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ネット通販の仕事、と聞いて最初にイメージしたのは、お客さんの顔が見えなかったりメーカーの声が聞きにくかったりするのではないかな、ということ。クリックひとつで商品が買えてしまうから、なんとなく、中で人がどう関わりあっているのか想像がつかなかった。でも、実際に話を聞いてみたら、思っていたものと全然違いました。デザインする人、生産する人、販売する人、購入する人、服に関わる全ての人を丁寧に繋げている。そんな仕事がありました。
今回は、コーディネーターのような役割で、企画、営業、仕入れ等を担当するMD・バイヤーの仕事の募集です。
募集するのは、インターネットで「ファッションeコマース」を展開している宝島ワンダーネット。その中でも特に人気の運営サイト、ナチュランで働く人を探しています。
ナチュランの商品選びの基準は、カジュアルだけど女性らしい「大人ナチュラル」な雰囲気のもの。ベスト、ブラウス、ズボン、スカート、どれもシンプルなデザインで、素材にもこだわっている。激安!お買い得!というような売り方ではなく、ちゃんと考えてこだわって服を選ぶ人のために、実用的な提案をしているサイトのように思う。
サイトに掲載される商品たちは、四ツ谷駅と市ヶ谷駅の間にあるスタジオで撮影されている。そこにお邪魔して、ナチュランのMD・バイヤーとして働く新田さんに話を伺った。
初めてナチュランを見たときは、てっきり女性がつくっているサイトだと思ったけど、新田さんが男性だったので驚いた。
「ナチュランは女性向けのサイトですが、バイヤーに男女は関係ありません。トレンドや女性的な感性を意識しながらセレクトしています。」
新田さんはどうしてこの会社に入ったんですか?
「もともとメンズの服を扱うお店で働いていたんですけど、ファッション市場の8割はレディースが占めているので、そこに可能性を感じました。洋服の種類も多いし、女性がもっとこうしたらかわいいのに、綺麗なのに、という想いがだんだん強くなっていったんです。」
レディースがやりたいという想いとともに、将来は自分のセレクトショップを開きたいという夢もあった。だから、販売の次はバイヤー業務を勉強しようと考えた。でも、バイヤーの募集を探しても、なかなか見つからない。そこに偶然この会社の仕事を見つけて、チャンスだと思って応募した。
それまでは通販なんて使ったこともなかったし、ケータイやネットで服を買うなんてありえない、と思っていたという新田さん。何も知らずに飛びこんだeコマースの世界で、最初は戸惑うことも多かった。
「それまではずっと販売員として店頭に立って、いらっしゃるお客様相手にやってきたので、取引先であるメーカー相手のビジネスは初めてだったんです。なので、ビジネススキルを身につけるのが大変でした。」
メーカー側の立場からすれば、商品在庫を持つのはリスクとなるから、在庫を持つのを控えたい。でも、ナチュランに掲載する商品は、なんとか在庫を確保しておいて欲しい。その交渉が、eコマースの営業で一番難しいところ。でも、メーカーにとって、今までとは違った新しいお客様との接点をつくってあげられることがナチュランの強みだから、そこをアピールしながら、いい商品をたくさん仕入れるために営業先を回っている。
抱えている取引先の数が多いため、事後処理も多くなる。タフな精神と体力が求められる仕事だと思う。
とはいえ、服好きにはたまらないのが「展示会」。
展示会は、ファッションブランドが店の人やバイヤーを呼んで製品を見せる機会のこと。ここに足を運べば、新商品や話題のデザインを一度に沢山みることができる。
通常は春夏・秋冬の2回なのだけど、定番商品に新作を混ぜながら、こまめに展示会をするブランドもあれば、沢山のブランドが合同で開催する場合もある。だから、バイヤーは月の半分ほどは展示会に行くことになる。
「先々週なんて、火、水、木、金が丸一日展示会まわりでした。1日6社ほどズバーッと予定を入れて回りまくって、足ふらふらになって帰ってきましたよ。沢山の洋服の中から、自分がピックアップするものはどれなのかを考えなければいけないので、頭の中で戦略を立てながらチェックしています。」
服を選ぶとき、どんな戦略を考えるんですか?
「デザイン的には、結構似たようなものが多かったりするんです。そこで何が違ってくるかというと、例えば、このメーカーは国内の工場でつくっているから、海外で同じようなものをつくっているところよりも追加生産してもらいやすいな、ということ。つくる過程の部分も判断軸になるので、メーカーがどこでどうやって生産しているか、という知識も頭の中に入れておかないといけないんですね。」
あとはやっぱり、基本はお客さま目線。二の腕が気になる人のために、アームホールが広いか狭いかなど、シルエットを考えたりもするそうだ。
ただ自分の好きな洋服を選ぶのではなく、メーカーサイドの事情を踏まえ、お客さまの元に届いて実際に着るところまで想像しながら選んでいく。普段、かわいいな〜、素敵だな〜とぼんやり眺めている洋服たちが、こんなに厳しいチェックをくぐり抜けているなんて!
「沢山の洋服を見ると、洋服疲れしてしまいます。洋服としてだんだん見られなくなってきて、そこのバランスをとるのが難しいんですよ…。でも、そこに自分の趣味を少しでも入れていかないと楽しくないので、バランスの中にちょっとずつ自分の味を出していくのが、大変ですが楽しいことでもあります。」
商品が持つ柔らかいイメージとのギャップを知らずにこの会社に入ってくる人は、辞めてしまうこともあるそうだ。
新田さん自身は、レディースがやりたくてこの会社に入ったのに、結局最初の4年半はメンズを担当することになった。でも、辞めようとは思わなかったそうだ。
「なぜならその4年半の間は、自分がやりたいことと、目の前にある仕事とのギャップを埋めていくことに、とにかく必死だったんです。まずは目の前の仕事に全力で取り組んで、経験値を上げていきました。そしたらだんだん、周りから信頼してもらえるようになってきた。そこではじめて『レディースをやらせてください』とお願いしたら、希望していたナチュランを任されることになったんです。」
「多くの人は入ってきたときに、『やりたいことと』と『やらなければいけないこと』のギャップに対応できないのだと思います。でも、『やりたいことと』をするためには、まずは『やらなければいけないこと』を乗り越えなければいけないんじゃないかな。そのギャップを埋められる要素を、自分の中で生み出すことができれば、長く付き合えるような仕事ができると思います。」
どんなに想像を巡らせても、入ってみないと本当の仕事は分からない。だから、入る前と後のギャップを、自分で埋めていける人がいい。
「ただ、好きなことも意外とできるぞ、ってことが言いたいですね。最初からはダメですけど。好きなものを売りたい!ではなく、ちゃんと相手を捉えたビジネスとして考える。その上で好きなことをすると、意外とできてしまったりします。」
「僕は、ナチュランの担当になってから、好きな作り手に会えて、好きなプロダクトが見られて、どんどん好きなアイテムを提案することができています。作り手側が無理せず仕上げられるスケジュールで、無理な値切りをせず、ちゃんと対価を払うこと。さらにお客様にも満足してもらえるようにすること。そして、そこに自分のエッセンスも入れていく。それがすごくやりがいがありますね。」
商売だから、数字や成果も気にしなければいけないけれど、結局は、人の間に立つ「人対人」の仕事。それは、お客様と直接顔を合わせないインターネットでも同じこと。
「うちは比較的eコマースの黎明期からネット通販をやっているのですが、今はネット通販がすごく増えていますよね。中には『返品オールオッケーです』というところもあるけど、それだと結局、他のどこかにリスクがいくんですよ。お客様へのサービスをどんどん良くしていくと、メーカーの方にしわ寄せがいってしまう。お客様が最上級というのは基本的には間違っていないのですが、全体を良くしていかないと継続的なビジネスにはならないと思うんです。」
メーカーや工場ばかりが努力するのではだめ。みんなが幸せになる方法を、インターネットを使ったビジネスで考えていく。
「ナチュランは、巨大なマーケットを目指すというよりは、ひとつずつ丁寧に目の前のことをやっていく方が、肌に合っているのではないかと思います。社内の他の事業部と一緒に何かをやってもいいかもしれないし、宝島ワンダーネットでしかできない強みを生かせればいいかな。」
どんな人に来てほしいですか?
「アイデアがある人がいいですね。常に新しいことを考えていると、会話に出てくるじゃないですか。今、みんな目の前の仕事を回すことに労力を使っているので、なかなか考えている暇がないんです。ただ仕事をこなすのではなく、アイデアを持って発信できる人。面白くて整合性があって、ビジネスになるものだったら、けっこう採用してくれる会社なので、実現できると思います。」
「あと、へこむことも多いので、楽観的な人がいいかな。僕はけっこうそうなんですけど、自分が手がけた企画が失敗してしまっても、しょうがないじゃん、売れると思ったんだよ!という、それぐらいの切り替えでやっていたりもするので。その分を取り返す努力をすればいいと思っています。」
あとやっぱり、ナチュランで扱っているような服のコンセプトに共感できる人がいいと思う。マーケティングだけではなく、好きだからこそ分かる「これだ!」という勘にも、新田さんは期待している。
服が好きなだけでは続かないけど、服が好きじゃないと続かない。そんな仕事だと思います。まずはナチュランのサイトを覗いてみてください。(2012/12/19up ナナコ)