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100%不動産

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バリューレイズの石田さんがいなかったら仕事百貨は生まれなかったかもしれない。それくらいお世話になった方です。でもそのときにお世話にならなかったとしても、心の底から尊敬する方です。

もしあらゆる不動産の仕事をできるようになりたい人がいたら、ぜひ読んでみてください。いい経験ができると思います。

赤坂にあるビルにバリューレイズのオフィスがある。中に入ると、窓の外を眺めることができる机の並び。シンプルな空間で居心地がいい。主な仕事としては、いろいろな物件の運営をしながら、オーナーさんの様々な相談に乗るようなもの。今は運営物件のオーナーさんから、他の資産に関する相談などが舞い込んでいるそうだ。

まずは石田さんに、なぜこの会社をはじめることになったのか人生を振り返ってもらった。実はサラリーマン時代の大先輩ではあるのだけれど、知らないこともたくさんあった。

聞いてみると、バブル崩壊から現在に至る、日本の現代史の真っ只中を駆け巡ってきた人なんだな、と思った。

まずは大学生のときの就職活動までさかのぼる。まだバブルが崩壊する前のこと。

「もともと大学卒業するときから、社会人になったらできるだけ早く独立しちゃおうって思ってたんです。建築学科卒業だったので、できればそれが多少生かせる業種だったらいいなとは思ってた。それで不動産の会社に入った。でも不動産じゃなくても全然よかった。どっちかっていうと、商売している実感があるとか、商売の仕組みが分かる、そういうところに入りたいと思って。」

「90年に入社したのだけれど、その年には大蔵省の不動産融資に対する総量規制の影響が出始めていました。翌年に湾岸戦争がおこる。その頃にはっきりバブルがはじけたなって。」

会社の大変動にも巻き込まれて、出向先に転籍となる。不動産を整理して売却していく「処理部隊」に入って、あらゆることを担当することになった。

それが落ち着いたときに時間もできたので、新しいことをはじめることになった。

「そのときに、自分の中でエポックメイキングな案件に出会った。先代の社長が石炭屋さんだった方なんだけれど、はじめはある土地をどうにかしたい、っていう相談だった。最初はその物件だけシミュレーションしてたんだけど、そのときはまだ小僧だよ。4、5年生。ろくに話もきいてくれなかった。」

それでも一緒に相撲を見ながらお茶を飲んだりしていると、だんだん心をひらいてくれた。それで所有している不動産を見てみると、どれも借金だらけだった。

「あるとき『銀行がお金を返せって言ってきて、ひどいよね』って話になって。永遠に利息だけ支払うことを考えていたから返せないって。それでよく調べてみたら、約定どおりに返済すると3年以内に会社がつぶれてしまうことがわかった。それからめちゃくちゃ焦るようになった。」

もう貸しはがしがはじまっていたのですか?

「まだそれは本格化してない。97年がひとつの転機だったけれども、94、5年はすこしずつ融資を引き上げる傾向だった。それであるとき散歩がてらに、隅田川沿いにある駐車場も所有していることを教えてくれた。眺めがすばらしくて。」

「でも細長い土地だから、普通に考えたらすべての部屋が川に面することができない。それじゃ意味がないからって、自分で設計してメゾネットがあるような物件を描いて設計事務所に送ったの。そしたら向こうも本気になって徹夜で考えてくれて。結局そのプラン通りの建物が今、建っている。」

石田さんにとっては、ピンチのときに眺めにいくような場所になった。行くと、当時の思い出がフラッシュバックする。

そのあとも、時代の流れとともに様々なプロジェクトを担当した。「信託化」とか「ノンリコースローン」など、今では当たり前のような言葉にも出会った。まだほとんど誰も知らないような時代だった。

さらに当時の竹中平蔵大臣の金融再生プログラムがはじまり、金融機関の不良債権を半分にしなくてはならなくなった。そして、「不良債権処理の特命部隊」に入ることになる。さらに外資系証券会社とともにアセットマネジメントを担当するようになった。

「すべて契約書とか英語だった。なんとなくファンドのことが分かったような気になっていたけれど、考えている深度が全然違うことに気づいた。」

その後、会社を辞めて独立することになる。

今は主に中小ビルオーナーを相手にする仕事をしている。はじめからそういうような仕事のイメージはあったのか聞いてみると「ない。」との答え。

「辞めることを先に決めた。なんとかなると思っていたから。ただ、全くノープランだった訳じゃないよ。丁寧にコンサルティングしていけば、それは意味のあることだし、商売になるだろうと。でもコンサルって、資産を有効活用して売るとかしないとお金にならないし、そこを狙っている人っていっぱいいるんだよね。」

大きな会社から、アドバイザーにならないか、という打診もあった。

「でも、それって歯がゆい。」

歯がゆい?

「自分で案件コントロールできないもん。つまり、ある程度『シナリオ』は決まっている。サラリーマン時代より窮屈なんだよね。なんのために辞めたんだろみたいな。要は、自分の体を切り売りしてくれってことだから。しかも保証もないし。」

「業態転換しなきゃいけないなって思ったときは焦ったよ。一瞬だけ、あまり売上がないようなときもあった。かっこわるいから、そういう顔しないけどさ。」

でもそういうときって、何かを呼び寄せる。2件立て続けにビルの運営の依頼がやってきた。

「大きくて300坪くらいのビル。はじめは物件見て、どん引きするわけですよ。でもね、そのときに声かけられた物件って、今仕事している物件の中だったら、一番ピカピカだね。今だったら楽勝すぎて二つ返事で受けている。」

あまり大きくないビルでは、まだまだ旧来のビジネスモデルばかりで、真面目にやっている人たちがいないことに気がついた。そういう物件のオーナーには、ほかにも同じような物件を持っている人がいる。きっかけがあれば、いろいろなチャンスにつながることが分かった。

「丁寧にコミュニケーションするから、信頼していただけて、いろいろ相談がやってくる。すると建替えとか、大きな仕事の機会も増えてくる。」

まさに隅田川の物件のときのような感じですね。

「そう。ここに勝機があることがわかったから、もっとやってみようと考えたの。それでオーナーがどんなことを必要としているのか確認してみたら、何よりも求められているのが『空室対策』だった。」

それは理屈ではわかるのですけど、どうやったら入居者を増やすことができるんですか。実際にやることは難しいと思うのですけど。

「いい質問だね。これは俺の持論なんだけど、打点を取るには打席数×打率だと思っている。打率はもちろん高い方がいい。なんだけど、打率って急にはあがらない。ただ、打席数を増やすことはできる。」

「とくに大切なことは、適切な賃料を考えること。今ネットで物件を探す人が増えているんだ。それなのに、そもそも高めに賃料を出しておいて、交渉されたら下げればいいやっていう大家さんが多いんだよね。でもそれって、ネットで値段の絞り込み検索とかされて、1円でも高かったら表示されない。存在しないのと同じになってしまう。」

こういうことを調べるのも難しいことではなかったりする。30分かければ、必要な「打席数」を得るための、適切な賃料設定が見えてくるそうだ。

ほかにも実にユニークな方法がある。たとえば、借り手が見つからないビルで、内装を綺麗にする前に、アーティストの作品発表の場にすることもある。

直接、入居者が見つかることにつながるかは分からないけれど、普通に内覧会をするより物件をおぼえてくれたりするそうだ。

こういった「アイデア」は、ほかにもあるという。あらゆる不動産の仕事を経験した石田さんだからこそ、見えてくるのだと思う。

ずっと大企業に勤めて何かのプロフェッショナルになっても、街にあるような不動産屋さんで働いていても、こういう目線を持って仕事をすることは難しいかもしれない。ちょうどいい職場なんです。

この会社に入る人は、はじめは物件の運営など、地道な時間が続くと思う。具体的には物件ごとのお金の出入りを管理したり、何かトラブルがあったら業者に対応させたり。あとは物件の売りを見つけて、それを編集して伝えることも。

でもちゃんとここで働いていたら、いろんなことができるようになるはず。それにやることさえちゃんとやれば、自由にやってもいいそうだ。

「半期ごとに、どれくらい成果があったか確認する。基本的に人に迷惑をかけずに成果が出せれば、あとは何をしてもいい。」

なるほど。まずは成果が大切なんですね。でも、その場限りの商売を続けても短期だったら数字は出せるじゃないですか。それはいいんですか?

「仕事人として考えたら、そういうやり方をしたら短命で終わると思うんですよ。超えられない壁ができちゃうと思う。」

焼き畑的なものですからね。

「こういう言葉がいいかわからないけど、金にこだわってくれっていうよりは、どれくらいのことを成したかって話だから。たとえば、仲介をたくさんとることで、何かほかのことを犠牲にしているなら違う。」

たぶん、相手が本当に求めていることをしっかりやり続けたなら、その場で大きな仕事にならなくても、次につながるようになる、ということだと思う。結果として成果となる。

誰かに贈り物をするように働けば、ときにはうまくいかないときがあっても、総じてうまくいくと思う。でも言われたことをやるだけならチャンスはなかなかめぐってこない。目先のことばかりだったら続かない。

「相手にとってどういう風にしてあげたら喜ばれるかなってスタンスで付き合う、もうこれは当たり前の話だと思う。あと体や時間がフリーにしたきゃすればいいんだけど、そのことが大切かっていうより、シナリオをつくる自由度はあるよ。」

自由にシナリオを考えるような働き方って楽しい。それは、相手が求めていることを、自分の力で解決していくことを実感できるから。

もしそんな働き方を目指しているなら、石田さんの下でがむしゃらに働いたらいい。

いい経験ができるだろうし、求めればきっと応えてくれる。本当に信頼できる人です。(2012/10/29 ケンタup)