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伝統技法×最新技術

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はじめに電話で話したとき、とにかくエネルギーと勢いにあふれている人だなと感じる。

実際にお会いして話をうかがうと、いつの間にかワクワクしている自分がいる。一緒にワクワクすることに年齢は関係ないんだな、そう気づく。

丸八テント商会の社長、佐藤さんはそんな人です。

丸八テント商会という名前をはじめに聞いたときは、どこにでもあるようなテント施工業者さんかと思いました。そもそもテントと聞いても、イベントテント、キャンプ、せいぜい八百屋にカフェテラス… 程度のイメージしかありませんでした。

けれど、佐藤さんに話をうかがうと「こんなことがテントでできるの?」という驚きの連続でした。

たとえばプロ野球チームの沖縄キャンプでのブルペン、世界初の移動式プラネタリウム“SPACEBALL”の建設に携わっていたり。海外ではODA事業として、アフリカの砂漠地帯に学校やコミュニティセンターを建設するプロジェクトにも企画から関わっています。

一方、丸八テント商会では伝統的技法を最新の技術と組み合わせた新規事業、西陣プロジェクトにも取り組んでいます。それが京都の西陣織で、ペットボトルリサイクル繊維からつくる「西陣帆布」、炭素繊維を編みあげた「西陣カーボン」です。

この事業は、技術力を武器に中小企業の海外展開を促進する中小企業庁の“JAPANブランド育成事業”にも選ばれています。

西陣カーボンは、すでに国内外の有名自動車メーカー数社とコラボしており、インテリア・エクステリアに使用されています。

来年度以降はインテリアファブリックやギフトといった業界での受注をすすめるべく、欧米やアジアでの海外展開をしていく予定。

西陣帆布も、音楽都市であるウィーンやスイス大使館をはじめ、世界各国から問い合わせを受けているとのこと。

今回募集するのは、将来的に西陣プロジェクトを担っていける人。そして、テントの営業から施工までを一貫して行うセールスエンジニアです。

名古屋の繁華街、栄にある本社で話をうかがう。佐藤さんは3代目の社長だ。

「創業は1951年ですが、先代で一度倒産しているんですね。私の代で第2の創業をしました。」

佐藤さんは積極的に色々な場に顔を出すことで、仕事の幅を広げてきた。

2005年の愛地球博では、テントの施工・建築もおこなった。けれどその頃を境に、個人商店から商店街、デパートといった商業施設での需要がパタリと途絶える。

「開発が一巡したんですね。そこで土地柄もあり、自動車関連メーカーのテントに注目したんです。ロボットがきちんと稼働するように温度管理する部屋、塗装の前行程でボディが汚れないようにホコリを管理するクリーンルーム。そうした工業用途にシフトしていきました。」

「従来の工業用テントには機能性の観点しかなくて。ダサかったんですよ。そこに、商業施設でつちかったデザイン性を取り入れました。素材は同じでも、一方はただビニールがぶら下がっているだけ、私たちは見た目もいい。お客さんからも『どうしてこんなに違うの?』と言われます。」

けれど、工業用途にも陰りが見える。2008年のリーマンショック以降は工場の海外シフトが加速し、昨年にはタイ洪水の影響も受けた。

「仕事はガタ減りです。けれど一方で、2000年ごろからインターネットでのビジネスに特化しようと色々手を打ってきたんです。HPのアクセス数を増やすためにオンラインショップを充実させて。ブログやfacebookで、これまでの施工事例の紹介をはじめました。」

現在、オンラインショップは全体の売上げの半分近くを占めるまでに成長してきた。

また、インターネットでの発信を通して、仕事の範囲はさらに広がりを見せる。

たとえば木村拓哉主演のTBSドラマ“南極大陸”では、南極観測隊が実際に使用したテントを再現した。大手のアウトドアメーカーをはじめ、ありとあらゆる業者に断られた末に、TBSのディレクターが丸八テントに直接見えたそう。

「『おたくにしかつくれないって聞いたんだ』と言われたので、『やれると思うよ』と。ドラマのエンドロールに流れたときには社員も喜んだよね。」

丸八が手がけるテントには誰もが知っていたり、メディアで取り上げられるものも少なくない。

「でも、その仕事だけを効率よくとってやろう、なんて風にはいきません。コツコツと積み上げてきたものがあって、それらを日々発信しているからこそ、『丸八だったらやってくれるかも』という引き合いにつながると思うんです。」

取材中に印象的だったのは、電話がよく鳴っていたこと。HPやブログ経由で、新規問い合わせの電話を毎日10件以上いただくそうだ。

「ただのテント屋って思われるのがくやしくて。でも、こうして色々な仕事をいただくので、会社が目指す方向を考えつつ、仕事を引き受けられるようになってきました。」

西陣プロジェクトにもコツコツ積み重ねる姿勢が共通してうかがえる。いまでこそ“JAPANブランド”の認証を受けて海外展開を加速させているけれど、最初から順調とはいかなかった。

10名の出資者を募り西陣帆布㈱として起業したものの、なかなか日の目を見ず、出資者間には次第に温度差が生まれてきたという。最終的には佐藤さん一人がエコプロダクツや環境展への出展といったPR活動を続けた。

そしてある日、デザイナーの加藤幹さんと出会う。プロジェクトに可能性を感じた加藤さんから“JAPANブランド”の存在を聞き、2012年度に採択されることとなった。

ちなみに加藤さん自身も、プロジェクトとの出会いをきっかけにGALEA DESIGNとして独立、現在デザインを手がけている。

今回は、西陣プロジェクトを担っていける人を募集している。今後プロジェクトはどのように展開されていくのだろう。

「来年はまずは海外にブースを出して、販路開拓をすすめる代理店を集めていきます。アメリカ、シンガポール、イタリア、ドイツなどを候補に挙げています。アメリカでは大手量販店とギフトの展開をしていくかもしれないし、ヨーロッパではより高付加価値な商品かもしれない。そうしたところから一緒に考えていきたいです。」

将来的には、日本に凱旋させることで丸八テントのブランド力を高め、テント事業にも還元させたいと考えているそうだ。

どんな働き方をするのでしょうか。

「いまの私の仕事を、一緒にやっていくことになります。原料の調達から商品企画、国内外のイベント展示、価格設定、デザイン、それから織の現場とのやりとりまで。覚えることは色々あると思います。」

実は、記事を書いている最中にも新しいプロジェクトが決まった、という電話をいただいた。

「沖縄で、太陽光や風力発電とコラボした洋上テントの製品化をすすめていきます。ODA事業に携わるなかで、こうした話も出てきたんです。」

丸八では、常に新しい動きが生まれているのだと思う。

実際に佐藤さんと働いている人にも話を聞いてみたい。佐藤さんとともに西陣プロジェクトを運営しているのは、岐阜のNPO法人G-net経由のインターン生たち。話を聞いた中島さんと奥村さんは、大学3年生で就活の真っ最中。

奥村さんは働いてみてどうだった?

「私のことを信用してくれるんだ、と思いました。最初の仕事が、新商品や施工事例をSNSで発信することだったんです。大手企業のインターンでは、2週間インターン生だけが集められて、実務とは関係のない座学を受けるところもあると聞いていて。でも、丸八はいきなり任せてくれたんですね。いままで積み重ねてきた信頼を維持して、高めていく責任を感じました。」

発信で商品知識を高めたのちは、営業や展示会にも同行するようになった。他にHP管理やSEO対策なども担当しているという。

中島さんは西陣プロジェクトのパンフレットを作成した。日本語版だけでなく英語版もあり、来年度以降の海外営業に用いられる予定だ。

またこの日は不在だったが、インターンを経て現在アルバイトをしている大学3年の丹羽(にわ)さんは、中国最大の総合輸出商品商談会である広州交易会にも同行したそうだ。

「世界を見せたかったんです。世界のバイヤーはこんな風に仕事をしているんだよ、って。そこから、将来的に中国の企業とどう契約やコラボをしていくのか。そうしたことも考えられるようになると思います。言葉だけでは伝えきれないから、実際に経験してほしいです。」

佐藤さんは、こちらから求めていけば、出し惜しみせずに色々な世界を見せてくれる人なのだと思う。

「みんなでビリビリ、ワクワクしていきたいんです。でも最初から同じ目線では考えられないと思う。だから、社員とは時間をかけて話し込むことを心がけています。」

テントのセールスエンジニアの仕事についても聞いてみる。

「営業から施工管理まで一貫して担当します。自分ですべてに関わることが大事なんですね。現場がわからないと営業もできませんから。自分で考え、自分で行動できる人と仕事がしたいです。」

これまで紹介してきたような、多種多様な案件を担当できることが特徴の一つだという。

宇宙ロケットのカバー用テントをつくることもあれば、関西国際空港内レストランの装飾サインテントを手がけることもある。岡山県の屋外結婚式場では、式場全体の設計施工をプロデュースした。施工内容はテントだけに収まらないようだ。

また、海外での仕事を受けることもある。

世界最大規模の家具展示会ミラノサローネでは、毎年展示に携わっている。なかでも何万本もの糸を張り巡らせ、糸のなかに映像を流したインスタレーション“Light Loom”は、ELITA DESIGN AWARD2011の最優秀賞に輝いた。

西陣プロジェクト同様、こうした大きな仕事に1年目から関わることができる。

一緒に働くのはどんな人がいいのだろう。

「西陣にもテントにも共通して、ものづくりが好きだということが大事です。それぞれに求める経験や技能はあります。でも丸八で、私たちと一緒にものづくりがしたいと思えば、まずは話がしてみたいです。」

丸八テント商会。その名前はけっして洒落てはいないけれど、古い味を活かしつつ、新しいことに挑戦していける会社だと思います。

佐藤さんとは取材後もたびたび会ったり、電話する機会がありました。その度に、いつもワクワクをくれる人です。以前大企業にいた身としては、ここまで仕事を見せてくれる人とは出会えなかったな、というのが本音です。

まずは、素直に関わってみるのもよいのではないでしょうか。学生たちが丸八テントに集まってくるのにはわけがある、そう思います。
(2013/2/27 はじめup)