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これがほしかったんだ

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「自分の仕事が誰に届いているのか、顔が見えないんだよ。自分が立ち上げに関わったブランドをどんな人が、何を思って買っているのか。」

これは3rdの代表青木さんの言葉。同じような思いを抱えている人は少なくないと思う。

自分の仕事を、売上額や店舗数といった数字を通して頭では理解できても、実感を持てないことはときにあると思う。青木さんはそうした働き方を経て、「顔の見える仕事がしたい」という思いからオーダーメイドの家具屋である3rdをはじめた。

「これがほしかったんだ。」

お客さんが心からそう思えるものを一緒に考えて、家具というカタチにしていく仕事です。

3rdのたまプラーザ店にうかがった。

店内では、社長の青木さんがパソコンのモニターを見ながらお客さんと打ち合わせている。工場長はメジャー片手にお客さんに机の説明をしている。

しばらくして打ち合わせを終えた青木さんが見えた。

「お待たせしてごめんなさい。お客さんがいらっしゃると時間がなかなか読めなくて。」

早速話をうかがう。青木さんはどうしてオーダーメイドの家具屋をはじめたんですか。

「僕は、元洋服屋だったんです。銀座のテーラーで働いていました。そこはオートクチュール、完全にその人の体に合わせた服づくりをしていました。販売員をしていて、そこでものづくりの原点を学んだんです。」

原点と言うのは?

「お客さんが『わたしはこれが好き』と心から思えるようなものをつくることです。型紙を一つつくると、お客さんは同じ型で何種類ものスーツをつくります。そしてそれを長く着る。そうすると、それじゃなきゃダメになります。」

その後、青木さんは仕事ぶりを認められて新規ブランドの立ち上げの仕事をするようになる。3ヶ月から半年ごとに日本全国を移動して、次々と店舗を立ち上げていく。

立ち上げと聞くと花形というイメージがある。けれど、365日ホテルを転々とする日々が続くなかで「これは違う」と思うようになった。一つはどんな人が、何を思って自分のブランドの服を着ているのか見えないこと。そして流行りが終わると捨てられてしまうこと。
相手と直接話をして、長く使ってもらえるものを届けたい、そう思った。

青木さんは家の中心となる家具に興味を持ち、青山の家具屋で働き始める。店舗立ち上げのなかで内装に関わったことも影響しているそうだ。
入った家具屋はセミオーダーの店だった。デザインはすでに決まっていて、家の大きさにあわせてサイズを変えられることを売りにしていた。けれど、それはセミオーダーというより半既製品だと次第に感じるようになる。
その思いがきっかけとなり、自分の店を持つことに決めた。

「販売業にはサークルという言葉があって。使う人、営業、つくる人が円になって、お互いに思ったことを伝えあい、気づきをものづくりに活かしましょうということ。でも、多くの企業を見ると、そうなってはいない。むしろ使う人が『何か違う気がする』と思いつつも、その声に耳を傾けずに売ってしまう。下手をすれば押し売りのような状態になっていることが少なくないと思って。」

「だから僕はきちんと円をつくりたかった。工房の職人にもお客さんと話してほしい。そのためには、製作からお客さんに届けるところまで自分たちでやる必要があった。」

そうして次第にスタッフも増え、今の3rdの形がつくられていった。

そのひとりが、設計デザインを担当している柳田さん。

新卒で入社して今年が2年目になる。柳田さんは、親が内装事務所をしている環境で育ってきた。いずれは自分もそういった仕事に就くのだろうと思いながら、美大に進む。就職活動の中で大事にしたことがあると言う。

「自分の中では、営業と設計の両方をやりたいという思いがあって。父親を見ていて、営業の大事さを痛感していたんです。彼は職人気質で、とてもいいものをつくるのだけれど、自分のしていることを人に伝えられない。営業がとにかく下手なんです。それで、接客を学ぶなら若いうちと思いました。いずれ私は自分の事務所を持ちたいんです。」

大企業に入ると仕事は細分化されている上に、配属先もよくわからない。自分で目標があるならば、やりたいことがやれるところに入った方がいいかもしれない。

実際に入ってみてどうでしたか。

「いいなと思ったのは人と人の距離が近いこと。ショップスタッフ同士も、工房のおじさんたちとの間も。私はみんなと年の差があって、でも無礼講でやっても怒る人はいないので。いいものをきちんとつくる、そこを共有できれていれば大丈夫だと思うんです。」

大変だと思ったことはなんでしょう。

「時間、かな。」

時間ですか?

「私は設計デザイン職ですが、接客も大事な仕事の一つです。普段は店内で図面引きやパース描きをやっていて、お客さんが見えると接客に入ります。なので、営業時間中はなかなか時間が読めず、店を閉めてから図面引きをする日が続くこともあります。でも一概に大変とは言えないと思います。」

たしかに、その人次第なんだろうな。やらされていると思うと、しんどくなってしまうけれど、たとえば、柳田さんのように目標があれば頑張っていけるだろう。それに何かを身につけたいと思えば、そうした時期は必要だとも思う。

やっていてよかったと思うのはどういうときなのか聞いてみる。

「自分がデザインした家具をお客さんに納品するときです。お客さんが喜んでくれる姿を見るといい仕事だなと実感します。お客さんも人それぞれで、家具にすごいエネルギーをかけている方もいて。その方から『この家具ができてすごい感動しました』という手紙をいただくと、ああよかったなと思います。『いずれテーブルもほしいので、そのときも柳田さんにお願いします。』なんて言葉をもらうと頑張ろうと思います。」

取材中に目に入り、とても気になっていたものがある。それはこのキャンドル。

「それ私がつくったんですよ。」と柳田さん。

ちょうど今は、スタッフによる展示「アーツアンドクラフト展」の開催期間だそう。

スタッフの靏田(つるだ)さんはモザイクガラスを組み合わせた机。とても素敵だけれど、僕の部屋には大きすぎるなと思っていたら「半分の大きさでもつくれますよ」とのこと。

これも一つのオーダーメイド家具だった。スタッフの皆さんは忙しいなかでも、きちんと自分の作品づくりも行っている。家具に限らずものづくりが好き、ということもここで働く人の大事な要素だろう。

今回募集するショップスタッフの主な仕事はお客さんに家具を届けること。相手の言葉から適切な家具を紹介したり、絵を描いて説明することもある。

普段はお客さんにどんなふうに関わるのですか?

「お客さんが、テーブルほしいんです、と来店します。そうしたら、まずは今までつくったテーブルを例として見てもらい、イメージを固めていきます。それから、部屋の間取り図を持って来ていただいて、どういう風に使うかを聞いていきます。お客さんから『家族構成は夫婦二人と、5歳の子どもがいて、置く場所はリビングです。』とうかがうと、こんな風に提案します。『小さいお子さんがいるので、頭をぶつけて怪我をしないように、角は丸くしてはどうでしょう。樹種はブラックチェリーを使ってはいかがでしょう。お子さんの成長にあわせて色の経年変化が味わえますよ。』」

営業の場で大切にしていることを青木さんに聞いた。

「自分がお客さんと一緒にどこまで考えられるか。お客さんの心に入っていけるか。そういうことだと思います。机がほしくて来るお客さんもいれば、もっともやもやした状態で見えるお客さんもいる。『ソファーを置こうかどうか迷ってるんですけど。』と言われることもある。そのときに、どんな家に住んでいるんですか、って聞きたくなりません?当たり前のことを流さずに聞いて、もやもやを一緒に整理していけるかどうかです。」

「結果として、今はソファーがいらないことに気づくかもしれない。その人は、私たちの思いをきちんと伝えるべき相手なんですよね。さっきいらしていたお客さんもそう。4年前に書いた図面を持って『あのときの椅子がほしいんです。』って。そういう方に3rdは支えられているんだと思います。」

その他にも、商品管理や配送という仕事がある。お客さんの希望納期に応えられるよう、工房とやりとりをして製作の進捗を把握する。そして完成した家具をお客さんにお届けする。もし配送の途中で傷をつけてしまったら一から作り直しになってしまう。

そして今回は英語のできる人も募集している。今は海外からの注文が増えているためだ。ただ、電話などで会話する機会はほとんどない。日々のメール対応や、3rdをweb上で海外に発信することが主な仕事となる。

一緒に働くのはどんな人がいいだろう。工場長の山下谷(やましたや)さんにもお話を聞いた。

「求めることは実は色々あってね。家具づくりの知識や、図面引きといったことも必要になってくる。それらは最初からできるに越したことはないけれど、後からでも覚えられるから。 それよりも今一番必要と思うのは、お客さんと話して、その場を盛り上げてくれる人。相手に興味を持って、求めているものを引き出せる人。そして家具が好きな人。」

「社長以外はみんな、美大や職人専門学校など技術系出身なんです。そのこともあり、お客さんのほしいものを聞き出すことが得意とは言えなくて。だから、お客さんにうちの魅力を伝えて、『3rdで家具をつくりたい!』と思わせてくれる人に出会いたい。」

3rdではたくさんの経験を重ねてきた青木さんや工房の職人さんと近い距離で仕事ができる。大きな仕事の一部ではなく、設計から販売まで家具に広く関わりたい。将来自分で家具屋を開きたい。自分の中に何かしらの思いを持っている人にはとてもよい機会だと思います。

僕は3rdの家具から、居心地のよさと、誇りを感じました。いつかここで家具をつくってみたいとも思いました。

まずは店舗を訪れて家具に、人にふれてみてほしいです。

(2012/11/13 はじめup)