思います。(2012/10/12 ケンタup)