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未来のまち

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子どもたちに寄り添いながら、地域のコミュニティづくりにも関わっていく。そんな場をつくっているのが、千葉県柏市で学習塾と学童保育が一体化した場を運営しているネクスファ。今年の3月に開校されたばかりなのだけれども、ほかにはない面白い取組みをしている。

塾部門では、算数、国語、英語といった教科学習のほかに「サス学」「英対話」といったちょっと聞き慣れない取組みをしている。また学童部門では、地域に住む大人たちが講師となり、理科じっけん、しゃしんあそび、レゴサス、キャッチボール、農業体験など、さまざまなプログラムを実施している。

今回は、ネクスファで副教室長・講師として働く人を募集します。

理事長の杉浦さんは、これまで「愛・地球博」をはじめ、国や企業の環境コミュニケーションの仕事をしてきた。けれど、リアルな場をもって、子どもに関わりたいと考えた。たんに偏差値をあげて有名校に入るための学力だけではなく、自分がやりたいことをきちんと考えられる子どもになってほしい。そう思った。

柏市は、日本の地方都市に共通する課題を抱えている。核家族や共働きが当たり前になるなかで、子どもたちには放課後を過ごす場所がない。子どもの預かりもかねて、多くの習い事に通う子どもたちがいる。

「ネクスファをはじめてわかったことだけれど、『疲れた、忙しい』が口癖の小学生が少なくないんだよ。」

僕自身も同じような環境で育ってきたのでわかる気がする。習い事も親が決めてくるので、どうしても「やらされ感」がある。

その一方でシニアの方のなかにはもっと働きたい、世の中と関わりたいと思う元気な人たちがいた。

「柏には豊四季台という高齢者率が40%を超える超高齢化地域があります。20年後の日本の姿ですね。そこで、柏市・東京大学・UR都市機構が連携して、シニアに地域雇用の担い手になってもらおう、というプロジェクトをはじめたんです。」

そうした柏の状況もあり、杉浦さんと教室長の辻さんでネクスファを立ち上げることにした。まずは子どもが心から「ただいま」と言える居場所をつくりたい。そして地域の多様な人と関わるなかで子どもが、育っていける場にしたいと思った。シニアをはじめとした柏に住む人たちがプログラムの講師や学童の見守りとして関わっていくことで、ネクスファは一つのコミュニティとなる。

「今、子どもたちは遊ぶ時間や場所がなかったり、限られた人としか関わりがなかったり、縦にも横にもつながりが限られているんですね。ましてや地域の大人と会う機会はほとんどない。僕が子どもの頃は、公園に行けば学校も学年もばらばらの子ども同士で遊んだし、大人の姿もあった。多様な人が関わる環境は社会そのものなんですね。」

そう話すのはネクスファ教室長であり、学童部門であるネクスファ・ジュニアを立ち上げた辻さん。

子どもが大好きで、学生時代は学習塾でアルバイトづくめの毎日だった。その後、SEとして働きはじめるけれど、やはり子どもに関わる仕事がしたい。そう思い、働きながらシブヤ大学に通ったり、子ども関係のNPOでボランティア活動を行ってきた。次第に働き方のモデルが見えてくる。一人の子どもの成長に長く関わりたいという思いも固まってきた。そうしてネクスファで働くこととなる。

今回応募する人は、辻さんと一緒に働くことになる。どんな仕事があるんでしょう。

「ほんとうに多岐にわたります。ジュニアでの小学生の見守り、講師やスタッフとの打ち合わせ、保護者への応対、教室環境の整備にfacebookでの情報発信などがあります。また、塾部門の授業を受け持つこともあります。」

ジュニアで実施されるプログラムは、生け花、カメラ教室、レゴサス、料理教室をはじめ30種類以上もある。

「中心となる小学校の低学年の子どもには、男の子はサッカー、女の子は生け花と決めてしまうのではなく、色々な実体験を通してボールをぶつけています。生け花に興味をしめす男の子もいます。大事なのは子ども一人ひとりが主役ということ。僕たち大人は、子どもが自分で考え、行動できるように関わっていきます。」

辻さんの姿勢には「見守る」という言葉がしっくりくる。実際に子どもたちは変わってくるものですか?

「自分の思いを形にすることが上手になってきた感じがします。たとえばこんなことがありました。半年間レゴサスの講師をつとめた学生さんが、留学する際、子どもが自分たちでレゴのコマ撮りをして作品をつくり、先生にプレゼントしたんです。」

実はこの作品には、レゴに加えて「しゃしんあそび」「広告を学ぼう」というプログラムで学んだことが応用されていたそう。僕も動画を見たけれど、大人がつくったかと思うようなクオリティの高さに驚かされる。

子ども同士の関係にも変化が見られるようになったという。

「はじめは、同じ学校の同級生だけでかたまったり、一人で遊んでいる子もいました。けれどケンカもありつつ、今では学校も学年も関係なく、みんなで遊んでいます。なかには、『兄弟ができたみたい』そう話す子も出てくるほど。そうなると、新しく来た子もくつろいでいい場所なんだと安心できる。受け入れられる場になってきたように思います。」

プログラムはどのように生まれるのだろう?

「今あるプログラムの講師は、僕の知人と柏在住の方が半々といったところです。新しいプログラムは、今講師をしている柏の人に紹介してもらったり、地域のイベントやカフェに行って、講師をしてくれる方に出会うこともあります。」

「将来的には、ネクスファに通っている子どもの親御さんにもプログラムをやってほしいんですね。『僕なんか普通のサラリーマンだから』と謙遜されますが、みなさんすごく魅力を持っている。社会に出ている方は誰でも、講師になれると思うんです。そうやってネクスファの輪が広がっていけばうれしいですね。」

辻さんからは、人を尊重するとか、相手のよいところを見ようとする姿勢が感じられる。そうしたあり方は、日々の人との関わりも楽しんでいけるのだろうな。

一方、塾部門ではどんなことをしているのだろう。「サス学」「英対話」という言葉は聞き慣れないので、実際に授業に参加させてもらう。

「サス学」はサステナビリティ学習の略。地球温暖化や生物多様性、エネルギー、少子高齢化といった社会的課題について考える場となっている。

この日の「サス学」のテーマは”たけのこ”だった。2、3人でチームをつくり、たけのこについて調べ、最後は発表を行う。

子どもたちの気づきの深さには驚かされます、と話してくれたのはサス学を担当している大学院生の山田さん。

「まずはテーマについての発見があります。かつては国産だったたけのこが現在ではほとんどを中国からの輸入に頼っていること、筍という漢字は10日ほどの短い旬に由来するといったことです。」

「それから、学び自体に関する気づきがあります。最初はたけのこというテーマに乗り気じゃない子どももいました。けれど、いざ調べはじめると色々なことがわかってくる。『興味のないことでも、やってみると面白いんだ』といった感想も出てきます。そうした気づきは今後にも生きてくると思います。」

学校の授業では、自給率の問題は社会、漢字は国語といったように教科で分けられる。けれど、サス学では一つのテーマに対して、個々の科目にしばられず、さまざまな視点から考えるようになる。

この授業を通して学ぶことは何だろう。もちろん社会的課題に意識を持つこともあるけれど、それ以上に自分で考えることが大きいと思う。5年、10年後を想像すると、漠然と偏差値で大学を選んだり、知名度で企業を選ぶのではなくて、自分の考えを持って進路を決めること。学力をきちんと育てつつ、価値観も育んでいくことが大切なんだろうな。

「英対話」も見学をさせてもらう。最近は英会話教室でも対話に力を入れるところが出てきたけれど、会話と対話はどう違うのだろう。

「会話では単語や言い回しを覚えることに重点がおかれます。でも、ほんとうに大事なことは人の考えを深く聞いたり、自分の意見をきちんと伝えられる対話力だと思うんです。」

この日はハロウィンということで、最後にお菓子がプレゼントされて終了となった。子どもと講師の楽しそうなやりとりが印象的だった。

そんなネクスファで一緒に働くのはどういう人がいいんだろう。

「人と関わることを楽しめる人がいいと思う。子どもに接した経験は、あるに越したことはないというぐらいです。それから、ついついプログラムやサス学に目がいきがちですが、教科学習にもきちんと取り組んでほしい。学校の勉強をちゃんとやった上でのサス学や英対話ですから。とくに親御さんはそういう気持ちです。そうしたバランス感覚は大事だと思います。」

「スタートして間もない今だからこそ、一緒につくりあげていく感じが楽しめると思います。アイディアをすぐ実行に移せて、その反応が直接かえってくることも魅力かもしれません。以前、僕が一緒に仕事していた方は会社経営に関わる人が多いんですが、みなさん『それは面白いね、一緒に何かやれないかな』とネクスファには賛同してくれるんですね。ここから未来をつくっていくんだというわくわく感があります。」

話をしながら、杉浦さんと辻さんには色々な想像が膨らんでいることがわかった。たとえば場所は柏に限らないで、将来的にはさまざまな地域にネクスファがあっていいかもしれない。そうすれば夏休みには子どもたちが行き来できるようになる。

辻さんはこんな話をしてくれた。

「子どもや地域の人が、授業のない日でもふらっと立ち寄れるようなネクスファにしていきたい。ここで知り合った子どもや地域の人たちが、駅前や買い物に来たスーパーでばったり会ってあいさつを交わす。そう遠くない先には、そんな光景がごく当たり前になっていけばいいなと思うんです。」

一人一人の子どもや、地域の人と対話を積み重ねていくことで、きっと地域のつながりは生まれてくる。そして、子どもたちは自分で生き方を考えられる大人になっていくと思う。そのとき柏は、今よりも魅力的なまちになっているだろう。

この記事で柏を知った人でもきっと大丈夫。ネクスファが取り組んでいることは、日本中のまちが抱えている問題。だから、いずれは自分の住むまちでネクスファをはじめることになるかもしれない。未来のまちをつくっていくひとになりませんか。(2012/11/12 はじめup)