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気づきデザイン

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言われたままに形にしていくデザインもあれば、まだ言葉になっていないものを引き出してデザインするという仕事もある。

広告制作を中心としたグラフィックデザインを行うビースタッフカンパニーは、後者にあたるといえる。その仕事は自分の中にきちんと積み重ねられていくものだと思う。

「僕らの仕事はデザインを通して人とコミュニケーションすることです。」

そう話すのは代表の上田さん。

ビースタッフカンパニーはデザイナーを募集しています。

上田さんは、もともと大手広告代理店で5年間デザイナーとして勤めたのちに独立。個人事務所の設立を経てビースタッフカンパニーの代表となる。

会社の特徴の一つとして、仕事の幅の広さが挙げられる。車、ファッション、銀行、飲料、医薬、化粧品… 誰もが知っているようなクライアントも多い。もともとは一つの業界の仕事がほとんどを占めていたが、2006年に上田さんは思いきった方向転換をする。

「経営の視点から、一つの業界に依存してよいのかという思いがありました。それから、デザイナーとして若いときに仕事がかたよるのはよいことなのだろうか?そう感じていた面もあります。自分自身をふりかえると、広告代理店で色々やらせてもらったことがいま活きているんですね。」

方向転換はスタッフにはどう感じられたのだろう。

アートディレクターの青山さんは、当時入社1年目のデザイナーだった。

「新人で入ったときは、まだその業界の仕事がほとんどでした。仕事自体の規模が大きいこともあり、自分が担当したのは主に広告の素材づくり。写真の切り抜きや、資料集めで1日が終わっていきます。同じ毎日の繰り返しのなかで、次第に自分がやりたいことが見えなくなってきます。」

その後、さまざまな仕事を受けるようになり何か変わりましたか?

「一つ一つの仕事の規模は縮小しました。けれど、色々な業界に関わることのできる今の方が、仕事としての楽しみを感じます。」

ここで上田さんが次のように話してくれた。

「僕らの仕事の目的は、企業が抱えている課題の解決だと思っています。ただクライアントに言われた通りのものをデザインするのではなく、まずはそのデザインがなぜ必要なのか、課題の本質に立ち返って考えることからはじめるようにしています。」

「課題の本質が見えてくると、より効果的なアプローチを考えることができるんです。クライアントに『こうするともっと良くなると思いませんか?』と提案を行い、お互いの意見が混ざりあうことで、よりよいデザインが生まれます。」

クライアントとはどのように関わるのですか?

「なかには、『言った通りのことをそのままやってくれる制作会社の方が楽』というクライアントもあるでしょう。けれどそのような関わり方しかできないようであれば、オファーをお断りさせていただくこともあります。色々な面から相手を知りたいんですね。寄り道のように思えるかもしれませんが、そこから発見が生まれ、制作にかえってきます。だからこそクライアントには、茶飲み友達のようにどんな話や相談もしてもらえたら嬉しいですね。」

起業時にロゴマークをつくったところからはじまり、10年以上お付き合いしている企業があるそうだ。

「コンサルのように『上田くん、こういう提案を受けているんだけど、どう思う?』と広告やコミュニケーション、情報発信に関する相談を受けることも。数人で起業したそのクライアントは社員が100名以上に増えてきたこともあり、最近は企業理念を一緒に考えること、ロゴマークのリデザインというお話をいただいています。僕らの仕事は、広告やデザインにかぎらずコミュニケーションに関わる全てのことなんですね。」

この人に相談すれば何かがかえってくる。クライアントにとってそう思える存在だからこそ色々な話がくるのだと思う。

デザインにおいて大切にしていることはなんでしょうか。

「さまざまな切り口からの検証を、時間が許されるかぎり行うことです。期待されている以上のことをクライアントに届けたいと思っています。」

そうした検証は、多かれ少なかれ誰もがやっていることだと思うけれど、ビースタッフからはとことん試行錯誤しようという姿勢が伝わってくる。

「デザイン会社としてデザインには手を抜かない。僕らは当たり前のことをきちんとやりたいと思って。」

その経験の積み重ねが、アウトプットするもののクオリティの高さにつながっていくし、なにより自分の引き出しが増えることにつながるのだと言う。

どんなデザイナーと仕事がしたいですか?

「広告やデザインが好きな、ディレクター志向のあるデザイナーです。僕らが目指すところは、仕事が会社でなく個人の名前にくるようになること。そのためには、一人一人が企画力とそれを定着するデザイン力をあわせ持ったディレクターであることが必要です。定着力がないとディレクションをする際に誤った判断をしがちです。そして定着力はデザイナーとしての時代に磨いておかなければならないこと。そこにきっちり取り組むことができるデザイナーに来てほしいですね。」

実際に、新卒で入社した5年目のデザイナー、須永さんに話を聞いてみる。

須永さんは、美大の出身。どうして広告の業界に入ったのだろうか?

「デザインとどう付き合っていくか考えたときに、自分の表現、アートとしてとらえるのもたしかに楽しかったんですけど、人の課題の解決のためにつかえたら、もっと楽しそうだなと思ったんです。」

入社してみてどうでしょう。

「学生のときに、公募のデザインコンテストに応募したり、自分なりに色々とデザインの勉強はしてきたつもりだったんですが、全く役に立ちませんでしたね(笑)。素材づくりにはじまり、目の前の仕事をこなすことに一杯一杯でした。でも、自分のしている仕事が、制作物のなかで果たす役割をわかったときに視界が開けた感じがしたんですね。」

「デザイナーの早い時期から企画に関われてよかったと思います。ディレクターから指示を受けた通りにただこなすのではなく、『こうした方が伝わるのでは?』『あんなデザインにすれば人が動いてくれるのでは?』と考えてディレクターに提案をしています。いまは本当に楽しいですね。」

どんな仕事でも、いきなり自分らしさというものが出せるわけではないだろう。多くの場合、最初は先輩の真似をしつつ、与えられた仕事をこなすことからはじまると思う。そうして目の前の仕事をこなしていくなかで気づけばふと、自分の色が滲み出てくるのかもしれない。

教育にもビースタッフの特徴が見られると思う。

「僕らの教え方はマニュアル化された社員教育というよりも、わかりやすい言い方をすれば徒弟制度です。どちらかというと、聞き耳を立てて先に動け、見て盗めという感じに近いと思います。」

聞き耳を立てて、見て盗む。

「徒弟制度というと時代錯誤的な感じに聞こえるかもしれませんが、ちゃんと理由があるんです。それは、マニュアルという目に見える形では表しきれないことにこそ、本当に伝えたい大切なものが沢山あるからです。」

例えば、Photoshopの扱い方は本やインターネットを見て覚えられるかもしれない。けれどクライアントが本当に求めているものを引き出して、形にすることを一人で学ぶのは難しい。
「本当に大切なことは、先輩が仕事している姿を隣で見たり、ときには遊んだりと一緒の時間を共有する中で見えてくると思うんです。」

実はこうした経験が、クライアントとの関わりにおいて活きてくるのだという。

「聞き耳を立てて先に動ける人は、相手が求めているものに気づく、つまり気が利く人なんです。僕らの仕事はクライアントの要望を聞き出して、解決策を考え、それを形にして提案することです。クライアント自身が自分たちの魅力や、課題が見えていないことだってあります。そうしたときに、気づきはすごく重要なんです。」

一見寄り道をしているように思えるビースタッフの教え方は、実は近道のようにも感じられる。

それからね、と取締役の中村さん。

「打ち合わせはここで行っているんですが、会社の方針として、会議スペースは個室ではなくオープンなものにしようと決めています。というのも、打ち合わせに参加できなかった場合でも、スタッフは新しいプロジェクトが動きはじめたことがわかるからです。これも、聞き耳なんですよね。」

気づけるような仕組みは、さりげなく、会社のレイアウトにも反映されていた。

アートディレクターの関口さんは3つの会社で働いたのちにビースタッフカンパニーへ転職した。

「以前いた会社では、まさに職人のようにグラフィックデザインと格闘する日々で、段々とデザイナーとしての実力がついてきて楽しかったのですが、デザインの仕事はあくまで大きな仕事の一部。もっと川上であるアートディレクターの仕事をしたいと思いました。Webの仕事が増えてきて紙媒体の仕事は減っていくだろうと予想していたので、デザインができるだけではこの先苦しいのではないかと考えたのもありますね。」

ビースタッフも紙媒体の広告が中心ですよね?若手デザイナーの中には紙の仕事の将来に不安を感じる人も多いのではないでしょうか。

「たしかに総量として紙の仕事は減少傾向にあります。けれど同時に、若手でグラフィックに明るい人もいなくなっていて。だからこそ私たちはチャンスじゃないかと思っているんです。今はグラフィックの仕事をしているけれど、その将来に不安を感じている人には諦めずに続けてほしいです。」

ビースタッフのように相手にきちんと寄り添う仕事は、今後もなくなることはないし、むしろ仕事の幅は広がっていくように感じる。(実際に上田さんが企業理念を考えることをお願いされたように。)
もし会社の看板に頼ることなく、個人としてだれかの必要な存在になりたいなら、寄り道はありたい自分に近づいていく近道のようにも思いました。
(2012/12/29 はじめup)