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人とひとの通販

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「わたしたちがやっていることは、非常に単純だと思うんです。全ては、お客さんに喜んでもらうため。それだけなんですよ。」

取材を終えて、一本道のような仕事だと感じました。

ゴールを見失うことなく、まっすぐ進んでいくことができる。その先には、待ってくれている人の姿も見える。

トルコ、エジプト、イランなど中東圏からの輸入家具や雑貨を扱うオンラインショップ「ガラタバザール」

このサイトと直営店を運営している「いぐれっく」という会社で、商品管理から販売まで、お客さんに商品が届くまでの一連の流れを担当していくスタッフを募集します。

東京・中野区にあるオフィスへと伺う。一階は直営店になっていて、ここで対面販売も行っているそうだ。

中に入ってみると、あまり見かけることのない、エキゾチックな雰囲気の商品が並んでいる。

トルコの平織り絨毯「キリム」や、羊の毛を織ってつくられた「ギャッベ」をはじめ、中東地方で生産されている家具や雑貨たち。床も壁も落ち着いた色合いで、なんだか居心地がいい。

「この建物は築45年の昭和の建物で、もともとの構造を生かして店舗にしたんですよ。夏は暑いし冬は寒いんですけどね。でも、ものを大事にしているような人だったら、この建物のことも理解してもらえるかもしれません。」

そう教えてくれたのは、いぐれっくの代表であるたくさがわさん。

「たくさがわ」は、漢字では「田草川」と書くそうだ。なんだか長閑な景色が浮かんできそうな、素敵な名前だと思った。

たくさがわさんがいぐれっくを立ち上げたのは、今から13年前のこと。最初の6年間は、ほぼひとりで事業を切りもりしていたそうだ。

「もともと、輸入雑貨の会社に勤めていたので、輸入の仕組みなどはそこで教わりました。それに加えて、当時、インターネットが出てきた時代で、ちょっと興味があったんです。輸入雑貨とインターネットを掛け合わせて何かできないかな、と思ったのが始まりでした。」

ネットショップならば、店舗費用もかからない。当時、たくさがわさんは会社を辞めたばかりで、そんなに貯金もあるわけではなかった。

「だから、トルコの雑貨を扱うことに決めたのも、わずかな貯金でも仕入れができるというのが決め手でした。それから、イギリスやフランスの雑貨だと、先輩やライバルがいっぱいいるじゃないですか。それに比べて、トルコ雑貨を扱う人は周りに誰もいなかったんです。チャンスが漂っているのを感じました。」

そうして、トルコに狙いを定めた。ただ、買い付けにいったこともなければインターネットでの商売も初めてだし、右も左も分からない状態。最初は大変だった。

「ただの観光客と変わりのない状態だったから、買い付けで騙されることもありましたよ。日々、勉強でしたね。出会った人に、その都度教えてもらう感じでした。わたしはなんて物事を知らないんだろう!と思う日がずーっと続きましたよ。」

あとはこつこつと、パソコンに向かって一人きりの地道な作業が続いた。大変だったんですね。

「だけど、PCの向こうには、沢山応援してくれる人や待ってくれる人がいましたから。お客さんにも沢山助けられました。こちらが分からないことは、逆に教えていただくこともありました。」

お客さんの声も、ちゃんと届いていたんですね。

「うちの商品は、誰でも知っているようなものではないので、それなりにこだわりを持ったお客さんが多いんです。注文の前に、『こんなものはないかしら』とか『写真に写っていない部分はどうなっているの?』とか、面倒くさがらずに、色々問い合わせてくれるんです。それにひとつひとつ答えていくと、沢山やりとりがあるんですよ。」

「だから、ネットショップが自動販売機のように相手の顔の見えないもの、とは最初から思いませんでした。メールだと返信に時差は起こってしまうけれど、基本的には人と人が関わる仕事だと思っています。」

パソコンの画面を介して、待ってくれている人の熱を感じたたくさがわさん。だんだん、期待にもっと応えていきたいと思うようになった。

「中東からの輸入や問屋業でうまくまわっているところって、日本にあまりないんですよ。というのも、わたしたちが扱っている商品は、仕入れ先がほぼイスラム圏なんです。政治的なことで輸入できなくなることもあるので、難しいんですね。」

「だけど、手織りの絨毯を求めてうちにやってくる人たちのために、商品を届けていきたいんです。誰にでもできることではないと思うので、それをやっているということに価値があると感じています。」

けっして一般的なものではないけれど、インテリアや暮らしにこだわっている人のなかには、まさにこれだ!これしかない!と思う人もいる。

そんな要望に応えていくために、たくさがわさんは仲間を増やして会社を組織化していくことに決めた。求められて自然と広がってきたように思う。

そんないぐれっくに、仲間として加わったのが野村さん。もうすぐ入社して3年になる。

日々どんな仕事をしているんですか?

「あらゆることをしていますね。搬入から、商品の紹介ページをつくり、注文や問い合わせの対応まで。それから、ここの直営店にお客さんが来たときには接客もするんですよ。商品がお客さんのところへ届くまでの全てを、自分たちの手でやっています。」

大きくは、雑貨ごとに担当が分かれているそうだ。野村さんの担当は、照明器具。それに加えて、メインの商品であるキリムやギャッベなどの絨毯も受け持つ。

晴れた日には、サイトに掲載するため、商品の写真撮影をする。その画像をパソコンで切り抜いたり、横に添える商品情報やキャッチコピーをつくるのも、仕事のうち。ここが一番時間のかかるところだそうだ。

梱包作業や運ぶ作業もある。ちなみに、絨毯は大きなものになると、人の体重ほどあるそうだ。それをみんなで力を合わせて運ぶ。

「だんだん慣れてきて、2トンと聞いてもそんなに重いとは思わなくなりました。」と野村さん。

前職はシステムエンジニアだったそうだ。今までの経験を生かしながら、もともと興味のあったインテリアの仕事がしたいと思っていたところ、いぐれっくに出会った。

面接を受け、採用。ただ、キリムやギャッベが特別好きで入社したわけではなかったから、最初は手織りの絨毯の魅力もあまり分からなかった。

だけど、働くうちに気付くことがあった。

「インテリアが好きなので、雑誌を良く見ているんですね。そうすると、インテリアセンスがある人の部屋には、こういう絨毯が敷いてあることが多いんですよ。床の面積って、視覚情報として大きいじゃないですか。そこに敷かれる絨毯の重要性も大きいんじゃないか、と感じるようになりました。」

絨毯や照明を撮影で使わせてほしい、というテレビ局や雑誌社からのオファーや、お店をつくりたいから空間づくりに協力してほしい、という依頼もある。

だんだん自分が扱っているものの価値に気付いてきて、好きになっていった。着る服の好みも、自然と変わってきたそうだ。

「前は、システムをつくる仕事だったので、エンドユーザーまで届くところまで見ることができなかったんですね。今は、人の喜ぶ顔が見られるのが嬉しいです。」

野村さんがいちばん楽しいと感じるのは、お店で直接商品を販売すること。

「照明を探しに来たお客さんが、なかなかピンとくるものがなくて悩んでらっしゃるときに、『もしかしてこういうものを望んでいるんじゃないかな?』と、在庫を探して持ってくるんです。そうしたら、表情がパッと変わって『これいいね!これしかないよ!』と言ってもらえる瞬間があるんですね。そういうとき、よっしゃと思います。お客さんが求めている以上のものを提案することができたときが、いちばん嬉しいです。」

ネットで売るときも、お客さんとのやりとりのなかで嬉しさを感じることが多いそうだ。

ただ、もちろんいいことばかりではない。直接顔を合わせていれば起こらないような、ネットショップならではのトラブルやすれ違いもある。

たくさがわさんが、こんな話をしてくれた。

「ネットのお客さんは、とても正直だと思います。だから、期待が少しでも下回ってしまうと、厳しいことも言われます。お客さんの勘違いもたまにありますが、こちらの対応が悪いこともある。人がやっていることなのでミスもあります。でも、間違えた人の責任ではなく、間違えるような流れになってしまっていること自体が問題なので。そこは改善していきたいと思います。」

扱う商品が好き、というだけではお客さんに向き合っていけないような気がする。どんな人がこの仕事に向いているんだろう。

「好きなだけではなくて、『売るもの』という感覚を持っている人がいいと思います。さらにお客さんと商品をつなげていくためにはどうしたらいいかを、一緒に考えていってくれるような人に来てほしいです。」と野村さん。

たくさがわさんにも聞いてみた。

「エンドユーザーに届けて、喜んで使っていただくことがゴールなので、人に喜んでもらって自分も嬉しい、という感覚がある人がいいですね。そうじゃないと、わたしたちの仕事はただの作業の山になってしまうんですよ。ただものを運んで、ただ梱包して送る、というような。何のためにしているのか分からなくなってしまうと思います。」

全ては、お客さんに喜んでもらうため。その感覚を見失わない人に来てほしい。

「実はわたしも、最初は商品自体が好きだったから、仕入れるものも自分の好みに偏っていたんですね。でも、わたしが気に入らないものでも、これがいい!というお客さんがいらっしゃるんです。色々な見方があるんだな、ということを学んでいきました。必要なのは、どんなものならお客さんが喜んでくれるのか、という『想像力』かもしれません。」

色々なものの見方や考え方がある。受け取り方はさまざまだから、言葉にも気を遣う。買い付けにしても、商品の紹介にしても、お客さんの対応にしても、相手を想像しながら働くことが求められる。

それから、もうひとつ大切なのが、海外の卸先との関係。

「社員には、これからどんどん現地に行って仕入れから関わってもらいたいと思っています。だから、ひとりで旅行に行って乗り物乗ってホテルに泊まれるようなレベルの英語ができるといいかもしれません。」

聞けば、たくさがわさんは学生時代、旅のサークルに所属していたのだそうだ。輸入業務をひとりで抵抗なくはじめられたのも、その経験があったからなのかもしれない。

仕入れも担当するとなると、本当に商品がお客さんに届くまでの1から10まで、全て担当するということになる。

決して効率の良い方法ではないと思うし、分業化することもできなくはないと思う。だけど、そうしないのは、ひとりひとりが全体を見渡せるようになってほしいから。

みんなが商品に触れ、みんながお客さんと話をする。そうすることで、喜んでくれる人の顔がよく見えるのだと思う。

相手を想像しながら働けるのは、きっと楽しいことだと思います。(2013/2/19 up ナナコ)