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11月14日、阪急百貨店・うめだ本店にフェアトレードのセレクトショップ“LOVE&SENSE”がオープンした。
店をオープンして約3週間、高津さんに話をうかがいました。
「どうすればお客さんにLOVE&SENSEのファンになっていただけるか。店のトーンだったり、一つ一つの商品のブランディング、販売スタッフの声の掛け方、そしてフェアトレードというコンセプトの打ち出し方。色々と手を打っていけるので、楽しみなところです。」

「『なんでこんなに安く販売できるんだろう?』そう思う商品が増えてきたんですね。私は商品企画から流通まで経験しているので、生産コストもおおよそわかる訳です。そのしわ寄せがどこかにいっている感じがして。次第に自分の仕事に誇りが感じられなくなっていきました。」
そんな折にフェアトレードと出会い、早速インドへ視察に行く。しかし、当時は日本で販売できる品質のものがなく、帰国。唯一魅力を感じた商品を扱う国際NGOオックスファムの日本法人立上げに参加、理事としての活動を経て、2006年に株式会社福市を立ち上げた。

「そこで私たちは、フェアトレードに接点のない人、あるいはファッションに興味がある人を対象にできないかと思ったんです。」
なるほど。それならば競合することも少ないかもしれないし、むしろ協力してフェアトレードの間口を広げていくこともできそうだ。
2006年には、名古屋ロフトからチャンスをいただき、期間限定での出店を決めた。
「それまで新しい業態をプロデュースしたり、何十軒も店舗を立ち上げてきたので、自信があったんです。けれど、いざふたを開けてみたら一日の売上げが250円(笑)。それも大学生の販売スタッフが『お客さん一人も来なかったので、チョコ買っときましたー』という感じで。大失敗だったんですよ。」
ただ、その経験を次に活かそうとするのが高津さん。
「落ち込んでいてもしょうがないですからね。調査をすると、フェアトレードのような物語のある商品を買いたいという人が7、8割もいることがわかったんです。」

そして2008年には、表参道ヒルズで期間限定のショップを開いた。出店をきっかけに、百貨店のバイヤーなどから問い合わせが増え、期間限定ショップを何度か企画することとなる。
「『こういうものを探していたんです』って、特に女性のバイヤーさんが賛同してくださるんですよ。宣伝にもすごい力を入れてくださって。いつも色んな人が応援してくれたおかげで今のLOVE&SENSEがあります。本当にありがたいです。」
どうして高津さんは、非営利の組織ではなく、株式会社でフェアトレード事業を行おうと考えたのだろうか。
「私たちが一番大切にしているのは、現地の生産者たちが自分たちの手で将来設計を考えられるようになることです。ネパールで現地の人にこう言われました。『私たちは施しはいらない。自分たちの力で、誇りをもって生きていきたい』。商品に魅力を感じて、経済の仕組みのなかで買っていただくことが大事なんです。」

「被災して厳しい環境にある人たちに何かできないかと思ったんです。」
「色々な形で支援が行われているけれど、援助だけでよいのかと考えました。ネパールで聞いた言葉を思い出したんですよ。それにほとんどの方が親しい人を亡くしている。することがないと、悲しみだけを見つめることになってしまいます。やはり仕事をつくるしかない。それを、フェアトレードと同じスタイルでできたらと思ったのです。」
「購入した方からメッセージをいただくんですね。『○○さん丁寧なかわいい仕事しますね』『大事にします』って。仕事を通して人に必要とされるから、誇りを持って生きていけると思うんです。」

恒松さんはもともと高津さんの経営するマーケティング会社に在籍していた。会社が解散する際、いくつかの会社から引き合いをいただいていた。
「東日本大震災を契機に、人の意識が変化していくのを感じたんですね。そのときに私は、福市のしていることが新しい流れの真ん中にあると思ったんです。」

「EAST LOOPについてお客さんから電話をいただくことがあるんです。『福市さん、ほんとうに大事なことやってる。被災地に千羽鶴届けてほしいの』とか、泣きじゃくりながら『買ったで、ハートのブローチ』という留守番電話が入っていたり。今までの震災復興への関わり方は、ボランティアとかチャリティ中心で、日常生活とは離れたところにあったと思うんです。だから、関わる人がどうしても限られていた。けれど、実は主婦の方もOLさんもおばあさんも何か役に立ちたいと思っていて。EAST LOOPのような機会があれば、日常生活のなかでも買うことを通じて、復興に関わることができるんですよね。」
福市は、何かしたい人と現地の橋渡しをしていると言える。
今回募集するのは、ショップの販売と本社で働く人。どんな人と仕事がしたいのだろう。
「第2創業期に入り、フェアトレードを広めるためにやりたいことは色々あるんです。店頭での商品のブランディングにwebショップの展開。また、たくさん引き合いをいただいていることもあり、今後はイベントもより積極的に行っていきたい。そうしたなかで、福市の思いに共感して、会社を一緒に盛り上げていってほしいです。」
本社で働く人は、海外とのやりとりがあるため、英語が求められるとのこと。

「仕事内容は、会って相談できればと思うんです。色々な仕事がありますし、今後増えていく分野もあるでしょう。だからまずは思いに共感してくれた人と話がしてみたいです。」
貿易事務が得意、webショップを立ち上げた経験がある、途上国での商品開発に明るいといった強みがあれば、その仕事を中心にすることも考えているそう。ただ、今の時点で専門性が必須ということではない。まずは高津さんの秘書のような仕事をしていくなかで、次第に自分の専門分野が見えてくればいい。実際に、恒松さんも高津さんのもとで働きはじめた当初はPRについて全くの未経験だった。仕事を通してプロになっていったと言う。
ただ、今は店をオープンしたばかりなので、高津さんと恒松さんも、自分の専門分野に限らず、検品に値付け、人がいないときは売り場に立つこともある。そのように、フレキシブルに動く場面は出てくると思う。

「販売の経験があるといいですね。そして福市の商品に魅力を感じる人。フェアトレードという考え方に共感して、広めていきたいと思える人に来てほしいです。ただ、普通の商品とは少し違うところがあるかもしれません。」
「品揃えで言うと、日本の四季に合わせた商品展開が必ずできるわけではありません。色柄やサイズが欠けていても、量販店のようにすぐ入荷するわけにはいきません。」
また、単に売れればよいということではなく、フェアトレードについて伝えていくことも大切だ。ショップについては、フェアトレードの歴史自体が浅いなかで、伝え方についてもまだまだ模索中という印象を受けた。逆に言えば、お客さんとの関わり方も日々試行錯誤して、自分でつくっていけるのだろう。
まずは店舗を自立させることが最優先となる。その先には、お客さんから聞いた声を商品開発に活かすことも出てくる。いずれは、生産現場の視察に行くこともあるだろう。いわゆる職種は販売だけれど、実際の仕事の幅は広がっていくと思う。
阪急百貨店へ向かう。クリスマスシーズンということもあり、フェルトのサンタたちが出迎えてくれた。説明を受けなければフェアトレードとは気づかないような、かわいいデザインが印象的なショップだった。実際、そうしたお客さんも見えていた。
スタッフの上村さんに話を聞いた。

「フェアトレードという言葉をご存知の方が意外と多いんですね。『テレビ番組で取り上げられていたから見に来たわよ』という方もいらっしゃいます。関心を持ってくださる方は多いので、売上げにどうつなげていくかを日々考えているところです。」
上村さん自身、お客さんと関わるなかで感じていることがあると言う。
「買うことは本来楽しくて嬉しいことだと思うんです。ただ、“嬉しい”の意味が変わってきているのかな。これまでは、『かわいいものが手に入った』『安く買えた』というように、買う人だけの嬉しいでした。その一方に、安い賃金で働く途上国の人たちがいたんです。今は、買う人が『この人がつくってくれたから大事にしたい』とか、つくる人のことを意識しつつあると思います。そうなるとつくり手の喜びや嬉しさにもつながりますよね。フェアトレードは時代に重なってきていると思います。」
最後に高津さんの言葉を紹介したい。
「LOVE&SENSEのことを愛してはいますが、私のものではありません。途上国の人たちが自立できるように、継続していくことが大事です。私が持っている経験や知識と、新しく一緒に働く人の情報や感覚を組み合わせて、次の世代につなげていきたいです。」(2012/12/23 はじめ)