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スタジオで働く日々

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studio LaMOMOという、撮影スタジオを運営している会社がある。

きれいなモデルさんやおしゃれな商品の映える空間は、実際に訪れるとうっとりしてしまう。こんなお庭あったらいいなとか、天井の高い空間が自宅のリビングだったらな、とか。

ただ、写真や映像からはわからないけれども、その裏にはこのスタジオで働いている人たちの苦労や喜びがある。そんな会社の魅力は、仕事そのものよりも「人と人のつながり」なのかもしれないと思った。

京急平和島駅を降りて、住宅街を進んでいく。密集した住宅の先に、突然3階建ての建物が現れる。天井高も高く、周辺の住宅から浮いた存在。中に入り、手すりのない階段を上っていくと、明るい3階にたどりついた。

studio LaMOMOでは、撮影のスタジオを管理し、レンタルしている。自社で運営しているスタジオ以外にも、営業しているBarや花屋さんを撮影場所として使用するマネージメント業も行っている。

日々の仕事は、お客さんのために物件の入退出を管理したり、スタジオを掃除したり、壊れた箇所のメンテナンスや塗装もする。撮影のときには、原則として技術的な支援はしないけれども、必要な環境は整える。たとえば光を遮ったり、必要な家具をそろえたり。コーヒーやお茶の用意もする。

つまり、撮影環境を相手に合わせて日々整え、提供していくことが仕事だ。

この職場に新卒で入ったのが小柳さん。なんだか落ち着いているけれども、まだ20代半ばだそうだ。

まずはこの会社との出会いの話から。

「弊社はフェアトレード商品のカタログを製作、撮影していて、僕も学生時代にフェアトレードを勉強していたので興味があったんです。カメラマンになりたいということはなかったのですが、趣味で写真を撮ったりもしていましたし、接客も好きだし魅かれるものがありました。なんというか、ビビッときたんですよ。そこから自分に迷いもなく、話はトントンと進んで。」

ビビッときたのはなぜなんでしょう。

「面接のときに、小さい会社なのでこれから一緒に会社をつくり上げていくような気持ちでいて欲しいって言われて。」

「あとあなたはどういう人なの?と聞かれました。そして、社長からは私はこういう人で、こういう会社をやっていてって。そんな会話から、人間性を重視してくれるというか… 一対一で向き合ってくれると感じました。仕事をしていても、信頼されているというか、任せてくれるんです。」

この「一対一で向き合う」というのは、いろいろな場面でも感じるそうだ。

たとえば、新しいスタッフでも提案を歓迎してくれる。否定されるのでもなく、「それいいね、ちょっとやってみてよ。」と言われる。そして実現のために、本気で考えてくれる。月に1回はじっくり話をする機会があって「将来どうなりたい?」と聞かれることも。

日々のちょっとした仕事での判断から、それぞれのスタッフがどういう自分でありたいか、どういう生活をしていたいか、というところまで求められている。

地縁や血縁を超えて仕事を選ぶときに、会社と人の出会いは、どうしても目的や利害が選択のきっかけとなる。ただ、それだけでしか判断されず必要とされなければ、仕事と関係ない会話や行動は意味がない。

でもLaMOMOで働くということは、ただ給与を支払う代わりに時間を交換するようなものではない。きっといろいろなものをやり取りする。それは仕事に直接関係のないこともあるけれども、その関係のないこともひっくるめて、お互いに理解しようという姿勢があるのかもしれない。

小柳さんが「これ言ってもいいかな…」と前置きしながら、こんな話をしてくれた。

「うち週休2日なんですけど、週3の休みがいいなって提案したこともあって。それでも働き方によってはありだよって言ってくれて。頭ごなしに、無理でしょ、ではなく。」

本気で考えてくれるんですね。でもなんとなく、前提として小柳さんの働き方があるから、そういう話ができるように思うのですが、いかがでしょう?

「たとえば、当たり前なんですけど、限られた時間内でいかに効率よく仕事ができるか考えます。”time is money”ではないですが、ほんとにそうで仕事の質を上げて自分も会社もレベルアップできれば良いなと。それがベースにありますが、仕事の順番などは一日のスケジュールをみて効率よくできるように自分で考えたりします。確実に昨日よりも今日、今日より明日の自分が良くあるように意識してます。」

何もしなくてもいいという自由ではなくて、責任の伴う自由なんですね。

「はい。たとえばメーリングリストを通して、気軽な報告なども共有しているのですが、ほかのスタッフと、こうしたほうが効率いいですよ、これはこうしませんか?というやり取りもします。」

スタジオは基本1人で対応するでしょうから、離れていても一体感が感じられそうですね。

「そうです。あとは明日私そこに行くので、無理して今やらなくていいですよ、とか。本当に効率がメインですよね。それに撮影がはじまればピリピリしますし、まず前提としてやらなければいけないことはいろいろあります。でもさらに自分で考えて行動したり提案すれば、会社にとってプラスになる。それはまた自分にも返ってくるわけです。」

これはスタッフ間だけじゃない。お客さんにたいしても同じような姿勢があるかもしれない。

「ちょっと前に、撮影でどうしても猫を使いたいっていうお客さんがいて。事前に猫をレンタルできるサービス会社もあるんですけど、そこで借りられなかったんだそうです。」

普通なら「できません」と答えるだけで終わってしまうかもしれない。でも猫を飼っているスタッフがいるので「うちの猫でもいいですか?」と提案してみたそうだ。

「できないものはできないってなるんですけど。できる限りのことをするというのは、これに限ったことじゃないんです。猫の撮影は大成功でお客さんにかなり喜んでもらえたんです。」

でも面倒ですよね。猫も家から連れてこないといけないし。

「そうですよね。でもできることを考えてみるんです。たとえば夏物の撮影なのに落ち葉があれば、すべて手で取ります。雨の中、カメラマンさんの機材が濡れないように、機材に傘をさして自分はずぶ濡れで、なんてこともありました。」

予約は朝から入ることが多いので、出勤時間も早い。そして撮影が終わるのは深夜になることも。また予約に合わせて出勤日を決めるので、毎週末にならないと翌週のシフトがでない。

プライベートの予定を事前に組むのはなかなか難しいかもしれない。

「めちゃくちゃ辛いですよ。でもめちゃくちゃ楽しいです。こういう中で自分の働き方を見つけて、それに向かって会社もサポートしてくれるんです。」

もう一人紹介したいのが廣田さん。一度会社に勤めてから、LaMOMOに転職された方だ。

「私は学生時代になりたい職業がなかったんですよ。進学や留学をしても、就きたいと思う仕事が見つからなかった。それで、やりたいことがないなら、できることしようって思ったんですね。」

自分の知識や経験を活かそうと、英語が使えるプラントの仕事に就いたのだが、入社1日目にして「違う」と感じたそうだ。

「人によってはすごいやりがいを感じる職業だと思うんですけど、私はしっくりこなくて。仕事はしているんですよ。でも働いている実感がなかった。一番衝撃的だったのは、『歯車になってほしい』って言われたこと。」

歯車に。

「あー、私、間違えたって思ったんです(笑)。いや、半分気づいてたようなものなのですが、雑誌をつくるとか興味のある仕事はあったけれども、まるで知識があったわけじゃなかったから。だからできることをやろうと思って前職を選んだんですが、最初に感じた違和感は仕事を続けていてもぬぐえませんでした。」

たしかに、僕も建築学科卒ですが、建築の仕事をしていません。でもせっかく勉強したのにもったいないと思って、関係ある仕事を選びがちですよね。

「そうですね。それでモヤモヤしながら、雑誌や動画に関わる仕事はないものかいろいろ探していたらLaMOMOのスタジオスタッフという仕事に出会ったんです。」

第1印象はどうでしたか?

「スタジオで面談したのですが、入った瞬間にすごい似た空気を感じて。」

似た空気。

「自分と同じ感覚で生きてるというか。私はそう感じたんですね。今までいた世界では自分と全然違う考え方を持った人たちと仕事していたので、こういう職場があるんだとびっくりして。けどLaMOMOはすごい落ち着いて、ホームみたいな感じがしました。」

廣田さんは初日でわかる人なんですね(笑)

「そうですね。そう言うと大げさかもしれないですけど、第一印象はそうだったし、今も変わってないです。」

「でももちろん、仕事だから大変ですよ。働きはじめてから激動でした。毎日毎日、一瞬一瞬、空気が違う。いろんな人が関わってるし、その一人ひとりが持ってる感情や空気って違うし、撮影がはじまるとピリピリしてることが多い。限られた空間と限られた時間でいいものつくろうとしているので、それに応えられるように動いています。」

光が必要とされたら用意する。風が必要なら吹かせる。素敵な空間でゆったり働くというよりも、相手が望む空間をとことん用意するのが仕事だ。

重い家具だって男女関係なく運ぶ。

「でも重そうな家具も動かせるものは動かせるんだ、とわかってきます。当たり前の事を勘違いしている事に気付く。本当に自分は決めつけて生きてきたんだなって思いますよ。いろんなことをやらせてもらうんですよね、スタジオの仕事だけじゃなくて。壁にペンキ塗ったりしてると、あ、こういう風に塗れば雰囲気がでるんだって思ったり。」

「任せてもらえている分、しっかりやらないといけないですね。もちろん間違うこともあります。私けっこう不器用な方なので。落ち込む事もあります。でも正直な人であればいいと思います。」

二人がこの会社に感じているものは、きっと同じことなんじゃないかと思う。それは華やかな業界で生きるということでも、素敵な空間で働くということでもない。

一人ひとりを大切にしてくれる。仕事も他人事じゃなく自分のこととして考えられる。いろんなことが割り切ってないように感じるんです。

だからこそ今日も仕事が頑張れるし、それはまた自分にちゃんと返ってくるって、日々の経験を通して実感できるんだと思う。(2012/12/17 ケンタup)