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食を解放する

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

金沢を訪れたら、必ず立ち寄るお店がある。a.k.a.[atelier kitchen for artisan]は、料理職人のためのアトリエ型キッチン。a.k.a.と書いて「アーカ」と読みます。

このお店で美味しいものを食べていると、なんだか嬉しくなる。一人でふらりと訪れても誰かに会ったりするし、何よりも働いている人たちに会いに行きたいと思うお店。

a.k.a.では新しいスタッフを募集しています。将来、お店を任せることができるような料理人と女将さんになるような人。「料理の世界で生きていきたい」「自分の居場所をつくりたい」と考えているなら、一度味わってもらいたい場所です。

小松空港に着陸した飛行機を降りて、バスに乗り込もうとしたところに、小津さんが声をかけてくれた。空港まで迎えに来ていただいたようだ。

小津さんはa.k.a. のオーナーであり、studioKOZ.という設計事務所や金沢R不動産などの事業をしている方。東京を拠点にしていたが、最近地元である金沢に戻ってきた。

車内で金沢の街について話をする。2年後には長野新幹線が金沢まで延伸し、東京まで2時間半かからなくなるそうだ。さらにもっと先の未来には京都まで新幹線がつながる予定。

2004年にオープンした21世紀美術館には、相変わらず多くの人が訪れているし、近江町市場には新鮮な北陸の魚であふれている。a.k.a.の姉妹店である嗜季のある主計町(かずえまち)などの茶屋町を歩けば、古き良き町並みにほっとしながら、ちょっと背伸びした気持ちになる。

最近は街のあちこちにレンタサイクルもできたし、首都圏から移住してくるクリエイターやセカンドハウスを持つ人が増えていて、a.k.a.はそういった人たちのたまり場にもなっているそうだ。

a.k.a.があるのは、金沢の繁華街である香林坊から一歩入った路地。店内に入るとまず目に飛び込んでくるのが、木のカウンターに囲まれた広いオープンキッチン。

今井さん、通称ゴリさんと目が合うと声をかけてくれた。32歳で、僕と同い年。近江町市場などの買い出しから戻って、仕込みをしている最中だったと思う。

今月のコースメニューは、先附が加賀太胡瓜と丸茄子。前菜に新じゃがのへしこ煮っころがしや、谷中生姜のつくねフライなど。焼物として能登豚、筍、空豆の松前焼きとのこと。

今井さんに、金沢という街で生きることはどういうものなのか聞いてみる。

「居心地よいですよ。僕はずっと金沢なので分からないですけど、やっぱりたまに東京とか遊びに行くとすごく疲れます。流れが速いというか。」

「料理人としてもすごくいい街だと思います。まず食材がいい。例えば京都だったら野菜はあるけど魚は入ってこなかったり。あとは夏の海水浴場も気持ちいいし、冬はスキーもできる。かわいい子も多いみたいですよ(笑)」

たしかに金沢って、素敵な街だよな。バランスがいいというか。ちょうどいい大きさだし、なんだか街全体がリラックスしている感じ。それでいて歴史も文化もあるし、魅力的なお店も多い。そしてこれから大きく変化していく兆しもある。もしこの地に生まれ育ったら、いい青春を過ごせただろうな。

カウンターに座って、あらためて今井さんに話を聞いてみる。まずはなぜa.k.a.で働くことになったのか。

もともとは実家がお寿司屋さんだったので、「なんとなく」料理の世界へ進んだそうだ。

「どうやって早く仕事終わらせて遊ぼうかとか、そういうことしか考えてなかったですよ。なんとなく仕事をしていて。なんとなくお店持てたらいいな、とかそんな感覚だったので、人生なめていました。」

いくつかの飲食店を経験したあとに、挫折してしまうような出来事があった。それからしばらく料理の世界から離れることになるのだけれど、仕事が本当につまらなかった。

「あらためて料理やりたいなって思ったんです。そのとき初めて真剣に考えた。それで、たまたま今のa.k.a.に来たことがあって。おしゃれだし、かっこいいお店だと思って電話したら、面接してくれて採用されました。」

働きはじめてから印象的だったことはありますか。

「やっぱりみんな真剣なんだなと。端から見る料理人の世界って華やかなように見えて、すごくみなさん努力している。」

働きはじめてから京都の枝魯枝魯とコラボレーションすることになったのも大きな転機となった。

枝魯枝魯は京都にある「くずし割烹」のお店。代表の枝國さんは、京都店を任せて、今はパリのお店で働いている。同じ料理は出さない、というコンセプトがあり、それはa.k.a.にも引き継がれている。

「枝魯枝魯と出会ってから、やっぱり何かが変わっていきましたね。そこでまた人生真面目に生きようとあらためて思いました。」

どんなところで変わったんですか。

「料理に対する姿勢です。ほんとに人生賭けているんだなって。自分だけじゃなくてスタッフの人生も背負って一生懸命、愛を持ってやっている。」

「そのやり方がまたなんというか、僕の知っている料理のやり方とは全く違っていて。古いことに囚われていないというか、すごく柔軟なんですね。何かを切り開いていこうとしている。常に挑戦しているんですね。だから料理も、一度つくったメニューは二度とつくらないし。まあ、アーティストが同じ曲をつくらないということと同じですよ。」

料理をいただくと実感する。しっかりした割烹を食べているようでいて、はじめて経験するような味が口の中に広がる。おいしいし、うれしくなる。

仕事に対する姿勢というか関わり方が違うだけで、カウンターに座っている人が受けとる「何か」が変わってくる。一体どういうことなんだろう。

「僕が思うのは、うちのお店って自由なんですよ。」

自由?

「小津も、ああせいこうせい、こんな料理つくれって言わないで僕らに任せてくれるんです。自由にやらせてもらっている。でも、それはすごいんですよ。ラッキーなんですよ。実験させてもらっている。色々試せますし。でもその分、責任感も伴ってくる。」

今井さんは雇われている身なのだけれど、a.k.a.のカウンターに座っていると、今井さんのお店のように感じる。

「設計事務所も一緒ですよね?独立したい人間の方が伸びるし。」

なるほど。将来は独立したいですか?

「今はそういう風に思っていないですね。ここで働いていたら新しい店をつくるときに資金出してくれるかもしれないし(笑)、その方がいいやと思って。やりたいことが大きかったら、一人だとできることは限られてくるじゃないですか。でもこの場所なら、僕のやりたいことに少しでも近づける気がします。」

一方、となりで働いている岡川さん、通称ポン太さんは、独立願望の高い方だ。将来は独立する、と堂々と宣言している。単なるビッグマウスでないことは、言葉から伝わってくる。

岡川さんもまた、a.k.a.に出会ったことで多くのことに気がついたそうだ。

「友達とはじめて来たときに、料理ってこんなに広がれるんだ、って思いました。ただ和食をつくっているんじゃなくて、こんな調理法があるんだ、なにしてもいいんだって。こういう発想って自分にはなかったと思って。自分の中の次が開けたように感じたんです。」

たしかにa.k.a.はクリエイティヴな感じがする。料理自体もそうだし、器だったり、空間だったり。いろいろなイベントも企画しているし。

やり過ぎているような感じもないから、はじめて来たお客さんが入れる余白もある。ちょうどいい。

「僕は独立したいって気持ちがずーっとあるので、その過程の中でここのお店は絶対に通りたいと思って。得たいものがすごくいっぱいあるから。」

経営者のようにお金の動きを考える機会もあるそうだし、あらゆる経験が積めそうだ。どういう人が合っているのか聞いてみる。

「本当に自分が何をしたいのか分かっている人。目標があるとか。まあ、なくてもいいんですけど、何かに熱くなりたいとか、そういうのを求めている人にはいいかもしれないです。刺激がすごくあるところなので。」

そこに今井さん。

「普通にキッチンに立っているだけでも感じることはあるので、まずは感じてほしいなと思います。なぜそういうことがあるのかというと、カウンターを通して人を見ているからでしょうね。目の前の人に評価されるし、それを感じることができる。あと料理の経験がなくても、このお店に共感できたらいいですよ。」

a.k.a.をあとにして、姉妹店である嗜季も訪ねてみた。こちらは個室でゆっくりと季節を嗜む、茶房。すっかり暗くなった浅野川沿いに軒を連ねるお茶屋の中にある。灯りがぼんやりと浮かんで風情がある。

嗜季は物件に縁があり、いろいろな方々の協力もあって、去年の1月にオープンした。

このお店を一人で切り盛りしているのが長枝さん。以前はa.k.a.にいらっしゃった方だ。どういう想いで、嗜季をはじめたのか長枝さんに聞いてみる。

「どんなものが好きで何が飲みたいとか、そういうことを一人ひとりのお客さんに合わせてやりたいな、と思っていたんです。ホテルで働いていたときから思っていたのですが、敷居を高くしないでやりたかった。」

一人ひとりに寄り添うサービス。それはa.k.a.にも通じるかもしれないけれど、嗜季はより長枝さんの世界になっている。

「このお店も金沢のお茶屋さんと同じように、はじめは勇気要る人が多いらしいです。」

たしかに日が暮れると、襟を正すような雰囲気が町に漂ってくる。それでも長枝さんのことを知っているから、お店に入って顔を見たらほっとする。

「サービスも肩肘張ったものではなくて、いつも通りの会話をしたり。そういった雰囲気とか、あとは自分ありきのサービスなのかな。お客さんも楽しめる空間をつくるというのが、私も楽しいんです。」

お客さんが楽しいのが楽しい。

「そうですね。人を楽しくすることで自分が楽しいって、一番楽しくないですか?だから一緒に働く人は、人のことが好きだったらいいと思うんです。」

働き続ければ、自立して働くことができる場所だと思う。

ここで働くことを想像してみる。

まずはa.k.a.で一から働くことになる。言われたことをしっかりやっていく。はじめは大変かもしれない。でも目標となるような、いい先輩たちもいる。一つひとつ続けていけばお店にも金沢の街にも自分の居場所ができると思う。

まずはカウンターに座ってみてください。それから考えても遅くないです。(2012/12/26up ケンタ)