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油の先に

※日本仕事百貨での募集は終了いたしました。再度募集されたときにお知らせをご希望の方は、ページ下部よりご登録ください。

過去にも何度か掲載をさせていただいている、TOKYO油田を運営する㈱ユーズで求人をします。今回はエコディネーター、営業、イベント運営スタッフ、事務とさまざまな職種での募集です。

ユーズでは、“TOKYO油田2017”というリサイクルプロジェクトを立ち上げている。根本にある考え方は、東京都の家庭や飲食店で調理時に使用された油(廃食油)を“ゴミ”ではなく、“資源”としてとらえるというもの。約1,300万人が住む東京を廃食油の一大産出地、つまり油田として、採掘をすすめていく。回収された廃食油は、適切な処理をすることで、VDFと呼ばれるディーゼル車用の燃料や家畜の飼料、畑の肥料、石けんにキャンドルとして再資源化される。

TOKYO油田の仕事内容は、一般的には廃食油回収業に区分される。けれど、ユーズには、この業界の常識を打ち破っていく大きなビジョンがあるように感じられる。

その正体が知りたくて、東日本橋のオフィスにうかがいました。

オフィス内を見回すと、壁には代表・染谷さんの記事が貼られている。雑誌や新聞だけでなく、HeraldやTIMEといった海外メディアでも大きく取り上げられているようだ。TVに出演することもしばしばある。

染谷さんが見えたので、早速話をうかがう。

「私たちは社会の役に立ちながらビジネスを成り立たせる、今で言うところのソーシャルビジネスに油の分野で20年間取り組んできたんですね。社会的評価がやっと追いついてきたように感じています。」

「メディアで取り上げられることもあり、華やかなイメージを持たれがちですが、実際の日々の仕事はコツコツと地道に積み重ねていくものが大きいんですね。そのギャップでやめていく人もいます。でも、道がないところを切り開いているわけですから。その一歩がないと目標は実現できません。」

染谷さんの話は、他の仕事にも共通することだと思う。

続けていくためにはどういったことが必要でしょうか。

「自分のなかに軸を持っていることです。社員の経歴を見るとわかりますが、全くの畑違いからの転職が多いんです。入社時点での専門性や経験よりも、環境の仕事をするんだという意志をしっかりと持っていることが大切です。」

TOKYO油田の現場と言えるのが、飲食店や家庭をトラックで回り廃食油を回収する“エコディネーター” の仕事だ。エコディネーターは、エコとコーディネーターを組み合わせた染谷さんの造語。名前の由来を聞いてみる。

「私たちはただ廃食油を回収するだけの仕事、と見られることが多くて。でも、違うんですよ。」

違う?

「社員には、自分たちを回収業者だと思っちゃダメだよと伝えています。TOKYO油田は、お客さまのエコ活動のアピールもお手伝いします。そうした説明もエコディネーターの大切な役割なんです。」

たとえばあるレストランでは、次のようなことを行った。回収した廃食油をもとにTOKYO油田で薬用ハンドソープをつくり、洗面所に置いてもらうことにした。取り組みにより、エコに配慮した店であることを、食事に来た方にPRできるようになった。

実際に回収の仕事をしている藤原さんに話を聞いてみる。藤原さんの前職は、IT関係。相手の顔が直接見える仕事がしたいと思い、去年の4月に仕事百貨経由で入社した。

実際に働いてみてどうでしょうか。

「1日に20〜30ヶ所のお客さまを回ります。出社が7時と早いことや、油の入った一斗缶を持ち運ぶとか、体力的に大変な仕事という面はありますが、ポイントはそこではないと思うんです。もし“トラックドライバーの募集”だったら応募しませんでした。」

「現場に接するなか、日々のコミュニケーションや達成感は結構ありますよ。ご苦労様、ありがとう、来てくれてよかったと言っていただいたり。回収先でパンやコーヒーをいただくこともあります。忙しいときは素直にうれしいですね(笑)。けれどいまは、そうした日々の達成感の先にあるものが見たくて。それが何かを、今まさに模索しているところです。」

藤原さんは、回収先にTOKYO油田の思いをていねいに伝える方法を模索中なのかもしれない。現場の仕事に慣れることに精一杯で8カ月が過ぎ、まだ十分には取り組めていないそうだ。

エコディネーターには、回収先を新規開拓する仕事もある。新規開拓のほとんどは、運転中に街で呼び止められり、トラックを見かけたという問い合わせから。まさに「走る広告塔」と言えるだろう。

お問い合わせをいただいても、成約するとは限らない。取り組みには賛同しても、有料だとわかり、渋い顔をされることもあるそうだ。

そうしたときは、どのように納得してもらうのでしょうか?

「責任を持って適切に処理する対価だとお話しします。なかには無料で引き取る業者もあるんですね。ただ、それではきちんと処理されたのか、廃棄されてしまったのか、引き取り後の行方がわかりません。あくまでも私たちが目指すのは、廃食油が資源として認識される、循環型の社会のあり方を築いていきたいということなんです。」

エコディネーターについては、今後新たな取り組みも考えているそうで、染谷さんはこんな話をしてくれた。

「“女子部”をつくれないかなと思っているんですよ。創業当時は、私がトラックに乗って回収をしていたんです。厨房の人もけっこうかわいがってくれてね(笑)。」

たしかに、最近では配送業の女性ドライバーを目にする機会も増えた。気になる体力面については、希望者次第でやり方を考えていきたいとのこと。

また、 “外国人部”も結成したいそう。

その背景には、日本社会を一緒に変えていきたいと考える外国出身の方が増えていることがあるという。

また染谷さんには、さまざまな人が従事することで、職業に対する認識を変えていきたいという思いもある。ゴミ回収や廃食油回収は必要な仕事だが、日本ではどことなく暗いイメージをもたれがちだと言う。

「誇りを持って仕事をしてほしいんですよ。環境問題解決のカギをにぎるのは何と言っても現場。その職業が、みんなが憧れるようなものにならなければ、問題は解決されないと思うんです。理想にはまだ遠いけれど、一緒に考えていきたいです。」

たしかに、仕事の結果としての循環型社会には大きな意義があるけれど、日々どのように働くかということも大事だと思う。職業観を変えていくには、会社の取り組みに加えて、エコディネーター一人一人の、回収先とのかかわり方に依るところも大きいだろう。

「エコディネーターには、まずは油の回収がきちんとできるようになってほしい。そうしてお客さまとの信頼関係を築くことではじめて、廃食油や回収業に対する認識を変える仕事の入口に立つことができるんです。」

また、回収の方法も変化しつつある。

「今は2tトラックで回収していますが、今後はトラックを逆に小さくしていこうと思っています。自分たちでガンガン集めるだけではなくて、油が集まる社会の仕組みをつくっていきたいんです。」

その取り組みの一つが回収ステーション。TOKYO油田の取り組みに賛同してくださった方が、有償の会員となり、地域の油を回収するスポットとなる。地域の人たちは、ペットボトルなどに自宅から出た廃食油をつめて、ステーションに持ち寄る。

人や社会のための活動を通して自分が豊かになっていく。そうした発想の人たちがこのシステムを支えているとのこと。回収を通して、地域のかかわりも生まれてくるそうだ。

回収ステーションについては、TVや新聞、あるいは染谷さんの講演会をきっかけとして、さまざまな方から問い合わせをいただくと言う。

まずは、廃食油がゴミではなく資源であると知ることが大切だと思う。

営業・環境イベントの仕事はどういったものだろう。

営業の河合さんに話をうかがう。前職は証券会社の営業。環境にかかわる仕事がしたいと思い、生活に身近な油の問題に取り組むユーズに入社した。

「仕事はとても幅広いです。イベントにエコの要素を加える手伝いをしたり、飲食店に油の再資源化の提案をしたり、広報やプレス対応もあります。エコ教室の先生にもなれば、廃食油をリサイクルした石けん“下町娘”を東京スカイツリーのオープンに合わせて商品開発したこともあります。」

エコ教室では、行政からの依頼や回収ステーションのカフェ、ときには学園祭といった場で、廃食油からキャンドルをつくっている。

また最近携わったイベントとしては、 “目黒川みんなのイルミネーション2012”が挙げられる。

©目黒川みんなのイルミネーション実行委員会
「アースデイ東京2011で実行委員の方とたまたまお話ししたのがきっかけです。身の回りにあるエネルギーを使いたいということで、バイオディーゼル燃料が候補に挙がりました。そこで、燃料を集めるところから一緒にやりませんか、と提案したんです。」

最終的には2,000Lの廃食油を回収したが、実現までの道のりは簡単ではなかった。

「回収についてマンションの管理人さんに話をすると、『話はわかるけど、段取りが面倒だなぁ』なんて言われたりして。でも、イベントをきっかけに継続的に回収をさせてもらうようになりました。」

エコという概念だけでは伝わりにくいかもしれないが、目に見えることで身近に感じられるのだと思う。

仕事のなかで心がけていることはありますか?

「小さい会社ということもあり、社内のコミュニケーションが大事です。これから入ってくる人にも、ていねいに確認をしていってほしいです。」

最後に事務の島田さんに話をうかがった。島田さんはもともと翻訳の仕事をしていた。

「事務の仕事は、請求書をはじめとする経理書類の作成、経理、電話応対が中心です。電話は飲食店の方からの回収依頼や、TV、新聞での報道に関する問い合わせもあります。」

「事務の仕事自体は、直接環境につながるところは多くないかもしれません。ただ、環境に関する情報には日常的に触れられるんですね。関心があれば、アースデイなどのイベントにスタッフとして参加もできます。」

経験はなくても、徐々に仕事を覚えていけば大丈夫とのことでした。

大きな変化には時間がかかるかもしれないけれど、確実に手応えが感じられる仕事だと思う。過去の職歴は問いません。環境の仕事に取り組みたい人にはぜひ一度ユーズのみなさんと会ってほしいです。(2013/1/16 はじめ)