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まずは自分でやってみる

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「先輩や上司に相談する前に、まずは自分でやってみるんです。」

そう話すのは昨年の春、オークハウスに入社した栗木さん。はじめからうまくはいかない。けれど、自分で試行錯誤を繰り返すことで、仕事に対する自分の型が見えてくる。そんな職場だと思いました。

今回紹介するのは東京・横浜を中心に約2,200室のシェアハウスを運営しているオークハウスです。前回の求人に応募して働きはじめた栗木さん、藤山さんの2人にもお話を聞いていきます。

まずは2人が入社した経緯を聞かせてください。栗木さんはどうでしたか?

「僕は新卒入社です。美大出身で、建築・内装デザインを専攻していました。あわせて東京の住宅過密問題について研究をする中でシェアハウスに興味を持つようになりました。」

シェアハウスに関連する業界での就職を考えていたんですか?

「実は受けたのはオークハウス1社だけなんです(笑)。大学では、現代美術の団体を運営していて、そのまま仕事にしたかったんです。けれどある先輩に『就職するしないは別として、一度就活してみたら?』と言われ、やってみることにしました。それで、1社だけエントリーしました。新卒の募集ではなかったし、求められていた英語力はほとんどゼロに近い(笑)。それでもまずは応募してみようと思って。」

はじめて会社を訪れたときはどうでしたか?

「面接官がわりとフランクに話を聞いてくれました。僕がシェアハウスの重要性について考えを話したところ、共有することができて。そのこともあって『ここで働きたい』と自然と思うようになりました。」

藤山さんはどうでしたか?

「私は長崎出身ということもあり、平和学や国際政治を専攻していました。大学院を受験していたんですが、ある日先輩に『お前は誰を救いたいんだ?』と言われて。先輩が伝えようとしたのは、机上で考えてばかりいないで目の前の人に直接関わってみたら、ということでした。実は私自身、研究の道に進むことにはどこか違和感があったんです。それで急きょ進学をとりやめました。」

「卒業後1年間は、NPOやソーシャルベンチャーでのインターンをしました。その経験がもととなって、接客や販売といった人と関わる仕事に興味を持ちます。自分の関心のある分野に留まらず、もっと色んな人に会いたいと思ったんです。それでオークハウスに応募しました。」

実際に働いてみてどうですか?記事を読んでのイメージと違いはありませんでしたか。

「会社の雰囲気は思っていた通り自由なものでした。それから、入社前にも何となく感じていたことを今は日々実感しています。自由な反面、自分で考えて決めることが求められるんですね。」

「たとえば入居者の方との関わり方には正解がありません。もちろん先輩に相談はできるけれど、私が同じことをやってもうまくはいかない。私の担当物件は、女性専用で比較的小規模のハウスです。人数が少ない分、入居者同士の関わり方が密になるのでトラブルも起こりやすくなります。そうしたときに、マネージャーの私はどこまで関わるのか。その見極めはなかなか難しいです。」

シェアハウスには入居したから生まれる人との出会いがある。それと同時に、他人が一緒に暮らせばトラブルが発生することもある。とはいえ、家族の間でもケンカは起きるのだから、特別なことではない。入居者からは、そうした問題の解決について相談を受けることもある。

「私は入居者と年が近いこともあり、こちらのお願いを真剣に聞いてもらえないときもありました。入居者の方に親しみを持ってもらうことはマネージャーにとって大事で、とても嬉しいものです。ただ、私たちの仕事はハウス全体がよい状態でいられるように関わること。遠すぎず、近すぎず。距離のとり方は日々模索しています。」

そんな藤山さんの話を聞いて、先輩の池下さんはこう話してくれた。池下さんは前回も取材させていただいた方だ。

「僕は、シェアハウスにおける生活の基本は譲り合いにあることをきちんと入居者にお伝えします。ただ、同じことを慣れない新人が言っても、入居者の受け取り方も変わってきますよね。そこが難しいところです。」

だからこそ試行錯誤をしながら自分の関わり方を見つけることが大事になるのだろう。

まずはやってみないとわからないのは、入居者との関わり方だけではない。物件のメンテナンスについても、同じことが言えるそうだ。

「給湯器からお湯が出ない、インターネット回線が接続できない、トイレが詰まった… 本当に色々なトラブルが起こります。そうした家のメンテナンスって意外と知らないんですよね。だから最初は一つ一つの対応に時間がかかり、スケジュールの押す日が続きました。」

その中でも栗木さんが一番大変だったのは、はじめて洗濯機を交換したときのこと。

「古い洗濯機を取り外したら、水道からピューッと水が漏れてきて(笑)。蛇口が曲がっていたんですね。その日はホームセンターと物件を何往復もしました。途中で入居者の方がお茶を用意してくださったりしつつ、結局新しい洗濯機を取りつけられたときには5時間が過ぎていました。」

すると先輩の池下さん。

「僕もやったことがあるよ。だからそのときの電話はよく覚えている。すぐに『ああ、あれだな』と思った(笑)。でも、そのことも自分で試行錯誤して初めてわかるようになる。だからオークハウスではまず自分でやってみる。その上で先輩や上司に相談をするんです。」

「シェアハウスはメディアでも取り上げられていて、どこか華やかな仕事というイメージがあるかもしれません。実際にはメンテナンスのように地味だけれど、とても大事な仕事もあるんです。メンテナンスができた上で、人と関わったり、企画の打ち出しといったことができるようになります。」

栗木さんがこの仕事についてよかったと思ったのはどんなときですか?

「色んな人に出会えることです。自社物件に住んでいることもあって、特に海外の友達が増えました。入居者が帰国するときには、『俺の国を案内するから来いよ!』と言ってもらったり。あとは週末にみんなで遊びに行ったりするんですね。そうすると、リアクションや言葉のニュアンスが一人一人違うことに気づきます。」

なにか印象的なことはありました?

「この間はバットマンの映画を観に行ったんです。そうしたら、バットマン登場にあわせてインド人の友達が『ピーッ』って口笛を吹いて(笑)。日本人にとって映画館は静かにする場所だと思うんですが、海外ではリアクションをとることがごく当たり前なんですね。シェアハウスと出会って、自分の見方が変わったなと思います。」

藤山さんはどうですか?

「ある物件でラウンジの掃除をしたんです。そうしたら、『ありがとう。お礼に洗濯機の掃除をしておいたよ』と手紙が置いてあって。掃除することが私の仕事ではあるんですが、気づいてくれたときに、仕事が伝わったんだと思い嬉しかったです。」

「それから、表参道の物件で交流会をかねてBBQを開くことがあって。先輩から幹事を任されたんですね。でも私は幹事の経験がなくて、色々と迷いながら準備を進めていたら、入居者の方が一緒に考えてくれたんです。まずそのことが嬉しくて。さらに、BBQのあとに別の入居者の方が『幹事で全然食べられなかったでしょう?』とカキを用意してくれて。2度嬉しい日でした。」

入居者と何かを一緒に成し遂げていくことが面白さの一つなのだと思う。入居者とマネージャーとして関係をわり切るよりは、もう少し近い距離にあると思う。だからこそ大変なことも、嬉しいこともある。

マネージャーは物件の全てに関わることとなる。他にはどんな仕事があるのだろう。

「内覧や契約があるときはその立ち会いに行きます。また普段は担当物件を回って備品の補充や掲示板のチェックを行います。たとえば『廊下の電球が一つ切れました』という書き込みがあれば交換をします。入居者同士がよい関係かといったことを意識することも大切です。他には空室率を注意して、高い物件はリフォームや家賃の見直し、HPでの広報も行います。」

そうした物件管理には、マーケティングの視点も求められる。立地や家賃の観点から、担当物件にはどういった人が住みたいのかを考えていく。

どんな人が向いているのかを、池下さんにうかがった。

「こういう人でなければできない、ということはないと思うんです。最初は必ずマネージャーからはじめていきます。マネージャーの中には、栗木くんのようにフレンドリーに接する人もいれば、僕のようにどちらかと言えば聞き役にまわるタイプもいます。他にも部屋のデザインやリフォームに力を入れる人、手製の家具で部屋のレイアウトを組んでいく人… 色々なタイプがいます。要は自分の強みを活かしていければいいと思うんです。ただ、共通して求められるのは人と接するのが好きでいてほしいということです。」

入社してよかったと思うのはどんな点だろう。栗木さんはこう話してくれた。

「必要なことであれば、年齢や役職にこだわらずきちんと意見を聞いてくれる会社だと思います。例えば僕は、所属しているエリアミーティングで『若い入居者はこういったインテリアにしたら喜んでくれると思います』『雑誌にこういうものが載っていますよ』というように提案をしていました。するとある日、本社の人から『今度相談に乗ってよ』と電話をもらったんです。」

最初はメンテナンスをはじめとする基本をきちんと覚える。次第に、シェアハウスを舞台に自分がやりたいことにも取り組んでいけるようになる。

これから栗木さんは、デザインに強みをもったマネージャーになっていきたいそうだ。既に担当物件から、机とゴミ置場の仕切りをつくってほしいと頼まれているという。

栗木さんの上司でもある池下さんは次のように話す。

「年齢関係なく若い人にも、色々意見を出していってほしいと思います。今、オークハウスの取り組みの一つとして各ハウスに付加価値をつけようとしているんです。スマホにアプリが加わるように、たとえばヨガ教室や料理教室を設けたり。そういったアイデアももっとほしいです。あとはSNSとの相性がよいと思うので、そこでも何か面白いことがやりたいですね。」

一つ一つの問題に向き合い解決したときには、仕事という枠に収まらず、きっと自分自身にかえってくる。そういう仕事なのだろうなと、栗木さん、藤山さんの話を聞きながら感じました。(2013/3/5 はじめup)