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東京のホームタウン

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新宿から中央線に乗って5分。中野駅を降りて少し歩くとセントラルパークが見えてくる。すれ違った防災センターの職員さんに挨拶をして事務所へ。日中は来週に控えた写真クラブの展示準備をすすめる。夜は月1定例の中野のまち探検隊。19時を過ぎたら、オフィスで働く人たちをと合流して、ブロードウェイ向こうの飲屋街へ出かける。今夜は熟成肉とワインを楽しむ会だ。

これは今回募集する、中野セントラルパークの施設運営スタッフのある一日を想像してみたもの。

現在中野区は、「中野駅周辺まちづくりグランドデザイン」にもとづき駅及び駅周辺の開発計画に取り組んでいる。その中核となるのが、約3haの緑地空間を取り囲むように立つ2棟の大規模オフィスビル「中野セントラルパーク」。

ここで働く人を地域とつなげたり、気持ちよく働けるような環境づくりをしていく人を募集します。

セントラルパークには、キリンビールをはじめ日本を代表する企業の入居が決まっている。

商店街や飲屋街に住宅街のイメージが強い中野に、オフィスを構えるメリットはどこにあるのだろう。

中野で生まれ育った僕自身、どうもピンと来なかったのだが、神河さんはこう話してくれた。

「我々は人口に注目したんです。」

人口ですか?

「ええ。中野は人口密度が首都圏でもトップクラスです。BtoCの企業は、ここにオフィスを構えることで、エンドユーザーに触れることができるんです。さらに人口構成が日本全国の地方都市と共通しているので、中野で得られたマーケティングデータは他のまちでも活かすことができます。」

中野区の人口構成を見ると、20〜30代の3割近くが毎年流出入していることがわかる。学生から結婚するまでの数年間を過ごす人が東京で最も多いまち。その一方で、3世帯にわたって定住している層も多い。実は「住んでよかったまちランキング」ではトップ3の常連だったりする。

「中野にはサブカルやオタクといった面もありますが、我々が選んだのはマーケティングという可能性です。まずは地域を、さらに日本全体が面白くなるような方向性を伸ばしていきたいんですよ。」

実際に再開発された敷地内を歩いてみることにした。すると、「今公園に入りましたよ」と橘さん。

「よく見ると線が引かれてますね。ここがオフィスと公園の境界です。民有地と公園が、塀や柵といった仕切りなしに続くのはめずらしいですよ。日本初かもしれません。」

他にも新しい取組みがさまざまなところで見られる。

「敷地内には明治・帝京平成大学の先進的な学部に、留学生を中心とした早稲田大学の学生寮が並びます。その間にも仕切りはありません。大学を越えた交流も期待できるでしょうね。」

留学生の姿も多く見られるようになりそうだ。

「公園には噴水もありますから。イスラム教の学生が礼拝するわきで、子どもたちが水遊びをしている、そんな場所になるかもしれないですね。」

パークアベニューと呼ばれる40m×200mの共用スペースがある。ここでのイベントの企画・運営も仕事の一つとなる。クリスマスシーズンの現在は、ミラーボールが置かれ、ライティングイベントが開催している。

8月には、試験的に夏祭りを企画した。

入居している企業の社員や地域の家族が参加して、ビールや食事を楽しんだり、スクリーンに流れる映像を楽しんだり、様々な人と交流する姿が見られた。

「来年以降は、地元のクリエイターにスポンサーがついて、作品発表の場にできないかと考えています。地方に行くと、『○○酒店のスターマインです』という風に、花火にスポンサーがついていますよね。そのまち版です。」

また、セントラルパークで働く人を中心に、地域の人も巻き込んだクラブ活動を検討している。たとえば写真部をつくって、作品をオフィスフロアの休憩室などの共用スペースに展示したり、エントランスのスクリーンに投影する。

「我々の仕事は、さまざまな企画を通して、地域と企業をつなげることです。最初は、ADとしてサポートからはじめることになるでしょう。イベントの事務局のような仕事かな。いずれは現場ディレクターとして、仕事を任せられるようになってほしい。興味があれば、自分で企画を考えるのもよいでしょう。そうして徐々に仕事が増えていくと思います。」

企画はテスト段階にあるので、最初の一年は、PODのお二人とともに、色々な企画を実施しながら定番のメニューを固めていくことになると思う。

他にもたくさんの企画が予定されていた。いずれのアイデアも、神河さんと橘 さんが考えたものだという。

PODは2010年に発足した会社。それまで二人は、どんな仕事をしてきたのだろう。

神河さんは、小さい店舗から六本木ヒルズといったまち単位のプロジェクトまで、不動産開発のプロだ。

ベースにある考えは、「運営の価値を上げることにより、施設の価値を高める」というもの。

「20世紀のオフィスは、新しい設備やサービスを付与して、入居者の満足を高めるというものでした。でも、これからは違う形が求められるのではないでしょうか。セントラルパークは、働く人がみずからオフィスを楽しいものにしていく考えです。」

「我々はクラブ活動やイベントを企画運営することで、そのお手伝いをしていきます。『セントラルパークに入居している企業ってみんないきいきしているよね』というブランドの定着が目標です。」

設備や技術は、年数を重ねるごとに価値が下がっていく。一方で、地域を交えた人との関係は、次第に価値を深め、やがて文化となるだろう。

人との関わり方も変わってくるかもしれない。

「今までオフィスでは、“どこどこに勤めている人”や“清掃員の人”という見方をしてきたのではないでしょうか。ここでは、“同じ中野で働いている人”として関われたらいいですね。そこにクラブ活動が加わることで、ワイン好きの田中さん、登山が趣味の松下さんとかね。」

橘さんは、まち奉行として一貫してエリア活性化をプロデュースしてきた。

手がけてきたプロジェクトは、吉本興業・東京本部事務所を廃校に誘致することで地域のイメージ転換を図った「歌舞伎町タウンマネジメント」、福島県三島町の山間地で老朽化により閉鎖した温泉を復興、年間8万人の集客を実現した「早戸温泉つるの湯復興プロジェクト」、他にも東京デザイナーブロック・セントラルイースト等が挙げられる。

さまざまなプロジェクトを見て印象に残ったのは、「まちは変わっていく」ということ。

そんな橘さんの根本には、「エリアの魅力を高めることで、そこにある施設の価値も高まる」という考えがある。

だからこそ中野においても、地域を巻き込んだ施設のあり方を提案することとなった。

PODが会社として目指していることがある。それは、まちづくりや事業づくりの分野において、プロデューサー業を根づかせること。

プロデューサーとは、どういう仕事なのだろう。

「この分野では目標設定や収支面があいまいな事業が多いです。かっこいい建物、デザインをつくるところで終わってしまうんですね。でも、本当に大事なのはその先です。事業として成り立つ仕組みをつくり、一本立ちを見届けるのがプロデューサーです。」

中野においては、地域の人とともに行うさまざまなイベントを通して、施設のブランディングを高めていくことが求められる。

企画のもとになる地域の魅力は、どのように見つけるのでしょうか。

「そもそもの話になりますが、PODの原点は、自分たちがまちを楽しみたいという思いです。まちをぶらぶらして遊ぶのが好きなんです。」

中野を歩いていると、飲屋街をおじいちゃんが孫の手をひいて歩く姿が目についた。そこで「家族で行ける個室のある居酒屋が喜ばれるんじゃないか」と仮説を立て、検証をする。

「検証と言うと聞こえはいいけれど、要は居酒屋で飲んでいるんです(笑)。飲みながら様子を見ている。すると実際に家族連れが多いことがわかります。」

他にも、駅から遠いのにどうしてこの店はにぎわっているんだろう。神河さんと橘さんは、そうした検証を日常的に楽しみながらしているそう。

「セントラルパークでは探検隊という企画も立てています。働く人をつのって、中野で飲むんです(笑)。最初は予算をつけて、次第に自主的な集まりになればいいと思います。」

働き方についてもうかがう。

神河さん、橘さんは基本的に銀座の事務所にいるけれど、少なくとも週に1度は中野で直接打ち合わせる。また、普段はSkypeで常にコンタクトがとれる状態になっている。
「今までにこういう仕事はなかったので、最初のうちは不安かもしれません。ただ、もちろん仕事の相談には乗っていきます。わからないことがあれば教えるので心配はしないで大丈夫です。」

自由度が高いので、自立や自己管理が求められる仕事だと思う。自分から積極的に神河さん、橘さんにコンタクトをとるような姿勢も大事になる。

また、手を挙げれば、仕事の幅は広げていけるとのこと。

「今我々が行っている、区に提出する行政用の資料や、入居企業の取締役へのプレゼン資料作成といった仕事もあります。将来的にプロデューサーを目指すことも考えられると思います。」

どんな人と仕事がしたいでしょうか。

「長く楽しくやっていける仲間がほしいです。上司と部下や、雇う雇われるという関係ではなく、お互いに自立したパートナーですよね。長い目で、地域と一体になって中野を盛り上げていきましょう。」

「我々と一緒に、中野というまちを好きになってほしい。本当に面白いところです。色々なまちを見てきましたが、お勧めできます。」

ある日中野で飲んでいると、仲良くなった隣の席のお客さんがこんなことを言った。「中野は東京のいなかなんだよね。」ここは、どこか温かいまちだと思います。

これから働く人は、中野のまちを歩くと色々なところで声をかけられたり、挨拶するようになるんじゃないかな。

地域に根ざし、つながりのある仕事がしたいけれど、どうしたらよいかわからなかった。ここでならひょっとしたら。そう感じた人がいると思います。ぜひ、PODのお二人に会いに行ってほしいです。
いつか中野で一緒に飲めたらいいですね。(2012/12/26 はじめup)