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今回は、会社ではなく個人のもとで働く人の募集です。経営者でありプロデューサーである団遊(だん・あそぶ)さんのパートナー&アシスタントを探しています。
団遊さんについて、一緒に働くスタッフさんに聞いてみると、「落語家みたい」という答えがかえってきたけれど、まさにその通りだと思う。とにかく話が面白い。
団さんは、そんな自分のキャラクターを看板にして、自由自在に、遊ぶように仕事をしているように見える。

団さんがいちばん大切にしているのは「人」であって、事業そのものではない。その姿勢に共感して、一緒にプロジェクトの形をつくっていけるような人に来てほしいと思います。
東京・港区の住宅街のなかにある、団さんのオフィスに伺った。一軒家を改装した建物の1階には「ea(エア)」というデザイン会社、2階には「アソブロック」というプロデュース会社が入っている。
両方とも、団さんが設立した会社。だから団さんは、ここで作業や打ち合わせをすることが多い。新しく入る人も、ここで仕事をする可能性が高いと思う。
畳の応接室で待つこと数分。団さんがやってきた。

団遊(だん・あそぶ)は、本名ですか?
「本名なんですよ。『長男だからよく遊べ』と、親がつけてくれた名前です。学生時代なんかは、この名前のせいでからかわれて酷い目に合わされましたよ。社会人になってからも、『日本は長いんですか?』って中国人と間違えられたり、書類に記名するときに『名前は本名で書いてください』と言われたり。名前の話なら、それだけで一時間は話せるんちゃいます?とにかく色々なことがありますねぇ。」
ほかにも、名前にまつわる逸話を沢山教えてもらった。
学生時代は苦しまされた名前だけれど、今はむしろその逆。「団遊」という名前自体がブランドになり、仕事の受付口にもなっている。
そうだ、団遊に頼もう!そんな風に日々依頼がやってきて、プロジェクトが立ち上がる。団さんのまわりにはいつも、面白いことが同時進行中。
「色々やってるね、また何か新しいことはじめたね、とよく言われるんだけど、それはちょっと誤解があるんですよ。というのも、僕は事業自体には何も思い入れがないんです。プロジェクトがなくなっても、明日会社が倒産したとしても、どうでもいい。それは、事業ではなく、人との関係性に思い入れがあるからなんですね。相手にとって良いことをしたい。本当にそれだけなんです。」
例えば、「ホンブロック」という出版社を立ち上げたのは、メッセージを伝えたい人がいるから。はちみつブランド「8bees」を立ち上げたのは、国内の養蜂家たちの活動を広げるため。

こういう「人」に根ざした仕事のやり方は、どんな風に生まれたのだろう。団遊というブランドはどうやってできたのだろう。
団さんが、大学時代に遡って話をしてくれた。
「スキーのデモンストレーターになりたかったんだけど、大怪我をして挫折したんです。今度は小説家になろうと思ったけど、文学賞にことごとく落選してそれも挫折。そんなときコンビニで雑誌を読んでいたら、ライターという仕事があることを知ったんです。文章でお金がもらえるならやりたい!そう思って、大阪中の出版社を回り、自分を売り込みました。」
ある出版社に面白がられ、出入りさせてもらうようになる。そこで虎視眈々とチャンスを狙い続けた。そしてついに、原稿を任されることになる。
そこからは早かった。瞬く間に、団さんは売れっ子ライターになる。
「関西の全ての媒体で仕事をしてました。23歳からはじめて2〜3年で年収1000万になり、25歳で編集会社を立ち上げました。」
嘘のような本当の話。そうして雑誌編集の世界でのし上がった(?)団さんだけれど、あるときまた、転機がやってくる。
「出版不況がやってきて、出版社がお金の話ばかりするようになったんですよ。つまらんな〜と思ったとき、これから面白いのは、世の中の編集なんじゃないか?と思ったんです。豊かで色々なものが揃っていて、みんなが生き方を考えるような時代。今は世の中を整理するタイミングなんじゃないかって。」
そう思い立った団さんは、「出版社とは仕事をしない編集会社」を立ち上げた。記事を一切書かない代りに、実際のヒト、モノ、コトを編集していく「アソブロック」が誕生する。
団さんの頭のなかでは、雑誌の編集も世の中の編集もつながっていたのだけれど、一般的に見れば、まったく畑違いの業種。最初は仕事がない状態が続いた。
ところがそのうち、人づてに相談がくるようになる。最初は、無償で依頼を受けていた。それがあるときお金を貰えるようになり、仕事になっていった。
もちろん、成功には団さんの人柄の力も大きいと思う。でも、やっぱりひとつひとつの依頼に全力で応えていったことが、結果的に実を結んだのだと思う。

具体的には、どんな仕事になるんでしょうか?
「その人がやってみたいことを仕事にしてほしい。出版に興味のある人は出版だし、不動産、施設運営、ブランドづくりに興味のある人だったらそれもできる。ある程度キャリアがある人には、そんな提案をすると思います。若手だったら、まずは言われたことをやってもらうかたちになるんかな。その人を見て、その人に合ったものを一緒に探していきたいと思います。」
例えば、どんな人がいいですか?
「面談を通じて、こいつやったら一丁前になるまで育てたいと思える人。僕がそいつを好きになるかどうかが結構大事ですね。生意気で自分の頭で考えられる人なら、僕と合うと思う。『行動力のある哲学家』ですね。座っている哲学家は嫌いだし、考えるより動くタイプです!というのも駄目。ちょうどよく、考えながらも動ける人が好きです。」
あとはやっぱり、団さんに興味がある人がいいと思う。大好き!という盲目的な感じは良くないし、むしろ嫌いでもいいそうだ。ただ、団さんと一緒に仕事をしたいと心底思えること。その気持ちがないと、はじまらないと思う。
団さんに話を聞いたあとは、団さんと一緒に仕事をしている人たちにも話を聞いてみた。
まずお話を伺ったのは、安井さん。アソブロックのプロデューサーとして、企業の組織や採用にかかわるプロジェクトを担当している。

「団は完全な編集者タイプ。人やモノをつなげるのが上手いんです。組み合わせたり、整理整頓する。発明者というよりは編集者という感じがしますね。自分は、そういう編集の領域を学んで仕事の幅を広げたいと思って、ここに来ました。」
実際、団さんとお仕事をしてどうですか?
「放置ですよ。アドバイスを求めれば教えてくれるけど、基本的に好きなようにやったら?というスタンスですね。ミーティングは月に2回しかありません。それが苦しい人は苦しいし、楽しい人は楽しいと思います。」
安井さんが、最近会社でキーワードになっている言葉を教えてくれた。それは、「一致団結しない」というもの。
「ひとりひとりが自分の名前で仕事できるように、団結しないで自由にやろう、という考え方ですね。団結していたら、役割分担するから仕事が細分化されてしまうじゃないですか。チームワークに頼りすぎてはいけないという意味も込めています。」
会社のメンバーそれぞれが、お互いに知らないまま進んでいるプロジェクトもたくさんある。忙しい団さんと話す時間も、なかなかとれない。
でも、みんな根っこの部分で共通の感覚をもっているから、アウトプットがブレないのだと思う。もし信頼してなかったら、逐一全てチェックして、ルールで縛ってしまう気がする。丸投げしているのは、信頼し合っている証なんじゃないかな。もともと心がひとつだから、あえて団結する必要がないというか。

逆に、自分でなんでもやりたいタイプの人には、もってこいの環境だと思う。ここでなら、興味の幅を限定せずに色々なことができる。「これ以上自由があるとは思えないほど自由です」と、安井さんも話していた。
次に、団さんと一緒にデザイン会社「ea(エア)」を立ち上げた、グラフィックデザイナーのセキユリヲさんに話を聞いた。

団さんとの出会いを伺ってみる。
「フリーランスで仕事をしていたのですが、わたしが苦手なお金の交渉とか営業とか、そういうことをやってくれる仕事上のパートナーを探していたら、ちょうど出会ったんです。団遊は、わたしにはないものを持っているんですよね。人との関係に長けている人だと思います。」
セキさんの得意分野と団さんの得意分野が全く違うところにあるからこそ、eaという会社が成り立っているのかもしれない。

人に対する考え方、ですか。
「団遊は、一緒に働く人に対して細かいことは言わない。ただその人が成長できればそれでいいと思っていると思います。わたしも割とそうなんです。自分のアシスタントを手足のように動かしたいのではなく、仲間だから、その人が大きくなることを望んでいます。そこは団遊と同じなんだよね。」
安井さんとセキさんの話のなかには、団さんが言っていたことと重なることが何度もあった。団さんと、団さんと一緒に働く人たちの関係がとても自由なのは、考え方の根っこが同じだからなのだと思う。団さんの謎がひとつ解けた気がして嬉しかった。
最後に、団さんが言っていた印象的な言葉を紹介します。
「入る人は、所属がアソブロックになるかeaになるか、どういうかたちになるか分からない。でも、どこに属してどんなことをしたとしても、『団遊と会えて良かった』と言われたいと思います。事業の成功・失敗よりも、一緒に働くスタッフ自身の成長に繋がっているかどうかが、一番大切なんです。嫌いな人にはそんなこと思えない。売り上げマシーンのように働かせてしまう気がするな。だからこそ、本当に好きな人と一緒に働きたいと思います。」(2013/1/16 ナナコup)