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リサイクルの輪

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鹿児島県は薩摩川内市。東シナ海に面するこの街に、リユースやリサイクルの輪を、日本から世界につなげていこうとしている会社がある。

株式会社K&Kは国内の家電製品や農耕機具、そして衣服などを海外に販売したり再生する、新しい「つながり」をつくろうとしている。そのために新しい事業の企画立案から事業を運営していく人を募集している。未知なる挑戦だけれども、勝算は十分あるそうだ。

鹿児島市内から車で1時間ほど。薩摩川内市の郊外に株式会社K&Kの事業所がある。のどかな場所に突然広い倉庫が現れて、中には衣類や家電製品などが集積されている。

隣にある事務所で代表の川野さんに話を聞いた。まだ28歳とのこと。話を聞いていたら、どんどん引き込まれていった。

まずはこの仕事をはじめたきっかけについて聞いてみる。すると意外にもこんな言葉が返ってきた。

「高校に行って就職しようというときに、やりたいことがこれといってなかったんですよ。」

ただ、ずっと好きだったものがあった。それはスケートボード。

ムラサキスポーツがバックアップにつくほど、熱心に取り組んでいた。あるときムラサキスポーツ主催でイベントをすることになり、歩行者天国にスケートボードのランプをつくるから、協力してほしいという依頼があった。

「つくる場所がなかったんですけど、駐車場を提供してくれるおじさんが現れたんです。実はその方が今、自分たちがしているような仕事をしていたんです。」

作業をしているとライトで照らしてくれたり、ジュースをごちそうになったり。そんな協力のおかげもあって、イベントは無事終了する。

「お礼に行ったら、これからどんな仕事をするのか、という話になったんです。それでおじさんがどんな仕事しているのかよくわからなかったんですけど、まずはアルバイトをすることにしたんです。」

「行ってみたら、どうもよくわからないゴミばっかり集めてる。ただ、やけに大事そうに集めて、海外にコンテナで運ぶのを目の当たりにして。実はそれがお金になるっていう話だった。けど、はじめはあまり仕事に魅力を感じてなかったんですけどね。」

それでも仕事を続けることになったんですね。

「僕に教えてくれた、その師匠が、非常になんというか、男らしいというかかっこいい方で。一から十までいろんなことを教わったんですよね。人との話し方、接し方。それこそ箸の持ち方からお酒のつぎ方まで。いろんなことを厳しく教えていただいて。まずは、その人みたいになりたいと思うようになった。それで仕事をしていると、仕事も面白くなっていったんです。」

仕事も面白くなった。それはよかったですね。

「なんでかなー。やっぱり、18歳のとき、初めてベトナムに連れて行っていただいたことかな。そこでうちが送った商品が、どれだけ大事に扱われていて、どれだけ喜ばれてるかっていうのを見たときに、いい仕事だなーって(笑)。」

自分たちが日本から持っていった農耕機械が、きれいに塗装し直されて店頭に並んでいた。すると一生懸命貯めたお金を持った人がやってきて、ものすごい喜んで買って帰る。自分の仕事が世界のいろんな人とつながっていることを実感した。

そこから勤めている会社環境も変化したこともあり、自分でも独立してやってみたいと考えるようになった。

設立したK&Kとは別に、屋号に「ecommit(エコミット)」というものがある。意味はエコを通して世界にコミットする、というもの。つながれば価値が生まれる、という言葉も掲げている。川野さんが、ベトナムで感じた「つながることの価値」は、ここからもっとつながって花開いていく。

「お客さんだった運送会社の社長と仲良くなりまして。それで実は自分でやりたいんだよねっていう話をしたら、小さい倉庫が余ってるから、ボロだけど直して使うんだったらいいよ、て言ってくれたんです。安く、すごく安く貸していただいたんですよね。当時確か6万円くらいで借りて。まー、ひどいとこだったんですけど、本当にお金がなかったものですから。」

奥さんと二人で、草刈りからはじめた。水道もパイプを買ってきてつなげた。自分たちでできることはなんでもした。

環境が整ったら、まずはリサイクルショップなどをまわって、売れ残った商品を引き取ることからはじめた。とはいえ、はじめはその量も少なかったので、自分たちだけでコンテナひとつをいっぱいにすることができなかった。だから、まずはもっと大きな商社などに転売することで、売上をあげるところからスタートする。

「でも1年もしないうちに、自分たちでコンテナをいっぱいにできるくらいのものが集まってきたんです。それなら自分たちで直接海外とつながって、輸出しようっていう話になった。」

「でもはじめはインチキな中国業者にコンテナごと買ってもらっていて。そうすると、向こうの状況に左右されてしまうし、何よりもその先にある販売風景が全く見えてこなかった。だから自分たちで海外に行ってみようと思ったんです。」

知人の紹介などに頼りながら、現地のバイヤーを見つけることができた。はじめは英語を話すこともできなかったので、パンフレットと写真を持って、身振り手振りなんとか説明する。そこで商談が成立した。

「それで日本に来てくれて。お金をどーん、って置いていってくれた。それからちゃんと輸出ができるようになりました。」

とはいえ、その後も苦労の連続だった。たとえば、海外からの送金方法も分からないから、いろいろな銀行に行って、どうしたらいいか聞いてまわった。一つひとつ自分たちで調べて解決していく繰り返しだった。

それにしても、普通の人だったら分からないことがありすぎて二の足を踏んでしまうようなことだと思う。

もともとあまり深く考えずに、まずは行動してから考えるような性格なんだろうか。

「昔はあんまり危険な事というか、リスクある事には手を出さないほうだったんですよね。ただそのときは、本当に安い値段で買ったものがいくらで売れるか前職でわかっていたので。勝算があったんですよ。」

うまくいく見込みがあったんですね。

「そうです。そして、これからは海外のバイヤーさんに出していたのを、自社で販売のほうまでコントロールしたいと思っているんですね。」

川上から川下まで。より直接つながっていくことに、勝算もあるんですね。

「はい。一貫してやりたい。タイに自分たちでリサイクル工場をつくろうと考えています。マテリアルプラントって呼んでるんですけど。」

マテリアルプラント?

「僕たちが仕事していて、ずーっと課題として持っていたのは、現地に商品を送って、何年かは大事に使っていただけるんです。下手したら10年くらい使ってもらえる。それだけでも意味のあることだと思うけれども、使い終わった後、どうするかっていうのが課題だったんです。実は使い終わったあと、向こうで廃棄されちゃってるんですよ。廃棄するにもルールもないし法律もない。それに技術もないんです。僕らが送った商品が、10年後にはゴミになっちゃってる可能性がある。」

タイなら安い人件費で、手作業で解体しても商売になるし、なにより精度の高いリサイクルが可能になる。リサイクルされた資源は、メーカーに卸すことで、また商品になって日本にやってくる。「つながり」はひとつの輪になって、持続可能なものに近づいていく。そうして、自分たちが納得できるリサイクルができる。

ところが中国などでは、劣悪な環境で働いている人たちがいて、処理できないものは埋めたり燃やしたりしてしまっているそうだ。そしてそれらは、日本が発送元になっている。

理想は高い。ただ、乗り越えるべき壁もまだまだ高い。そのためにどうしても自分の頭で考えて行動できるような人が必要だ。

「コミュニケーションの力がある人がいい。もちろん、語学もできればベストだけど、それよりも大切なのはハート。これからの事業展開は新しい会社をもうひとつ、つくるくらいのことなので、自分で考えてつくっていける人がいいです。そして、考えるのと同時に動ける人。もちろんはじめは現場も知ってもらいたいです。すべてを知るからこそ、つながりを描けるだろうから。」

川野さんが創業からしてきたように、もしかしたらまったく知識や前例のないようなこともあるかもしれない。頼るマニュアルもないだろうから、失敗することもあるかもしれない。でもそれに懲りずに動き、考えていける人がいい。

「もちろん大変なこともある。たとえば僕たちが相手をするのは行政とか国、法律だったり。いろんな問題に立ち向かわなきゃいけない。東京出張の帰り道に、もう無理かな、と思うこともあります。でもどんな相手でも粘り強く通っていればヒントもいただける。こういう風に法律は変わっていこうとしているとか、こういう研究している大学の先生がいるとか。そうして粘り強く動くことで、この業界の変化も肌で感じられる。この業界、これから面白いですよ。」

大変な中でも、自分たちに追い風になっているように感じるという。

最後に川野さんに社会起業家に興味があるか聞いてみる。

「社会起業家っていうとなんでしょう… (説明すると)あー、あのですねー、正直いって興味ない(笑)。世の中の役に立つ仕事がしたいという人もいるけど、それだけじゃない。そんなに甘いもんじゃないと。」

「多分本当に継続していく事業、この先ずーっと継続していく事業を作るためにはお金儲けのためだったらなんでもやる、儲かることだったらなんでもやるっていうのは絶対続かないと思いますよ。でも役に立たなきゃ利益も上がらないし、継続していかないと思うんですよね。社会に良いことをするのは、とてもいいことだけれども、それだけではない。」

社会にいいことをしていたら、自然と仕事になるかと言えば、そんなに甘いものじゃない。でもお金になれば、なにやってもいいかと言えば、そんなこと持続しないだろうことは、なんとなくみんな分かってきているようにも思う。

Ecommitも、ちゃんと資源がリサイクルされることで世の中はよくなると考えているし、工夫したりコツコツ積み重ねていけば商売として成立することはわかっている。あと必要なのは、同じ方向を見て一緒に歩いていく仲間。大変だけど、面白い時間が待っていると思います。

最後に薩摩川内市に移転する新しい事務所予定地を見せてもらった。まわりには同じくらい高い建物はないし、市内の一等地にある。

まだ内装もないけれども、ここから何かがはじまる予感がある。新しいつながりをつくっていきたい方、ぜひ会社を訪ねてみてください。そのときには新しい事務所もできているかもしれない。(2012/12/10 ケンタup)